現在の中3生が受験する2020年度(2021年度入試)より、高大接続(大学入試)改革が実施されます。その内容について、まとめてみることにします。

※2017年9月1日現在

なぜ、今高大接続改革をおこなうのか?

今の中学生や高校生が社会の中心で活躍する数十年後には、国内的には少子高齢化による人口減少が進み、世界規模では国境というボーダーを超えるグローバル化がさらに拡大することが予想されています。また、「第4次産業革命」ともいわれる、AI(人工知能)の活用が、我々の身近な日常生活にも広がっていきます。つまり、単純な肉体労働だけでなく、知的労働も機械に取って代わられる世界がそこまで迫っているのです。

すると、学力の評価も従来の「知識、技能」を中心としたものから、人間こそが持っている「思考力、判断力、表現力」を重視したものに変化することは避けられません。また、グローバル化の進展の中では、世界共通語ともいえる英語を自由に扱うために、4技能(読む、書く、聞く、話す)をバランスよく身に付ける必要があります。さらに、外国人など多様な人々と協働して、主体的に考え、物事を成し遂げていく能力も不可欠になっていきます。

このような、社会で必要となるものの変化に対応するために、大学教育も小中学校の教育もいわゆる学生・生徒が中心となって学んでいく、いわゆる「アクティブラーニング」が主流となりつつあります。もちろん、高校教育もこういった流れを避けていくことはできないのですが、残念ながら大学入試が旧態依然としたままでは、従来の座学中心、知識・技能の習得中心の学習から脱却できません。このような背景もあって、高大接続(大学入試)改革が行われるのです。

「大きな変革の時期にあたってしまった」とネガティブにとらえるのではなく、「これからの時代に即した最新の学力評価を受けることができる」とプラス思考でとらえていただきたいと思います。

大学入学共通テストの制度設計について

現在の大学入試センター試験(以下「センター試験」)は2019年度(2020年度入試)で終わり、2020年度(2021年度入試)からは「大学入学共通テスト」(以下「共通テスト」)に変わります。下の表1は、2017年7月に文部科学省から発表された「大学入学共通テスト実施方針」をもとに、共通テストの制度設計についてまとめたものです。

表1 2020年度~2023年度
<2021年度入試~2024年度入試>(現中3~現小6)

対象 ●大学入学希望者(国公立大学必須、私立大学任意)
出題方針 ●思考力・判断力・表現力の判定機能を強化
●難易度はアップ
●選抜性が高い大学が活用できるように、各設問の難易度は広範囲に設定する
出題教科・科目 ●現行のセンター試験と変更なし(英語は2024年度入試まで出題)
マークシート式
問題の改善
●連動型複数選択問題、正解が一つに限られない問題、必要な数値や記号等をマークする問題などを導入
●採点は現行通り1点刻み
記述式問題の
導入
●「国語」、「数学」で導入、採点には「民間事業者」を活用
●結果の表示の仕方は段階別評価
●実施日は1月中旬
●マークシート式問題と記述式問題は同日日程、同一時間内実施
●2025年度入試以降は地歴公民や理科分野等でも記述式導入を検討(CBT化?)
<国語>
●記述式の出題範囲は「国語総合」(古文・漢文を除く)で行う
大問1題追加、80~120字程度の問題を含め小問3問程度
※各大学が個別選抜において利用できるように記述式問題・採点基準を提供することも検討<個別試験問題の提供
<数学>
「数学Ⅰ」及び「数学ⅠA」(出題範囲は数学Ⅰ)で記述式設問を出題
英語4技能の
評価への対応
共通テスト(英語)と認定試験(民間の英語4技能資格・検定試験)を併用>
●民間の英語4技能資格・検定試験を活用。
●学習指導要領に沿った出題かを確認し、どの試験を採用するか決定。
 (認定を受けた資格・検定試験=認定試験)
高3の4月~12月に2回まで受験可能で、結果の良い方を採用。
試験実施回数 年1回
成績の提供 ●受験生への成績提供方法は現行通りか?
●大学への成績提供は多様な情報(各科目の領域ごと、問いごとの解答状況)を提供。
提供日は現行より1週間遅れ。

