2017年度入試
出題分析と入試対策
  一橋大学 地理

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 設問 内容
京都議定書 1 日本企業が1980年代中頃以降のベトナムの森林増減に与えた影響(125字)
2 JI上位受入国がもつ政治的・経済的特徴からみたJI事業投資への魅力(150字)
3 ロシアの森林環境問題(125字)
鉄鋼の生産・貿易 1 世界主要国の粗鋼生産高と日本の主要仕向先別鉄鋼輸出
2 中国の鉄鋼生産急増が貿易を通じてオーストラリアに与えた影響(150字)
3 メキシコへの日本の鉄鋼輸出増加の背景と要因(150字)
4 G7先進国の企業と対比した中国の鉄鋼生産企業の「市場を歪曲する措置」の特徴(75字)
イギリスとEUの貿易 1 EU離脱後のイギリス貿易におけるイギリス連邦との歴史的つながりの有効性とEU加盟国以外の国への期待(200字)
2 ポーランドとトルコが21世紀に入ってEUとの貿易を急増させた要因(200字)

2016年度

番号 項目 設問 内容
コーヒー・カカオ・茶 1 本文・統計表の空欄補充
2   同上
3 生産地・消費地の変化(125字)
4 国内経済に占める位置(125字)
5 一次産品の問題点(75字)
EU 1 EUがめざす方向性(50字)
2 統計表の空欄補充
3 加盟国拡大による域内の変化(125字)
4 加盟国拡大による人の移動の変化(150字)
農業 1 日本の農業の問題点(150字)
2 本文・統計表の空欄補充
3 生産の変化の理由(125字)
4 農地化とその問題点(100字)

2015年度

番号 項目 設問 内容
希少金属 1 統計表の空欄補充
2 コンゴ民主共和国の交通輸送(100字)
3 ニッケルの採掘・精錬・消費(150字)
4 日本の資源輸入の対応(125字)
インド 1 国境を接する国
2 綿花栽培の条件(50字)
3 日本との貿易(75字)
4 自動車生産の特徴(150字)
5 シク教(75字)
郷土と自然保護 1 故郷への情(75字)
2 本文中の空欄補充
3 湿原とダム湖(75字)
4 足尾銅山鉱毒事件
5 自動車道建設の利益(100字)
6 郷土と観光(100字)

出題分析

分量

地理は、毎年大問3題の構成であり、試験時間は120分である。しかし、各問いあたりの字数は400字程度であること、100字前後の論述が多いこと、そして解答に一貫した論理展開を求める出題の特徴などを念頭に入れると、必ずしも余裕のある時間とはいえない。それゆえ本書や模擬試験等の問題を解く際には本番の試験時間を意識し、時間配分を把握することが大切である。

パターン

出題パターンの原則は、3問の大問とも合計でほぼ400字の論述問題である。3問の大問の中に、単語補充を中心とした客観問題が含まれることもあるが、ほとんどの場合は50字~200字の論述問題の組み合わせであり、1大問中に2~5問程度の小問が配されている。このため、普段から50~200字程度の論述練習をこなしておく必要がある。
論述の出題パターンについては、「大問全体を貫く特定のテーマについて、首尾一貫した地理的な説明を求める」という点では例年大きな変化はない。また、テーマとなる地理的諸事象の経済的な側面に注目した問題が多いことも一橋大学の特徴である。ただ年によっては政治的な側面に注目した問題が出題されることがある。地形図も出題されるが、あくまでそれをもとに経済的視点での地理空間を問うのが主題であることに注意する必要がある。

内容

一橋大学の問題を、まず出題パターンに注目して整理すると、概ね次の4つのパターンのいずれかあるいはその複合問題である。

(1)2つ、またはそれ以上の地理的事象(2地域の工業化過程、2つの都市の土地利用パターンなど)を与え、その共通点と相違点を比較検討するとともに、その背景を考察させる。
(2)特定の地理的事象や地域を取り上げ、それらの現状を与えられた資料を用いて説明させる。例えば、ある国の人口分布はなぜ変化するのか、ある地域の食糧危機はどのような理由が絡み合って起きたのか、ある地域の民族問題はなぜ紛糾(あるいは解決)したのか、などを考察させる、最近よく用いられるパターンである。
(3)地図・統計・模式図などを与え、それらが示す意味や内容を総合的に分析させる。
(4)ある事象について、立場や視点を変えた評価を求める。例えば、大国の領土政策は、周辺の小国からみた場合、どのような矛盾に満ちているか、経済のグローバル化は本当に発展途上国を豊かにするのか、高度情報化社会は本当に情報の地域間格差を是正しうるのか、観光業が発展途上国に恩恵をもたらしているのかなどである。

