2017年度入試
出題分析と入試対策
  神戸大学 国語

過去の出題内容

2017年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取り、内容説明(80字以内)、内容説明(100字以内)、理由説明(60字以内)、論旨を踏まえた内容説明(160字以内) 三浦雅士『考える身体』
古文 史論書 文学史、文法(「に」の識別)、現代語訳、内容説明、理由説明 慈円『愚管抄』
漢文 伝奇小説 書き下しのみ2問、書き下しと現代語訳1問、内容説明2問(1問は、50字以内) 『太平広記』「虎二」「李徴」

2016年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取り、内容説明(80字以内)、内容説明(80字以内)、内容説明(80字以内)、論旨を踏まえた内容説明(160字以内) 小林康夫『こころのアポリア─幸福と死のあいだで』
古文 説話 文学史、文法(敬語)、現代語訳、内容説明、心情説明、理由説明 『今昔物語集』
漢文 史伝 現代語訳、語の読み、理由説明、書き下し文と現代語訳、主題説明(50字以内) 司馬遷『史記』「滑稽列伝」

2015年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取り、理由説明(80字以内)、内容説明(80字以内)、内容説明(80字以内)、論旨を踏まえた内容説明(160字以内) 市村弘正『標識としての記録』所収「失敗の意味」
古文 軍記物語 文学史、文法(助動詞)、現代語訳、内容説明(70字以内)、理由説明(70字以内) 『平治物語』
漢文 文学 語の読み2問、理由説明2問、書き下し文と現代語訳、表現意図の説明(50字以内) 林嗣環『秋声詩 自序』

出題分析

現代文

<問題文>
2017年度は、舞踊研究者の三浦雅士による精神と身体の区分を無化する舞踊についての評論であった。神戸大では過去十年以上、一貫して人文系・社会系の硬質な評論が出題されている。今後も、多少は随想的な文章が出題される可能性は否定できないとしても、基本的には言語・文化・思想・社会・歴史・政治・経済といった分野の硬質な論理的文章が多いと見てよいであろう。
本文字数は、5000字程度の評論が出題されることを当然と考えておくべきである。解答時間の余裕が比較的に大きいことからみても、今後とも息の長い読解に耐えうる長文の要旨把握力を養っておく必要がある。

<設問>
設問数は例年5問であり、設問形式も以下の通りで、ほぼ安定している。 問一漢字の書き取り(5箇所)
問二・三・四部分的な説明問題(60字~100字以内)
問五論旨を踏まえた説明問題(160字以内)
2017年度は、問二~四が全て80字以内の制限字数であった2016年度までとは異なり、それぞれ80字、100字、60字以内の制限字数となったが、記述総字数はこれまでと同じく400字であった。
問二~四では、「この意味段落で論じられている内容の骨子が把握できたか?」という問いが出題されていると考えてよいだろう。それらを踏まえた上で、問五では「全体要旨の把握ができたか?」という問いが出題されているのである。
なお、国語の科目別配点では、現代文80点、古文40点、漢文30点である。センター試験ともども現代文の配点は古文・漢文に比して高いので、現代文の学力不足は致命的となるであろう。

古文

<分量>
過去10年間は、ほぼ1100字から1200字の長さの文が出題されており、17年度は少し短く1000字程度であった。センター入試の古文より短い字数なので、センター入試への対策をしておけば、文の長さへの対応は十分だろう。しかし、設問に答えるのにも時間がかかるので、時間的な余裕はない。国語の試験時間で古文に振り分けることが出来るのは25~30分程度であるから、過去問を30分以内で読み解く練習をしておこう。

<パターン・出典>
すべて記述式で、設問数は大問が5~6題。そのうちの1題の現代語訳は小問が3問のことが多い(16年度は小問が4問)。そして文法が1題出題される。ここ数年は、文学史が1題出題されている。残りの3~4題は内容や心情などを説明させる設問である。説明問題には、字数制限があることが多く、また字数制限のある設問以外でも解答欄の大きさが広い(3行程度)ことがあるので、要約力・記述力が問われる。
出典は、10年度『吉野拾遺』、12年度『松陰日記』などはなじみのない出典からの出題であったが、08年度『古本説話集』、09年度『源氏物語』、11年度『沙石集』、13年度『平家物語』、14年度『古今著聞集』、15年度『平治物語』、16年度『今昔物語集』などは、教科書でも扱われる平安・鎌倉時代の有名な作品からの出題である。特に説話は、この10年間で5回出題されている頻出のジャンルである。過去問や教科書、問題集などで、平安・鎌倉の有名出典について、和歌や文学史を含めた対策をしておこう。

