2018年度入試
出題分析と入試対策
  東京大学 地理

過去の出題内容

2018年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 地球環境と気候 二酸化炭素濃度の変化 60字・60字・90字
熱帯低気圧の発生と被災 記述・30字・30字・60字
2 海域をはさんだ地域のつながり コンテナ取扱量の変化とパナマ運河拡張の影響 60字・記述・90字
インド洋を取り巻く地域 記述・60字・60字・60字
3 人口と都市 都道府県別人口増減 選択・60字90字
鹿児島・広島・金沢の都市域拡大と自然災害リスク 30字・30字・30字・60字
C 大都市の土地利用と生活圏の変化 90字・60字

2017年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 島と海 太平洋における島嶼 60字・60字・90字・記述・60字
カリマンタン島・マダガスカル島・バフィン島 選択・30字・90字
2 世界の水資源と環境問題 水資源 選択・30字・60字・60字
PM2.5 記述・60字・記述
3 ヨーロッパと日本の産業・社会の変化 ヨーロッパの人口構造変化 選択・60字・60字・60字
日本の工業の変化 選択・60字・90字

2016年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 アメリカ合衆国とヨーロッパ諸国 アメリカ合衆国の人口分布 30字・60字・90字
アメリカ合衆国北東部の都市群 60字・30字・90字
ヨーロッパ諸国の階級区分図 選択・30字
2 世界の農業 主要な食物油の世界生産量の推移 選択・選択・60字・60字
主要農産物の自給率 選択・60字・60字
3 日本の都市、環境と災害 都市の環境と災害 記述・30字・60字・90字
市町村合併 60字・60字・90字

2015年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 自然環境と人間活動との関係 天竜川右岸の地形図読図 90字・60字・90字
湿潤アジアにおける植生帯 選択・60字・60字・60字
2 世界の貿易 アフリカ3か国の貿易 選択・60字・60字・60字
日本の生鮮野菜輸入 選択・60字・60字
3 日本の都市と社会の変化 大都市内3区における人口密度と職業構成の変化 選択・90字・30字
6つの人口関連データの判定 選択・30字
3大都市圏の人口流動 60字90字

2014年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 世界と日本の化石燃料と再生可能エネルギー 二酸化炭素排出上位国やバイオマス燃料の特徴 記述・60字・60字
再生可能エネルギーの判定や推移理由 選択・60字・選択・30字
2 ヒト・モノ・情報の流動 アメリカ合衆国を中心とする音声通話の通信量 60字・60字・選択・60字
主要都市圏の航空交通 60字・60字
3 ヨーロッパの国々の産業と貿易 ヨーロッパ4か国の輸出品構成と研究開発支出 選択・60字60字
EUの貿易 60字・90字・60字

2013年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 気候と地表環境 風化作用の強度分布 60字・60字・90字
土砂崩れ前後の地形図読図 30字・60字・60字
2 世界の農業と水産業 低緯度沿岸の山岳地帯における自然環境 記述・90字・30字
適地適作による大規模生産の問題点 90字
世界の水産業 選択・60字・90字
3 経済・産業の変化と人口 世界の都市および農村の年齢階層別人口 選択・60字・60字
日本の工業都市 選択・30字・60字

2012年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 ユーラシアとアメリカ合衆国の自然・産業・文化 ユーラシアの自然・産業・文化 選択・記述・60字・60字
アメリカ合衆国の経済 選択・60字・90字
2 世界の農林業 世界の農業 選択・記述・60字・60字
中国の農産物貿易 60字・60字
炭素(森林)蓄積量 60字・30字
3 地図 オルテリウスの世界地図 記述・60字・90字・60字
数値地図(東京) 90字・60字・60字

2011年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 自然と人間 世界の自然災害 選択・60字・90字
岐阜県南部の地形図読図 60字・60字・120字
2 資源と環境 世界の金属資源 選択・30字・30字
レアメタルの生産と資源政策 60字・60字
硫黄の回収理由 記述・90字
3 日本の人口と人口移動 日本の出生数と死亡数 60字・30字・60字
都道府県間の人口移動 選択・30字・90字

