2017年度入試
出題分析と入試対策
  大阪大学 生物

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容
〔1〕 刺激と反応 絶縁性伝導、神経経路(閾値と伝導速度の異なるニューロンからなる神経を用いた実験)
〔2〕 代謝・酵素 光リン酸化と酸化的リン酸化、ルーベンの実験、競争的阻害
〔3〕 遺伝・集団遺伝 減数分裂、独立と連鎖、三点交雑、ハーディ・ワインベルグの法則
〔4〕 発生、遺伝子、分類 ウニの発生、新口動物とその分類、誘導と遺伝子

2016年度

番号 項目 内容
〔1〕 刺激と反応 動物の行動、興奮の伝導と伝達、神経経路(興奮性ニューロンと抑制性ニューロン)
〔2〕 代謝 呼吸経路、ミトコンドリアにおける電子伝達と酸化的リン酸化、燃料電池
〔3〕 遺伝情報とタンパク質 遺伝子突然変異とタンパク質の立体構造(四次構造)の形成
〔4〕 体液の恒常性 血糖値調節と糖尿病、グルコースの代謝

2015年度

番号 項目 内容
〔1〕 動物の反応と行動 ヒトの眼の構造と働き、マウスの瞳孔反射
〔2〕 遺伝情報 選択的スプライシング
〔3〕 動物の反応と行動 ショウジョウバエの概日リズムと遺伝子、マウスの概日リズムと日周リズム
〔4〕 体内環境の維持 ヒトの腎臓の働き、ホルモンによる体液量や血圧の調節、マウスの血圧調節における腎臓の役割

出題分析

分量

過去10年以上大問数は4題で、17年度も4題である。18年度以降も4題を基本とするだろう。2000年頃の阪大入試の特徴は、問題文の異様な長さ・難しさ・量の多さ・論述問題の多さと表現できたが、以後その特徴は徐々に緩和され、04~12年度の間は"普通の入試問題"といえる内容であった。13年度・14年度は一気に難化し、分量も多くなり、出題傾向がはっきり変化した印象を受けたが、15年度は一転して標準レベルの設問が増加し、17年度まで大きな変化はない。論述量は12年度の730字に対して13年度1030字、14年度970字、15年度は字数指定部分だけで780字、計算過程の説明などで700字以上、合計約1500字と多い。16年度より「○行程度で示せ」の形式となり、字数制限はなくなり、17年度は計36行程度(1行約25字)が要求された。小問数は12年度の16に対して13年度は25、14年度は22、15年度は24、16年度は22、17年度は25となっており、18年度も分量はここ数年と同様な傾向が予想される。

内容

「代謝」、「遺伝情報」と「反応と調節」が大きな3本の柱である。来年度以降の入試でもこの傾向は変わらないと考えられるが、現行課程の内容に沿って、従来にも増して遺伝子レベル、分子レベルの出題が増加する可能性がある。というよりも、阪大ではすでに13年度以降の入試は実質的に新課程入試であったといってよいかもしれない。15年度に限っては、「概日リズム」という現行課程の教科書でほとんど記述がないテーマの出題がみられ、大学側の出題意図について疑問を感じざるを得ず、もっと受験生の努力が得点に反映するような出題であってほしいところである。
従来の出題からみた要注意テーマとして、「代謝」では「酵素反応」「光合成」「筋収縮」、「遺伝情報」では「DNAの構造・複製・変異」「遺伝情報の発現とその調節」、「反応と調節」では「ホルモン」「神経」「免疫」「植物の調節」「体液濃度の調節」などを挙げることができる。そのほか、「細胞骨格・モータータンパク質」「発生・遺伝子工学」「ホルモン・神経や免疫におけるいろいろな受容体」などもしっかり学習しておくことが必要である。12年度は「進化・系統分類、生態」が久し振りに出題されたが、13年度~17年度は17年度の集団遺伝、分類の小さな設問を除いて、出題がなかった。

難易度

ここ数年間を見てもかなり変動がある(ここ3年は易化傾向)が、現行課程で教科書に新たに加わった分子レベル・遺伝子レベルの記述も含めて、知識、実験考察・論述、計算などを試す比較的難度の高い問題が出題される可能性が大きい。やはり十分な問題演習で実力を養っておくことが重要となる。ただ、大問としては難しくても、比較的解きやすい小問が多少とも用意されていることが多いので、そこで確実に正答することが大切である。また、論述量が多かったり、意味を取り違えやすい設問があると、標準的な難度の問題であっても、題意に合わない答案などで、意外に取りこぼしが多くなる可能性がある。その意味でも知識の確認と問題演習が大切といえよう。なお、阪大では、難問が出題された場合の採点基準はかなり緩く、思った以上に得点できていることがあるようである。