<内容>
①現代語訳
(1)助動詞・助詞・敬語を正確に訳すこと
(2)古文単語を理解して訳すこと
(3)前後の内容から判断して語句を適切に訳すこと
を求めている。日常学習の中で、人物や指示内容を補ったわかりやすい現代語訳をする訓練をしておくと、内容説明問題にも対応できるので、過去問の復習の段階で必ず実行すること。
②文法
過去10年間の出題。
・08年度「る」の識別(動詞・助動詞)
・09年度副詞「いかでか」
・10年度品詞分解
・11年度助動詞「けり」
・12年度敬語の種類・敬意の対象
・13年度助動詞の文法的説明
・14年度品詞分解
・15年度助動詞「けり」
・16年度尊敬語の本動詞の抜き出し
・17年度「に」の識別
例年、助動詞と敬語を中心とした基礎的な問題が出題されている。
③内容設問
内容説明・心情説明・理由説明・要約・動作主(主語)・人物指摘・指示内容・和歌の修辞・和歌の真意などさまざまな形式で出題されるが、どの設問も文章を正確に読んでいるかどうかを試す立場から出題されている。正確な解釈力とともに、内容を適切に要約する表現力が必要である。特に、指示内容を問う設問が必ずあることと、〔注〕や前書きの中に設問の重要な要素が含まれている場合が多いのが神戸大古文の特徴である。
字数制限付きの最後の設問を見てみると、08年度90~100字、09年度80~100字、10年度100字以内、11年度100字以内、12年度90字程度(30字程度×3)、13年度50字以内、14年度50字以内、15年度は70字以内であった。16年度は70字以内、50字以内、80字以内、17年度は50字以内、50字以内、70字以内であった。近年、字数制限の問題では字数が少なくなる傾向にある。

漢文

<出題と難易度>
神戸大学の漢文の入試問題では、かつて「史伝」と「思想」を交互に出題する傾向が顕著であった。しかし、近年では出題のジャンルも形式も多様化し、特に10年度には従来殆ど出題のなかった怪異小説が出題され、11年度には二つの文章(『論語』と『隋書』刑法志)から、12年度は書信、14年度には仏教経典、15年度は文学(散文)、16年度は史伝からと、出題ジャンルは非常に多様化した。
ただ、こうした出題ジャンルの多様化との引き替えのように、受験生なら覚えのある(入試に頻出の)話柄の文章が出題される傾向が強くなっていた。06年度「孫叔敖と両頭の蛇」、07年度「王昭君」、08年度韓愈「師説」、09年度「蜀僧の南海行き」、11年度「直躬の行動と孝」、12年度「白居易から元稹への手紙」、13年度は『貞観政要』の「斉の景公と馬役人と晏子の諫言」(『説苑』や『晏子春秋』を下敷きにした話)であった。受験生が問題集などで覚えのある有名な(或いはそれを下敷きにした)話からの出題が続いた。
ところが、14、15年度は仏典と文学作品、16年度は史伝ではあるが「滑稽列伝」からの出題で、内容面でも意表をついたものとなった。出題ジャンルにとらわれず、「読んでおもしろい」文章を選んでいるように思われる。この傾向は15年度の『秋声詩自序』という名文から多くの文字を省略して、なおも全文のテーマが理解できるように整えて出題してみせたことに、象徴的に表れている。600字を超える原文の本質を、たった163字を抜粋することで表したのである。入試問題としては、原文の省略は禁じ手である。これほど省略してでも、この文章を使いたかったのか、と思わせるような文章のでき、省略の適切さであった。ジャンルを問わず、読んで「おもしろい文章」の出題がこのところの神大の出題傾向であると言えよう。本年度の出題、中島敦の翻案小説で有名な唐代伝奇小説『人虎伝』(『李徴』)も、この傾向を継いでいる。
入試問題としては、確実に難化している。字句の読みなどの点数稼ぎになるものは少なくなり、文章に合わせて、内容説明や理由説明などの本文読解のポイントとなる部分を問うようにしている。文章によっては全文の要約を問うのと同等の設問が出されている。
本年度の出題は唐代伝奇小説。総字数164字は、神戸大としては標準(ただし、虎の発言からはじめの140字を省略している)。設問数は四。ほぼ全文の要旨を押さえられる良問である。
以下に、2009年度から2017年度までの出題ジャンルと、2000年度から2017年度までの出題本文の字数を示しておく。