2010年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 世界と日本のダムと環境   ダムの目的・効果と問題点 60字・60字・90字・90字・90字
2 地域間の交流と社会・経済の変動 日本への入国目的 選択・60字・60字・60字
東アジア諸国内における地域格差と産業構造の変化 選択・90字90字
3 交通と都市 日本の貨物輸送 90字・60字
日本の主要港湾 60字・90字
ドイツと日本における都市の分布 記述・60字90字

2009年度

番号 項目 設問 内容 解答方式・論述字数
(下線は指定語句)
1 全球スケールおよび地球スケールの環境 森林と年平均流出量との関係 60字・60字・60字
岩木山周辺の地形図読図 60字・30字・60字
2 世界と日本の食料 ヨーロッパ各国と日本の食料自給率や農業の特徴 選択・90字・60字・60字・60字
東南アジアにおける米の生産 選択・60字
中国における大豆輸入 60字
3 日本の産業と人口の変化 産業別従業者数の変化 選択・60字
市町村合併の理由 90字
生産年齢人口と老年人口の変化理由 選択・120字
注 解答は全問記述形式。論述問題については1行=30字で字数を示した。

出題分析

分量

過去7年間の総字数の推移
年度 総字数
2018 1080字(36行)
2017 930字(31行)
2016 1020字(34行)
2015 1020字(34行)
2014 840字(28行)
2013 930字(31行)
2012 1020字(34行)
2011 930字(31行)
1.問題数
大問3題であり、例年との変更はない。
論述問題は、1行論述6問(昨年2問)、2行論述9問(昨年10問)、3行論述4問(昨年3問)であった。論述出題数は19問(昨年15問)となり4問増加した。
短答・客観式解答数は10箇所(昨年20箇所)で半減した。このうち、短答の記述式問題は6箇所、選択式問題は4箇所であった。
2.解答形式と総字数
解答形式は論述式・記述式・選択式の複合である。総解答数に大きな変化は見られないが、論述行数は減少した。論述行数の36行(昨年31 行)は、世界史の36行(昨年32行)と等しく、日本史の22行(昨年22行)より多くなっている。小問ごとの要求行数として、4行論述は2011 年を最後に今年も出題されなかった。1行・3行論述が増加し2行論述は減少した。ただし、2行論述中心という点に変化はない。指定語句を使用する論述問題は7問(昨年4問)に増加している。語群から選択して用語を使用させる形式も2問出題された。指定語句使用の論述問題が増加したといえる。
短答・客観式問題は4問出題されているが、3問が記述式で1問が選択式であった。昨年までは選択式が中心であったが、今年度は記述式の方が多かった。また、第1問設問B(1)のように、組合せの記述式問題も出題されている。
3.時間配分
今年の参照すべき資料は変化していない(昨年9→今年9)が、会話文を加えると1点増加した。解答に要する全体の所要時間は、論述行数の関係(+5行)から増加したといえる。また、第3問は3つの資料(5点)のほか会話文が提示されたうえ、計15 行の論述と選択問題も出題された。解答時間が長くなるだけでなく、最終解答問題に位置づけていた場合は、時間不足となるなど時間配分がポイントになったといえる。解答に要する時間配分という観点からは、地理の所要時間を75分(地歴2科目で150分)と仮定すると、各大問25 分程度と考えるのが一般的である。ただし今年の場合は、資料数や論述行数なども考慮すると、第1問は20~25分、第2問は20~25分、第3問は30分程度の配分で解答する必要があった。

