2017年度入試
出題分析と入試対策
  東京工業大学 化学

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容
1 理論 物質の状態
2 理論 反応速度
3 理論 熱化学、化学平衡
4 理論 混合気体
5 理論 気体の溶解度
6 無機 元素と単体の性質・反応
7 無機 無機物質の性質・反応
8 無機 金属イオンの系統分離
9 理論 陽イオン交換膜を用いた電気分解
10 理論 結晶格子
11 有機 炭化水素の性質・反応
12 有機 アルコールの性質・反応
13 有機 合成高分子
14 有機 油脂
15 有機 有機化合物の構造決定、アミノ酸

2016年度

番号 項目 内容
1 理論・無機 気体の単体
2 理論・無機 Cr、Mn、Feの金属化合物の反応と性質
3 理論 ギ酸、酢酸の混合水溶液の電離平衡
4 理論 直列回路の電気分解
5 理論 六方最密構造
6 理論 C60の炭素原子間の結合エネルギー
7 理論・有機 アミノ酸の等電点
8 理論 いろいろな電池の構造と反応
9 理論 一次反応の反応速度
10 理論 凝固点降下と融解熱の関係
11 有機 炭化水素の立体構造
12 有機 脂肪族炭化水素の燃焼と水素付加
13 有機 合成高分子化合物の単量体と重合体の性質と反応
14 有機 糖類の性質と反応、セルロースとその誘導体
15 有機 芳香族化合物の構造決定

2015年度

番号 項目 内容
1 理論・無機 酸塩基、酸化物
2 無機 金属および金属イオンの反応と性質
3 理論 金属の結晶格子
4 理論・無機 酸化アルミニウムの溶融塩電解
5 理論・無機 金属硫化物の溶解度積
6 理論 元素の性質
7 理論 コロイド溶液の性質
8 理論 二次反応の反応速度
9 理論 気体の平衡定数
10 理論 固体の溶解度と溶解熱
11 有機 脂肪族化合物の反応と性質
12 有機 芳香族化合物の反応と性質
13 有機 アルケンの反応と性質
14 有機 ヒドロキシ酸の縮合重合
15 有機 芳香族化合物の構造決定

出題分析

分量

1998年度より2004年度まで大問18題で定着していたが、その後、大問数が15題(2005年度)、14題(2006年度)、9題(2007・2008年度)、7題(2009年度)、6題(2010年度)と減少傾向にあった。しかしながら、大問数が減るたびに大問中の小問数が増加してきたため、分量的には減少していなかった。そして、2011年度から大問数は徐々に増加に転じた(2012年度8題、2012・2013年度9題、2014年度12題、2015~2017年度15題)。2013年度以前の数年間は、特に思考力を要する問題や複雑で面倒な計算問題が多く、有機化合物の構造決定問題の難易度も非常に高かったため、制限時間内で全問解答することは困難であった。ところが、2014年度以降は大問数が大幅に増加はしたが、小問数が急減し、さらに、問題の難易度が基本的~標準的なものばかりになったため、制限時間内での全問解答が可能になり、高得点が望めるようになってきている。

パターン

2002年度より、第Ⅰ問:理論化学、第Ⅱ問:無機化学(ただし、ふつうは理論分野に属する酸塩基・酸化還元・電気化学等を含む。また、熱化学や結晶格子は年度によって、理論で出題されたり、無機で出題されたりしている)、第Ⅲ問:有機化学のように分野別になり、それぞれの分野に関して大問が数題(3~5題)ずつ含まれる形式が定着していた。また、2006年度まではそれぞれの分野の前半が正誤問題や選択問題、後半が後述するような数値記入型の問題というふうに大問が配置されていた。
しかし、大問数が激減した2007年度から、そのパターンが一変した。各大問の中に正誤問題、選択問題、数値記入型の小問が配置されるようになり、2008年度以降は出題分野の順番も毎年変更されるようになった。

