2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学 教育学部 世界史

過去の出題内容

2017年度

番号 分野 内容 形式
1 西洋/古代~近世 地中海の歴史 選択・記述
2 西洋/現代 冷戦時代 選択・記述
3 東洋/古代・中世 魏晋南北朝時代 選択・記述
4 東洋/近世・近代 15~17世紀の東南アジア 選択・記述

2016年度

番号 分野 内容 形式
1 西洋/古代~近世 近世までのフランスの歴史 選択・記述
2 西洋/近現代 ヨーロッパにおける戦争のあり方の変遷 選択・記述
3 東洋・アフリカ・西洋/中世~現代 イブン=バットゥータと14世紀の世界 選択・記述
4 東洋/近現代 清末から現代の中国 選択・記述

2015年度

番号 分野 内容 形式
1 西洋/古代~近代 ヨーロッパの宗教と政治の歴史 選択・記述
2 西洋/古代~現代 ヨーロッパの議会の歴史 選択・記述
3 西洋・南アジア・アフリカ/近世~現代 「グローバル・ヒストリー」研究 選択・記述
4 東洋/中世・近世 唐宋時代の中国 選択・記述

出題分析

分量

2017(平成29)年度も大問が4題である。小問も計50問で、例年通りである。

パターン

教育学部では、第1問と第2問が欧米史、第3問と第4問がアジア史というパターンが多いが、17年度もその形式が踏襲された。範囲は2015年度と同様、ヨーロッパと中国で全体の8割を占める偏重した出題だった。例年特定の地域やテーマに基づく出題がなされる場合が多く、地域史やテーマ史の学習は効果的である。
11年度に出題された記号選択型の空欄補充問題は出題されず、例年通りに正誤文選択問題、語句選択問題、単答記述問題の形式からほとんど出題された。正誤文選択問題は減少したが、13年度以降出題されている年代整序の問題は17年度も出題された(分量は16年度と同じ3問)。レベルは例年通り標準的なものが多い。
小問で分類すると次のようになる。
年度 選択 正誤 整序 記述 論述
17 21 16 3 10 0 50
16 21 16 3 10 0 50
15 17 21 2 10 0 50

内容

以下に示すように、教育学部の世界史においては、やや長い時代や広い地域にわたるテーマ出題が多い。雑問もあるがそう多くはない。
  A B C D E F
紀元前 1~9C 10~15C 16~18C 19C 20C
中国・朝鮮   3 1
34
     
