2017年度入試
出題分析と入試対策
  東京大学 日本史

過去の出題内容

2017年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 律令国家の東北政策
A 律令国家にとっての東北支配の持つ意味(60字)
B 律令国家の東北地方に関する諸政策が、国家と社会に与えた影響(120字)
奈良・平安 政治・社会経済
2 鎌倉時代の裁判を通して見る政治と軍事
A 鎌倉幕府が京都で裁判を行うようになった経緯(60字)
B 博多で下した判決を、幕府の最終的な判断とする措置がとられた理由(90字)
鎌倉 政治
3 江戸時代の村における相続の在り方と女性の地位
A 農村における家の相続者(60字)
B 村と家における女性の位置づけ(90字)
江戸 社会経済
4 政党政治と軍部との関係
A 2個師団増設を巡る問題が政党政治に与えた影響(90字)
B ロンドン海軍軍縮条約成立の背景と、条約調印に対する国内の反応(90字)
大正・昭和 政治

2016年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 郡司の性格や国司と郡司の関係
A 郡司が、律令制の中で特異な性格を持つ官職といわれることとなった歴史的背景(60字)
B 8世紀初頭の国司と郡司の関係、及び、9世紀にかけての国司と郡司の関係の変化(120字)
奈良・平安 政治
2 惣村の自治と惣荘・惣郷の共同行動(150字) 室町 社会経済
3 江戸幕府の大船禁止令の発令
A 徳川家康が大船禁止令を発令した理由(60字)
B 従来の大船禁止令の目的と、幕末における大船禁止令の理解の相違(90字)
江戸・幕末 外交
4 戦前・戦後の経済発展と工業労働者の賃金
A 1885~1899年の女性工業労働者の賃金上昇の要因と、その社会的影響(60字)
B 1930年代における男性工業労働者の実質賃金下降の要因と、1960年代における実質賃金急上昇の要因(120字)
明治~戦後 社会経済

2015年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 神仏共存の理由と神仏習合の展開
A 在来の神々への信仰と伝来した仏教との共存が可能になった理由(60字)
B 神々の信仰の仏教からの影響(120字)
奈良・平安 文化
2 御家人所領の分布と御家人による所領経営の方法
A 御家人所領の分布の理由(60字)
B 御家人の所領経営の方法と、それが御家人所領に与えた影響(120字)
室町 政治
3 江戸時代の商品の生産と流通
A 大坂から江戸に繰綿・木綿・油・醤油・酒が大量に送られている事情(90字)
B 大坂から江戸に炭・薪・魚油・味噌と米が少量しか送られていない理由(60字)
江戸・幕末 社会経済
4 大正期の社会の変化がもたらした政治の仕組みの変化と共産主義運動
A 大正期の社会の変化がもたらす政治の仕組みの変化(90字)
B 大正期の社会の変化が生み出した国際的な性格を持った社会運動の内容と当時の政権の対応(90字)
大正 政治・思想

2014年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 律令制下・摂関期における国政の審議
A 律令制下での国政がどのように審議されたか(60字)
B 摂関期での国政がどのように審議されたか(120字)
奈良・平安 政治
2 文化の地方への伝播と武士の役割(150字) 室町 文化
3 長州征討の動員と民衆
A 長州征討にどのような人々がどのように動員されたか(60字)
B 再度の長州征討に多くの藩が出兵に消極的となった理由(90字)
江戸・幕末 政治・社会経済
4 大日本帝国憲法の発布と民権派の動向
A 民権派が大日本帝国憲法発布を祝った理由(90字)
B 新聞紙条例、出版条例、集会条例を改正し、保安条例を廃止すべきであるとする民権派の主張の根拠(60字)
明治 政治・思想

