2017年度入試
出題分析と入試対策
  東京大学 世界史

過去の出題内容

2017年度

番号 出題内容
1 「古代帝国」が成立するまでのローマ、黄河・長江流域における社会変化
2 世界史における「少数者」
3 古代から現代に至る戦争の歴史

2016年度

番号 出題内容
1 1970年代後半から80年代にかけての、東アジア、中東、中米・南米の政治状況の変化
2 国家の経済制度・政策
3 世界史における民衆

2015年度

番号 出題内容
1 「モンゴル時代」における経済的・文化的交流の諸相
2 国家の法と統治
3 ユネスコの世界記憶遺産

2014年度

番号 出題内容
1 19世紀ロシアの対外政策がユーラシア各地の国際情勢にもたらした変化
2 「帝国」と周辺地域
3 人間の生産活動

2013年度

番号 出題内容
1 17世紀~19世紀のカリブ海・北米両地域の開発・人の移動とそれにともなう軋轢
2 国家と宗教の関わり
3 少数者の歴史

2012年度

番号 出題内容
1 アジア・アフリカにおける植民地独立の過程とその後の動向
2 遊牧民の歴史的役割
3 世界各地の建築や建造物

2011年度

番号 出題内容
1 7世紀~13世紀までのイスラーム文化圏の拡大にともなう異文化の受容と発展の動向と他地域への影響
2 帝国の盛衰と内外の諸関係
3 食生活と人類の生活圏

2010年度

番号 出題内容
1 オランダおよびオランダ系の人々の世界史上の役割
2 アジア諸地域の知識・学問・知識人の活動
3 世界史における歴史叙述

2009年度

番号 出題内容
1 18世紀前半までの国家と宗教(16~18世紀)
2 世界史上の都市(古代~中世)
3 18世紀~20世紀前半の宗教政治結社

2008年度

番号 出題内容
1 1850~1870年代までのパクス=ブリタニカの展開と諸地域の対抗策
2 世界史上の領土と境界の画定をめぐる紛争
3 道路や鉄道を軸にした交通のあり方(古代~20世紀)

