2017年度入試
出題分析と入試対策
  東北大学 数学(理系)

過去の出題内容

▼理・医(医、保-放射線/検査)・歯・薬・工・農学部

2017年度

番号 内容 科目名
1 絶対値のついた2次関数のグラフと直線との共有点 数学Ⅰ、Ⅱ
2 得点を競うゲームでの確率および条件付き確率 数学A
3 2次方程式が有理数解や整数解をもつような係数の組 数学A
4 三角形の内部の点の位置ベクトルと垂線の長さ 数学B
5 複素数係数の方程式の解がちょうど2個あるための条件 数学Ⅲ
6 指数関数・三角関数を含む関数の定積分と極限 数学Ⅲ

2016年度

番号 内容 科目名
1 垂心が垂足三角形の内心であることに関する問題 数学A
2 pq=qp+7を満たす素数の組(p,q)を求める 数学B、A
3 サイコロ投げで直角三角形、鈍角三角形ができる確率 数学A
4 複素数の極形式と3次方程式の解と係数の関係 数学Ⅲ
5 空間における2円の面積の和の最大値 数学A、Ⅰ
6 定積分で表された関数の最大値と最小値 数学Ⅲ

2015年度

番号 内容 科目名
1 楕円の法線とx軸、y軸とで囲まれる三角形の面積 数学Ⅲ
2 3次関数のグラフに引いた接線 数学Ⅱ
3 サイコロの目で定まる2次方程式についての確率 数学A
4 定積分による不等式評価と極限 数学Ⅲ
5 鋭角三角形を折り曲げてできる四面体の体積 数学Ⅱ
6 k-連続和」で表される整数の個数 数学A、B
▼医(保-看護学)

2017年度

番号 内容 科目名
1 位置ベクトルの表示と、比の変化による線分の長さの最大値についての問題 数学B
2 2次関数の最小値と、その条件から描ける領域の面積 数学Ⅰ・Ⅱ
3 ある等式を満たす0以上の整数の存在を示す証明問題 数学A
4 箱から数字の書かれたカードを取り出し得点を定める試行における確率 数学A

2016年度

番号 内容 科目名
1 ベクトルの係数がある範囲を変化するときの内積の最大値 数学B
2 2直線(折れ線)と放物線が共有点を持つための条件 数学Ⅱ
3 3元1次方程式の整数解を求める問題 数学A
4 垂線と辺で作られる四角形が円に内接することの証明、および角についての証明 数学A

2015年度

番号 内容 科目名
1 いくつかの条件を満たす数列の一般項の決定 数学B
2 鋭角三角形である条件と垂心の座標、および四面体の体積 数学A
3 サイコロの目を係数とする方程式の解と確率 数学A
4 3次関数の最大値と接線の傾き
グラフを利用して最小値を求める問題
数学Ⅱ