2013年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 ワカタケル大王の時代と古代国家成立過程(180字) ヤマト時代 政治・外交
2 奥州藤原氏政権と東国武家政権
A 奥州藤原氏の政権維持と朝廷との関係(60字)
B 頼朝政権が奥州藤原氏政権を滅ぼさなければならなかった理由(60字)
C 頼朝政権が安定した武家政権となりえた理由(90字)
平安~鎌倉 政治
3 幕藩体制下の大名・天皇の役割と文治政治の背景となる社会状況
A 幕府が求めた大名と天皇の役割(60字)
B 武家諸法度改正の背景となる武士の置かれた社会状況の変化(90字)
江戸 政治・社会経済
4 橋本左内の公議政体論と明治政府の国家体制
A 橋本左内の公議政体論の構想(120字)
B 橋本左内の構想と明治政府の国家体制の相違(90字)
幕末~明治 政治・制度

2012年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 8世紀から10世紀前半の軍事力の構成や性格の変化(180字) ヤマト時代~平安 政治
2 院政期から鎌倉時代にかけての仏教の動向
A 天皇家の御願寺と東大寺再建の造営の方法における理念の相違(60字)
B 法然や親鸞の教えの特徴、および、それに対応した旧仏教側の活動(120字)
鎌倉 文化
3 江戸時代の村落と農村社会の変化
A 村ごとに休日を定めた理由(90字)
B 幕府や藩が村人の「遊び」を危惧した理由(60字)
江戸 社会経済
4 占領地・植民地に進出した日本人
A 多数の一般邦人が中国に在住するようになっていた理由となる、20世紀初頭以降の歴史的背景(120字)
B ソ連からの日本人の帰還が、1950年に中断し、1956年に完了した理由(60字)
明治~戦後 外交

2011年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 白村江の戦いと律令国家の形成
A 戦いに派遣された倭軍の構成(30字)
B 敗戦が律令国家形成に及ぼした影響(150字)
ヤマト時代 外交・政治
2 室町時代の守護
A 在京守護の共通点(60字)
B 今川・上杉・大内氏が在京を免除された理由(60字)
C 足利義満の対守護政策(30字)
室町 政治
3 江戸時代の普請役
A 城普請役が将軍と大名・大名と家臣の関係に与えた影響(90字)
B 城普請が経済発展に及ぼした効果(60字)
江戸 政治・社会経済
4 工場労働者における男女別人数の変化
A 1920年代まで女性数が男性数を上回っていた事情(90字)
B 男性工場労働者急増の背景(90字)
明治~昭和戦前 社会経済

2010年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 摂関政治期の貴族のあり方(180字) 奈良・平安 政治・制度
2 中世の産業と流通
A 畿内・関東・九州地方の年貢品目の特色(60字)
B 鎌倉時代後期の年貢品目の大きな変化(30字)
C 室町時代の商品の大量発生の理由(60字)
鎌倉・室町 社会経済
3 院内銀山と秋田藩の財政
A 山師と精錬職人の出身地の特徴(90字)
B 藩財政に於ける都市を有する利点(60字)
江戸 社会経済
4 欧化主義への反発の内容とその背景(180字) 明治 文化

2009年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 遣隋使・遣唐使の役割と意義(180字) ヤマト時代・奈良 外交
2 豊臣秀吉の全国統一
A 戦乱の原因と解決のための方針(90字)
B 惣無事令正当化のための地位と論理(30字)
C 秀吉の諸大名統制の原理と方針(60字)
戦国・安土桃山 政治
3 江戸時代の日中関係
A 日中貿易の変化と国内産業への影響(90字)
B 中国文化流入の特徴(60字)
江戸 外交・文化
4 昭和恐慌と農村(150字) 昭和戦前 社会経済

