2017年度入試
出題分析と入試対策
  一橋大学 日本史

過去の出題内容

2017年度

番号 時代 テーマ・特徴・内容
前近代 『春波楼筆記』を用いた近世の文化・外交
問1 シドッチと『西洋紀聞』の記述
問2 『解体新書』と前野良沢・杉田玄白の記述
問3 『春波楼筆記』の作者名とその業績
問4 新井白石から松平定信まで幕府の外交政策
近現代 近代の女性
問1 新婦人協会と市川房枝の記述
問2 学制とその公布年の記述
問3 「家庭婦人」と「職業婦人」の説明
問4 参政権をめぐる動向と婦人参政権が認められるまでの運動の展開
現代 アジア太平洋戦争後の経済と社会
問1 『経済白書』と経済企画庁の記述
問2 1951年に工業生産において戦前水準を超えた背景
問3 傾斜生産方式の内容
問4 金融緊急措置令の記述
問5 高度経済成長期に高等学校や大学で起きた変化

2016年度

番号 時代 テーマ・特徴・内容
前近代 法と裁判
問1 律令の法典としての内容や特徴
〔類題:2008年度Ⅰ−問1〕
問2 地方支配における郡司の役割や地位の変化
問3 御成敗式目の立法趣旨や内容、効力を持つ範囲
〔類題:2011年度Ⅰ−問4〕
〔類題:2008年度Ⅰ−問2〕
問4 相対済し令にふれながら、江戸幕府の司法政策の特徴
近代 工場法
問1 職工事情の内容
問2 工場法の問題点
問3 当時の産業構造の特徴をふまえた、政府が工場法の施行を猶予した理由
近現代 政党政治
問1 憲政党と近衛文麿の穴埋め
問2 松方財政
〔類題:2009年度Ⅱ−問2〕
〔類題:2002年度Ⅱ〕
問3 護憲三派内閣が治安維持法を成立させた目的
〔類題:1999年度Ⅱ−問1〕
問4 日本社会党が衆議院の三分の一の議席の確保を重視した理由
〔類題:2015年度Ⅲ−問4〕
〔類題:2013年度Ⅲ−問4〕
問5 細川護煕内閣によって行われた政治改革に基づく衆議院の選挙制度の変化

2015年度

番号 時代 テーマ・特徴・内容
近世 近世の災害をめぐる政治的・社会的動向
問1 大火が都市部で頻発した理由
問2 寛政の改革における飢饉・凶作対策
〔類題:2000年度Ⅰ-問3〕
〔類題:1997年度Ⅰ-問1〕
問3 世直し一揆が従来の百姓一揆と異なる点
〔類題:2001年度Ⅰ-問2〕
近代 近代の海運業
問1 日清戦争後に実施された海運業の奨励策
問2 第一次世界大戦が日本の貿易に与えた影響
〔類題:2012年度Ⅱ-問2〕
〔類題:2008年度Ⅱ-問1〕
〔類題:2005年度Ⅱ-問1〕
問3 国家総動員法の先駆けとなった経済統制法令
問4 太平洋戦争末期の船舶不足が植民地・占領地・日本本土に与えた影響
近現代 日本国憲法をめぐる諸問題
問1 日本国憲法第9条に影響を与えた不戦条約の内容と締結の背景
〔類題:2011年度Ⅲ-問1〕
〔類題:2000年度Ⅲ-問1〕
問2 日本国憲法の布石となった天皇の人間宣言の内容
問3 皇室典範における皇位継承の規定
問4 日本の「独立」以降の日本国憲法をめぐる政治的動向
〔類題:2013年度Ⅲ-問4〕
〔類題:1997年度Ⅲ-問2〕
〔類題:1994年度Ⅲ-問4〕