出題形式と出題内容

1.出題形式
論述式と記述式・選択式の出題であるが、配点の中心は論述式である。論述問題は1行×6問、2行×9問、3行×4問であった。昨年は1行×2問、2行× 10 問、3行×3問であったので、2行問題中心に変化がなかったといえる。総論述行数については、世界史(36行)と等しいが、日本史(22 行)より多い。ただし、世界史の20行といった大論述問題や日本史の6行論述などの出題は見られない。また、2行問題中心であることから出題数が多くなり、幅広い知識や地理的思考力が要求されるといえる。
記述式・選択肢問題は、都道府県や国名の判定、強い熱帯低気圧の地域別名称を解答させるものであった。重箱の隅をつつくような細かい知識ではなく、基本的な資料読み取りおよび地理的知識で解答できる問題である。選択式問題は、設問文中に提示された選択肢から選ぶ形式で、資料中の空欄数と選択肢数が等しくなっている問題で
2.出題分野
「地球環境と気候」、「海域をはさんだ地域のつながり」、「人口と都市」に関する出題であった。例年、「自然環境関連問題」、「統計読み取り問題」、「地誌的および日本関連問題」をテーマとする設問となっている。今年の第3問についても、「人口と都市」ではあるが「日本関連問題」であり、例年のテーマに沿った設問であったといえる。
【第1問】
「地球環境と気候」は、設問Aでハワイのマウナロアで観測された「1958年から2017年までの二酸化炭素濃度の変化」と「今世紀の二酸化炭素濃度増加のシナリオ」が提示された。(1)では二酸化炭素濃度を増加させている具体的な人間活動が問われた。(2)では一年のうちで二酸化炭素の変化する原因が問われた。(3)では二酸化炭素増加シナリオの差異を人間活動の寄与度に着目させて予想させている。パリ協定を意識した地球温暖化にかかわる問題であり、全体的に時事的要素の強い設問であった。設問Bは「1848 年以降に発生した世界の熱帯低気圧の経路図」と「1970年に発生した世界の熱帯低気圧の経路図」が提示された。(1)では強い熱帯低気圧の地域呼称とその発生地域を組み合わせて問われた。(2)では熱帯低気圧の進路が変化する理由が問われた。(3)では南米大陸周辺で熱帯低気圧が発生しない理由が問われた。(4)では熱帯低気圧が原因で被災者が増加すると予測される理由が問われている。大気の大循環など基本的な気候現象メカニズムの理解にとどまらず、自然災害にもつなげている。自然災害関連問題は東大で定番の問題であるが、「予想」や「予測」など新課程を意識した設問でもある。
【第2問】
「海域をはさんだ地域のつながり」は、設問Aで「2000年と2014年におけるコンテナ取扱量上位港湾の変化」と「2014年におけるばら積み船の出発国(地域)・到着国(地域)の組合せと輸送量」が提示された。(1)では2000年と2014年において香港とシンガポールで順位変化の違いが生じた理由が問われている。(2)では鉄鉱石と石炭のばら積み船到着国(地域)と輸送量からばら積み船出発国を判定させている。(3)では2016 年に完了したパナマ運河拡張による東アジアの輸出入品輸送の影響を、具体的な品目を例に「予想」させている。資料をヒントに考察させる設問であり、直接資料に言及していない⑶も⑵の表2-2がヒントとなっている。設問Bは2013年第2問設問B以来の資料未提示であった。(1)では東南アジアと南アジアのムスリム人口大国が問われたうえで、イランとA国(インドネシア)の統治のあり方の違いを宗 教の位置づけに注目して比較させている。(2)では東南アジアや南アフリカ共和国でインド系住民が多い歴史的背景が問われている。(3)では東南アジアからアフリカ東南部インド洋沿岸諸国に対して貿易や投資が活発になると考えられる分野を、両地域の経 済発展状況を踏まえながら説明させている。歴史的な交易や文化的・人的交流などの 知識や理解度から将来を考察させる設問であったといえる。
【第3問】
「人口と都市」は、設問Aで2010年~15年の5年間で人口が増加した8都県のうちの「4都県における1985年以降の人口増減率変化」と「2010年~15年の都道府県別の人口増減率図」が提示された。(1)では人口増加率の推移から4都県を判定させている。(2)では山梨県と和歌山県で、人口減少率が周囲の都府県と比べて相対的に大きくなる共通理由が問われている。(3)では三大都市圏に近い県で人口減少率が相対的に小さく遠い県で大きくなる理由と、同じ地方ブロック内でも人口減少率に差異がある理由が問われている。2015年の国勢調査結果が公表されたことから予想された設問であった。設問Bは「鹿児島、広島、金沢における地表起伏と人口集中地区の範囲をドットで示した地理院地図」が提示された。(1)では3都市における当初の都市域と拡大した都市域を地形条件に関連させて読み取らせる問題であった。(2)では広島と鹿児島における都市域の拡大によって増大した自然災害の共通性が問われている。読図問題である、(1)と(2)の発問項目をヒントにしながら相互に関連させる設問であった。設問Cは地方から大都市に転勤する2人の会話文が提示された。(1)では会話文の内容を踏まえ、大都市の土地利用と生活圏との関係を説明させている。(2)では大都市において居住者が日用品の購入に不便や困難を感じさせる地域の生じた理由が問われている。日用品の購入という観点や居住者の属性やタイプ分けなどの想像力が問われた設問でもあった。

