現在の高1生が受験する2021年度入試より、高大接続(大学入試)改革が実施されます。その内容について、まとめてみることにします。

※2018年4月28日現在

なぜ、今高大接続改革をおこなうのか?

今の中学生や高校生が社会の中心で活躍する数十年後には、国内的には少子高齢化による人口減少が進み、世界規模では国境というボーダーを超えるグローバル化がさらに拡大することが予想されています。また、「第4次産業革命」ともいわれる、AI(人工知能)の活用が、我々の身近な日常生活にも広がっていきます。つまり、単純な肉体労働だけでなく、知的労働も機械に取って代わられる世界がそこまで迫っているのです。

すると、学力の評価も従来の「知識、技能」を中心としたものから、人間こそが持っている「思考力、判断力、表現力」を重視したものに変化することは避けられません。また、グローバル化の進展の中では、世界共通語ともいえる英語を自由に扱うために、4技能(読む、書く、聞く、話す)をバランスよく身に付ける必要があります。さらに、外国人など多様な人々と協働して、主体的に考え、物事を成し遂げていく能力も不可欠になっていきます。

このような、社会で必要となるものの変化に対応するために、大学教育も小中学校の教育も学生・生徒が中心となって学んでいく、いわゆる「アクティブラーニング」が主流となりつつあります。もちろん、高校教育もこういった流れを避けていくことはできないのですが、残念ながら大学入試が旧態依然としたままでは、従来の座学中心、知識・技能の習得中心の学習から脱却できません。このような背景もあって、高大接続(大学入試)改革が行われるのです。

受験生やその保護者のみなさんには、「大きな変革の時期にあたってしまった」とネガティブにとらえるのではなく、「これからの時代に即した最新の学力を身に着けることができて、大学入試ではその評価によって選考が行われる」とプラス思考でとらえていただきたいと思います。

大学入学共通テストの制度設計について

現在の大学入試センター試験(以下「センター試験」)は2020年度入試で終わり、2021年度入試からは「大学入学共通テスト」(以下「共通テスト」)に変わります。下の表1は、2018年4月現在の情報をもとに、共通テストの制度設計についてまとめたものです。

表1 2021年度入試~2024年度入試における大学入学共通テストの制度設計

2021年度入試~2024年度入試(高1~中1)
対象 ●大学入学希望者(国公立大学必須、私立大学任意)
出題方針 ●思考力・判断力・表現力の判定機能を強化
●難易度はアップ
●選抜性が高い大学が活用できるように、各設問の難易度は広範囲に設定する
出題教科・科目 ●現行のセンター試験と変更なし(英語は2024年度入試までは出題)
実施日程 ●実施日はセンター試験と同じく、1月中旬実施
マークシート式問題記述式問題同日日程同一時間内で実施
マークシート式
問題の改善
●連動型複数選択問題、正解が一つに限らない問題、解がない問題、必要な数値や記号等をマークする問題などを導入
記述式問題の
導入
●「国語」、「数学」で導入、採点には「民間事業者」を活用
●結果の表示の仕方は、国語は段階別評価、数学はマークシート式と同じく正答または誤答のいずれか
●実施日は1月中旬実施
<国語>試験時間80分→100分
●記述式の出題範囲は「国語総合」(古文・漢文を除く)で行う
大問1題追加、最大80~120字程度の問題を含め小問3問程度
「実用国語」の出題(ただし、「文学的な問題」の出題を否定するものではない)
※各大学が個別選抜において利用できるように記述式問題・採点基準を
  提供することも検討<個別試験問題の提供
<数学>試験時間60分→70分
●「数学Ⅰ」及び「数学ⅠA」(出題範囲は数学Ⅰ)で記述式設問を出題
●1つの大問内で前半はマークシート式問題、後半は記述式問題という形式
●解答を数式や文章で表現する(証明問題や論証問題は出題されない)
英語4技能の
評価への対応
●共通テスト(英語)と認定試験(民間の英語4技能資格・検定試験)を併用
国立大学は共通テストと認定試験の両方を利用(公立大学や私立大学は各大学がいずれを利用するか、あるいは両方を利用するかを決定)
英語認定試験の
制度設計
●民間の英語4技能資格・検定試験を活用。
●民間業者からの申請に基づいて、学習指導要領に沿った出題か、全国の会場数等により認定(認定を受けた資格・検定試験=英語認定試験
高3の4月~12月に2回まで受験可能で、結果の良い方を採用
試験実施回数 年1回実施
成績の提供 ●受験生への成績提供方法は現行通り、共通テスト出願時の申請者に送付
※自己採点制度は残るが記述式導入で精度低下
●大学への成績提供は多様な情報(各科目の領域ごと、問いごとの解答状況)を提供。
●大学への成績提供日は現行(1月末日)より1週間遅れ
合科目型の出題 出題しない