北・中央アジア            
南・東南アジア     4 4 4 2
西アジア     1   1 1
東欧・南欧 1         2
西欧   1 1 14   2
アメリカ           2
アフリカ            
注)
1.○は2013~17年度の5年間に出題された、※は出題されていない地域・時代を示す。
2.14は2017年度に出題された地域・時代を大問ごとに示す。
エジプトは地理的にアフリカに入るが、西アジアに入れた。
[地域別の設問](注)Ⅰ~Ⅷ、A~Fは上の表と照合して下さい。
Ⅰ 
B モンゴル高原の遊牧民(13)
A・B・C・D・E 儒教の歴史(14)
D ヨーロッパの宗教と政治の歴史(15)
B・C・D・E 唐宋時代の中国(15)
D 近世までのフランスの歴史(16)
F ヨーロッパにおける戦争のあり方の変遷(16)
B イブン= バットゥータと14世紀の世界(16)
D・F 清末から現代の中国(16)
C 地中海の歴史(17)
B・C 魏晋南北朝時代(17)
C 15~17世紀の東南アジア(17)
Ⅱ 
A・B・C モンゴル高原の遊牧民(13)
B 仏教の歴史(14)
C 唐宋時代の中国(15)
F 清末から現代の中国(16)
Ⅲ 
A・B 仏教の歴史(14)
F 19世紀以降のヨーロッパと他地域の関係(14)
D・E 「グローバル・ヒストリー」研究(15)
D 近世までのフランスの歴史(16)
C・D・E・F イブン= バットゥータと14世紀の世界(16)
F 清末から現代の中国(16)
F 冷戦時代(17)
C・D・E 15~17世紀の東南アジア(17)
Ⅳ 
C・D・F イスタンブル史(13)
A・B 古代から18世紀までのヨーロッパの中心と周辺の歴史(14)
A ヨーロッパの宗教と政治の歴史(15)
B・C・F イブン= バットゥータと14世紀の世界(16)
C・E・F 地中海の歴史(17)
Ⅴ 
A・B・C ヨーロッパの都市(13)
A・B・C イスタンブル史(13)
A・B・C 古代から18世紀までのヨーロッパの中心と周辺の歴史(14)
F 19世紀以降のヨーロッパと他地域の関係(14)
A・B・C ヨーロッパの宗教と政治の歴史(15)
A・F ヨーロッパの議会の歴史(15)
D・E 「グローバル・ヒストリー」研究(15)
A・B・C 近世までのフランスの歴史(16)
F ヨーロッパにおける戦争のあり方の変遷(16)
F 清末から現代の中国(16)
A 地中海の歴史(17)
F 冷戦時代(17)
Ⅵ 
C・D・E ヨーロッパの都市(13)
B・C・D・E・F ヨーロッパの統合(13)
B・C・D 古代から18世紀までのヨーロッパの中心と周辺の歴史(14)
E・F 19世紀以降のヨーロッパと他地域の関係(14)
B・C・D・F ヨーロッパの宗教と政治の歴史(15)
C・D・E・F ヨーロッパの議会の歴史(15)
D・E 「グローバル・ヒストリー」研究(15)
B・C・D 近世までのフランスの歴史(16)
D・E・F ヨーロッパにおける戦争のあり方の変遷(16)
C イブン= バットゥータと14世紀の世界(16)
B・C・D 地中海の歴史(17)
F 冷戦時代(17)
D 15~17世紀の東南アジア(17)
Ⅶ 
F ヨーロッパの統合(13)
E 19世紀以降のヨーロッパと他地域の関係(14)
D・F 「グローバル・ヒストリー」研究(15)
D 近世までのフランスの歴史(16)
F ヨーロッパにおける戦争のあり方の変遷(16)
F 清末から現代の中国(16)
F 冷戦時代(17)
Ⅷ 
A・B・C 古代から18世紀までのヨーロッパの中心と周辺の歴史(14)
D 「グローバル・ヒストリー」研究(15)
C イブン= バットゥータと14世紀の世界(16)

地域別出題分布

○ 中国・朝鮮史はほぼ毎年出題されている。11年度は殷~唐代の文字と貨幣・税制に関する問題が出され、12年度は江南の歴史と文化について出題された。13年度は純粋な中国史の大問は出題されなかったが、北方遊牧民族と関連させて出題されている。14年度の儒教の歴史は文化史中心の出題だったが、15年度は唐宋時代の政治史を中心に出題された。16年度は20世紀の中国史が出題された。17年度は魏晋南北朝時代が出題され、文化史が増加した。
○ 北アジア・中央アジア史は、中国史や西アジア史、インド史との関連の出題や、イスラーム史の中で扱われる場合が多い。13年度は第4問でモンゴル高原の遊牧民をテーマに出題され、14年度は仏教の歴史に絡めて中央アジア史が出題された。15年度は宋代の中国と絡めて、遼・金の歴史が出題された。16年度は辛亥革命と絡めてモンゴル・チベットの歴史が出題された。地理的知識を問う設問も多く、それにも注意を払う必要がある。
○ インド史は数年おきに大問が出題される傾向がある。09年度に古代インドの王朝について出題され、10年度には、09年度の続編のようなインド近現代史が出題された。14年度には古代インドを中心とする仏教史が、15年度には18~19世紀のインドに関する設問が出題された。16年度はイスラーム~現代の南アジア史に関する設問があった。17年度は15~17世紀の東南アジア史が大問として出題された。
○ イスラーム化以降の西アジア史は12年度は現代史を中心にパレスチナ問題が出題され、13年度のイスタンブル史ではイスラーム史とヨーロッパ史がほぼ半々の割合で出題された。14年度・15年度はイスラーム化以降の西アジアは出題されなかったが、16年度はイスラーム史が出題された。17年度はヨーロッパ史との関連で小問が出題された。
○ 07年度は古代ギリシアの大問、08年度はキリスト教史に関連してローマ史関連の問題が出題されたのに続き、10年度はヘレニズム時代と共和政末期のローマが出題された。13~17年度はギリシア・ローマの大問はなかったが小問の出題があるので、おろそかにはできない。
○ ヨーロッパ史は地域やテーマ別に出題される。11年度は中世西欧史が、12年度はハプスブルク家の歴史が出題された。13年度はヨーロッパの都市の歴史と統合の歴史の二つの大問が出題された。14年度は第1問・第2問がともにヨーロッパと周辺地域・他地域との関係をテーマにした出題だった。15年度は前半で「宗教と政治」や「議会」をテーマに出題されたほか、「グローバル・ヒストリー」に絡めた設問も散見された。16年度は第1問では古代~近世のフランス史が、第2問では09年度と同様に「戦い」に関するテーマ史が出題された。17年度は地中海の歴史が出題された。
○ ロシア・ソ連史および東欧史は、14年度に第1問で古代・中世のヨーロッパ史に絡めて出題された。15年度は第1問でビザンツ帝国、第2問・第3問で帝政時代のロシアに関する出題があった。16年度も近現代を中心とするロシア・東欧史が出題された。17年度は米国と同様、冷戦史との関連で出題された。
○ アメリカ史は、12年度に久しぶりにまとまった形で出題されたが、14年度は近現代のヨーロッパ史に、15年度は「グローバル・ヒストリー」に、16年度は近現代ヨーロッパや現代中国に絡めて出題された。17年度は冷戦史との関連で出題された。
○ アフリカ史は05年度に大問で前近代から近現代まで全般的に出題されて以来出題がなかったが、14年度は久しぶりに第1問で古代・中世ヨーロッパ史に絡めて前近代史が、15年度は奴隷貿易に絡めた設問が出題された。16年度はアフリカのイスラームについて出題された。

