2018年度入試
出題分析と入試対策
  神戸大学 国語

過去の出題内容

2018年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取り、内容説明(80字以内)、内容説明(80字以内)、理由説明(80字以内)、論旨を踏まえた内容説明(160字以内) 久保昭博
「ポスト・トゥルースあるいは現代フィクションの条件」
古文 物語 文法、文学史、現代語訳、言葉を補った現代語訳、内容説明、内容説明(80字以内) 紫式部『源氏物語』
「澪標」
漢文 説話 語・語句の読み2問、書き下し2問、現代語訳1問、内容説明1問、理由説明1問(60字以内) 『唐摭言』
巻十一「無官受黜」

2017年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取り、内容説明(80字以内)、内容説明(100字以内)、理由説明(60字以内)、論旨を踏まえた内容説明(160字以内) 三浦雅士『考える身体』
古文 史論書 文学史、文法(「に」の識別)、現代語訳、内容説明、理由説明 慈円『愚管抄』
漢文 伝奇小説 書き下しのみ2問、書き下しと現代語訳1問、内容説明2問(1問は、50字以内) 『太平広記』「虎二」「李徴」

2016年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取り、内容説明(80字以内)、内容説明(80字以内)、内容説明(80字以内)、論旨を踏まえた内容説明(160字以内) 小林康夫『こころのアポリア─幸福と死のあいだで』
古文 説話 文学史、文法(敬語)、現代語訳、内容説明、心情説明、理由説明 『今昔物語集』
漢文 史伝 現代語訳、語の読み、理由説明、書き下し文と現代語訳、主題説明(50字以内) 司馬遷『史記』「滑稽列伝」

出題分析

現代文

<問題文>
2018年度は、フランス文学者久保昭博のフィクションについての文章からの出題であった。神戸大では過去10年以上、一貫して人文系・社会系の硬質な評論が出題されている。今後も、多少は随想的な文章が出題される可能性は否定できないとしても、基本的には言語・文化・思想・社会・歴史・政治・経済といった分野の硬質な論理的文章が多いと見てよいであろう。
本文字数は、5000字程度の評論が出題されることを当然と考えておくべきである。解答時間の余裕が比較的に大きいことからみても、今後とも息の長い読解に耐えうる長文の要旨把握力を養っておく必要がある。

<設問>
設問数は例年5問であり、設問形式も以下の通りで、ほぼ安定している。 問一漢字の書き取り(5箇所)
問二・三・四部分的な説明問題(60字~100字以内)
問五論旨を踏まえた説明問題(160字以内)
2018年度は、問二~四が全て80字以内の制限字数となり、それぞれ80字、100字、60字以内の制限字数となった2017年度とは異なり、2016年度までの形式に戻った。
問二~四では、「この意味段落で論じられている内容の骨子が把握できたか?」という問いが出題されていると考えてよいだろう。それらを踏まえた上で、問五では「全体要旨の把握ができたか?」という問いが出題されているのである。
なお、国語の科目別配点は、現代文80点、古文40点、漢文30点である。センター試験ともども現代文の配点は古文・漢文に比して高いので、現代文の学力不足は致命的となるであろう。

古文

<分量>
過去10年間は、ほぼ1100字程度の長さの文が出題されており、18年度は少し短く730字程度であった。センター試験の古文より短い字数なので、センター試験への対策をしておけば、文の長さへの対応は十分だろう。しかし、設問に答えるのにも時間がかかるので、時間的な余裕はない。国語の試験時間で古文に振り分けることが出来るのは25~30分程度であるから、過去問を30分以内で読み解く練習をしておこう。

<パターン・出典>
すべて記述式で、設問数は5~6題。そのうちの1題の現代語訳は枝問が3問のことが多い(16年度は枝問が4問)。そのうちの1題文法が出題される。ここ数年は、文学史が1題出題されている。残りは内容や心情などを説明させる設問である。説明問題には、字数制限があることが多く、また字数制限のない設問の解答欄の大きさが広い(3行程度)ことがあるので、要約力・記述力が問われる。
出典は、10年度『吉野拾遺』、12年度『松陰日記』などはなじみのない出典からの出題であったが、09年度『源氏物語』、11年度『沙石集』、13年度『平家物語』、14年度『古今著聞集』、15年度『平治物語』、16年度『今昔物語集』、18年度『源氏物語』などは、教科書でも扱われる平安・鎌倉時代の有名な作品からの出題である。特に説話は、この10年間で4回出題されている頻出のジャンルである。過去問や教科書、問題集などで、平安・鎌倉の有名出典について、和歌や文学史を含めた対策をしておこう。