2008年度…第Ⅰ問:有機化学、第Ⅱ問:無機化学、第Ⅲ問:理論化学
2009年度…第Ⅰ問:無機化学、第Ⅱ問:理論化学、第Ⅲ問:有機化学
2010年度…第Ⅰ問:理論化学、第Ⅱ問:無機化学、第Ⅲ問:有機化学
2011年度…第Ⅰ問:無機化学、第Ⅱ問:理論化学、第Ⅲ問:有機化学
2012年度…第Ⅰ問:有機化学、第Ⅱ問:理論化学、第Ⅲ問:無機化学
2013年度…第Ⅰ問:理論化学、第Ⅱ問:無機化学、第Ⅲ問:有機化学
2014年度…第Ⅰ問:無機化学、第Ⅱ問:理論化学、第Ⅲ問:有機化学
2015年度…第Ⅰ問:無機化学、第Ⅱ問:理論化学、第Ⅲ問:有機化学
2016年度…第Ⅰ問:無機化学、第Ⅱ問:理論化学、第Ⅲ問:有機化学
2017年度…第Ⅰ問:理論化学、第Ⅱ問:無機化学、第Ⅲ問:有機化学

ただし、2014年度以降は、大問のうち複数の小問を含んでいないものが急増し、出題分野の順番こそ異なるが、2006年度以前にもどった感がある。
また、2009年度より有機化合物の構造式を書かせる問題(2017年度の場合は大問15)が、2010年度より理論計算の解答の仕方として文字式や実数を解答欄に記入させる問題(2017年度の場合には大問5)が出題されるようになった。
とにかく、年度によって出題数、出題順序、出題形式がめまぐるしく変わるのが、東工大化学の大きな特徴の1つである。ただし、ここ3年間(2015~2017年度)は、ほぼ同様な形、難易度で出題されている。

問題の特徴

《正誤問題と選択問題》
主な正誤問題・選択問題は、5つ前後の文章や選択肢の中から正答(正誤問題なら正しいものあるいは誤っているもの、選択問題なら題意に適合するもの)を1つないし2つ選び出す形式の問題で、東工大化学の大きな特徴の1つである。2012年度までは出題率が減少傾向にあったが、2013年度以降は増加し、特に2017年度の場合には大問1、2、3、6、7、8、11、12、13が正誤問題で、全大問中の60%を占めるまでになった。

《数値記入型の問題》
2013年度以前は本格的な計算問題が多かった。文章を精読し、与えられた条件をもとに計算して、答えの数値(ほとんどは有効数字2桁)だけを記入する形式の問題である。他の難関大学(例えば東大)にみられるような途中過程を記述させる問題ではないので、考え方がどんなに正しくても答えが間違っていたら得点にはならず、計算力が大きくものをいう。これも、東工大化学の大きな特徴の1つである。

出題内容

小問まで含めると問題数が非常に多いので、各分野・テーマからまんべんなく出題されている。理論・無機・有機の各分野の特徴をあげると、次のようである。

《理論化学》
「熱化学」「気体」「結晶格子」「電池・電気分解」「酸塩基・電離平衡」「反応速度・化学平衡」が頻出で、数値記入型の問題では得点差のつきやすい問題になる場合が多い。「熱化学」は、2014年度の大問6の問ⅰのような純粋な反応熱の計算問題は少なく、他の理論分野(2007・2008・2009年度は「モル計算」、2010・2017年度は「化学平衡」、2011・2015・2016年度は「希薄溶液」)と絡ませた形で出題される場合が多い。また、「気体」は、混合気体や飽和蒸気圧に関する計算問題が多く、2010年度の大問1、2012年度の大問5、2013年度の大問2(ヘンリーの法則と絡めている)のように難易度の高いものが目立つ。「結晶格子」は、2011年度の大問1、2013年度の大問4の問ⅲのように、新しい切り口で問題が提示され、それまでにいずれの大学でも問われたことのないような設問があったりする。2017年度の大問10は、面心立方格子の充填率の計算は基本的な問題であったが、セン亜鉛鉱型の充填率の計算は多少面倒な問題であった。「電池・電気分解」は、2014年度の大問4、2015年度の大問4、2016年度の大問4、2017年の大問9のようによく出題はされているが、標準的で比較的解きやすい計算問題が多い。