出題分析

①分量

一橋大学の日本史は、試験時間120分、各400字の大問3題、総字数1200字の論述問題である。

②パターン

特徴1 
大問を構成する各小問に字数制限がない
各大問は小問3~6題で構成されているが、それらの小問に原則として字数制限が設けられていない。受験生自身が各小問で問われている内容を吟味し、さらに全体のバランスを考慮して、字数配分の目安を立てることが要求されている。
特徴2 
事項・経過説明型問題と因果関係・事象比較型問題が融合されている
事項・経過説明型問題は、教科書レベルの内容を問うものが多いので、比較的解答しやすい。特に、事項説明型問題には多くの字数を費やす必要はない。しかし、因果関係・事象比較型問題の多くはレベルも高く、題意にそった答案を作成するのは、難しい作業となる。さらに、このタイプの問題には、ある程度の字数を費やす必要がある。したがって、小問の配点は前者に比べて後者の比重が高くなっていると推定される。解答にあたっては、比較的書きやすい事項・経過説明型の小問で着実に得点を重ね、因果関係・事象比較型の小問に全力を傾ける必要がある。
特徴3 
グラフ・表や史料を活用した問題が多い
この10年間で見ると、グラフ・表を使った大問が2010・12年度に、史料を使った大問は2008~17年度に作成されている。グラフ・表や史料(もちろんリード文を含めて)には、解答の内容や方向を限定し、答案作成上の重要なヒントを示すなど、大きな役割が与えられている。よって、グラフや史料を使った大問が出題されたら、それをしっかりと読み込んで、問題作成者の意図を充分に斟酌する必要がある。

③内容

一橋大学では、大問3問中2問が近現代からの出題で、近現代を重視する姿勢が明確である。

特徴1 
前近代では、近世の社会・経済の比重が大きい
前近代の大問Ⅰでは、近世の比重が大きい。過去5年間を見ると、13・15・17年度は近世のみ、14・16年度は近世を含む前近代全般、というように近世の比重が大きい。また、近世のなかでも、社会・経済に関する出題が圧倒的(2015年度は近世の飢饉、13年度は近世の身分に関する出題であった)で、政治に関する出題が少ないのも特徴的である。
特徴2 
近現代では、過去に出題した設問を、視点・論点を変えて出題した設問が多い
近現代の大問Ⅱ・Ⅲでは、過去に出題した設問を、視点・論点を変えた問題が多いというのが、一橋大学日本史の最大の特徴である。2016年度に出題された設問に限定してみても、Ⅲの問2が、問3が、問4が類題になっているなど、枚挙にいとまがない。一橋大学は、出題するテーマを限定しつつ、その全体像を把握してくることを受験生に要求している(過去問の解答例を丸暗記しろ、と要求しているのではない)。一橋大学は、「大学ならどこでもいい」という受験生ではなく、「どうしても一橋大学で学びたい」という強い意志を持ち、一橋大学に合格するための入試対策を徹底して行ってきた受験生を入学させたいと考えている。

④難易度

この数年は、以前に比べれば易化する傾向にあるといえるが、それでも、依然として難易度は高いといえるのが一橋大学の日本史である。

要因1 
バランスのとれた字数配分を各自で判断しなければならない
一般的な論述問題のように、設問ごとに字数が指定されていれば、「何をどの程度書けばいいのか」の目安を立てることができる。しかし、一橋大学の問題のように、大問ごとに400字以内という指定はあるものの、小問ごとの字数制限が設けられていない場合、受験生自らがその内容を吟味した上で、大問のなかでのバランスを考慮して解答を作成しなければならない。よって、50字単位くらいで、各小問の字数配分の目安を立てる必要がある。こうした形式が、一橋大学の論述問題を手強いものにしている一因となっている。
要因2 
細部にわたる知識や理解が求められる問題もある
内容面を見ても、長いスパンを視野に入れつつそのプロセスを論じさせたり、事象の比較をさせたりすることが求められている。また、減少傾向にあるものの、教科書レベルを超えた細部にわたる知識や理解が問われることもある。
要因3 
題意や解答の方向が明確と言えない問題もある
問題作成の精度に着目すると、出題の要求や限定が曖昧で何を書かせたいのか判断に迷う出題も見られる。2014年度にはⅢの問4で1930年代までの大学の歴史について説明させる出題があったが、問3で1930年代に政府によって大学学問の自治が侵害された滝川事件について論じさせており、これ以外にいったい何を書けばいいのかが明確ではない。
こうした曖昧な表現では、何をどう書くべきか、受験生はさぞ苦しんだことであろう。通常、論述問題を出題する大学を志望する受験生には、問題作成者に「伝わる」答案を作成するように指導する。論述問題に解答するということは、問題作成者とのコミュニケーションであるとも言う。であるならば、これと同様のことを一橋大学の問題作成者にも求めたい。「何を書かせたいのか」が明確に「伝わる」設問を作ることを。それが、論述問題を出題する大学の問題作成者の、最低限の責務ではないだろうか?

