2017年度入試
出題分析と入試対策
  北海道大学 生物

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容
1 動物生理 筋収縮、胚葉の分化、自律神経の機能(空所補充、選択、記述)
2 遺伝、遺伝子 遺伝子発現の調節、突然変異とその影響(空所補充、記述、選択)
3 植物生理、生態系 植物ホルモン、窒素固定と相利共生(空所補充、記述、選択)
4 生態系、進化 なわばり、群れ、進化のしくみ(空所補充、選択、記述、描図選択)

2016年度

番号 項目 内容
1 細胞、遺伝子 細胞の構造、ミクロメーター、原形質流動(空所補充、選択、計算、記述)
2 動物生理 興奮の伝導と伝達、神経回路(空所補充、選択、描図)
3 生殖、遺伝子 植物の発生、細胞膜の透過性・浸透圧(空所補充、選択、記述)
4 進化、生態系 利他行動と包括適応度(空所補充、計算、選択、記述)

2015年度

番号 項目 内容
1 発生 両生類の発生、中胚葉誘導、ホメオティック遺伝子(空所補充、選択、記述)
2 光合成、進化 光合成、共生説(空所補充、正誤判断、選択、記述)
3 遺伝子 ファージの増殖、遺伝子突然変異、コドンの決定(空所補充、描図)
4
5

進化、系統 種分化、系統樹、系統分類(記述、正誤判断、選択)
生態系 生物の相互作用、物質の循環、バイオーム(記述)

出題分析

試験形式

試験概要
17年度より、理科2科目で150分の試験時間に変更された(従来は120分)。問題冊子と解答用紙(B4)の他に、下書き用紙(B4、白紙2枚)が添付される。
大問構成
例年、大問4題を解答する。各大問は400~1000字程度の問題文に、文中に関連した設問がつく。
設問数
各大問につき4~6問程度の設問が標準的であるが、ときに10題を超えることもある(14年度)。
解答量
空所補充問題や単純な知識を問う一問一答問題の割合が高い年と、論述系問題の出題の多い年と、年によってかなりばらつきがある。近年は比較的多かったが、17年度は3年前レベルの記述字数の少ない問題になった。

出題の特徴

教科書的な内容を踏まえた標準的な問題を中心に構成されていた時代が長かったが、近年は難易度が高くなっている。
以前の典型的な北大の出題パターンを以下に示す。
400字程度の問題文
空所補充問題(5~10個程度)
一問一答問題(2題程度)
典型的な記述問題(1~2題)
データ分析問題・生物学的意義を問う問題(0~1題)
実験を含む問題、データ分析問題はこれまで多く出題されてこなかったが、15年度、16年度ともに、ボリュームのある問題が出題された。17年度は難易度が下がったが、試験時間の延長に伴って、問題文がやや長くなった。
設問を類型化して特徴を見てみよう。
(1)空所補充問題
ごく基本的な用語が問われるが、ときに高等学校の教科書で目にすることのない用語が出題されることもある。
(2)一問一答問題
問題文の内容には直接関係がない関連事項を問う一問一答問題も、基本的な問題を中心によく出題される。問題文の下線部には必然性がないことが多い。
①用語問題
生物学用語を書かせる問題。基本的な用語に関する問題が多いが、ときに「ドーパミン(16年度)」、「バイオリアクター(12年度)」など、教科書の学習だけではまかなえない問題が出題されたこともある。
②記述問題
これまでは30~60字の記述問題が多かったが、近年は5~6行(130~180字相当)の問題もある。字数が少ない場合はポイントをつかんでいないと説明が難しい。字数が多いのはデータの分析や実験の結論づけの問題であるが、容易に解答できる諸君は少ないだろう。
教科書的な内容の記述問題は少なくない。17年度では3問5相利共生のコスト、4問3なわばりから得られる資源量について、パッと見は盲点的だが教科書の本文に見られる内容をもとにした記述問題である。
問題集などであまり見かけない説明問題が出題されることも少なくない。11年度2問2の器官特異性が高くないホルモンの説明などは、テーマとしては問題集などで見かけるが、質問の角度が異なっているため概して難しい。また、14年度4問4の系統関係の説明、問5の分子系統樹の原理なども、知識問題なら解けるが、その背景知識を説明させる問題も易しいとは言えない。
③正誤問題
かつては判断根拠を求める正誤判断の問題がよく出題されていたが、近年は単なる○×問題がしばしば出題される。判断根拠が必要な正誤問題は、正確な知識がないと解答できないので難しい。
④選択問題
選択問題の出題は多い。平易な問題が多いが、「すべて選べ」のように消去法で判断できない問題が多い。
(3)データ分析問題
知識の組合せやデータ分析などの問題は、近年多くなっている。14年度以降はなかなか手応えのある問題の出題が続いている。どれも悩み抜いて解く問題ではないが、説明するとなると苦労することが多い。
(4)計算問題
遺伝計算問題を除き、過去には計算問題は殆ど出題されなかったが、ここ数年出題が続いている。典型的な問題は多くなく、一見すると難しそうだが、設問の主旨をよく理解していれば確実に解ける。