難易度

1.再現答案からの分析
再現答案の得点率を見るかぎり、全体の難易度はやや難化し、受験者の平均得点は低下したといえる。大問別では、第1問の得点率が最も高く、第2問はやや低く、第3問が低かったようである。
第1問の設問Aでは、(1)の得点率は高かった。環境問題の基本であり、2つという指定があったため解答しやすかったと思われる。ただし、直接的な人間活動ではない解答や、吸収と排出といった側面での指摘ができていない解答もわずかに見受けられた。(2)の得点率も高かった。二酸化炭素の減少に着目できれば容易な問題であるが、 排出量増加の側面だけに着目して出題意図から外れた解答も散見された。(3)もまずまずの得点率であった。ただし、下線の引き忘れのほか、指定語句のうち「固定」の使用にやや課題が見受けられ、場合分けしながら地球環境の予想に言及できていない解答も見受けられた。
設問Bでは、(1)の正答率は高かった。ただし、具体的な地域の許容範囲では正答といえない記述もわずかに見受けられた。(2)の得点率も高かった。ただし、変化を生じさせる具体的な風の記述ではなく、風向にかかわる転向力や地球の自転にとどまる指摘も見受けられた。(3)の得点率も高かった。ただし、加点ポイントが一つだけにとどまる解答や、限定した地域の説明にとどまる記述もわずかに見受けられた。(4)の得点率もまずまずであった。ただし、熱帯低気圧の強度や発生頻度に言及してしまい、本問のポイントである自然や社会両側面の今後の変化を、2行分すなわち3点分の加点要素で説明できていない解答も少なくなかった。
第2問の設問Aでは、(1)の得点率は低かった。とくに、香港の地位低下を取扱量の絶対的減少と錯覚した解答が多かった。相対的低下という観点で、中国国内の港湾整備という視点が不足していたようである。(2)の正答率はまずまずであったが、難易度 を考慮すると高くはなかった。とくに、(イ)でインドという誤答が散見されが、(3)を考慮できればもっと正答率は高くなってもよかったと思われる。(3)は未解答の答案も散見され、苦戦していたようである。5つの指定語句を修飾しながら使用することに課題が見られたほか、ばら積み船の輸送品目に石油が見受けられた。下線の引き忘れもはじめとして、論述練習が不足していたといえる。
設問Bでは、(1)の国名判定は正答率が非常に高かった。ただし、後半のイランとB国に関する論述への意識が高過ぎ、国名判定を忘れた答案も見受けられた。その論述に関しては、得点率が低かった。政教一致と政教分離(世俗化)という対比ができた解答においても、宗教の最高指導者=国王と捉えて政教一致や分離を論じている解答が見受けられた。(2)の得点率は難易度の割にやや低かった。歴史的背景となる旧イギリス植民地の指摘はできていたが、両国の歴史的背景を同一視し、さとうきびと天然ゴムを使い分けていない解答が見受けられた。(3)は未解答も見受けられ、正答率が低かった。また解答例にはインフラ投資といった漠然とした記述も多く、両地域の経済発展段階に着目して、市場や直接投資という観点での指摘が不足していたといえる。
