2017年度入試
出題分析と入試対策
  北海道大学 世界史

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容 形式
1 アリストテレスと国制および中世の学問 短答式の記述問題・論述問題ともにほぼ標準的なレベル。「僭主が出現した背景」「スパルタの国制の特徴」「リキニウス・セクスティウス法の政治的意義」「元首政の特質」「12世紀ルネサンス」などは、それなりに書けるだろう。政治制度や文化史から多く出題されているが頻出のテーマなので、対策をとっていればとりこぼしなくできたはず。 記述・論述
(1行×1
2行×2
3行×2)
2 ヨーロッパの森林と人間の営み 記述問題は空欄補充も含め基本的な問題。論述問題もほぼ標準的なレベルであり、「三圃制の内容」「開墾運動の特徴」「重商主義の説明」「新大陸の銀が世界経済に与えた影響」は頻出のテーマ。「アシエンダ制の特徴」は、一部の教科書では欄外に名称のみの記述しか見当たらないが、名称があったらその内容も普段から調べておく必要あり。「インドでの鉄道建設の歴史的意義」は、設問にある「経済史的な観点から」をヒントに、イギリスのインドへの経済的進出の様子を念頭に置けば書けるだろう。 記述・論述
(2行×5
3行×1)
3 近現代の中ロ関係 記述問題は空欄補充も含め基本的な問題。論述問題も標準的なレベルで、「ネルチンスク条約の画期性」「アイグン条約・北京条約の内容」「清朝にとっての中国東北部の意味」「モンゴル地域に対する統治制度の特徴」「ソ連末期の改革の内容」はそれなりに書けただろう。ただ、「それなりに書けた」では心もとない。これを「しっかり書けた」にするためには、日頃から文字にしてまとめていく地道な練習をすることで、経験値を上げていくしか解決方法はない。 記述・論述
(1行×1
2行×4)

2016年度

番号 項目 内容 形式
1 宋代の政治・社会経済史 記述問題は空欄補充も含めごく基本的な問題。論述問題もほぼ標準的なレベルであり、「契丹の文化的特質」「澶淵の盟の内容」「宋代の貨幣の流通」「『蘇湖熟すれば天下足る』の農業的・社会的状況」などは、一定レベルまでは書けるだろう。「徽宗の文化面での役割」については、文化史を当時の社会と結びつけて学習していたかどうかで出来に差がつく部分。文化史関連の論述が2問あったため、学習状況によっては大きな差がでる。 記述・論述
(2行×4
3行×1)
2 イスファハーンの歴史 短答式の記述問題・論述問題ともにほぼ標準的なレベル。「ゾロアスター教の特徴」「ユグノー戦争の経緯」「カピチュレーションの内容」「ムガル朝の衰退の経緯」は頻出の内容。「経緯」となっている場合は、意義や影響は必要ないので、そのなかで論述が3行、5行となったときに、いかに無駄な表現をなくし、必要な要素を盛り込めるか。普段から意識的に教科書を読みまとめていたかが問われる。 記述・論述
(1行×1
2行×1
3行×1
5行×1)
3 戦間期の国際関係 短答式の記述問題は基本レベル。論述問題も標準的なレベルで、「フサイン・マクマホン協定の内容」「五・四運動の経緯」「国際連盟の問題点」「ブロック経済政策の説明」は頻出の内容。「ルール占領の背景」については、経緯は書けても「背景」でとまどった受験生も多いのでは。しかしこれも意識して教科書を読むことを心がけていれば、しっかり目に入ってくる。時代を意識し、横のつながりを考える訓練を普段から実践していれば、難しくない。 記述・論述
(1行×1
2行×3
3行×1)

