2017年度入試
出題分析と入試対策
  北海道大学 国語

過去の出題内容

2017年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
書き取り(7箇所)、傍線部説明(25字)、理由説明(50字)、傍線部内容説明(80字)、全体の趣旨を踏まえた上での傍線部内容説明(120字) 香川雅信
『江戸の妖怪革命』
現代文
(評論)
同じ段落の言葉を用いて、筆者の考えを説明(40字)、傍線部の説明箇所の抜き出し(20字)、指示語の内容を明らかにし、傍線部の内容説明(60字)、「何をどのようにすることだと考えられるか」傍線部説明(30字)、筆者がリスク論をどのように問題視しているか説明(90字) 金森修
『知識の政治学〈真理の生産〉はいかにして行われるか』
古文
(中世楽書)
現代語訳(3箇所)、指示内容説明(傍線部の指し示す発言の内容を説明する)(20字)、理由説明(行動の理由を説明する)(60字)、心情説明(人物に対する評価の理由を説明する)(60字) 隆円
『文机談』
漢文
(随筆)
重要語の読み、書き下し、現代語訳、理由説明(75字) 王心斎
「鰍鱔賦」

2016年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
書き取り(7箇所)、理由説明(30字)、傍線部説明(40字)、対比されているものそれぞれの特徴説明(80字)、日本のコミュニケーション問題について筆者の考えを趣旨を踏まえて説明(100字) 平田オリザ
『わかりあえないことから―コミュニケーション能力とは何か』
現代文
(評論)
具体例に即して傍線部を説明(60字)、傍線部説明(75字)、出来事としての芸術作品について具体例の歌に即して説明(60字)、芸術作品の創造について筆者の考えを趣旨を踏まえて説明(90字) 小林道憲
『芸術学事始め』
古文
(中古随筆)
現代語訳(3箇所)、文脈把握(傍線部の心情が反映された箇所を抜き出す)(20字)、理由説明(評判となった発言の面白さを考える)(50字)、心情説明(状況から発言に込められた心境を説明する)(40字) 清少納言
『枕草子』
漢文
(随筆)
重要語の読み、書き下し、現代語訳(指示語の内容を含む)、内容説明(75字) 蘇軾
「書東皐子伝後」

2015年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
書き取り(7箇所)、指示内容説明(30字)、内容の具体的説明(50字)、理由説明(50字)、趣旨をふまえた「死物化」の意味説明(100字) 中村桂子
『科学者が人間であること』
現代文
(評論)
傍線部説明(40字)、具体的説明箇所の抜き出し(30字)、「アナログ革命」による芸術の変容の説明(40字)、「デジタル革命」による「便利さ」の説明(80字)、「デジタル革命」による「失」を本文の内容に即して説明(80字) 外岡秀俊
「三度目の情報革命と本」
古文
(中古歌学)
現代語訳(2箇所)、文脈把握(和歌に含まれる語の内容を後の叙述に即して考える)(50字)、文脈把握(比喩の内容を説明した部分を探してまとめる)(字数制限なし)、理由説明(傍線部の内容を文脈に即して具体化する)(60字) 藤原清輔
『奥義抄』
漢文
(随筆)
重要語の読み、書き下し、現代語訳、指示語の内容、内容説明(75字) 唐庚
「古硯銘」

出題分析

傾向

《現代文》
1 問題文の長さについて
問題一はおよそ2550字、問題二はおよそ3100字である。近年の北大入試現代文(およそ3000字前後)から見ると、平均的な長さと考えられる。

2 設問について
昨年度は一の設問数が減少し4問だったが、今年度は一・二ともに例年通り設問数は5問であった。抜き出しの問題が復活し、指示語の内容を明らかにしながら傍線部を説明する設問等、北大で頻出の設問形式である。例年出題される「文章全体の趣旨をふまえて」という条件つきの設問はなかったが、「変容の背景も含めて」傍線部を説明する設問は、文章全体の趣旨をふまえねばならず例年同様の出題だったと言える。また、北大で長く続いていたが昨年度出題されなかった120字の記述の設問が復活した。
「同じ段落の言葉を用いて」という条件付きで傍線部を説明する設問は、過去出題されている「本文の言葉を用いて」「具体的に」という条件付きで内容や理由を説明させる設問同様、設問を注意深く読み、何をどのように答えるのか意識する必要がある。日頃の練習が大切である。
記述(抜き出しの設問は除く)の解答字数については以下の通りである。合計495字で昨年度より40字減少してはいるが、高度な記述力を大学が求めていることに変わりはない。
問題一
10年度:30・60・120(計210字)
11年度:35・35・70・70(計210字)
12年度:60・40・60・50(計210字)
13年度:30・50・50・100(計230字)
14年度:30・30・100・80(計240字)
15年度:30・50・50・100(計230字)
16年度:30・40・80・100(計250字)
17年度:25・50・80・120(計275字)
問題二
10年度:40・60・20・50・120(計290字)
11年度:25・60・60・120(計265字)
12年度:30・40・25・40・120(計255字)
13年度:50・40・30・60・120(計300字)
14年度:40・30・60・25・120(計275字)
15年度:40・40・80・80(計240字)
16年度:60・75・60・90(計285字)
17年度:40・60・30・90(計220字)