第3問の設問Aでは、(1)の正答率は選択肢が提示されている割に低かった。B(東京都)の正答率は高かったが、A(沖縄県)の判定に苦戦していたようである。(2)の得点率は低かった。語群から適切な用語を選択する論述に不慣れであっただけでなく、物理的距離がほぼ等しい周辺県に比べて人口減少率が高くなる理由を、通勤や通学の可能性から考察できなかったようである。(3)も苦戦しているようで、得点率は低かった。②の同じブロックで県によって人口減少率に差異が見られる理由はまずまずの出来であるが、①の三大都市圏に近い県で人口減少率が相対的に小さくなる理由は、昼 夜間人口比率が低いという指摘からの説明が多く、得点率が低くなっている。
設問Bでは、(1)は未解答が散見されるうえ、当初から拡大していった場所の地形読み取りが、それぞれ2点分の加点要素として不足しているため、得点率はやや低かった。とくに、金沢と鹿児島・広島の差異を明確にする読み取りに課題があったといえる。(2)の得点率もやや低かった。共通する2つの自然災害のリスクに関する指摘はまずまずであったが、その特徴に関しての記述は不足している解答が多かったといえる。
設問Cでは、(1)は未解答も散見され、得点率はやや低かった。大都市=中心業務地区という観点で論述してしまい、大都市内の中心業務地区と郊外というスケールの比較ではなく、大都市と地方というスケールの比較に言及した論述も見受けられた。(2)は未解答が散見されただけでなく、「かつてはその利便性が確保されていた」という前提が考慮されず、出題意図から外れた解答も少なくなかった。居住者と店舗という側面から多面的に考察することに課題があったようだ。全体的には、第1問の「地球環境と気候」が例年通りの「自然環境関連問題」であり、基本的な気候メカニズムや時事的問題で解答可能であったために、難易度は低く得点率が高くなっていた。第2問の「海域をはさんだ地域のつながり」は「統計読み取り問題」であるが、基本的な地理的知識に加え、設問文や統計に則した説明が必要であった。複数の資料や内容に着目する点が難しかったようである。第3問の「人口と都市」は「日本関連問題」であり、本問も例年のテーマに沿った設問であった。さらに、2015年の国勢調査結果が発表されたことから予想された設問ではあったが、時事問題への関心度が不足している場合には、それだけで難問になったといえる。また第3問の問題量が例年に比べて多かったこともあり、時間不足で難問化したともいえる。再現答案からは、地理学的に難問とはいえない設問であっても、資料の読み取り方や指定語句の使用法に課題があり、設問文の読解力や地図学習が不足している受験生には難問となるようである。
2.入試問題としての難易度
一橋大学・筑波大学・首都大学東京・名古屋大学・大阪大学・九州大学などと比較して、難しいとはいえない。また個々の論述問題は、地方国公立大学や学習院大学・慶應義塾大学・上智大学・明治大学・法政大学などの私立大学と比較しても、難問とはいえない設問が多い。ただし、1~3行の論述問題は簡潔かつ論理的な論述が要求されており、指定語句を使用する論述は語句の使用に工夫が必要となる。さらに、統計を多面的に見る視点や分析力、各分野の相互関連性や横断的理解、論理的な思考の練習が必要であり、資料分析の時間配分と論述力が東大の難しさといえる。