入試対策

★基礎的知識を完璧にすること

上述したように、阪大ではかなりの難問が出題されることもある。思考力もきわめて重視されるので、受験生の心理として一刻も早く難問対策に入りたいところであるが、いかに難問といっても、肝心の基礎ができていないと、いくら難問の演習を重ねても得点力はアップしない。問題演習をこなすなかで知識や思考力は高まっていくものだが、それはあくまでも最低限の知識があってのことである。やはり地道に基礎から固めていくことが難問に強くなる上での一番の近道なのである。
まず、第一段階として、教科書レベルの知識を身につけることをめざすのがよい。ただ、教科書を読むだけではポイントがわからないことが多いので、一通り教科書を読んだら、標準的な問題集で知識をチェックするのもよいだろう。注意しないといけないのは、単に用語とその意味を記憶するといった、断片的な知識ではあまり役に立たないことである。さまざまな生物間での比較、生物どうしの関係、調節のしくみ、生物現象の適応的意味といった具合に、体系的、論理的に理解し、覚えることが必要である。『生物用語集』(駿台文庫)は、そのような目的に適した本のひとつである。
また、講談社ブルーバックスや岩波新書などでは、現代的なテーマをわかりやすく解説した本がいくつも出版されている。そうした本を読むのは、思考力を鍛える上でも、新しい知識を身につける上でも大変有効である。授業で教わるという、いわば"受動的学習"と、自分で本を読むなどのいわば"能動的学習"の両輪が揃って初めて本当の実力が得られるのである。

★思考問題に強くなろう

考える力、さらには出題意図を見抜く力は一朝一夕につくものではない。特別なテクニックがあるわけではない。教科書に出てくるような実験やグラフを学ぶとき、結果のみを憶えるのではなく、その実験がなぜ必要なのか、この実験では何がわかったのか、この実験だけから結論してよいのかなどについて日頃から考える習慣を身につけること。何事も説明を鵜呑みにせず、自分で納得できるまで考える習慣をつけることが思考問題に強くなる最上の方法である。もちろん、そうした努力に加えて、思考問題が比較的多く収録されている問題集をこなすことが有効である。

★論述問題に強くなろう

阪大の場合、実験考察に関連した論述問題が非常に多いので、思考力を高めることが大前提となる。逆に、論理的な思考力さえしっかりしていれば、それを単に文章化する能力があれば十分といえる。特に論述が苦手な人は、次のように論述の初歩から練習すること。まず、基本的な用語の説明を1~2行で書いてみることから始め、次にいろいろなしくみ、例えば「血糖量調節のしくみ」「浸透圧(体液濃度)調節のしくみ」などについて100~200字程度で説明してみる。問題演習や授業の予習などで論述問題の答案をつくるときには、頭のなかで考えているだけでなく、実際に字数も考慮しながら書いてみることが大切である。さらには、自分で書いた文章を教師に添削してもらうなどの機会をもつことができればそれに越したことはない。

★描図・グラフ対策も忘れぬよう

阪大では、そんなにマニアックな図を要求されるわけではない。細胞小器官、両生類の神経胚の断面図のように、普通に勉強していれば必ずお目にかかる図である。教科書に出ている図で重要なものは、実際に手を動かして描いてみること。目で見てわかったつもりになっていることと、実際に自分の手で描いてみることとはまったく違うものである。阪大では、グラフ作成はよく出題される。それぞれの場合に、プロットを直線で結ぶのと滑らかな曲線で結ぶのとどちらが適当かなどを考えながら、阪大の過去問などでデータをグラフ化する練習を積んでおくのが適当である。

★出題傾向をよく研究しよう

あまり早くから出題傾向を意識しすぎて学習するのは好ましくない。やはり一通りは全分野を学習して、どんな分野が出題されても対応できるようになっておくべきである。しかし内容でも述べたように、頻出分野があることも確かなので、一通りの学習を終えた後で、それらの分野については、より深く学習する必要がある。なかでも「遺伝情報」については、いろいろな計算問題に慣れることはもちろん、最近のゲノムや遺伝子工学などの知識も必須である。また、特定のテーマが過去に繰り返し出題されているので、過去問の演習をできるだけ昔にさかのぼって行うことも有効である。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。