3 難易度について
今年度の問題は一、二ともにやや易化したと考えられる。どちらも評論文であった。例年通り一見読みやすくはあるが、解答に際し「何を書いたらいいのかわからない」と受験生が悩む設問が出題された。北大が受験生に質の高い力を求めての出題と推察され、学力差があらわれる問題といえる。記述の解答字数は昨年より減少したが、120字の設問等、日頃記述の練習が十分ではない受験生にとっては厳しいものであっただろう。筆者の主張と問いの関係を考えず傍線部の前後から解答を導こうとしたり、出題の意図を考えず言葉をつなぎあわせるだけでは、得点につながらない危険性がある。

4 問題の主題について
問題一は、香川雅信『江戸の妖怪革命』からの出題であった。江戸時代から近現代にかけて、妖怪たちに対する日本人の意識変化を論じた文化論である。
問題二は、金森修『知識の政治学〈真理の生産〉はいかにして行われるか』からの出題であった。近代の技術的世界におけるリスク論の問題点を論じた科学哲学論である。
近年北大では、問題文のジャンルが多岐に渡っている。日頃からあらゆるジャンルに関心を持ち、苦手なジャンルを作らないことが大切である。

《古文》
4年ぶりに中世の文章からの出題であった。素材文の長さは700字を超える程度で、昨年度より若干長くなっている。琵琶の名手であった藤原孝道・孝時父子の間で行われた秘儀伝授にまつわる事情を、孝時の芸の伝承にかける思いや、母の息子にかける思いを交えつつ語った文章で、中世の芸能の伝承のあり方についての理解があれば、それほど読みにくい文章ではなかったと思われる。設問の分量に関しては、昨年度と少し変化して、現代語訳の問題(3題)、記述式の説明問題が3題(合計140字)で、記述量は若干増加した。説明型の設問は、制限字数内でまとめるのが難しいのは例年と変わらないが、状況が読み取れていれば、何を書くかで悩むことはなく、全体としては昨年度よりさらに解きやすくなったという印象である。
問題の性格に関しては例年の傾向が維持されている。すなわち、文学史などについての背景知識をふまえて、本文を正確に現代語訳・解釈し、話の仕組み、論の展開や主題を把握した上で、読解の成果をきちんと文章化する力があるかどうかを見る、というのが北大の古文の基本的なコンセプトである。本格的な古文の学習をどれだけ積んだかが問われているのである。また、内容を吟味し、情報を取捨選択して記述答案を作成するのには、かなりの手際が必要であり、あわせて情報処理の能力も試されている。付け焼き刃の受験テクニックで高得点が出るような問題ではない。

《漢文》
明代の思想家・王心斎が、鱔(ウナギの一種)を救う鰍(ドジョウ)の有様を見て天下を救う志を抱いたことを語った文章。筆者が感慨を述べる随筆の出題は三年連続である。
設問は、例年すべて記述式である。今年度の設問は以下の通り。
問一 重要語の読み(3問)
基本的な語彙の読みが問われているが、文脈から読みを決定する必要がある語句が含まれている。
問二 書き下し
ひらがなのみ、歴史的かなづかいによる書き下し。この形の設問は毎年必ず出題される。やはり文脈から読みを決定する語句を含んでいる。
問三 現代語訳
送りがなに着目して解釈を決定する必要がある。
問四 理由説明(字数制限75字)
字数制限のある記述問題も、毎年必ず出題される。対比や対句に着目して「道人」に託された筆者の考えを読み取る。