《無機化学》
かつては無機化学といっても「電池・電気分解」「酸塩基」などの理論化学の計算を絡めた融合問題がよく出題されたが、近年は、単純な無機物質の性質や反応に関する知識を問う問題が多くなった(2017年度では大問6、7、8)。2012年度の大問7、2013年度の大問5のように、問題文自体が非常に長く、解答に時間を要する問題も出題されてはいるが、だいたいは短文で、その文章をもとに質問されたり、その文章そのものの正誤を判定する問題として出題される。かつては「陽イオン分析」などで高校化学の範囲を超える問題が出されたこともあったが、いまは高校の教科書の範囲内で出題されている。ただし、細かな知識が問われたりする。

《有機化学》
「脂肪族化学物」「芳香族化合物」の分野から、異性体・性質・反応・合成法・分離について出題される。その中には複雑で相当な思考力や計算力を要求する計算問題が含まれる場合もある。特に、異性体の数に関する問題や構造決定問題の中に、難易度の高いものがみられる。2011年度の大問7、2012年度の大問2、3、2013年度の大問8、9はその典型例である。
「天然物」「合成高分子」に関する問題は、2012年度のように全く出題されない年度もあるが、近年は2014年度には大問11で糖類、大問12で油脂、2015年度には大問14で合成高分子、2016年度には大問13で合成高分子、大問14で糖類、2017年度には大問13で合成高分子、大問14で油脂という具合にコンスタントに出題されている。ただし、問題レベルとしては基本的ないしは標準的である。

難易度

2013年度以前は、全体として基本的な問題が少なく、数値記入型の問題は標準的ないしは応用力を必要とする問題が多く、毎年、難易度の特に高いものが数題含まれ、ここで時間を取られてしまうと命取りになった。どちらかというと、正誤問題や選択問題に比較的平易な問題がみられた。ところが、2014年度以降は、数値記入型の問題は極端に易化し、正誤問題の中に正誤の判定に苦しむようなものが多くみられるようになってきている(2017年度は特にその傾向が顕著であった)。

入試対策

東工大の化学はどんな問題にも対応できる思考力も要求されるので、ここでは、入試本番までの学習法や心構えについて記すことにする。

《通常時の学習について》

ただ漫然と学校の授業を受けていたり教科書を読んでいるだけの「受身の学習」ではなく、自ら進んで、よく理解できていない内容や疑問点について、じっくりと考えてみたり、徹底的に調べたりして解決する「自発的な学習」が必要となってくる。物事を本質から理解せずにあやふやな知識しかもっていないと、正誤問題や選択問題で足をすくわれることになる。出題される可能性が低くなってきてはいるが、難解で複雑な計算問題を解くにあたっては、正答にいたるまでのプロセスを大切にし、どのようにすれば合理的で確実に解けるかを、徹底的に探求してほしい。また、東工大の場合、途中の計算過程は得点には全くならないので、普段から電卓などは使わずに手計算で正確に速く解く訓練も十分に積んでおいてほしい。

《入試直前の学習について》

これまで述べてきたように、東工大化学は独特である。したがって、過去問は十分に研究しておきたい(特に正誤問題、選択問題には「慣れ」が必要である)。しかしながら、化学の力が十分についていない段階で過去問をいきなり解いてみても、特に2013年度以前の問題は歯が立たないものが多い。そこで、過去問を本格的に解くのは、入試日の1、2ヶ月前あたりから集中的におこなった方がより効率的である。その際、取りこぼしをなくし効率よく得点する訓練を、受験日までにしっかり積んでおいてほしい。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。