<内容>
①現代語訳
(1)助動詞・助詞・敬語を正確に訳すこと
(2)古文単語を理解して訳すこと
(3)前後の内容から判断して語句を適切に訳すこと
を求めている。日常学習の中で、人物や指示内容を補ったわかりやすい現代語訳をする訓練をしておくと、内容説明問題にも対応できるので、過去問の復習の段階で必ず実行すること。
②文法
過去10年間の出題。
・09年度副詞「いかでか」
・10年度品詞分解
・11年度助動詞「けり」
・12年度敬語の種類・敬意の対象
・13年度助動詞の文法的説明
・14年度品詞分解
・15年度助動詞「けり」
・16年度尊敬語の本動詞の抜き出し→終止形
・17年度「に」の識別(選択肢)
・18年度下二段活用の動詞の抜き出し→終止形
例年、助動詞と敬語を中心とした基礎的な問題が出題されている。
③内容設問
内容説明・心情説明・理由説明・要約・動作主(主語)・人物指摘・指示内容・和歌の修辞・和歌の真意などさまざまな形式で出題されるが、どの設問も文章を正確に読んでいるかどうかを試す立場から出題されている。正確な解釈力とともに、内容を適切に要約する表現力が必要である。特に、指示内容を問う設問が必ずあることと、〔注〕や前書きの中に設問の重要な要素が含まれている場合が多いのが神戸大古文の特徴である。
字数制限付きの最後の設問を見てみると、09年度80~100字、10年度100字以内、11年度100字以内、12年度90字程度(30字程度×3)、13年度50字以内、14年度50字以内、15年度は70字以内であった。16年度は70字以内、50字以内、80字以内、17年度は50字以内、50字以内、70字以内、18年度は80字以内であった。

漢文

<出典と難易度>
神戸大学の漢文の入試問題では、かつて「史伝」と「思想」を交互に出題する傾向が顕著であった。しかし、近年、特に10年度には従来殆ど出題のなかった怪異小説が出題され、11年度には二つの文章(『論語』と『隋書』刑法志)から、12年度は書信、14年度には仏教経典、15年度は文学(散文)、16年度は史伝からと、出題ジャンルは非常に多様化した。
こうした出題ジャンルの多様化との引き替えのように、受験生なら覚えのあるであろう話柄の文章が出題される傾向が強くなった。06年度「孫叔敖と両頭の蛇」、07年度「王昭君」、08年度韓愈「師説」、09年度「蜀僧の南海行き」、11年度「直躬の行動と孝」、12年度「白居易から元稹への手紙」、13年度『貞観政要』の「斉の景公と馬役人と晏子の諫言」(『説苑』や『晏子春秋』を下敷きにした話)など、受験生が問題集などで覚えのある有名な話(或いはそれを下敷きにした話)からの出題が続いた。ただ、14年度『百喩経』(仏典)、15年度『秋声詩自序』(文学)、16年度『史記』「滑稽列伝」では、話柄や内容面でも意表をついたものとなったが、17年度の『太平広記』(人虎伝)、本年度の『唐摭言(とうせきげん)』(孟浩然と王維)は、受験生なら覚えのある話柄や人物に関する文章であった。神大は「受験生が興味深く読める」文章を選んでいるように思われる。
次に、近年の傾向として原文からの省略(節略)が挙げられる。15年度の『秋声詩自序』では、600字を超える原文が163字で出題された。それでもなお、全文のテーマが理解できるように整った出題であった。17年度の『太平広記』からの出題では、中島敦の翻案小説『山月記』で有名な唐代伝奇小説『人虎伝』から、虎の発言部のはじめの140字を省略した。本年度の『唐摭言』の「孟浩然」にまつわる文章でも、23字を省略し、文字も改変している。原文の省略や文字の改変は、学術研究者の禁じ手である。神大は、入試に於いては「受験生に興味深く読んでもらいたい」との意図を明確にして、そのために腹を括っているようだ。
字句の読みなどの問いは、他の問いとのバランスをとって出題されたりされなかったりする。内容説明や理由説明などの本文読解のポイントなる部分は必ず問う。文章によっては全文の要約を問うのと同等の設問が出される。
本年度の出題は説話。23字を省略して総字数148字で、神戸大としては少なめ。設問数は5問。ほぼ全文の要旨を押さえられる良問である。
近年の神大入試漢文の傾向をまとめる。
1.出題ジャンルの多様化 ただし、出題文章は、清と唐のものが多い。
2.受験生も知っているような話柄、もしくは受験生が興味深く読める話柄。
3.全文の理解のためには、省略や文字の改変を厭わない。
以下に、09年度から18年度までの出題ジャンルと、01年度から18年度までの出題本文の字数を示しておく。