難易度

難しいといわれている早稲田大学の世界史の中では、教育学部の問題は易しい部類に入るだろう。それでも細かい知識を問うている設問もあるので、安易な取り組みをしないようにしたい。17年度も正解するために詳細な知識が必要な問題は限られており、できる問題を確実に解くだけでも9割は得点できる。17年度の難易度は16年度と同程度だったが、難化する可能性はあるので、決して気を抜いてはならない。

入試対策

まず基本事項を理解することから始めよう

基本事項とは、まず中国史なら王朝名、都、創始者、主要人物の業績などであり、ヨーロッパ史ならば各国の王家名、主要人物の業績、近現代史では戦争と条約名などがきちんと指摘できることである。これらをきちんと書けるようにしておきたい。実際に問題にあたってみると、基本的な事項を問う問題が多くある一方で、選択問題などは詳細な事項が正解となっている場合があり、そうした問題は消去法でないと解きにくい。このような問題の場合には正解以外の選択肢が基本的事項であることが多い。やはり基本的事項の記憶・理解が重要といえる。

細かなことは基本事項習得後に理解しよう

低頻度の(難解な)歴史用語を覚えること自体は早大対策として間違ってはいないが、その作業は基本事項の習得後に行うこと。基本事項をしっかりと把握し、その後で低頻度用語など関連する細かな知識も身につけていく。これが効果的な学習法といえるだろう。

年表と地図は常に座右におくこと

年代整序はまずタテの流れをおさえること。しかし同一国家内の事件ばかりが問われるわけではないから、タテの流れを把握した後にヨコの関係の理解を心がけること。例えば清代の中国・近世のフランスをおさえたうえで、ブーヴェがルイ14世に派遣されて康煕帝に仕えたことを考えれば、康煕帝とルイ14世、清とブルボン朝が同時期に存在したことがわかる。また地理的な出題もあることから地図は必ず確認する習慣をつけておこう。

多くの問題にあたること

なるべく多くの問題にあたりながら知識を増やしていくこと。整理・まとめの類で初めて知った用語と問題で知った用語はまず印象に残る度合が違う。実戦で得た知識は本番の試験において大きな精神的支えにもなってくれるはずである。高卒生ももちろんだが、特に高校生諸君は早大の過去問に充分に慣れておらず、表面的な難解さで混乱してしまうことが多い。通史の学習を早い段階で終えて、できるだけ多くの過去問に取り組んでほしい(基本事項の定着のためにも早大以外の問題も解いてみるとよい)。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。