なお、2025年度入試以降は高等学校の学習指導要領(カリキュラム)の改訂が予定されていることから、現在の小6以下の皆さんが受験する共通テストについては、2021年度中に新しい実施方針が発表されることになっています。

共通テストに移行すると現在のセンター試験とは全く変わってしまうように思われている方もいるかもしれません。また、そういった報道も見られます。しかし、少なくとも現行の学習指導要領に基づいて実施される2024年度入試までは、現在のセンター試験をもとにして、それを改善したものと考えて下さい。したがって、過去問演習をはじめとする今までに確立されてきた対策がすべて無効になってしまうわけでは決してありません。この部分は安心して下さい。

センター試験から大きく変わる点は、下記の3点です。

  1. 国語(現代文)と数学(数学I及び数学I・A)で記述式問題を導入する。
  2. 英語で4技能(読む、書く、聞く、話す)を評価するために、民間の英語4技能資格・検定試験を「英語認定試験」として、共通テストの英語と併用する。
  3. 思考力、判断力、表現力をいっそう重視した作問のためにマークシート式問題の改善を行う。(複数の選択肢を組み合わせて解答する「連動型複数選択問題」、正解が一つに限らない問題、数値や記号を直接マークする問題など)

2017年度に実施された試行調査(プレテスト)の出題を見ていくことにします。

注目の記述式問題は国語も数学も実社会・実生活に則した題材が用いられています。特に、国語は独立した大問が1題出題され、会話文や表や図などから複数の情報を読み取って、解答を導く形式です。このような出題形式を駿台では「実用国語」と呼ぶことにしています。多数の情報を色々なものから読み取ることが必要で、高度な読解力がないと時間不足になってしまいます。また、解答については、字数制限、段落の数や書き出しの指定がある「条件付記述式」となっているので、問題文に示された指示に正しく従うことが大事です。

数学は、証明問題や論証問題の出題はなく、解答を数式や数学的な用語を用いた文章で表すだけですが、国語同様に問題文が長くなっていることからやはり読解力が必要になります。数学は国語とは異なり、大問の前半はマークシート式問題、最後に記述式問題という形式になっています。

記述式問題の評価は、国語では5段階程度の段階別評価で行われるため、各大学がこれを得点に換算して200点満点のマークシート式問題の得点に加算することになります。一方で、数学は正答または誤答の2段階なので、マークシート式問題と合計で100点満点で、1点刻みの得点で示されます。

次に、マークシート式問題ですが、従来のセンター試験で出題されていた教科、科目はすべて出題されます。結果も従来と同じく1点刻みの得点で示されます。ただし、先にも述べたように、「正しいものをすべて選べ」といった出題が行われるために、センター試験よりも平均点はダウンすることが予想されます。

また、英語については民間の英語4技能資格・検定試験を共通テストの一環として利用することから、共通テストの英語は「読む」「聞く」に特化したものとなり、発音・アクセント問題、文法問題、整序作文問題等が姿を消しました。また、「筆記[リーディング]」の設問文は日本語から英語に替わりました。これらの変更が本番でも行われるかどうかはわかりませんが、英語の出題には何らかの変化があることは覚悟した方がいいと思われます。