2008年度

番号 出題内容 時代 テーマ
1 古代国家に於ける東国の軍事的役割
A 古代国家にとっての東国の役割(90字)
B 古代の内乱の傾向と律令国家の内乱への対処(90字)
ヤマト時代・奈良 政治
2 中世の一揆と「神」の意識
A 傘連判から考察する一揆構成員相互の関係(30字)
B 一揆結成による参加者相互の関係の変化(60字)
C 中世の人々が意識した「神」と「人」との関係(60字)
室町 社会
3 寛政の改革と農村
A 18世紀末の農業・食糧問題に対する松平定信の認識(60字)
B 18世紀末の農業・食糧問題に対処する寛政の改革の諸政策(120字)
江戸 社会経済
4 政党内閣の成立とその背景
A 第一次大隈重信内閣の成立と戦争との関連(60字)
B 原敬内閣が「憲政の常道」につながる本格的な政党内閣になった理由とその社会的背景(120字)
明治~大正 政治

出題分析

分量

東大日本史は、基本的には例年4題の論述問題で構成されている。各問題は一つの設問である場合が多いが、A・BまたはA・B・Cと、2ないし3の小設問に分ける場合もある。字数は1行・30字の形式で、4問の合計が、2017年度が660字(22行)、16年度が660字(22行)、15年度が690字(23行)14年度が630字(21行)、13年度が750字(25行)、12年度が690字(23行)、11年度が660字(22行)、10年度が660字(22行)、09年度が660字(22行)、08年度が690字(23行)であった。
「地歴」は2科目で150分となるので、答案作成にあてる時間は、単純に均等配分をしてみると1科目75分、4題構成の「日本史」では1題20分弱となる。
初期の学習は、テキストや教科書などを駆使して1題1題にじっくり時間をかけ、自分の最高と思う答案を作成する方法が好ましい。しかし、入試の直前までには、1題を15分以内で解答できるように修練を積むとよい。入試の現場において大いに自信と余裕が出るはずである。17年度の場合、1題は最大180字であり、一橋大「日本史」と比較するとずいぶんと字数が少ない。しかし、字数が少ないことは決して易しいということではない。初期の学習の時点では、要求される字数が埋められなくて四苦八苦する受験生も見受けられるが、やがて、書くべき内容を字数内でまとめることに腐心せざるを得なくなる。初期は「足し算」のように記述することになるが、学習が進むと、逆に論ずべき内容を「引き算」するようにまとめなければならなくなる。

形式

基本的には4題。すべて論述問題で、形式としては、①リード文と設問で構成される問題、②現代語の参考文を与え、そこから示唆されるものを読み取り、要求に従って論述する問題、③史料そのものを読解して論述する問題、④グラフ・統計・図表などの数値を読み解き、要求に従って論述する問題、⑤絵画や写真を提示して考察させる問題が例年出題される。
内容としては、東大だからといって教科書の内容以上の学説的知識を要求しているわけではない。教科書レベルの基礎的な歴史に対する理解が前提となるのである。
しかし、「基礎」とは「初歩」ではなく、歴史学習の土台となる歴史の大きな流れ、各時代の特徴、国際関係のあり方、土地制度への理解、文化と社会の関係、経済の発展に対する理解など、歴史を考える上で不可欠な基本的歴史認識であり、難題である。
著名な日本史研究者として知られるある東大の教員が、『東大新聞』紙上で、東大を日本史で受験する学生に対してメッセージを送っていた。そこに於いて、彼は予備校や参考書が「論理まで暗記させている」と語り、苛立ちをあらわにしていた(筆者もこの苛立ちは正当なものだと共感している)。駿台日本史科においては、このような傾向は否定されるべきとする共通認識を有しているが、受験界全般では、必ずしもそのようではないことが残念な現状である。
こうした傾向を反映してか、東大日本史の論述対策に於いてすら、「論理」の丸覚えや形式論理学的な「論理」の安易な積み重ねで高得点となると勘違いしている受験生が増加しているのは事実である。もし、これで歴史を理解したつもりになったり、あるいは「論理」らしきものを暗記し、積み木遊戯のようにそれを重ね合わせた程度で論述問題など「事足れり」と思い込んでしまったりしたならば、その段階で合格など程遠いことをまず自覚すべきである。
東大入試の「日本史」では、まず歴史の基本的な理解や、そのために必要かつ十分な歴史的知識が要求されている。そして、その「理解」や「知識」を駆使し、設問の参考文・史料などで与えられた歴史的事実を斟酌し、歴史の像を再構成させる。そのことを通して、受験生の歴史に対する「理解」や「知識」のみではなく、仮説を立てる論理力や潜在力までを問うているのである。また、設問に於いては、参考文・史料・グラフ・図表・統計・写真等が多用されるが、それらを利用・応用し答案として論述する内容は、結果的には、基本的な歴史的知識に裏付けられた歴史に対する理解力である。それゆえ、解答例だけを見て、「基本的な知識」と「論理の暗記」で対応できると身びいきに誤解する向きが出てしまうのだが、これは稚拙なことである。
東大日本史の入試の典型的パターンの一つとして、受験生の基礎的な知識や基本的な理解を前提に、史料や参考文などを提示して、受験生の「知らない」歴史の「見方」=「学説」を再構成させる問題がある。もちろん、受験生に「学説」そのものへの知識や理解を要求しているわけではないので、その点は余計な心配をする必要はない。受験生はその「学説」を知らなくてかまわないし、出題者の側も、受験生が「知らないこと」を「期待」して問題を作成しているのである。なぜならば、このような問題は受験生の歴史的思考力を問うために工夫を凝らして作成されているからである。