入試対策

1.基本事項の整理

地理的な知識については、教科書レベルで対応可能である。ただし、大陸や主要国の自然環境、人口、産業、文化などの基本的事項を独立して把握するのではなく、相互に関連させて法則性を見出しながら理解する必要がある。たとえば、自然環境については環境が人間生活にどのような影響を及ぼしているかといった観点での整理である。また、横断的なテーマで出題されることが多いので、全分野にわたる内容整理を徹底して、横断的理解とともに不得意分野をなくす必要もある。

2.地誌学習の必要

大問で出題されるほか、系統的分野の中の小問としても出題される。地理的事象を文字による単発的把握にとどめるのではなく、具体的な地域事例と併せて理解することが必要となる。そのために、地図帳による確認作業や白地図などを利用した整理をこころがけたい。また、2017年第1問や2010年第3問設問Cのような地理的感覚を養うために、地図帳を見る習慣もつけたい。新聞やテレビなどで紹介された地名や地理的事象は、地図帳で確認するという作業の積み重ねが要求される。ただし、地図帳を覚えるということではなく、地図帳で設定したテーマや事項を探すという認識の方がよいであろう。

3.資料解析の練習

資料の読み取り問題や統計解析の出題頻度は高い。ただし、その対策として重要な統計や分布図などを単に暗記すればよいということではない。初見の資料も少なくないことから、資料中の指標がなぜ選択されているのか、指標自体の特徴はないか、指標を操作して別の指標を見出せないかといった練習である。また複数の資料が提示されている場合には、それらの資料から読み取ることができる相関性はないかといった点にも着目したい。そして、資料から読み取ることができた内容と、これまで学習して習得した地理的内容を関連させ、資料から得られた内容を意味付けするとともに地理的事象の理解に努めてほしい。

4.時事問題への対策

地理は地球上で出現する事象を対象とするため、自然科学から人文科学・社会科学まで、様々な事象からアプローチされる。ただし、大学入試を意識する場合は、人間の生活に影響を与える地域的・社会的現象を理解する学問と捉えればよい。そのため、時事的な内容に関連した問題も出題されやすいので、新聞やテレビなどで報道されるニュースや特集にも注目したい。それらを題材にして、事象の地理的側面に着目した出題が見られるからである。論述問題で扱われる場合には、学問的評価が影響するため、新聞の特集記事などで詳解される内容にとどまることになる。2011年第2問の資源と環境や2012年第1問設問B(2)のリーマンショック、第2問設問A(4)のフェアトレード、2014年第1問設問A(2)のカーボンニュートラル、設問Bの再生可能エネルギーに関する問題、2018年第1問設問Aの二酸化炭素の変化やシナリオなどはその典型例といってよいであろう。また2017年第2問設問A(4)や2013年第2問設問Bのように、時事問題と直接つながらないと思っても、今日的な視点(バーチャルウォーターやフードマイレージ)が要求される問題もみられる。

5.最新統計にも注意

時事問題対策にもつながることであるが、最新統計にも注意したい。2018年第3問では2015年の国勢調査結果から出題された。この調査結果は2016年末から段階的に公表されるため、2018 年が入試問題として扱える最初の年度といえる。また2015年第2問設問Bでは、2013年の生鮮野菜統計が出題された。入試問題は前年度に作成されていることから、2013年の統計は最新統計ということになる。さらに、2015年第2問設問Aの貿易統計も2012年の統計が示されている。これも2014年に入手できた最新統計と考えることができる。地理を受験科目とするのであれば、最新統計も入手したいところである。

6.日本の現状認識

2018年第3問の国勢調査結果、2017年第3問設問Bのような県別工業統計や農業統計、商業統計や人口変動などの地域別統計、2013年第3問設問Bのような日本に関する出題が多い。高等学校では日本地理の学習が少なく、新聞などを通しての時事問題把握を疎かにしがちであるため、日本地理を苦手とする受験生が少なくない。日本に居住している以上、日本を知ることは受験勉強以前の常識であるとともに、身近な空間現象から地理的な法則理解につなげる事例としても最適である。高等学校の地理教科書や参考書などで扱われることが少ないため体系的な学習や習得は難しいが、個々のアンテナを広げ、新聞・テレビ・雑誌・書籍など幅広い媒体に注目しておくことが必要であろう。

7.論述への対策

1~3行で簡潔にまとめる練習が必要である。3行で書く内容を2行で、同様に4行で書く内容も3行で論述できるようにしたい。無駄な記述を省くということであるが、加点ポイントも意識して組み込まなければならない。1行に2点分の配点という意識で答案を作成するのがよく、得点になる項目や内容を要求行数に応じて組み込みたい。4行以下の比較的短い論述問題は、加点法で採点されるという意識を有する必要がある。また、指定語句を使用する論述への対策も必要である。論理的な文章とするために、指定語句の使用順序を考慮するが、単なる羅列を避け、指定語句を補足して使用する必要がある。指定語句を使用する論述では、指定語句自体は加点対象にならないと考えておきたい。さらに、指定語句をヒントにしながら出題意図を汲み取り、解答すべき内容や項目を組み込めるようにしたい。2地点や2項目を比較する問題では、指定語句と対比できる語句を使用して説明できるようにするということである。
これらの点に注意しながら論述の練習をする必要があるが、自己採点は難しいことから、指導教員などから添削してもらうとよい。他人の目に触れることで、主観的な評価や思い込みなどを避けることができ、客観的な評価につながるからである。