2015年度

番号 項目 内容 形式
1 地中海関係史
(古代~近代)
短答式の記述問題・論述問題ともに、ほぼ標準的なレベルであるが、設問は地中海周辺諸国にとどまらず、キエフ公国、西アフリカのムスリム国家、ブルガール人の歴史など、多岐にわたっている。「ブルガール人の歴史」の3行論述は、周辺地域史の対策をとっていたか否かで差がついた部分であろう。 記述・論述
(3行×3
1行×2)
2 ローマ教皇の歴史 短答式の記述問題はすべて標準的なレベルであるが、今年はダンテなどを問うた文化史は、政治史と絡めて覚えておくと間違いがない。論述問題は、「叙任権闘争にいたった理由」「大憲章承認にいたる経緯」「教皇権の衰退」「『ピピンの寄進』の歴史的背景」「第一次世界大戦時のイタリア」などの頻出問題が出題された。 記述・論述
(3行×2
2行×3)
3 英仏のアジア進出 「18~19世紀前半にかけてのイギリスの清朝との貿易問題」「清仏戦争の原因と結果」「イギリスのインド徴税制度」「インド大反乱後のイギリスのインド支配」など近代アジア史で頻出のインド・中国に関する論述問題が出題された。これらは出題頻度の高い標準的な問題である。教科書をしっかり読んで理解していれば、できない問題はないということを実感してほしい。 記述・論述
(3行×2
2行×2)

出題分析・入試対策

年度 論述の設問数 総字数
04 4行×1 3行×5 2行×4 1行×2 約870
05 3行×5 2行×4 1行×2 約750
06 3行×4 2行×7 1行×3 約870
07 3行×5 2行×1 1行×1 約540
08 3行×5 2行×6 1行×1 約840
09 5行×1 4行×1 3行×3 2行×3 1行×7 約930
10 4行×2 3行×5 2行×2 1行×1 約840
11 3行×6 2行×4 1行×1 約810
12 4行×1 3行×3 2行×8 1行×1 約900
13 5行×1 4行×1 3行×3 2行×5 1行×2 約900
14 3行×7 2行×5 1行×3 約1,020
15 3行×7 2行×5 1行×2 約990
16 5行×1 3行×3 2行×8 1行×2 約960
17 3行×3 2行×11 1行×2 約990
2010年以降は大問3題で定着している。論述の形式は例年通り字数制限ではなく、行数指定である。1行指定も含めると、17年は16題・計33行であり、設問数・行数ともほぼ昨年並である。
論述問題1題あたりの最大字数に目を移せば、他の国立大学でよく見られるような300字、400字あるいはそれを超える長大な論述はなく、最大でも5行(150字程度)である。
100字程度の字数・10~15題程度の問題で教科書レベルの重要なテーマを受験生に幅広く問いかける傾向といえる。標準的な論述問題を迅速・的確に克服できるか否かが北大合格のカギとなる。17年は鉄道建設の意義を論ずるという、頭を使って広い範囲からのアウトプットを要する問題が見られたが、こうした一部を除けば、他の論述問題は全て標準的である。
06年に配点が増加して150点となってからは単純記述に比べ論述の比重が高まり、単純記述は08年の34題、09年の30題、10年の37題、11年の32題、12年の30題、13年の31題、14年の23題、15年の30題、16年の29題、17年の26題と、30題前後で推移している。単純記述は、そのほとんどが基本問題から出題されているので、確実におさえて得点を重ねることが前提である。
例年戦後史を含む20世紀史の出題が複数あるので、対策が必要である。17年もペレストロイカや中国現代史からの出題があった。07年の国際平和機構の問題や08年の近現代のラテンアメリカ史、09年のキューバ危機や12年のベトナム戦争などは入試では頻出事項なので今後も注意が必要である。