なお、2024年度(2025年度入試)以降は高等学校の学習指導要領(カリキュラム)の改訂が予定されていることから、現在の小5以下の皆さんが受験する共通テストについては、2021年度に新しい実施方針が発表されることになっています。

共通テストに移行すると現在のセンター試験とは全く変わってしまうように思われている方もいるかもしれません。また、そういった報道も見られます。しかし、少なくとも現行の学習指導要領に基づいて実施される2023年度(2024年度入試)までは、現在のセンター試験をもとにして、それを改善したものと考えて下さい。したがって、過去問演習をはじめとする今までに確立されてきた対策が無効になってしまうわけでは決してありません。この部分は安心して下さい。

センター試験から大きく変わる点は、下記の3点です。

  1. 国語(現代文)と数学(数学I及び数学I・A)で記述式問題を導入する。
  2. 英語で4技能(読む、書く、聞く、話す)を評価するために、民間の英語4技能資格・検定試験を共通テストの英語と併用する。
  3. 思考力、判断力、表現力をいっそう重視した作問のためにマークシート式問題の改善を行う。(連動型複数選択問題、解答が一つでない問題、数値や記号を直接マークする問題など)

なお、マークシート式問題はセンター試験と同じ教科、科目が出題され、結果は1点刻みの得点で示されますが、新たに国語と数学に導入される記述式は段階評価とすることが検討されています。

表2 主な英語4技能資格・検定試験一覧

試験名 Cambridge English 英検 GTEC IELTS
実施団体 ケンブリッジ大学
英語検定機構
公益財団法人
日本英語検定協会
ベネッセコーポレーション
Berlitz International
ELS Educational Services
※CBT:一般財団法人進学基準研究機構(CEES)と共催
ブリティッシュ・カウンシル
公益財団法人日本英語検定協会等
受験人数 国内人数非公表
※全世界では約250万人
約339.4万人
(H28実績)
※英検Jr.、英検IBAを含む英検テストファミリー総志願者数
約94万人 約3.7万人
※全世界では290万人(H28実績)
年間回数 各レベル・提供モード(PB/CB)により異なる
各10-16回程度
2017年 計195回(世界共通)
3回
(1回次につき、
一次試験:紙3日程+CBT1日程、
二次試験:面接2日程+CBT1日程)
PBT 2回
CBT 3回
約40回
会場数 2016年度:最大12会場
2018年度中に全47都道府県で実施計画中
公開会場230都市
400会場+準会場
(海外・離島含)17,000会場
全国1,770会場
(CBT:58会場)
全国最大約90会場
成績
表示方法
CEFR、スコア(80-230)、
合格グレード併記
[それぞれ4技能別にも表示]
合否・
英検CSEスコア(0-3400)・
英検バンド併記
PBT 0-980点
CBT 0-1400点
1.0-9.0
(0.5刻み)
出題形式
実施方式
L,R,W:PB/CB
S:ペア面接
L,R,W:紙/CBT
S:面接/CBT
(*1)
PBT L,R,W:紙
S:タブレット
CBT L,R,W,S:PC
L,R,W:紙
S:面接
受験料 CPE(C2) 25,380円
CAE(C1) 22,140円
FCE(B2) 19,980円
PET(B1) 11,880円
KET(A2) 9,720円(*2)
2級:5,800円
(準会場)5,400円
準2級:5,200円
(準会場)4,800円
PBT 5,040円
CBT 9,720円
25,380円
※L=Listening、S=Speaking、R=Reading、W=Writing
*1:1-3級はL/R/W/S、4-5級はL/R/S
*2:実施試験センターにより異なることあり
試験名 TEAP/TEAPCBT TOEFL iBT TOEIC L&R TOEIC S&W
実施団体 公益財団法人日本英語検定協会 テスト作成:ETS
日本事務局:CIEE
テスト作成:ETS
日本事務局:IIBC
テスト作成:ETS
日本事務局:IIBC
受験人数 約1.4万人
(H28実績)
非公表 約250万人
(H28実績)
※TOEICプログラム
全世界約700万人
約3.2万人
(H28実績)
※TOEICプログラム
全世界約700万人
年間回数 TEAP 3回
TEAP CBT 2回
(H29実施予定)
40-45回 10回 24回
(1日2回×12回)
会場数 全国最大約35会場 全国最大86会場 全国47都道府県
最大251会場
(*4)
全国13地域
最大43会場
(*4)
成績表示方法 TEAP:80-400点
TEAP CBT:0-800点
0-120点
(4技能を各0-30点で評価)
10-990点
(L、R各5-495点)
0-400点
(S、W 各0-200点)
出題形式
実施方式
TEAP:L,R,W:紙 S:面接
TEAP CBT:
L,S,R,W:CBT
(*3)
L,S,R,W:CBT L,R:紙 S,W:CBT
受験料 6,000円 L/R
10,000円 L/R/W
15,000円 L/R/W/S
235USドル 5,725円(税込) TOEIC S&W:10,260円(税込)
TOEIC S:6,804円(税込)
(*5)
※L=Listening、S=Speaking、R=Reading、W=Writing
*3:TEAPはL/R,L/R/W、TEAP CBTはL/Rでも受験可能
*4:開催月により異なる
*5:H27年1月よりTOEIC Sのみの受験も開始