8.過去問の復習

2018年第1問設問A⑶は2012年第2問設問Cを意識しており、同じく第1問設問B⑷は2011年第1問設問A⑵・⑶と類似している。2017年第1問設問A(3)の「排他的経済水域」は2008年第1問設問B(2)で、第2問設問Aの「水資源」の統計は2005年第1問設問Aにも出題されている。2009年第2問設問Bで出題された「東南アジアにおける米の生産量推移」に関する問題は、1997年や2004年にも出題されている。出題資料としては統計表やグラフの違い、指標が若干異なるといった点もあるが、「自給的作物の米」、「生産量と消費人口の相関性」といったテーマは同じである。過去問を学習することで、類似問題への対策だけでなく、出題者が有する問題意識や出題意図を読み取ることもできる。2016年第3問設問Bの「市町村合併」というテーマは2年連続の出題である。ただし、思い込みは厳禁である。2016年第2問設問A(3)は、2012年第2問設問Bの「中国における大豆など油脂類の輸入」と類似しているが、2009年の「中国における大豆の輸入」とは出題観点が異なっている。単なる出題分野や出題項目の把握ではなく、過去の出題テーマを認識するとともに、問題文の的確な読み取りが重要である。

9.他大学やセンター試験の問題演習

過去問学習とともに他大学の入試問題にも挑戦したい。たとえば、2018年第1問の図1-1は多くの大学で提示されており、1998 年の北海道大学では第1問設問A⑵と同じ発問がなされている。2016年第1問設問C(ウ)の失業率は2016年のセンター試験で出題されており、第3問図3-1は2012年の名古屋大学、同じく図3-2は2003年の東京都立大学(現首都大学東京)で同様の資料が提示されている。2015年においても、第1問の地形図は2011年の北海道大学で出題された地域である。他大学やセンター試験の出題形式は東大と異なるが、それらの入試問題を演習することで東大の出題テーマの先取りをすることにもつながるのである。

10.模擬試験の活用

過去問学習や他大学問題演習とともに、模擬試験も大いに活用したい。資料読み取りや論述問題の加点ポイント、新傾向問題などに対応するためには、様々なタイプの問題に慣れておく必要がある。さらに、予想問題としても利用できる。2018 年の問題は、時事的問題や統計問題など、模擬試験で予想されていたものであった。東大の過去問からの分析は必要であるが、対策として十分とはいえない。とくに、時事的な要素が強い問題や新しいデータを使用した問題は、予備校などの模擬試験でないと練習することはできないであろう。

11.地形図や図法に注意

地形図の読図問題は1984~2001年まで出題されなかったため、「東大では地形図問題は出題されない」と思い込んでいた者も多かった。しかし、2002年・2009年・2011年・2013年・2015年と出題されており、近年は2年ごとに出題されるなど、定番化してきたといえる。
地図の図法や作成に関しては、平成元年の学習指導要領改訂で「図法については深入りしないこと」とされた。その後、平成11年、平成21年の新学習指導要領を通じて「地図」の重要度が高まり、「様々な地図と地理的技能の取り扱い」として、「地球儀や地図の活用」といったテーマの重要度が高まっている。2018年の地理院地図、2016年の段彩図・階級区分図・地形分類図・等高線図は、この流れからくる出題ともいえる。

12.時間配分への意識

地歴の試験時間は2科目で150分である。半分の75分を地理に振り分けるとすれば、大問3題が出題されることから、1題当たりの所要時間は25分程度と考えることができる。ただし、地理は日本史や世界史にくらべ論述量が多いこと、大問により資料数などが異なることもあり、時間配分を意識する必要がある。とくに、例年第1問で資料提示数が多く分析に時間を要する資料が提示されていたが、2018年のように第3問の分量が多くなることもある。第1問から順番に解答した場合、第3問への時間配分が少なくなりやすい。他科目との兼ね合いもあり、解答する順番や時間配分もポイントとなる。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。