年度 出典 時代 字数 ジャンル
09 彭端淑「為学一首示子」 163字 随筆
10 蒲松齢『聊斎志異』 200字 説話
11 A『論語』子路篇
B魏徴等『隋書』刑法志
(44字)
(104字)計148字
思想
12 白居易「与微之書」 158字 書信
13 呉競『貞観政要』 128字 史伝
14 『百喩経』 南斉 170字 仏典
15 林嗣環『秋声詩 自序』 163字 文学(散文)
16 司馬遷『史記』「滑稽列伝」 182字 史伝
17 『太平広記』「李徵」 164字 伝奇小説
年度 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
字数 155 171 212 144 190 161 133 144 192 163 200 148 158 128 170 163 182 164

<設問数と設問内容>
大問数は、5問か4問、問いの内容は文章の内容と分量とによる。150字前後の短い文章でも、語や語句の読み・意味を問うのに恰好なものがあれば小問(枝問)として2~3問設ける。逆に200字前後の長い文章でも、内容本位の問いを設けやすいときには、語や語句の読みなどの小問は立てない。
本年度は、総字数164字。大問は4問。問一、書き下し二問。「素」「厚」の意味・読み、「自」「勝」の意味・読みを問う。問二、書き下しと現代語訳のセット。「何」と「耶」による疑問。「能」の読みと文脈の理解を問う。問三、内容説明。「昧」と「平生」の意味が鍵。問四、内容説明(50字以内)。「備之」の意味(文脈)。再読文字「宜」の意味用法と同時に、全文の文脈の把握を問う。字数制限に注意。
参考までに、2000年度以降の設問内容を表にまとめておく。


























































00 すべて記述(問五は70字制限)
01 すべて記述(問四は70字制限)
02 すべて記述(問四は100字制限)
03 問二は語・語句の意味に分類
04 問三は語・語句の意味に分類
(問二は80字制限・問四は50字制限)
05 すべて記述(問四②は70字制限)
06 すべて記述(問四は50字制限)
07 問一が選択3問と記述3問(語・語句)
(問二は40字制限)
08 すべて記述(問五は70字制限)
09 問一②は語・語句の読みに分類
すべて記述(問四は90字制限)
10 すべて記述
11 すべて記述
12 すべて記述(問五は80字制限)
13 すべて記述。問四の目的説明(100字制限)は内容説明に分類
14 すべて記述。問五の内容・要旨説明は50字制限。
15 すべて記述。問四の表現意図の説明(50字制限)は、内容・要旨要約に分類。
16 すべて記述。問五の説明(50字制限)は、内容・要旨要約に分類。
17 すべて記述。問四の説明(50字制限)は、内容・要旨要約に分類。
…設問数4以上●…設問数3◎…設問数2
○…設問数1

※01年度の返り点をつける問いも「記述」とした。

※12年度の状態・状況指摘の抜き出し問題も、「記述」とした。

如上の表から神大の設問の特徴を分析すると、

・書き下しは、殆ど必ず出題される。

・現代語訳も、殆ど必ず出題される。同一文で書き下しと現代語訳が問われることも多い。

・内容・原因(理由)・目的・結果などの説明問題も、必ず出題される。現代語訳と指示内容説明、理由説明と指示内容説明とが同文・同問で問われることもある。単純な内容説明では「具体的」な説明が求められることが多い。

・ジャンルによって(文学作品などで)は、「表現意図」などの一歩踏み込んだ説明も求められる。

・語や語句の読み・意味などの知識問題は、文章の分量と内容やその他の設問とのバランスによって問われたり問われなかったりする(読み・意味の問いが同時に文脈理解を問うものであることも多い)。

とまとめられる。また、現代語訳や内容説明、書き下し文などでは、10字前後の比較的短めの原文が問われることが多い。

入試対策

まず、基本的な句形・語法に習熟すること。書き下しや現代語訳を問う設問の多くは、句形・語法の知識と、文脈理解とをあわせて問うものとなっている。
次に、重要語の読みと意味とをしっかり把握すること。「復」や「惟」(06年度)、「所以」「是以」「以為」(07年度)などの読み方や、「輒」と「乃」とのニュアンスの違いを問う(00年度)など、読みや意味が問われてきた。「忽」や「便」、「俄」のニュアンスなど、文章全体を読解する上で重要なポイントとなる接続詞や副詞も問われた。
最後に、200字程度の文章に慣れ、細かな現代語訳に拘って立ち止まったりせずに、全文の主題を捉えることを中心に読解してゆく訓練を積んでおいてほしい。全文の構成を読み取り、全体の主題を理解するヒントをいち早く読み取ってほしい。形式の理解は全体の内容を理解するための助けとなる。初めから細部に拘る読み方からは脱却してほしい。そして文章全体を味わう態度を身につけてほしい。近年の神大は、小手先の知識ではなく、内容本意の本格的で上質な問いを設けるようになっている。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。