入試対策

鉄則1. 過去問を徹底的に研究する

過去に出題した設問を、視点・論点を変えて出題した設問が多いのだから、一橋大学の志望者には、過去問を徹底的に研究することが求められるだろう。ただし、これは過去問の解答例を丸暗記するということでは、断じてない。頻出テーマについて、その全体像を正確に把握するということである。一橋大学を志望する日本史選択者は、最低限でも過去20年間の問題を収集して、何が頻出テーマなのか?把握しておく必要がある。そうすれば、自分が何をしなければならないのかが、必然的に浮かび上がってくるはずである。また、逆の言い方をすれば、一橋大学は、原始・古代から順番に通史の学習を始め、近現代までが終わってから論述対策に取りかかるという「悠長な」受験勉強を学生に要求しているわけではない、ということも明らかである。

鉄則2. 教科書を中心とした学習に徹する

それでは、頻出テーマの全体像を把握するために、何をしたらいいのだろうか?
それは、教科書を徹底的に読み込むということに尽きる。入試問題の作成者が参照するのは、市販の参考書・問題集などではなく、教科書である。そして、ここ数年間の一橋大学の特徴として、教科書の内容を理解できていれば解答できる設問が、確実に増えている。教科書と格闘することから逃げないでほしい。
教科書は、順番通りに読まなくていい。頻出テーマの全体像を把握するためには、時期区分をしっかりと意識しながら、分野別に、すなわち、政治だけ、対外関係だけ、経済だけ、社会だけ、を通して読んでみよう。ある時期の政治情勢の箇所を読んでいるのであれば、それと並行して前後の時期の政治情勢とどう違っているのか、前後の時期の政治情勢とどうつながっているのか、を必ず意識しよう。そうすると、その時期の政治情勢の特徴がわかるようになるとともに、政治情勢全般の「大きな歴史的展開」が浮かび上がってくるはずである。この作業を、対外関係、経済、社会のほかの分野でも行ってみよう。そして、そののち同じ時期の各分野相互の関係に着目してみると、ある時期の全体像がつかめてくるであろう。
一冊の教科書を読みこんで、「大きな歴史的展開」を正確に把握することこそが最重要課題である。ただ、その教科書を読んでいて理解に苦しむ箇所も出てくるだろう。そんなときには、他の出版社の教科書を参考書として使ってみてほしい。現在、高校での採択率が最も高いのが山川出版社『詳説日本史B』であるが、それを使って学習しているならば、教科書をもう一冊、例えば、山川出版社『新日本史』、実教出版『日本史B』などを、参考書として使ってみてほしい。同じ箇所でも、教科書ごとの記述はかなり異なっており、それらを読んでみることは、全体像を把握するのに役立つであろう。

鉄則3. 実戦的練習に徹する

過去問の分析・検討によって頻出テーマを明らかにし、教科書を使った学習によって全体像を把握することと並行して取り組まなければならないのは、そのテーマに関する過去問を実際に解くことである。最初は、教科書を熟読しながら、時間無制限で構わない。
また、論述対策で最終的に重要なことは、「(問題作成者に)伝わる」答案を作成することである。理解していなければ書けるようにならないが、理解しているだけでは書けるようにならない。実際に過去問を解くという実戦的な練習を積まなければ、書けるようにはならない。書けるようになったら、次に、それが出題意図にそった答案かどうか、を確認しなければならない。練習を始めたばかりの段階では、自分の答案を自分で客観的に評価するのは難しいであろう。そこで、自分の答案が「(問題作成者に)伝わる」かどうか、日本史を専門とする第三者に是非コメントを求めてほしい。この作業を繰り返したのち、最終的には、自分の答案と解答例を見比べて、自分の答案を自分で客観的評価できるようになることが望ましい。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。