出題分析

17年度の出題形式・内容と問題の特徴

分量と出題形式

過去10年間の総字数の推移
年度 総字数
2017年度 32行・960字
2016年度 32行・960字
2015年度 28行・840字
2014年度 32行・960字
2013年度 30行・900字
2012年度 26行・780字
2011年度 30行・900字
2010年度 34行・1020字
2009年度 32行・960字
2008年度 30行・900字
大問3(16年度と同様)。
第1問・第2問の論述の総字数は32行(960字)で16年度と同字数。第3問は単答式(設問10、解答数11)。因みに平成に入ってからの29年間の第1問の平均字数は18行(540字)。第2問・第3問の小論述の平均は11行(330字)。論述の平均字数は860字(28~29行)。単答式の出題平均は約16問である。
【第1問】
第1問・大論述は14年度から連続して600字(20行)。11年度の510字(17行)、12・13年度の540字(18行)、14年度以降の600字(20行)と、510字~600字の傾向。
東大世界史・第1問・大論述には以下のような頻出テーマがある(このテーマは第2問・小論述にもあてはまる)。
【経済史】
①世界システム論・覇権国家の交代
②農業と土地制度・人口変動と移民
【国家論】
帝国の盛衰・主権国家体制の展開
②国家と宗教、法・植民地と民族問題
【異文化間の交流】
①イスラーム文化圏の拡大に伴う異文化の受容と発展の動向・他地域への影響
②モンゴル帝国の各地域への拡大過程とそこに見られた衝突・融合
【特定地域の通史】
①エジプト5000年の歴史。
②前3世紀~15世紀までのイベリア半島史
などである。
2017年度の第1問は「前2世紀以後のローマ、および春秋時代以後の黄河・長江流域における『古代帝国』成立までの社会変化」を論ずる。「1979年頃を境とする戦後政治の転換」がテーマとなった16年度に対し、今年度は一転して古代帝国の形成にともなう社会の変化が問われた。時代的には平成に入ってから初めての古代史オンリーであるが、古代版「帝国の盛衰」がテーマだと考えれば、近年の東大でもよく取り上げられる切り口ともいえる。過去の類似テーマの出題例としては「春秋・戦国時代の鉄製農具と牛耕の普及の影響」(1991年度の第2問)や「同盟市戦争からカラカラ帝にかけてのローマ市民権拡大」(2011年度の第2問)などがある。
近年はグローバリズム(人、モノ、情報の一体化)をテーマとした出題が続いてきたが、アジアとヨーロッパ(地中海世界)を比較する問題は2009年度の「ヨーロッパ、西アジア、東アジアの政治と宗教」以来の出題である。
【第2問】
<過去17年の出題パターンの詳細>
年度 テーマ 形式 総字数
2017年 世界史における少数者(ポーランド王国、「文化闘争」、シンガポールの華人、英仏の植民地抗争、米国の公民権運動) 90字×1問、60字×4問、30字×1問 計360字
2016年 国家の経済制度・政策(イクター制、カピチュレーション、マンサブダーリー制、英仏の重商主義と蘭) 60字×4問、120字×1問 計360字
2015年 国家の法と統治(身分制議会、律令と三省六部、第1次ロシア革命) 60字×4問、単答式×4問 計240字
2014年 「帝国」と周辺地域(ビザンツとトルコ、オランダと東南アジア、アメリカとベトナム) 120字×1問、60字×3問、単答式1問 計300字
2013年 国家と宗教の関わり(ローマ帝国、魏晋南北朝、ゲルマン諸国) 60字×6問 計360字
2012年 遊牧民の歴史的役割(フン、エフタル、マムルーク、匈奴) 60字×4問、単答式×2問 計240字
2011年 帝国の盛衰と内外の諸関係(ローマ、明・清、アメリカ合衆国) 60字×3問、90字×1問、120字×1問 計390字
2010年 アジア諸地域の知識・学問・知識人の活動 60字×4問、90字×2問、単答式1問 計420字
2009年 世界史上の都市(古代~中世) 60字×6問 計360字
2008年 清露、中東、独仏の領土紛争 120字×2問、60字×2問 計360字
2007年 世界史上の暦 120字、90字、60字×2問、30字 計360字
2006年 イスラームと英仏のインド進出 120字×3問 計360字
2005年 ヘレニズムの各地への影響 90字×3問 計270字
2004年 ユダヤ教、東西教会、カリフ権 120字×3問 計360字
2003年 文化の波及と継承 60字×1問、30字×1問 計90字
2002年 清帝国・ムガル帝国・オスマン帝国 90字×1問、60字×2問 計210字
2001年 20世紀における戦争と平和(条約・協定・冷戦) 60字×2問 計270字
第2問の小論述の出題数は16年度より1問増えて1行(30字)論述が1問、2行(60字)論述が4問と3行(90字)論述が1問で計6問。字数は360字で変わらない。3行論述は(1)(a)「ポーランド王国の盛衰」。2行論述は(1)(b)「ビスマルクの文化闘争」(2)(a)「清朝の理藩院の藩部統治」(2)(b)「シンガポールがマレーシアから分離・独立した経緯」(3)(a)は16年度に続き、17~18世紀の英仏の植民地抗争(17年度はケベック)関連の出題。(3)(b)「アメリカ黒人への差別と公民権法の成立」は法律名と大統領の名は単答式で実質、1行論述。テーマは奥深いが1行30字では選挙権の制限と公共施設での人種分離くらいしか書けない。内容的にはイスラームとインドで4問出題と偏った16年度とは異なり、17年度は欧米史4問、アジア史2問であるが、時代的には(1)(a)以外は17世紀以降の出題。15年度のように古代~現代、アジア・欧米とバランスを意識した出題とは言えない。小論述は11年度13行⇒12年度8行⇒13年度12行⇒14年度12行⇒15年度8行と安定しない。2行と4行では小論述といえども書き方が変わるが、17年度の第2問はテーマもよく知られた内容が多く、細切れで得点差が付きにくいと思われる。
【第3問】
第3問の設問数は10問。解答数は11(部分的核実験禁止条約〔PTBT〕の締結国を訊ねた問(9)は当然ながら完答を求めていると思われる)。14年度に出された1行論述は、第2問で出題された。16年度は第3問でのみ単答式が出題されたが、17年度は15年度と同じパターンで第2問と合わせて単答式は13問であった。複数解答を求める設問も1問、出題された。単答式が増えると平均点も上がると思われる。11年度と13年度に第3問で出題された四択あるいは三択の正誤文判定問題は出題されなかった。