また、民間の英語4技能資格・検定試験には表2に示したように、英検、GTEC、TEAP、IELTS、TOEFLなど複数ありますが、大学入試として利用する試験を「認定試験」として、文部科学省が認定することになっています。また、受験生の負担や高等学校教育への影響を考慮して、高3の4月~12月の間の2回までの試験結果を使うことになっています。そして、試験結果はスコア等とCEFR(セファール:外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠)の段階別成績表示志願大学に提供することとなります。

なお、マークシート方式の改善内容、記述式の段階評価のやり方、具体的な認定試験名等は2017年度中(2018年3月まで)に文部科学省から発表されることになっています。また、11月には共通テストのプレテスト(試行テスト)が現在の高2生(一部高3生)対象に5万人規模で実施予定です。このプレテストの結果をもとに、より具体的な制度設計がなされるわけです。大学入試センターのホームページには、このプレテストの問題や解答、実施結果などが掲載されることになっていますので、ぜひ一読いただきたいと思います。

各大学の2021年度入試の共通テストと個別(2次)試験の概要については、文部科学省、大学入試センターからの共通テストや認定試験の詳細は制度設計が発表されてからの検討となることから、2018年の夏頃に発表となる大学が多くなると思われます。

大学入学共通テストへの不安について

上記でも述べたように、共通テストはセンター試験の延長線上にあるものですが、それでも不安は多いと思います。そこで、その不安について分析してみましょう。

マークシート方式の問題は、出題範囲は現行のセンター試験と同じです。過去問を利用した対策などには変化はありません。解答形式が少し変わるだけと思えばいいのです。しかも、新しい解答方式はプレテストで事前に知ることができるので、対策も容易です。

記述式の問題は、生徒達にとっては、中学・高校での定期考査などで慣れた解答方式ですので、恐れることは何もありません。マークミスなど学力によらないミスが生じないだけ、学力差が素直に反映される解答方式です。確かに、大学入試センターの採点処理や個別大学の利用方法が現時点ではわからないという不安はありますが、学習を進める上では支障になるものではありません。

英語4技能資格・検定試験では、「話す」ことへの対策が大きな課題でしょう。「話す」ことについて何を評価するのか?どうやって練習し、到達度をいかに把握させるのか?まだまだ確立されたやり方がないのは事実です。しかし、現時点では全国の受験生が同一条件です。駿台では、「話す」ことへの対策についても、いろいろなメニューを生徒たちに提供していきますので、高校や中学での学習に加えて、上手く活用して欲しいと思います。

以上、現時点でわかっている範囲で、高大接続改革の現状と問題点をお話ししましたが、一番大事なのは、変な情報に惑わされて、焦ったり、安易な方向に志望をランクダウンさせたりすることです。駿台では、大学入試に対応する力を養成するためにはテクニックや必勝法ではなく、基礎を大事にして学問の本質を理解することだと考えてきました。まさしく、今回の改革はこの駿台の方針に沿った方向性が示されています。まずは、しっかりと足が地に着いた学習を継続することが大事だと肝に銘じてほしいと思います。