年度 出典 時代 字数 ジャンル
09 彭端淑「為学一首示子侄」 163字 随筆
10 蒲松齢『聊斎志異』 200字 怪異小説
11 A『論語』子路篇
B魏徴等『隋書』刑法志
(44字)
(104字)計148字
思想
12 白居易「与微之書」 158字 書信
13 呉競『貞観政要』 128字 史伝
14 『百喩経』 南斉 170字 仏典
15 林嗣環『秋声詩 自序』 163字 文学(散文)
16 司馬遷『史記』「滑稽列伝」 182字 史伝
17 『太平広記』「李徵」 164字 伝奇小説
18 『唐摭言』 五代 148字 説話
年度 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18
字数 171 212 144 190 161 133 144 192 163 200 148 158 128 170 163 182 164 148

<設問数と設問内容>
設問数は、5問か4問、問いの内容は文章の内容と分量とによる。150字前後の短い文章でも、語や語句の読み・意味を問うのに恰好なものがあれば小問(枝問)として2~3問設ける。逆に200字前後の長い文章でも、内容本位の問いを設けやすいときには、語や語句の読みなどの小問は立てない。
本年度は、総字数148字。設問は5問。
問一、語・語句の読み2問。副詞「偶」、疑問詞「奈何」。
問二、書き下し2問。出題文に返り点無し。すべて平仮名で。受身、再読文字。
問三、現代語訳。出題文に返り点無し。「素」の読み。
問四、内容説明。主語と動作内容の説明。
問五、理由説明(60字以内)。登場人物の心理の把握とその理由。全文の文脈の把握を問う。字数制限に注意。
参考までに、01年度以降の設問内容を表にまとめておく。


























































01 すべて記述(問四は70字制限)
02 すべて記述(問四は100字制限)
03 問二は語・語句の意味に分類
04 問三は語・語句の意味に分類
(問二は80字制限・問四は50字制限)
05 すべて記述(問四②は70字制限)
06 すべて記述(問四は50字制限)
07 問一が選択3問と記述3問(語・語句)
(問二は40字制限)
08 すべて記述(問五は70字制限)
09 問一②は語・語句の読みに分類
すべて記述(問四は90字制限)
10 すべて記述
11 すべて記述
12 すべて記述(問五は80字制限)
13 すべて記述。問四の目的説明(100字制限)は内容説明に分類
14 すべて記述。問五の内容・要旨説明は50字制限。
15 すべて記述。問四の表現意図の説明(50字制限)は、内容・要旨要約に分類。
16 すべて記述。問五の説明(50字制限)は、内容・要旨要約に分類。
17 すべて記述。問四の説明(50字制限)は、内容・要旨要約に分類。
18 すべて記述。問五の理由説明は、60字制限。
…設問数4以上●…設問数3◎…設問数2
○…設問数1

※01年度の返り点をつける問いも「記述」とした。

※12年度の状態・状況指摘の抜き出し問題も、「記述」とした。

如上の表から神大の設問の特徴を分析すると、

・書き下しは、殆ど必ず出題される。

・現代語訳も、殆ど必ず出題される。同一文で書き下しと現代語訳が問われることも多い。

・内容・原因(理由)・目的・結果などの説明問題も、必ず出題される。現代語訳と指示内容説明、理由説明と指示内容説明とが同文・同問で問われることもある。単純な内容説明では「具体的」な説明が求められることが多い。

・ジャンルによって(文学作品などで)は、「表現意図」などの一歩踏み込んだ説明も求められる。

・語や語句の読み・意味などの知識問題は、文章の分量と内容やその他の設問とのバランスによって問われたり問われなかったりする(読み・意味の問いが同時に文脈理解を問うものであることも多い)。