時間配分

75分程度。第1問で40~50分、第2問で20~25分、第3問で4~5分か。

出題された地域と時代

《地域》
17年度はアジア史関連7問(大論述を分割してカウント)、欧米史は12問(同前)。アジア史に大きく偏った16年度とは逆の傾向。
《時代》
17年度は前近代史8問(大論述を1問とカウント)に対して、近現代史は9問。前近代史に偏った16年度とは異なり、前近代史と近現代史が半々の出題であった15年度に近いバランスだった。
第2問・第3問の解答の書き方
第2問、第3問では解答の書き方に注意すること。東大の解答用紙には原稿用紙がそのまま使われており、問題番号が印刷されていない。問題文には、「設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(3)の番号を付して記しなさい」「以下の(a)・(b)に対応する以下の問いに、冒頭に(a)・(b)を付して答えなさい」とある。これは、設問のなかに小問が(a)・(b)など複数ある場合、「1マス目に(b)などの記号を記入し、2マス目から解答を書き始めよ」、という指示なのか、「問題番号(1)などの後に(b)と記入するように2マスを取って解答を書き始めよ」という指示なのか、ハッキリしないのだ。
第2問・問(1)を例に取ると、
(1)(a)
次に、問(1)(b)の解答を続けて書くのだが、
(1)(b)
と書き始めるのか、あるいは(1)を略して、
(b)
とするのかについて明確な指示がないのである。
また下記のように数字・アルファベットを半角表記してもよいのかも判断しがたい。
1a
また問3(b)は1行(30字)の論述と法律名・人名を問う単答式2問の組み合わせだが、これは「解答はそれぞれ行を改めて記入しなさい」と指示があった。
東大としてはどんな形にしろ、問題番号・記号を含め、全体で指定された行数に収まるよう、解答すればよいということかも知れないが、字数制限に悩む受験生の立場からすれば、書式は明確な方がよい。駿台では、17年度の解答例作成に際しては、設問ごとの解答例における「字数」に問題番号(1)などと(a)、(b)…を記すための1~2マス分を含めたことを、念のためお断りしておく。
第3問も問題文には「設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(10)の番号を付して記しなさい」といった出題者からの指示がある。よって、1マス目に問題番号を記入し、2マス目から解答を書き始める。複数の解答を求める設問があるので、どの設問に対する答えなのかわかるように、下記のように明記した方が採点者にもわかりやすいだろう。
17年度の例:問(2)
(2) 
 
東大の各設問の配点について
【駿台の東大入試実戦模試の配点】
論述重視で配点(大論述・小論述合わせて8割程度、単答式で2割程度)しているが、一律に20点としている予備校(河合塾など・論述で7割弱)もある。これだと第3問のウエイトが高くなりすぎる。
【情報開示からの採点の推測=「文脈重視」】
駿台では毎年、東大受験生に自身の答案を再現したサンプル答案の作成を依頼し、これを独自の採点基準で採点しており、これを「再現答案」と呼んでいる。この採点結果と、実際に東大から情報開示された受験生の得点とを比較対照した結果、07~09年度、11年度における両者の誤差は3~6点程度で、10年度の情報開示のデータとの誤差は±0.43点であった。14年度の情報開示データについては、誤差は3点程度。15年度、16年度も同様である。
東大の採点法と駿台の採点基準との間に大きなズレがないとすれば、近年の東大の論述問題では逐語採点というよりは、具体的なデータ(歴史用語)を論拠として、答案の「文脈」を重視する採点傾向であると思われる。
【17年度の配点について】
東大世界史の配点は類推の域を出ないが、17年度は第3問の単答式が10問(解答数は11)で11点(駿台では例年、単答式の設問を各1点で計算している)。第1問・第2問の論述は、計32行・960字(600字:360字)で49点となる。16年度同様、第2問の字数が12行=360字ながら、問題数が増加(1問あたりの字数減)し、テーマも頻出のものであることを考慮すると、第1問:30点、第2問は19点程度と推察する。

【駿台生の再現答案の分析結果】

2017年・駿台生の再現答案の平均点:35.7点(正答率59.5%) Max:48点
第1問 13.2点/30点 (正答率44%)Max:23点
第2問 12.7点/19点 (正答率66.8%)Max:16点(小論述3点×5、4点×1)
第3問 9.7点/11点 (正答率88%)Max:11点(単答式1点×11)