出題分野と地域の特徴

【西洋】
中世西欧・近現代欧米史の比重が高く、例年1題は確実に出題され、続いて多いのが古代ギリシア・ローマ史である。17年は第1問と第2問で古代~近世の学問や社会が、16年は第3問で戦間期の歴史、15年は第1問と第2問で地中海史とローマ教皇の歴史、14年は近代の大西洋をめぐる歴史、13年は近現代の「内戦」の歴史、12年はキリスト教の歴史、10年はウィーンの歴史、09年は10世紀から18世紀後半のフランス史、08年は古代地中海世界(ギリシア・ローマ)の対外戦争、07年は11世紀から16世紀までのキリスト教関係史(地図問題含む)、06年は中世から17世紀のイギリス史、05年はフランク王国から神聖ローマ帝国史、04年は第1問・第2問で中世の民族移動・近代の移民史という類似したテーマが出題された。また北大世界史では、ドナウ川流域の歴史、コンスタンティノープル・ビザンツ帝国の歴史、バルカン半島の歴史など、東欧の地域史からの出題もよく見られ、15年の第1問や11年の第2問でブルガール人の歴史が、07年の第1問でビザンツ帝国を滅亡させた国家の名称、第2問の地図問題でコンスタンティノープルの位置が問われている。04年では第1問で東欧の民族移動を問う問題があった。アメリカ史も、近世から戦後史に至るまでの幅広い範囲から例年出題されており、ヨーロッパ史や時にアジア史と絡めた問題も多い。その他、04年の第2問・オーストラリアの移民史は北大では珍しい。契約移民をテーマとする論述は各大学でも頻出のテーマであるため、ネットワーク論などを含め、学習を深めておきたい。社会経済史に関しても17年の第2問が森林と開拓をテーマとしたまさに社会経済史であり、過去には中世~近世ヨーロッパの経済史やイギリスの産業革命史・資本主義の発達史といったテーマが出題されており、09年はジャガイモからみるヨーロッパ史が出題された。

【中国・東アジア】
北大では例年、中国を中心とした東アジア史1題は指定席となっているが、15年は第3問で英仏のアジア進出と絡めて、11年は第2問・第3問でもヨーロッパ史と絡めて出題された。07年の第3問ではアヘン戦争以前のイギリスのアジアにおける三角貿易や冊封体制の論述が出題された。その他、論述問題は08年の第3問では近現代のアジア民族運動をテーマとし、太平天国の乱・日清戦争後の下関条約の内容・戊戌の変法の結果とその後の政治改革が出題され、09年の第4問は明・清の社会経済史が出題された。10年の第2問で羈縻政策・宋の対金政策などが出題され、11年の第2問で漢の社会史、第3問で明の経済史が出題されているので、常に論述を意識した学習をしておくことを勧める。例年、北大の中国史関係の論述問題はオーソドックスなテーマだが、簡潔にまとめることが意外に難しい。受験生としては満遍なく教科書に目を通し、基本事項の内容・意義を理解することが重要である。また、通史的な出題も見られ、12年は古代~現代に至る北京の歴史が、13年は秦~現代に至る思想統制の問題が、14年も「人治」をテーマとする古代~現代に至る政治史が出題された。このような出題は以前にもあり、2000年は北宋~18世紀の清代、01年は清朝末期~辛亥革命直後の激動期、02年は清朝の建国から19世紀初めまでの政治・社会・軍制・文化・宗教の幅広い出題、03年は、土地所有というテーマ史の形を取りながら、古代~文化大革命まで、政治史・社会経済史・文化史に幅広く踏み込んだ問題が出された。また先述した02年には清朝の軍制と社会制度、さらにその変遷を問うユニークな出題があり、03年の第4問、04年の第4問のような中国の制度史・社会経済史も過去、数度出題された。05年の文化史、09年の税制史などもあり、政治史に偏らない通史的な学習が必要であろう。また現代史以外の東南アジア史に関してはあまり出題例がなかったが、04年には中国・ヴェトナムの歴史的関係をテーマとする設問が出題されたほか、02年の第2問で、ツングース系女真族出身の清朝の八旗制を問うたように、今後も中国史とその周辺地域が絡んだ出題には注意したい。近年、11年の第3問で絹織物の産地、13年の第1問で唐代の国際海港都市など都市名を答えさせる問題が出題されたが、混乱しやすいのでこれらは時代ごとにしっかり整理しておく必要があるだろう。