出題分析

▼理・医(医、保-放射線/検査)・歯・薬・工・農学部

分量

大問6題を150分で解く。

パターン

全問が記述形式である。

内容

① 出題範囲は、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B(数列、ベクトル)、数学Ⅲである。
② 年により変化が大きく出題傾向はつかみにくい。また、各問の難易の差が大きいセットとなっている。
17年度、16年度は複素数が出題され、17年度、16年度、15年度は整数も出題されている。これらは頻出分野に入れていいだろう。
13年度は各分野から万遍なく出題されたが、12年度は数学Ⅲ重視の出題である。12年度、07年度のように微分・積分重視の年もあるが、08年度のように数学Ⅲは極限のみという年もある。こんな具合に出題分野に一貫した傾向があるわけでない。
③ 数学Ⅰ・Aでは、07年度、03年度は出題されなかったが、確率は頻出分野である。最近は数え上げを重視した問題が続けて出題されている。04年度には手作りのサイコロを3回振ったときの目の和の確率が微分と絡めて出題されており、融合問題も含めて演習しておくとよい。
14年度は2次方程式の解の配置が出題されたが、数学Ⅰからの出題は珍しい。また、図形の性質が16年度に出題されたが、この分野の出題は珍しい。整数の問題は15年度、16年度、17年度と続いており、この分野は十分な練習が必要である。
④ 数学Ⅱ・Bでは、最近は少ないのだが、方程式・不等式、式と証明は手は抜けない。17年度4のようにベクトルの問題の中で相加平均と相乗平均の関係が使われることもある。図形と方程式は15年度、06年度、03年度後期に出題されたが、前期でこの分野から出題されるのはまれである。また、理系といえども数学Ⅱの微分積分は注意が必要である。15年度、10年度は3次関数の接線の本数、08年度には放物線と円で囲まれる図形の面積と極限、05年度には3つの放物線で囲まれた図形の面積を求める問題が出題されている。
つぎに、数列についても注意が必要である。09~12年度は出題されていないが、16年度、14年度に数学的帰納法、08年度に等比数列になっている内積の総和と極限、07年度に漸化式をつくる問題、04年度に等差数列・等比数列の相加平均・相乗平均の極限の計算、00年度に等比数列の問題が出題されている。
ベクトルについては、17年度は平面ベクトルでの垂線の長さ、14年度は平行六面体の切り口の面積、13年度は四面体の体積、11年度は2つのベクトルが垂直とならない条件を求めるものであった。10年度に内積を使って垂直二等分面に関する証明問題が出題された。12年度、09年度は出題されていないが、08年度は等比数列となる内積の総和が出題されている。内積絡みの問題に慣れておく必要がある。
⑤ 数学Ⅲは、07年度は6題中4題、14年度、12年度、99年度は6題中3題が数学Ⅲであった。傾向としては積分の問題が多いが、05年度、06年度は微分のみ、08年度は極限のみで数学Ⅲの積分は出題されていない。13年度は非回転体の体積、10年度、07年度、03年度は回転体の体積の問題であった。04年度2の道のりの計算量は多く、3の極限では区分求積、微分係数と総合的な力を必要とする問題が出題された。定積分と不等式は要注意分野である。
15年度から複素数平面も数学Ⅲに加わった。これも頻出分野といっていいだろう。
15年度に楕円の法線が出題されたが、2次曲線はあまり出題されていない 。

難易度

16年度はやや易しめ。14年度、15年度、17年度は難易の差がはっきりした構成になっており、基本的な問題から計算力を要する問題まで幅広く出題された。
過去をみると、09年度はやや易しめであったが、10年度は難化し、11年度、12年度はやや易しめ、13年度はさらに取り組みやすいセットで出題された。
▼医(保-看護学)

分量

毎年4題が出題されている。今後もこの形が続くだろう。
問題は標準的であり、基礎事項やよく使われる事項を用いて考えていけば解答できる。対策としては、各分野にわたり標準レベルの問を中心に、与えられた問題内容から関係を見抜き、式を立て、確実に計算していく力をつける学習が必要である。

パターン

4題とも記述式である。要領よく簡潔に書いていく必要がある。また、関数の変化の分析や確率などにおいて、場合分けの正確さや計算力が要求される。そして、「確率」の分野でなくても「場合分け」の起こる問題の出題頻度が高いので、慣れておく必要がある。