分野

出題される時代に関しては、第1問が古代(まれに原始・古代)、第2問が中世、第3問が近世、第4問が近代または近現代(戦前と戦後)というのが基本的パターンである。東大は戦後史を出題しないという「伝説」が流布されていたが、近年は近現代という形式で出題されており、2016年度は1960年代まで出題された。また戦後史の配点も全体の約8分の1と推定され、取りこぼすことは不合格につながる。独立した戦後史の問題は今のところ出ていないが、来年度以降はわからない。「~は出ない」などというのは、受験生の主観的な願望に過ぎないので、東大を目指す諸君なら、原始から現代までの全範囲に取り組むことが不可避である。
また、各時代とも、政治史・制度史・外交史・社会経済史・文化史、及び、それらの関わりを問う問題や総合的な問題が満遍なく出題されている。

内容

基本的には、各時代や各時期の特徴を論じさせ、その理解を問う問題が多い。また、各時代・各時期の移行期に関して、その変化の意味を問う問題も最近は増加している。
第1問の古代史は、律令国家の理解が中心になる。法に基づく官僚機構である律令制度の制度史的理解、その政治史的展開、律令国家の地方支配、律令に基づく土地制度とその変質、律令制度の衰退と籍帳支配の崩壊、荘園公領制の形成過程などへの理解が問われる。
また、国際関係では、前近代における中国を中心とした東アジアの国際秩序である冊封体制への理解が要求され、日本(倭)と中国・朝鮮との関係、及び東アジア情勢が日本(倭)に及ぼす影響について問われている。各文化の特色を押さえ、各文化と政治史との関わりや古代仏教史の展開をしっかりと理解する必要がある。
第2問の中世史においては、武家社会の特質、封建制度への理解が中心となる。先ずは、鎌倉時代と室町時代の政治史的理解が不可欠となる。例えば、鎌倉時代では、鎌倉幕府の実態が御家人の連合政権であること、初期が「頼朝独裁」の時期であったこと、承久の乱を経て確立した「執権政治」は御家人合議体制であること、宝治合戦・元寇を経て強化され霜月騒動で確立される「得宗専制」が、北条氏の独裁や御内人の専権により御家人の不満を招き、それが後醍醐天皇の挙兵を契機に反北条氏に結実して鎌倉幕府滅亡の要因となること、これらが理解されているだろうか。
室町時代に関しては、室町幕府が守護大名の連合政権的性格を持ち、将軍と守護大名が「持ちつ持たれつ」の関係にあると同時に、「抑制と均衡」の関係にあること、南北朝の内乱期、足利将軍の全盛期、応仁の乱とそれ以後の戦国時代、このような政治史の基本的展開が理解されているであろうか。この程度をすぐに論じることが「基礎的理解」として論述問題の解答の前提となる。また、鎌倉時代の武家の社会的結合である惣領制とその崩壊過程は頻出である。