入試対策

《現代文》

北大は学生に日頃から物事に関心を持ち論理的な思考をすることを求めている。したがって受験生もそれが試されているわけであり、入試問題を解くためには急場しのぎの解法のテクニックではなく、客観的に論理的に筆者の主張を読みとる力が必要である。また、何が問われているのかを正確に把握し、問いと筆者の主張を結びつけ的確に表現する力も必要になってくる。
客観的に主張を読みとる力は短期間で身につくものではない。本番でどのような文章が出されるかわからないのだから、あらゆる文章に対処できなくてはならない。したがって「なんとなくわかった」という読みをするのではなく、「構造を理解し(対比関係、例等を利用する)全体の主張を理解する」ために、全ての文章をじっくり読む練習が必要である。自分が主張を読みとることができたかどうかは、要約ができるかどうかで判断可能であろう。文の構造にしたがって読みとったことを、どのような展開かがわかるように、接続詞などを補いながら前から順につなげていくという形でもまずは十分なので、要約をすることをすすめる。また、問いは筆者の主張を読みとることができているかどうかを問うのであるから、問いと筆者の主張の関係を考えなければならない。自分で書いた要約の中のどの部分が問われているか、あるいは、問いは全体の中のどのような位置づけかを考え(もちろんどこか1箇所に答えがまとめられているわけではないので全体を見る)、解答の柱を立てていく練習をする必要がある。
解答する際には的確な表現が求められる。問いの条件として「具体的に」、「本文の言葉を使って」等がある場合は出題者が何を求めているのかを考えなければならない。「どういうことか」「なぜか」と単に問われている問いとの違いを意識し「具体例に沿って書く」べきか「わかりやすく説明」すべきか等、過去問を使いながら練習をするとよいであろう。また「自分で考えていることが文章にできない」という受験生が多くみられるが、これもまた日頃の学習態度、文章への意識、読書量が表われているといえよう。適切な指導者に添削指導をしてもらいながら、少しずつ書く力をつけていかねばならない。
高等学校の生徒は教科書を使って、予備校生はテキストを使い、少なくとも入試の1年前から学習計画を立てて取り組むべきである。まずは教科書、テキストにより基礎力をつけ、それから過去の問題を使って実力をつけていくという地道な努力をする以外はない。繰り返しになるが、まずやるべきことは解法のテクニックを身につけることではなく、客観的に主張を読みとる力を養成することである。北大が求める学生は高い質の学力を持った生徒であることを意識し、それに応えるべく日々努力を積み重ねなければ合格はない。

《古文》

「傾向」の所で述べたとおり、まず本格的な古文の学習を積むことである。

本格的な古文の学習とは、
① 文法・語法、重要語句、文学史・古典常識・思想的背景などの知識を身につける。
② 正しく現代語訳・解釈する練習を積む。
③ 文章の主題を読み取りながら、古文の描く世界についての理解を深める。

ということに尽きる。本年度は中世の作品からの出題であったが、北大では中古から近世にかけての幅広い分野の文章が出題される。様々な時代・ジャンルの文章に触れ、それぞれの文章に即して①~③の学習をしていきたい。
その上で、北大の傾向に即した答案作成の能力を養っていくことである。まず、普段から学習した文章の現代語訳を書いてみるというのが、実は記述答案作成の大切な練習となること知っておいてほしい。答案に用いる用語の使い方、文の論理性、係り受けなどについての感覚を磨くことにつながるからである。学んだ文学史・古典常識・思想的背景などの知識を文章化してまとめておく習慣をつけるのも有効である。これを核として内容をまとめるというタイプの記述がしばしば出題されるからである。また、学習した文章を字数制限(100~150字程度)を決めて要約をしたり、北大の最後の問題の制限字数(40~80字程度)にあわせて人物の行動や心情をまとめたりする練習を普段から積んでおくことである(添削指導を受けるのが理想)。その上で、過去問や対策問題集の問題を、制限時間を決めて解く練習を重ねるとよい。

《漢文》

近年は逸話や物語だけではなく、随筆・説話・寓話など、教訓や筆者の考えを伝える文章が出題されることが多くなっている。したがって、論説的な文章の読解を練習しておく必要がある。設問においては、重要語の読み、書き下し、訳、内容説明、理由説明、字数を制限した記述など、例年ほぼ同じパターンで出題されている。よって、北大の過去問を解くことが最も効果的な入試対策である。もちろん漫然と過去問を解いても対策にはならない。北大漢文の特徴を理解し、次のことに留意する。
まず、基本的句形および重要語の知識を完全にしておくこと。特に読みについては、 歴史的かなづかいを確認しておくこと。また、文脈を考慮して書き下しや訳ができるように練習する必要がある。さらに、訓読みや熟語など、漢字の語彙力を養っておくことが重要である。
続いて、長文になじんでおくこと。限られた時間に200字以上の文章を読みこなす訓練が必要である。読む際には、文脈を意識し、主語や指示語の内容に常に気を配ること。また、随筆・説話・寓話においては、対比や対句などの論理的構造に注意して筆者の主張を読み取る練習をすることが必要である。
以上の学習を十分に積み、なお余力があれば、北大と出題傾向が似ており(2006年度には両大学で同じ問題文が出題されている)、北大よりも論説的な文章が出題されることが多い東北大の過去問を解いてみるとよいだろう。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。