内容

出題範囲は、数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学Aと数学Bの「数列」「ベクトル」となっている。数学Ⅰの「2次関数」「数と式」もおろそかにできないが、出題の中心は、数学Ⅱ「図形と方程式」「三角関数」「指数・対数」「微分・積分」の各分野と、数学A「場合の数と確率」および、数学B「数列」「ベクトル」である。
いままでの出題内容から見ると、特にどの分野が多いというわけではなく、各分野から満遍なく出題されている。確率やベクトルの分野からの出題は頻度が高いとみてよい。そのほか数学Ⅱでは、微分や積分(面積の計算など)がよく出題されている。
数学Ⅱの問題を解くときに数学Ⅰの「方程式・不等式」、「数と式」の計算を用いる場合も多いことはもちろんだが、もっと意識的に各分野を融合させていくものも出題されるだろう。たとえば、「図形と方程式」と「微分・積分」や「三角関数」、あるいは、「ベクトル」との融合問題である。2015年度4の(3)では、グラフから直接、関数の変化を考察するよりは、「2つのグラフが共有点をもつ条件から値の範囲がわかる」という「図形と方程式」の分野の考え方を用いる方が得策である。2017年度の2は、数学Ⅰの2次関数の分野と数学Ⅱの積分の分野の融合問題であった。
また、教育課程の変更に伴い、数学Aにおいて整数の内容が入ってきて、2016年度3では方程式の整数解を求める問題が出題された。
以下、最近3カ年に絞って分析をしていく。
2015年度1は、数列の隣接2項an,an+1の等式に対してnを1つ増やしたan+1,an+2の等式を作り、辺々引くことによりan+an+2an+1で表すことができるものである。2では(3)を解答するときに前問の(2)を利用することがポイントであり、三角形を折り曲げて作られる立体の頂点から対面に垂線を下したとき、垂線と面との交点が三角形の垂心であることに気づけば、あとは計算により解答できるものである。3は確率であるが、丹念に場合分けして数えていけば答が得られる平易な問題である。4の(3)は前出の(2)を利用し、が原点を通る直線の傾きを表すことが分かれば、(2)で求めた接線のときが最小であることが見通せる。
2016年度1は、与えられた係数の範囲からベクトルの成分の範囲を求め、内積の最大値を求める問題(領域と最大最小)であり、よく出題される内容である。2は、放物線と直線がある範囲に共有点をもつための条件を求めるもので、2次方程式の基礎事項をしっかり適用すれば、解答できるものである。3は3元1次方程式の整数解を求めるものであるが、約数・倍数の関係や数の大小により、整数のとる範囲を考えていけば容易に分かるものである。4は数学Aの円周角に関連した定理を用いて証明するものであった。ふだんから「図形」の証明問題についても練習しておきたい。
2017年度1は(1)では、ベクトルの係数を決定する問題であり、比を置いてベクトルの1次独立性から求める方法でもよいが、メネラウスの定理を用いる方が計算がしやすい。2は2次関数と領域の面積についてのごく標準的な問題であった。3は解答方針の焦点(どういう事に注目すればよいか)をはずすと、非常に見通しの悪い解答に入ってしまうということと、0以上の整数の存在を示す時の不等式の細かい考察が必要であるという意味で、時間内でしっかりした解答を書くにはかなりの難問であった。4は与えられた条件により、場合の数を数えていけば解答できる問であるが、該当する場合を正確に数えるよう注意が必要である。

難易度

いままでの出題構成や内容を見ると、全体としては、基本的で標準的な問題がほとんどであると言える。ただ、限られた時間内で解答を仕上げるには、十分計算力をつけておく必要がある。2013年度は全体的に問題は標準的で、やや易しくなったが、2014年度では正解を出すのにかなり気をつける必要のある問が出された。2015年度では立体の問題や微分の問題において、先に出た小問の結果を利用することで、答を求めることのできる問題が出題されている。2017年度は124は標準的な問題であったが、3は整数についての証明問題で、解答するにはふだんからのかなりの学習、練習が必要とされる問題であった。今後も標準的な問題のみならず、やや難しいレベルの出題があるだろう。

入試対策

▼理・医(医、保-放射線/検査)・歯・薬・工・農学部

出題傾向を探るような学習は避けたほうがよい。全範囲にわたり、基本事項を深く理解し、受験数学のいろいろなパターンも一通り使いこなせるようにしておくことは当然のことだが、地道に調べ尽くすという粘り強さも必要である。
平易な問題は必ず解き、難問に時間とエネルギーを無駄にとられないよう、解けそうな問題・解けそうな部分を見分けて、確実に点を稼ぐ要領も必要である。
また、東北大学が毎年公開している「出題意図」をみると論理的な説明をした答案が強く要望されている。結果に至る根拠や議論を明確に書く練習も必要である。
普段から問題をどのようにみて、どのように解いているかを整理する習慣をつけておくとよい。

▼医(保-看護学)

各分野の基本事項をしっかり理解し、その分野の標準的な問題が一通り解けるように学習しておくことは絶対必要である。そして、やや応用的な問題や総合的な問題にも取り組み、解法を自分でまとめていけるように練習しておくこと。合格には、4題中3題完答するかあるいは2題完答で、残り2題の半分ずつぐらいを確実に得点していければよいだろう。
◎問題解決のポイントをつかもう。

◎答を導く過程を大切にし、計算方法をしっかり把握しよう。

問題に取り組んで、それを解いていく各段階で、「どういう考え方にたってどのようにすればよいか」(解決の方法とその実行)……(*)が処理できていけばよいわけであり、各分野のいろいろな問題について、(*)についての研究と練習をしておくことが大切である。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。