とまとめられる。また、現代語訳や内容説明、書き下し文などでは、10字前後の比較的短めの原文が問われることが多い。

入試対策

《現代文》

神戸大の現代文では、著名な著者による、比較的に新しい一般向けの書籍から出題されることが多いので、入試頻出の各分野から著名な著者による定評のある新書・選書を1、2冊ずつ選んで読んでおくと、内容理解の一助となるであろう。予備知識・背景知識などが求められているわけではなく、あくまでも読解力そのものが求められているのではあるが、同じ読むのであれば、定評のある著者のもの、典型的なテーマ・分野のものになじんでおくのがよい。
漢字問題(問一)に関しては、標準的なものが多いので、漢字問題集を解きながら、国語辞典を引いて意味とともに漢字を確認する習慣をつけるとよい。
部分的な説明問題(問二~問四)では、傍線部を含む一文の文構造(とくに主述関係)から解答該当箇所の内容を推測・限定するとともに、一方で、長文だからこそ、大きく要点箇所を絞り込んでいき、傍線部との対応関係を踏まえて解答を構成するという解き方が、(センター試験問題にも)有効である。
160字の条件付き要約型問題(問五)では、長文の評論を150字前後で要約する練習を積むことである。単純に全体を機械的に圧縮するのではなく、必要なポイント(主題・結論・論拠など)を意識してまとめる練習が効果的である。
センター試験までは、センター評論の要旨まとめなどで良いであろう。要旨まとめだけでなく、第1問の問2~問5までを、復習段階では選択肢を見ないで記述するようにすれば、より望ましい。いずれにせよ、客観的な読解法と論理的な解答法を用いた練習を積むことが基本となる。

《古文》

(1) 正確に読むこと(現代語訳する力)
(2) 内容について考えること(読解する力)
(3) 読み取った内容をまとめること(説明する力)
神戸大古文は、この三点ができているかどうかを試そうとしている。ポイント(1)については、文法や語句の意味に忠実に正確な現代語訳をすることができるかどうかを問うている。古文を読む時に、想像でなんとなく読んでいるという人は特に気をつけて欲しい。自分勝手にではなく、文中の助動詞や敬語に気をつけて正確に読む練習を繰り返そう。これをきちんとしておけば現代語訳の問題、文法問題に対応できる力が付く。ポイント(2)については、「この段落はこういうテーマで書かれていた」「この場面で、この人物はこういう心情だ」と把握できるかどうかを問うている。いくら品詞分解ができ、単語の意味がわかっても、そこに書かれている文の内容がわからなければ設問には答えられない。場面や動作主(主語)を常に念頭に置いて、「何がどんなだ」「誰がどうした」と意識しながら読むようにしなければならない。この読解力こそが、古文で得点するためのもっとも重要な力である。ここがしっかりとしていなければ、いくら文字を書き連ねても得点することができない。ポイント(3)については、(2)で読み取ったことを、人にわかるように説明できるかどうかを問うている。神戸大の説明問題は、単に訳をずらずらと書き並べるだけでは通用しない。本文の重要な部分を読み取って、それを簡潔な日本語にまとめる練習をしておく必要がある。説明問題は、慣れていない間は答えるのに時間がかかる。本番で古文に割り当てることができる時間は30分程度であるので、過去問を30分以内で読み解けるようになるまで、何度でも繰り返して学習することである。
総合的に問題を見てみると、どの年度も難問・奇問が出題されることはほとんどなく、高等学校での基礎学習がきちんと反映され、受験生が実力を発揮できるオーソドックスな問題である。こういう古文に対応するためには、平安・鎌倉時代の敬語を含んだ古文を重点的に学習することである。文学史や和歌が出題されることもあるが、どれも高等学校の学習範囲で対応できるものである。古文常識についても、授業で学んだ範囲が理解できていればよい。何よりも、古文を予習・復習する際に、「(1)訳せる」「(2)内容がわかる」「(3)説明できる」という三点を常に意識して学習することが、合格への近道である。

《漢文》

まず、基本的な句形・語法に習熟すること。書き下しや現代語訳を問う設問の多くは、句形・語法の知識と、文脈理解とをあわせて問うものとなっている。
次に、重要語の読みと意味とをしっかり把握すること。疑問詞の読み方や問う内容、副詞の読み方と細かなニュアンスの違いを問うこともある。いずれも、話の展開の上で重要な語である。例えば、「何如」と「如何」の違い、「すなはち」と読む「則」「即」「乃」「便」「輒」などは、読み方だけでなく、意味(微妙なニュアンスの違い)を問うこともあった。文章全体を読解する上で重要なポイントとなる接続詞や副詞は、好んで問われるようだ。
最後に、200字程度の文章に慣れ、細かな現代語訳にこだわって立ち止まったりせずに、全文の主題を捉えることを中心に読解してゆく訓練を積んでおいて欲しい。全文の構成を読み取り、全体の主題を理解するヒントをいち早く読み取って欲しい。初めから一文一文を現代語訳して行くというような、細部にこだわる読み方からは脱却して欲しい。部分の集積が全体ではない。文章全体を見渡し、味わう態度を身につけて欲しい。近年の神大は、おもしろい(興味深い)文章を出題している。それを楽しむつもりで臨むことこそ、実は全文理解の近道である。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。