2018年度入試
出題分析と入試対策
  東京工業大学 数学

過去の出題内容

2018年度

番号 内容
1 3つの2次方程式の虚数解すべてが複素数平面上で同一円周上にある条件
2 3つの未知数を含む1次不定方程式の整数解
3 指数関数と三角関数を含む方程式の解の総和についての極限
4 楕円柱に含まれる体積最大の回転体
5 立方体の辺上を移動する点についての確率漸化式

2017年度

番号 内容
1 約数についてのある条件を満たす正の整数
2 定積分で表された関数の最大値と最小値
3 長方形をある直線で折り返したとき、もとの長方形からはみ出る部分の面積、およびその面積が最大となる条件
4 確率漸化式、条件付き確率とその極限
5 4次方程式のすべての解が複素数平面内のある図形上にあるための必要十分条件

2016年度

番号 内容
1 定点と放物線上を動く点との距離の最小値
2 正三角形の各辺上に頂点をもつ三角形の面積の最小値
3 平面上に置かれた2球に外接する球の平面との接点の軌跡
4 (n-1)! がnで割り切れるようなnに関する証明問題
5 三角関数で媒介変数表示された曲線と座標軸の囲む面積

出題分析

分量

2011年度までは「150分で4題」の出題が続いたが、2012年度は「180分で6題」であり、2013年度からは「180分で5題」という出題が続いている。「180分で5題」ということは、1題あたり36分の時間がかけられることになる。他の主な大学は1題あたり20~30分であるから、試験時間にはかなり余裕があると言えるだろう。

パターン

全問が記述式である。以前は、(1)、(2)などの小設問に分かれていない問題文の短い出題が東工大数学の特徴の1つであった。2012年の6、2013年の34、2017年の12にこのような出題がある。しかし、今年も含め、近年は小設問に分かれている問題だけであることも多い。

内容

東工大の入試選抜要項によると、『数学』の試験内容は以下の通りである。

◎「数学Ⅰ」、「数学A」、「数学Ⅱ」、「数学B(数列、ベクトル)」、「数学Ⅲ」を、その総合問題や応用問題を含めて、『数学』として出題する。

試験時間が180分になり、配点が300点に変更となった2012年以降の出題傾向について記しておく。

①数学Ⅲ、特に極限、微分、積分の出題が多い。今年も3で微分と極限、4で積分が出題された。2016年は数学Ⅲが5のみという異例の出題であったが、それ以外の年は今年と同様で、極限、微分、積分の問題が出題されている。難易度は易しいもの(例えば2016年5)から難しいもの(例えば2012年3)まで、様々である。
②整数も2012年以降、毎年出題されている。極端な難問はないが、典型問題はなく、毎年、目新しい問題が出題される。その場で考える力が要求されている。
③確率は2015年を除いて毎年出題されている。自然数nに関する確率だけでなく、さいころを3個投げる(2012年1(2))、6個投げる(2013年1(2))、3回投げる(2016年2)といった具体的な出題も多い。また、確率漸化式は今年以外にも2014年と2017年に出題されている。
④他の理系大学と比べると、3次関数や4次関数などの微分積分(2012年3、2014年5、2016年1)、すなわち数学Ⅱの微分積分のような出題が多いことにも注意しておきたい。
⑤新課程3年目となる昨年は、初めて条件付き確率と複素数平面が出題された。このうち、複素数平面は今年も出題された。今後も注意が必要である。
⑥2016年4と2017年2の類似問題が、2007年と2011年のAO試験(当時のAO試験は数学だけで合否を決めるものであった。)にある。

難易度

2012年以降、年々易しくなっている印象であったが、2017年に質、量ともに難化し、今年も昨年並みの難しさであった。今年も難問という程の問題はないが、典型問題が少なく、すべて標準からやや難レベルの問題で構成されている。ただし、昨年と比べると作業量は少し減った印象である。
易しい問題が多く出題されたときは、それらの問題でミスをしないことが大事である。なぜなら、多くの受験生が得点しているところで、自分だけ失点することになるからである。一方、難しい問題が多く出題されたときは、たとえ完答できる問題がなかったとしても、少しでも点になりそうな所を探して、より正解に近づくことが大事である。
2018年の5題を見ると、どの問題も完答することは容易ではないが、すべての大問が小設問に分かれているため、(1)だけを得点するなどしてある程度の点をかき集めることは可能であろう。さらに、その上で1題でも多く完答する、または完答に近づくことが大事になる。以下では、各大問毎の難易度とポイントに触れておく。
1は昨年に引き続き、方程式の解を複素数平面上で考察する問題である。昨年の5よりやや難しく感じたかもしれないが、難問ではない。演習を積んで、複素数平面で考えることに慣れていれば、完答も可能である。2は最も完答しやすい問題と思われるが、解き方を覚えるだけの勉強を積んできた人には完答は難しかったかもしれない。2の解説も参考にして、「必要条件で絞り込んでいく」というアプローチを学んでおくとよい。3の(2)は東工大が伝統的に出題している、「自ら評価する不等式を作り、はさみうちの原理で極限を求める問題」である。しかし、本問は評価がかなり緩くても解けてしまうので、この手の対策をしっかり積んだか否かで大きな差が付いただろう。4の(1)は簡単であるが、それが(2)の絶妙な誘導になっている。そこに気づくのは容易ではないが、様々な求積問題に数多く触れておくことで、誘導に乗れるようになるだろう。5は一見よくある問題に見えるし、誘導も付いているので、これは完答できると感じた人も多かっただろう。しかし、実際には、(1)から(2)、(2)から(3)の段差は意外に高く、時間に追われた状態で本問に取り掛かると力を出し切れずに時間切れになってしまったかもしれない。

入試対策

内容のところで述べたように、出題範囲は偏っているように感じるかもしれない。もちろん、実際に偏りはあり、頻出分野の対策は大事である。しかし、2015年のように、確率の代わりにベクトルが出題されたこともある。数列のように極限、微分、積分、整数、確率などと融合されて出題される分野もある。さらに、2016年のように、数学Ⅲの出題が極端に少ないこともある。このような例を見れば、分野を絞った学習が危険であることはわかるだろう。まずは、全分野を基本から満遍なく学習し、その後、頻出分野を中心とした演習をしていくのがよいだろう。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。