【参考】

16年 再現答案の平均点:33.4点(正答率55.6%)
第1問 11.1点/30点 (正答率37% Max:17点)
第2問 13.8点/20点 (正答率69% Max:18点)(小論述3点×4、8点×1)
第3問 8.5点/10点 (正答率85% Max:10点)(単答式1点×10)
15年 再現答案の平均点:35.8点(正答率59.6%)
第1問:14.9点/30点 (正答率49.6% Max:20点)
第2問:13.2点/20点 (正答率66% Max:20点)
第3問:7.6点/10点 (正答率76% Max:10点)
14年 再現答案の平均点:38.3点(正答率63%)
第1問:15.9点/25点 (正答率63% Max:23点)
第2問:10.0点/20点 (正答率50.1% Max:13点)
第3問:12.3点/15点 (正答率82%  Max:15点)
13年 再現答案の平均点:40.9点(正答率68%)
第1問:18.0点/28点 (正答率60% Max:26点)
第2問:13.6点/22点 (正答率61.8% Max:19点)
第3問:9.2点/10点 (正答率90% Max:10点)
12年 再現答案の平均点:37.9点(正答率63%)
第1問:15.9点/30点 (正答率53% Max:21点)
第2問:13.5点/20点 (正答率67.5% Max:17点)
※論述問題:10.5点/16点 (正答率65% Max:14点)
第3問:8.5点/10点 (正答率85% Max:10点)
【時系列に甘い採点か?】
再現答案で得点が伸びない答案は、総じて「時系列が混乱」し、「因果関係が不確か」な、「羅列型」の答案であるが、特に「時系列」については、11年度・12年度あたりから東大が甘めに採点している可能性がある。でなければ情報開示で示されたような高得点はなかなか出ないのではないかと思われる。14年度の第1問においては、時系列が混乱している再現答案に対しては、「甘め」、つまり事項の羅列を認める方向で採点せざるを得なかった。15年度の大論述は時系列を意識する必要のない問題であったが、16年度は時系列を明確に把握していないと、論旨がまとまらない。17年度もまた因果関係は論旨展開の上で重要なウエイトを占める。「知っていることを『適当に』書けばよい」わけではない。東大が受験生の答案の現実に直面して、どのように採点したのか、については情報開示を分析するしかないが、論述答案作成に取り組む受験生としては「因果関係」を摑めていない答案は「説得力」に乏しい(従って得点が伸びない)ということを十分に認識して、普段から「覚える・詰め込む」のではなく、歴史への理解を深める学習に取り組むことが、東大合格への道だということを認識してほしい。
17年度の難易度
17年度の出題は東大世界史のレベルとしては、一見「易化」に見えるが、第1問の大論述の論旨は社会史と政治史の関連を問う奥深い内容で、決して「易化」ではない。これを「易化」と捉えた受験生の多くは政治史、あるいは経済史の記述のみに留まった可能性があり、再現答案でも得点が伸び悩んでいた。「社会経済市場の変化が、如何に政治史を動かしたか?」を論述させようという出題者の期待に応えられたかどうか、が合否のポイントになるだろう。
04年度以降、一問一答の単答式の出題が急減し、第2問(小論述)の比重が高まったが、第2問(小論述)は問題内容に比して、例年は平均点が低い。得点が伸びない要因は、指定語句が与えられないこと、受験生の基本的知識の不足、少ない字数の中でポイントを絞りきれない論述力不足であろう。16年度の第2問も基本的な事項であったが、イスラーム史など、受験生が苦手とする分野が出題されたせいか、再現答案を見る限り受験生にとっては第2問が「鬼門」になっていた。一方、17年度の第2問はテーマ、字数とも例年並みだが、受験生にとっては昨年度よりは書きやすいテーマだったようで点差は付かなかったが、平均点は例年並みで、決して得点が伸びているわけではない。第3問は、再現答案ではほぼ満点に近い平均点となるので、ミスをしないことが重要だ。全体としては第1問の大論述で得点差が付くことになる。
再現答案では第1問については社会変化と政治の関係について「好意的」に採点したが、厳密に読めば出題者の意図に十分、答え切れていない答案を東大がどう採点するのか、が得点差につながる。情報開示を待って再検討したいが、平均点は35点程度、難易度は例年並みと推測する。