次に、具体的な出題テーマについては、以下のように整理することができる。

(1)出題分野は、農牧業、都市、鉱工業、人口、民族、交通、環境問題からの出題が目立つ。特に最近は、それらを、世界のボーダレス化、グローバリゼーションの視点から問うものが多いことに注目しておく必要がある。
(2)地誌では、中欧・東欧のほかアジア、アフリカ、中・南アメリカを中心とした発展途上国の出題が多く、民族問題、食糧問題、不安定な政情など、上置国境、地域間格差、南北問題など、解決が困難な地域問題を背景とした設問が目立つ。
(3)問題を解くキーとなるのは経済原理であることが多い。あまり専門的な経済知識は必要ないが、距離や時間など、地理の根本的な要素である「空間」にかかわる経済効果について、一般常識程度の内容は理解しておきたい。例えば、距離が近いと輸送や移動のコストが安い、人件費の安さが競争資源となっている発展途上国の工業では環境対策費がかけられない、政情不安定な発展途上国には先進国資本は投資を控えるなどの基本ロジックは理解しておく必要がある。
(4)上記の出題パターン(4)に対応することであるが、「相反する2つの視点」からの対比が求められる。最近の出題例では、キリスト教文化(欧米社会)対イスラム教文化、先進国対発展途上国、内陸国対沿岸国、工業国対農業国、都市対村落、白人対有色人種、中心部対周辺部、といった視点の比較が出題されている。これは、1つの地理的事象を一方的な視点からのみ評価せず、常に異なる視点から観察し、客観的な解答を求める出題者の意図を反映したものであろう。

難易度

ほとんどの設問が論述問題であり、かつ教科書・参考書そのままの出題はない難問なので、用語の暗記を中心とした学習だけでは対応できない。むしろ、高校の教科書程度の用語を把握した後は、出題された事象を説明するのに必要なキーワードの選択と、選択したキーワードを用いた構造的な説明の訓練がモノを言う。

入試対策

(1)基本的な用語の理解

客観問題が少なく、それほど細かい地理用語が必要な問題はないが、むしろ用語の背景や地域の特徴を理解する意味で、高校の教科書程度の内容はマスターしておく必要がある。また、余裕があれば、「政治・経済」の教科書のうち経済部分、「世界史」の教科書のうち、近現代史(特に今日、国境や民族をめぐる紛争が発生している地域・部分)に目を通しておくとよい。

(2)空間や経済に対する理解力の養成

一橋大学は空間をからめた経済的問題をテーマにする傾向がある。地域間の経済格差の問題であるとか、国際分業のあり方を特定の業種あるいはテーマにかかわって問うといった問題である。地理という科目は、まさに各産業(農業、水産業、林業、製造業、鉱業、サービス業等)の地理的分布を問題にするのであるから、普段の学習において、なぜその産業がそうした地理的分布になっているのか、それがどういう理由でどのように変化していったのかという視点を常に持つよう習慣づけておきたいものである。そしてその際、利点と問題点とを生産者側の視点と、地元地域の側の視点との両方向から見つめるよう心掛けておくことが効果的な対策になるはずである。

(3)統計の把握と類推力の養成

統計というのは生の数字であり、客観的であるだけに、かえって想像力がわきにくいという欠点がある。逆に、統計を見て、その背景を想像できるようになったらしめたものである。一橋大学の場合、統計は概ね3つの視点で見ることが必要である。それは、①統計による事象の分類(例えば、10か国を人口と所得から4つのグループに分ける、など)、②一定の結果に密接に関連している事象の整理(例えば、食糧危機が起きている国は、人口増加率が高い、土地生産性が低いといった共通した統計数値を示す)、③統計の並びを支配する公式の把握(例えば、上位15か国のある事象の統計の並びを見て、16か国目の数値を推定する、など)である。

(4)日常的な論述の練習

50~200字の論述に備えて、日頃からテーマを設定して文章を書く練習を行う必要がある。論述問題は、模範解答を読んで納得しているだけでは絶対に上達しない。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。