英語認定試験について

民間の英語4技能資格・検定試験を共通テストの一環として利用するためには、大学入試センターが民間事業者から各大学に英語4技能資格・検定試験の成績を提供する必要があります。このために、「大学入試英語成績提供システム」が構築されますが、これへの参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験が2018年3月26日に文部科学省より発表されましたので、表2にまとめました。

表2 大学入試英語成績提供システム参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験

資格・検定試験
実施主体名
資格・検定試験名
  Cambridge Assessment English
(ケンブリッジ大学英語検定機構)
ケンブリッジ英語検定
1 C2 Proficiency
2 C1 Advanced
3 B2 First for Schools
4 B2 First
5 B1 Preliminary for Schools
6 B1 Preliminary
7 A2 Key for Schools
8 A2 Key
9 Educational Testing Service TOEFL iBTテスト
10※ IDP:IELTS Australia International English Language Testing System(IELTS)
(対象:「アカデミック・モジュール」)
11 一般財団法人
国際ビジネスコミュニケーション協会
TOEIC® Listening & Reading Test
および TOEIC® Speaking & Writing Tests
  株式会社ベネッセコーポレーション GTEC
12 Advanced
13 Basic
14 Core
15 CBT
16 公益財団法人日本英語検定協会 Test of English for Academic Purposes(TEAP)
17 Test of English for Academic Purposes Computer Based Test(TEAP CBT)
  実用英語技能検定(英検)
18 1級 (対象:「公開会場実施」)
19 準1級 (対象:「公開会場実施」・「1日完結型」)
20 2級 (対象:「公開会場実施」・「1日完結型」・「4技能CBT」)
21 準2級 (対象:「公開会場実施」・「1日完結型」・「4技能CBT」)
22 3級 (対象:「公開会場実施」・「1日完結型」・「4技能CBT」)
23 ブリティッシュ・カウンシル International English Language Testing System(IELTS)
(対象:「アカデミック・モジュール」)
※IDP:IELTS Australiaが実施するInternational English Language Testing System(IELTS)については、条件付きで、参加要件を満たしていると見なすことができるものと判断した。

特に注意すべき点は実用英語技能検定のうち、「従来型」の方式については、英語認定試験から外れたことです。これは、一次試験(「書く」「読む」「聞く」)の合格者のみが二次試験(「話す」)を受検できる仕組みとなっており、一次試験不合格者は二次試験を受検できないことから、「1回の試験で英語4技能のすべてを評価するものであること」を満たしていないためです。なお、「公開会場実施」「1日完結型」「4技能CBT」は「話す」以外の3技能は従来型と同様の出題形式とされていますが、「話す」は録音式(「従来型」は対面式)となります。

また、GTECは以前には「GTEC for Students」と呼ばれていたものを4技能化したもので、こちらも「話す」についてはタブレット端末に録音する方式で試験が行われます。

これらの英語認定試験では、受験生の負担や高等学校教育への影響を考慮して、高3の4月~12月の間の2回までの試験結果を使うことになっています。そして、試験結果はスコア等とCEFR(セファール:外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠)の段階別成績表示を志願大学に提供することとなります。このCEFRと各資格・検定試験との対照表も同時に発表になりましたので、表3に示します。(表をクリック(タップ)すると拡大表示します。)

表3 各資格・検定試験とCEFRとの対照表

○表中の数値は各資格・検定試験の定める試験結果のスコアを指す。スコアの記載がない欄は、各資格・検定試験において当該欄に対応する能力を有していると認定できないことを意味する。

※ケンブリッジ英語検定、実用英語技能検定及びGTECは複数の試験から構成されており、それぞれの試験がCEFRとの対照関係として測定できる能力の範囲が定められている。当該範囲を下回った場合にはCEFRの判定は行われず、当該範囲を上回った場合には当該範囲の上限に位置付けられているCEFRの判定が行われる。