出題分野

総論
ここ数年、選択問題の有無が度々変わっている。09年度から続いていた「生態系」「進化系統」の選択問題が13年度ではなくなり、再び15年度で復活したと思えば、16年度はまたなくなった。このような変更は予告なしに行われるので、出題形式の変化に戸惑わないように生物の全範囲について学習しておく必要がある。
頻出分野
出題範囲は広いと考える方が無難である。教科書にあるような動物生理がテーマの問題は比較的易しい。神経分野の出題が多く、見慣れない題材であることもしばしばであり、平易に見えないので解きにくい。植物生理については多くの受験生諸君が不得手にしていると思われ、出題された場合は問題がさほど難しくなくても、手つかずになることもある。
問題の題材
他大学でみられるような最新テーマやトピックスの出題は少なかったが、ここ数年、設問には直接関係がないが興味深いテーマ(16年度3:オートファジーなど)が多数包含されている点は注目すべきだろう。
意図的であるかどうかは不明であるが、過去問に類似したテーマの出題には注目すべきである。14年度2の毛色の遺伝は05年度2に類似する内容の問題が、14年度2のX染色体の不活性化は08年度2で同テーマの問題が、14年度4の膜電位については06年度後期3でも同様な問題が、12年度1の組換えDNA技術の意義は07年度1にも同一問題がある。過去問検討の重要性をあらためて実感する。

難易度

15年度、16年度は設問数が少しずつ減ったものの、データ分析問題に手がかかり、得点率はさほど高くならなかった。17年度は全体に平易な設問が多かった。細かな知識問題、字数の多い記述問題が減り、解答時間の延長もあり、取り組みやすかった。14は基本的な生命現象を題材にした問題で、2は遺伝と遺伝子の融合、3は比較的目新しいテーマであるが、まったく手のつかない大問はない。

得点率

医・獣医では85%以上、歯・薬・農・理・工で65~75%、医(保健)・水産で55~60%程度は獲得したい。

18年入試への展望

17年度は、16年度に比較して問題が解きやすかったが、これがいつまで続くかはわからない(もう少し手応えのある問題が出題されてもおかしくない)。センター試験から新テストへの移行で「記述問題」の導入をめぐる騒動があり、全国的な入試問題の傾向としては記述量は増加する方向に向かっている。最高字数が60字という17年度は、全国の趨勢とは逆行しているので、記述対策は怠ってはならない。15年度・16年度レベルの問題が確実に理解できるような力をつけておくことが重要だろう。

入試対策

①基本の理解が一番難しい

教科書の太字用語の定義を一から調べるような深い探求をしながら学習している諸君であれば得点の基礎となる50%程度の得点は容易である。基本用語の定義、生物学的意義を問う記述問題が頻出なため、教科書の記載には一切疑問がなくなるように、辞典類(生物事典など)を片手に疑問点を納得がいくまで解決するという学習をすべきである。

②頻出テーマの探求は不可欠

過去問研究の大切さは前述のとおりである。出題形式やレベルの検討にとどまらず、頻出のテーマを探るきっかけである。過去問検討などがしっかりとなされていれば、短い試験時間内でも容易に解答方針が見いだせるような問題が頻繁に出題されている。過去問を漫然と解いて、合っていた間違っていたにこだわるならば時間の浪費である。

③模試や講習会で客観的に実力を確認

評価を下しにくい生物の実力を推し量るには模試や講習会などを活用してほしい。極論すれば、今現在、問題が解けた解けないというのはどうでも良いことであり、当日の入試までに解けるようになれば良い。大切なことは問題に対する見方・考え方が適切であるかということである。空所補充や一問一答問題を解くことは、単に知識の欠落を確認しているだけであり、合否決定に関わる問題の対策にはならない。 模試の解説や予備学校の講義で提示される問題へのアプローチを理解することが高得点率獲得への唯一のカギとなる。

④生物の学習は机上にとどまらない

タイトル通りである。我々自身が生物であることから、生物学は自分自身について深く学ぶための学問である。当然、人間だけが地球上に存在しているのではないことからも、我々を取り巻く多様な生物の存在を意識できないようでは生物を学ぶ意義がない。新聞やテレビ、インターネットなどで得られる情報に敏感になるだけではなく、一見受験とは無関係であるようだが、動物園・水族館や植物園などに足を運び、実際に生物を目にすることも大切なことである。もしそこから疑問が湧き上がったならば、まずは自分の知識で解決しようとする姿勢を持ってほしい。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。