【内陸アジア・西アジア】
受験生にとっては盲点になりがちな内陸アジア・西アジアの民族史の出題もかなり多い。07年には、7世紀から11世紀までのイスラーム史が出題された。08年はオスマン朝のヨーロッパ進出がドイツに与えた影響やオスマン朝とサファヴィー朝の対立などが出題された。09年はインド洋を中心とする交易史が出題された。ムスリム商人のアフリカ東海岸の交易やスワヒリ語など入試では頻出である。10年はトルキスタンを舞台とする問題が第2問に出題された。中央アジアのイスラーム化とトルコ人の進出というテーマは入試でも重要なポイントである。論述問題については、11年においてはイクター制の説明や19世紀末のマフディー派の抵抗運動の説明が、12年にはミッレトやカピチュレーションの説明が、13年にはバグダードを舞台としたオリエント・イスラーム史の中で、スンナ派とシーア派の教義の基本的相違の説明が求められた。14年にはイブン=バットゥータの旅行をテーマとした問題の中で、スーフィズムと絡めたイスラーム世界の拡大に関する問題が、15年は地中海史に絡めてアフリカやイベリア半島のイスラーム王朝が、16年にはイスファハーンの歴史をテーマとしながらも、古代から現代まで、地域も西アジア、中央アジア、東南アジア、南アジア、ヨーロッパと、多岐にわたる問題が問われていた。また04年には戦後史、それも中近東の時事的問題の出題が目立った。戦間期以降の中近東史は、現在の中東紛争の淵源を問うテーマであり、特に戦後史を含むイスラーム史の出題は、時事的にも重要であるため、北大世界史の頻出分野としてイスラーム史の理解に努めることを勧める。それ以前にも01年は16世紀から第二次世界大戦後に至るトルコ・イラン史が出題されたし、2000年はユダヤ民族史、聖地イェルサレムをめぐるユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の対立の歴史などが出題されている。また、03年の第2問ではイスラーム教の東南アジアへの拡大が問われた。オスマン帝国史をはじめ、モンゴル帝国史、中央アジアの民族興亡史、モンゴル高原の遊牧民族史も頻出である。

【文化史】
17年は中世の学問についての出題がみられたように、文化史は論述を含め必ず出題される。中でも宗教史の出題率が比較的高く、13年は第2問で朱子学の基本思想など儒学史について、12年はキリスト教・イスラーム関係史が、07年はアフリカにおけるイスラーム教の拡大、05年は第1問で東西交渉により伝播した諸宗教が、04年の第3問では戦間期から現在に至る中近東史、03年の第1問・第2問ではイスラーム教の成立と拡大、02年は第1問でイベリア半島のレコンキスタが取り上げられ、イスラーム教やユダヤ教との関係が問われた。ヨーロッパのキリスト教史にも注意が必要で、07年はローマ帝国におけるキリスト教の公認から国教化に至る経緯、05年には第2問で中世カトリック教会史が取り上げられ、キリスト教とイスラーム教、あるいはカトリックとギリシア正教の対立に踏み込んだ問題が出題されている。ともかく教会史は確実に整理しておくことを勧めたい。宗教史と都市の歴史を絡めた大問が出題されたこともあり、北大世界史対策のポイントの一つとして宗教史に関する理解を深めることが重要である。受験生は過去問題をよく分析して理解を深めてほしい。
08年には難易度の高い論述問題が1~2題含まれてはいたが、それを除いた論述問題で問われている内容は教科書レベルであった。09年以降もそれに該当する難解な論述問題はない。しかし、様々なテーマを問いかけてくるため、確実に高得点を得るためには、簡潔に文章を書く能力を培っておくことが不可欠である。そのためにも、教科書等の基本的知識を問う単純な記述のレベルに惑わされて、一問一答的な暗記に走ることなく、歴史上の諸事項をその背景や経緯、結果などに留意して「理解」し、表現する能力を磨く取り組みが重要で、普段から設問に見合った形でコンパクトにまとめつつ、キーワードもきちんと入れた解答作りができるように練習しておく必要がある。難問対策でよけいな時間をとられるよりも、標準的・基本的な論述を確実に得点できるような学習を心掛けよう。例えば16年のブロック経済についてのように、なんとなくはイメージできていたとしても、言葉で綴らないと採点者には伝わらない。こうした問題こそ、普段から書いて文章にする練習を怠らないように。わかっているのに点がもらえないというのは非常にもったいないことである。また、「それなりに書けた」というのも、うまく書けばもっと得点が重ねられるのに、もったいないことだ。これらを「しっかり書けた」にするためには、なんとなく理解したというだけでは足りない。日頃から文字にしてまとめていくという地道な練習をしたかしないかが、点数の差となって現れるのだということを肝に銘じておこう。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。