入試対策

東大世界史合格のための対策

東大世界史の論述問題を解くためには、「問題文を読み取る力・基本的な歴史の知識・簡潔な表現力」を養うこと。これが最も重要である。
「東大が受験生に何を求めるのか」という根本的な問いの答えは「過去の東大の入試問題を徹底的に分析すること」である。政治・経済・文化・社会の四つの分野に分けてみると、東大世界史の出題の重心は政治史と経済史の二大分野にある。例年、第1問の大論述では、近現代(16~20世紀)の国際政治史(いわゆる外交や軍事のこと)や、貿易の拡大を機とする世界経済のグローバル化が問われる。2000年度や11年度のように文化史が出題された場合も、必ず国際的な交流・伝播・その影響がテーマとなる。第1問の大論述は、文字どおり世界史と呼ぶに値するスケールの大きい出題が特徴である。出題者の要求を的確に把握し、論述の「軸」を見失わない読解力、歴史を宇宙ステーションから見下ろすように俯瞰し、あるいは時代ごとの特徴を比較して論旨を展開する雄大な構想力、そして答案をコンパクトにまとめる文章力が求められる。論述を求められる対象が百年度単位・大陸単位で遠大である割に、字数制限がきわめて厳しいので、テーマに則してもてる知識を取捨選択し、大胆に割愛しなければならない。
文化史に関する出題も、とくに第2問・第3問では少なくない(センター試験同様のテーマや図版が出題される場合もある)。また最近は社会史と呼ばれる分野(それぞれの時代の人々の日常生活や思想の研究)からの出題も散見される。
合計900字前後の論述を時間内に書くことは受験生にとっては容易にできることではなく、材料となる基本事項を速やかに思い出せないと苦しい。まず基本事項を身につけるには教科書・地図・年表・史料集をしっかり使い、センター試験レベルの地道な勉強をおろそかにしないことだ。そして最も大切なことは東大世界史の過去問に徹底的に取り組み、出題傾向やテーマを熟知することである。こうした学習に基づき、過去問や実戦模試、例題演習に取り組む際には、頭の中に設計図(フローチャート・組立メモ)を作って文章化することを早い時期から実践することが合格への必須条件である。最後に東大の歴史研究者たちの「世界史の捉え方」を知る上で、参考になる文献を紹介しておく。下記の要約はあくまで筆者の「読書メモ」に過ぎないが、東大世界史の歴史観を把握する上でも、また17年度の問題を検討する上でも参考になると思う。

★参考文献『新しい世界史へ-地球市民のための構想-』羽田正(岩波新書 2011年11月)

①ある時期の世界の人間集団を横に並べてその特徴を比較し、相違点と共通点を指摘しながら全体像を把握することで、「世界の見取り図」を描く。時代ごとに作られた「見取り図」を現代世界の全体像やその特徴と比較する。これを参考にして現代世界の特徴と構造、あるいは各時代の特徴と構造を理解する。歴史の効用は優れて現代を理解するという点にある。
②これらの「見取り図」を時系列によって連続的、通時的に理解して現代につなげようとしないこと。例えば「ヨーロッパ」は概念、理念であり、現実の人間集団の秩序や政治体制そのものではない。ヨーロッパ諸国がみな同じ特徴を持っている訳ではないからである。現代と比較することによって「概念と現実の入り交じった独特のヨーロッパ史」が時系列的に立ち上がってくることはなくなる。同様に漢と唐が同じ中国であることを論じる必要はない。
③世界中の人々が、モノや情報を通じて「横に」緊密に繋がり互いに影響を与え合っていたことを説得的に示す。ヨーロッパと非ヨーロッパという単純な二分法で世界史を説明できるわけではない。国を超える要素に留意するのは、主権国民国家やその集合体から成る現代世界の構造の歴史性を浮かび上がらせるためである。主権国家同士の領土争いは近現代に特有の現象であり、領土と国家主権が不可分のモノと認識され、世界中の陸地が国家によって分割され、領土争いが絶えない現代主権国民国家体制の歴史性を理解する(筆者注:現代は主権国家体制が経済のグローバル化に脅かされている)。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。