一方、外交史では、日宋貿易、元寇、日元貿易、日明貿易、日朝貿易に関する知識や、明の海禁政策との関係への理解が問われている。また、社会経済史では、武士の荘園侵略、貨幣経済・商業の発展、農業生産力の向上と惣の形成、徳政一揆や一向一揆の理解など、文化史では、各文化と政治史との関連、鎌倉新仏教、仏教と政治や民衆との関係などが繰り返し問われている。
第3問の近世史では、幕藩体制の基本的仕組みに対する理解が要求される。近世社会を基礎づけることになる太閤検地、武士が在地性を剥奪され生産から遊離する一方、農民は土地に緊縛され生産に従事して剰余生産物を搾取される兵農分離、土地の生産力を米量で表示して年貢収奪や知行給与の基準とした石高制、石高を基準に知行給与(御恩)し、知行高を基準に軍役などを負担(奉公)させて主従関係の基礎となる大名知行制、本百姓体制と本百姓維持政策などのしっかりとした理解が要求される。
また、社会経済史では、大坂を中心とした幕藩体制の全国流通機構への理解が不可欠となる。すなわち、幕藩領主は本百姓から年貢米を収奪し、それを大坂などの蔵屋敷で売却・換金して財政基盤とすること、その仕組みが幕藩体制の全国流通機構の形成・整備の基礎となることの理解が問われている。さらには、武士と町人・農民との関係も押さえなければならない。
一方、制度史は江戸幕府の支配機構、政治史は朝幕関係や三大改革、文化史はその基盤となる社会経済史との関係を押さえることなどが要求され、外交史は、「鎖国」体制と称されてきた一種の海禁政策に対する理解、朝鮮・琉球・アイヌ民族との交流に対する理解が問われる。
第4問の近現代史は、近代国家の成立・発展に対する基本的認識が要求される。特に立憲体制の確立過程、大日本帝国憲法とその運用に対する政治史・法制史への理解が前提となる。また近年は、地租改正と農地改革、大日本帝国憲法と日本国憲法など、近代と現代の最重要事項の比較などが問われている。
社会経済史では、地租改正―松方財政―産業革命―資本主義確立と連動する日本資本主義発達史の深い理解が前提となる。その上で、金本位制など金融・貨幣制度、恐慌、井上財政や高橋財政などを具体的に論述することが要求される。
一方、外交史では、明治期(1868~1912)の日本外交が「欧米への従属」と「アジアへの侵略」の二重性を持ち、対欧米関係は不平等条約の改正、対アジア外交は朝鮮植民地化を軸に展開されていたことの認識が基礎となる。その上で、日中関係・日朝関係・対欧米関係・ワシントン体制・協調外交とその挫折などの詳細な知識と理解が不可欠となる。さらに、労働運動史・女性史・教育史などの論述を通して近代史・現代史の理解を提示させる問題も出題されており、各テーマを通して近現代史を説明できるように準備していく必要もある。また、戦後史も今以上に出題される可能性は強いのでしっかりと学習することが肝要である。