※TOEIC L&R/ TOEIC S&Wについては、TOEIC S&Wのスコアを2.5倍にして合算したスコアで判定する。

※障害等のある受検生について、一部技能を免除する場合等があるが、そうした場合のCEFRとの対照関係については、各資格・検定試験実施主体において公表予定。

共通テストの英語は2024年度入試までは出題され、その間は英語認定試験と併用されます。いずれの成績を入試に利用するか、あるいは両方利用するかは各大学に任されていますが、国立大学では両方を利用することで決まっています。なお、東京大は当初英語認定試験の成績の提出は必須ですが、選考においては利用しないという方針を示していましたが、2018年4月27日に国立大学協会のガイドラインに従って、選考に利用する方針に変更しました。各大学の利用方法(共通テストと英語認定試験の配点比等)については今後発表となりますが、複雑なパターンに分かれる可能性もあり、常に最新の情報に注意を払ってください。

今後のスケジュール

2018年11月10日(土)・11日(日)には共通テストの第2回目の試行調査が行われます。特に、10日(土)には現在の高2生を対象に10万人規模で記述式問題が含まれる国語と数学の試行調査が実施予定です。また同時に、10日(土)・11日(日)の2日間をかけて、高3生を対象に本番を想定した時間割で5教科すべての教科・科目の試行調査も行われます。この試行調査の結果をもとに、さらに本番に向けて具体的な制度設計がなされるわけです。大学入試センターのホームページには、2017年度の試行調査と同様に問題や解答、実施結果などが掲載されることになっていますので、ぜひ一読いただきたいと思います。

各大学の2021年度入試における共通テスト(英語認定試験の利用方法を含む)と個別(2次)試験の概要については、今年の夏頃から発表となる大学が出てくると思われます。駿台では、ホームページ等で情報提供を行う予定ですが、みなさんも志望校からの発表には注意してください。

大学入学共通テストへの不安について

上記でも述べたように、共通テストはセンター試験の延長線上にあるものですが、それでも不安は多いと思います。そこで、その不安について分析してみましょう。

マークシート方式の問題は、出題範囲は現行のセンター試験と同じです。過去問を利用した対策などには変化はありません。解答形式が少し変わるだけと思えばいいのです。しかも、新しい解答方式は試行調査で事前に知ることができます。駿台模試をはじめとする各種模試でも予想問題が出題されますから、対策は容易です。

記述式の問題は、生徒のみなさんにとっては、中学・高校での定期考査などで慣れた解答方式ですので、恐れることは何もありません。マークミスなど学力によらないミスが生じないだけ、学力差が素直に反映される解答方式です。確かに、各大学の利用方法が現時点ではわからないという不安はありますが、学習を進める上では支障になるものは何もありません。

英語4技能資格・検定試験では、「話す」ことへの対策が大きな課題でしょう。「話す」ことについて何を評価するのか?どうやって練習し、到達度をいかに把握させるのか?まだまだ確立されたやり方がないのは事実です。しかし、現時点では全国の受験生が同一条件です。駿台では、「話す」ことへの対策についても、いろいろなメニューを生徒のみなさんに提供していきますので、高校や中学での学習に加えて、上手く活用して欲しいと思います。

以上、現時点でわかっている範囲で、高大接続改革の現状と問題点を説明してきましたが、一番大事なのは、変な情報に惑わされて、焦ったり、安易な方向に志望をランクダウンさせたりしないことです。駿台では、大学入試に対応する力を養成するためにはテクニックや必勝法ではなく、基礎を大事にして学問の本質を理解することだと考えてきました。まさしく、今回の改革はこの駿台の方針に沿った方向性が示されています。まずは、しっかりと足が地に着いた学習を継続することが大事だと肝に銘じてほしいと思います。