入試対策

先ず、前述した出題傾向の分析をよく理解した上で、常に「歴史を考える」姿勢で学習することが第一である。高校の教科書を読み込んでいく場合も、一つの歴史事項に対し、前提―背景―経過―結果―影響―意義などを押さえ、それが他の歴史事項とどのような因果関係を持っているかを考察しながら読み進んでいくとよい。
問題に臨むときは、先ず、問題の「要求」や「指示」を正確に把握すること。東大の場合、問題の「要求」を完璧に理解した段階で半分以上すでに解答ができたといってよい問題も多い。ところが諸君の答案を見ていると、解答欄に見事な歴史に関する記述がなされているのに、「要求」と離れたことが書かれている場合がよくある。これでは加点されるはずがないことは当然である。
先ずは、問題の「要求」部分や「指示」に線を引き、次に必要な場合はそれを「条件分け」する(例えば、「影響」を問われたならば、政治的影響・社会経済的影響・対外的影響・文化的影響など、「対外関係」なら対アジア関係、対欧米関係など)。そして、「指示」に従って「要求」に応えて解答していく。このとき、いきなり解答欄のマス目を埋め始めてはいけない。先ず、参考文やグラフ・図表などが提示されている場合は、そこから読み取れることを次々とメモし、それを取捨選択しつつまとめる。参考文の場合は、各参考文を要約するだけでは不足であり、それが示唆するものを読解し、かつ、それを歴史的表現に置き換える必要がある。その上で、「要求」に従って丁寧なメモを作り、そこでじっくり考察し、論述に必要とされる関連事項や具体的な歴史事項を補うとよい。もし、10分間の余裕があるとすれば、「採点基準」を作成するようなつもりでメモ・まとめを作りながら考察することに6分間を費やし、書くことをすべて決めた上で、4分間で一気に答案を作成すればよい。本番に臨んでも、あせらず、6対4程度は考察する時間に費やすこと。
また、自学習で問題を演習するときは、初期段階では、テキスト・教科書・用語集など何を使って調べてもいいし時間をかけてもいいので、自分が完璧と思う答案を作ること。特に、友人同士で答案を検討し合い議論することが極めて有効である。高校の教科書は、書き込みなどが入ったものは自分のノートと同様なので大切に使用し熟読すること。ただ、同時に、それとは別の他の教科書を通読することも有効である。
参考書として、東大受験生は必読なので、早い段階から、『日本史論述研究―実戦と分析―』(福井紳一・駿台文庫)に取り組むとよい。同書は、入試に於ける「論述問題」を、実戦的に「読み解く」ことを通し、重要テーマとなる「各論」を押さえつつ、古代から現代に至る「日本史」を分析し、その「通史」的理解を獲得することを目的としている。
題材としては、東京大学の「論述問題」に臨むための演習として、総合的な観点から最適と判断し、東京大学の問題を中心に、駿台の東大実戦模試などを用いている。
また、同書は、駿台の長い蓄積と研鑽に裏打ちされた独自の「採点基準」を示し、詳細な「解説」を施すことにより、初学者でも、歴史を考察し、理解を試みることを通して、「満点答案」を作成することが可能となっていくように叙述されている。
「採点基準」を用いて自己採点を行うことは、反省点や課題を確認し、更なる実力向上に大きく貢献する。しかし、ここでの「採点基準」は、単に自己採点に用いるためだけのものではなく、問題の要求する「論点」を把握する力の養成、それに打ち返す「論理」を構築する力の鍛錬、東大入試に必要とされる「知識」の豊富化・充実化に資するように作成されているので、「採点基準」を丁寧に熟読・分析して自学習することにより、「満点答案」作成の道程が見えてくるのである。
また、政治・経済・外交などが複雑にからみあう戦後史の対策としては、『戦後史をよみなおす』(福井紳一・講談社)あるいは『戦後日本史』(福井紳一・講談社+α文庫)を夏までに読み込んでおくとよい。
駿台生は、駿台日本史科の『基幹教材』を熟読することが最も効果的である。『基幹教材』は東大レベルの論述に対応させて、重要な歴史事項に関しては、前提―背景―経過―結果―影響―意義など詳細に叙述し、歴史的思考力を養成するように構成されている。また、春期講習―夏期講習―冬期講習―直前講習と連動する「東大日本史」は、過去問や予想問題の実戦的演習なので、その機会を利用し、しっかりと論述対策に取り組んでほしい。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。