2017年度入試
出題分析と入試対策
  神戸大学 地学

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容 形式
地質・鉱物 地球の歴史 穴埋め、説明、記述、描図
地球物理 重力異常と地震 穴埋め、説明、計算、描図
天文 ケプラーの法則、地球の放射エネルギー、惑星の受けるエネルギー、食による光度変化 穴埋め、計算、説明

2016年度

番号 項目 内容 形式
地質・鉱物 岩石・鉱物、アイソスタシー 穴埋め、計算、論述
地球物理 地球上の流れ、水収支、深層水の形成 穴埋め、計算、論述
天文 等級と明るさ、シュテファン・ボルツマンの法則 記述、計算、論述

2015年度

番号 項目 内容 形式
地質 地球の歴史と化石、環境変化 穴埋め、説明、選択
地球物理 エルニーニョ、風成海流、海水の循環 穴埋め、説明、選択
天文 太陽の物理 穴埋め、説明、計算

出題分析

全体像

2017年度の出題数は大問3題でまったく変化せず、安定している。出題分量はやや増加したが、特筆するような増加ではない。難易度はここ数年来大きな変化は見られず標準的といえる。2016年度は、新課程としての出題になれてきたような印象を受ける出題であったが、2017年度はさらに洗練されてきた印象を受ける。教科書の記載内容から大きく離れないことに留意して、受験生が教科書をどの程度理解しているかを見ようとする出題がほとんどであり、新しい課程で詳しくなった部分からの出題がほとんどとなった。これは、新課程の受験生が理系学部に入ってやっていけるかを見ようとする新しい神戸大の特徴となるかもしれない。すなわち、2017年度のような出題を、標準的な受験問題として今後前面に出してくることが推測される。とはいえ、計算の出題が減少したように見えても、論述あるいは記述問題で受験生の理解の程度を見たり、図を描かせることで理系としての基本能力を見ようとする姿勢は出題の底に見られ、継続している。

今年度の特徴

神戸大の地学関係の学科である地球惑星科学科の中の惑星科学、地球科学から天文、地球物理、地質鉱物を1題ずつ出題していると思われる形は変化していない。地球の歴史については新課程では詳細に取り上げられているので、神戸大に限らず多くの大学で出題された。2016年度に続いて、教科書に記載されている新課程の内容をしっかりと理解していること、特に新課程での取り扱いが詳細になった内容をしっかりと理解していることが必要な出題が目に付いた。これは、新課程の教科書そのものから一歩踏み込むことを意識した問題を2016年に続いて出題したといえる。その目で見ると、新課程の特徴は、「最近の研究成果を取り入れた地球科学と宇宙科学のストーリーの面白さ」を地学の教科書に取り込んでいる。地学の暗記事項をしっかりと頭に入れ、教科書に記された話の筋道に興味をもてれば「問題の意味がわからない」というようなことはない。このような出題は課程変更の前後から見え始めているので、新しい神戸大の特徴となったのではないかと思われる。

内容

先カンブリア時代の地球環境がどのようなものであったかをどのようにして解明していったかをテーマにした出題である。この問題では、ウランの価数の違いによる難溶性と易溶性の違いが、大気中の酸素量とどのように結びつくのかが高校地学で理解できるかが問題である。しかし、それにとらわれなくても正解することは可能である。
地球の形と重力についての出題で、それからの発展として断層と重力異常の関係および地震の発震機構(押し引き)が問われている。重力異常を調べるときの「補正」の種類とその意味、また、発震機構のPT図の意味と描き方はしっかりと理解しておく必要がある。
2016年に続き、「恒星の光度」とシュテファン・ボルツマンの法則の関係が出題された。また、連星系の光度変化と公転周期の関係、およびそれがケプラーの法則とどのように結びついているかをしっかりと理解していなければならない。そのために必要なことは、「万有引力の法則からケプラーの第3法則を導く」ことを実際に計算して確かめておくべきである。

傾向

出題数は3問でまったく変動していない。2017年度の出題は、穴埋め、記述、説明、計算、描図であった。計算はⅡ、Ⅲに出題されたが、計算量は減少している。計算のレベルは難しい計算を要求するものではなく、基礎をしっかりと理解し、複雑さに惑わされなければ標準的な内容である。計算の減少分は、3年間出題されていなかった図示を要求する出題として補われた。全体としては量的な変化は、2015年度以来ほとんど変化していない。また、描図の復活、計算量の減少という表面の変化に関係なく、神戸大の「受験生の理系としての能力を見よう」とする出題意図は失われていない。出題のレベルは地学の基本的な内容を理解しているかを問うものであり、過去の出題と著しくかけ離れたわけではない。「新課程はストーリー重視」だからといって、個々の事項を単純に暗記するのではなく、ストーリーの流れをしっかりとつかみ、それに沿って個々の事項のつながりをつかんでいれば十分に解答できる内容である。
神戸大の出題は、地学を担当しているであろう地球惑星科が、太陽系科学、地球物理学、地質・岩石・鉱物学などを主に研究していて、各研究分野から1題ずつの出題を標準としていると見られる。新課程では、太陽系の研究と岩石・鉱物の研究が結びついている内容や地球物理学と岩石・鉱物の結びつきのような内容も多く扱われている。したがって、どの分野から出題されるか、というような詮索は意味のないことである。2016年度の出題は新課程教科書に記載されていることを踏まえて、各分野を横断するような出題が問題Ⅰに覗える。このような出題は今後も十分考えられるので、最も基本的な事項はしっかりと頭に叩き込み、基本的事項の間のつながりがどのように理解されているのかをつかむことが大切である。

入試対策

新課程になって、出題者側も様子見といった印象の出題であり、特別な対策などを探るというのは無駄な努力であろう。無駄な努力に時間を費やすよりは、新課程の基本的な姿勢につながる学習をすることが対策としては必要であろう。それは、「分野を別々に勉強する」という組み立て方とは異なっていて、最新の研究成果によってどのようなストーリーが描かれているのかを表に出している。しかし、単にストーリーを暗記するだけでは直ちに行き詰まってしまうことになる。というのは、ストーリーを組み立てる上で、自然科学のものの考え方が当然使われているからである。それ故、勉強の方法としては、高校地学の内容をしっかりと咀嚼し、その上で、「地学の考え方」を身につけることが必要である。「地学の考え方」といっても漠然としているが、「目の前で、実際に生じている現象あるいは事物を物理や化学の知識を用いて理解する」のが地学の目的の一つであるといえば了解してもらえるのではないだろうか。これからでてくる一般的な対策としては
A:
物理や化学の素養を身につける
B:
その素養をもとにして地学現象がどのように解明されるかを理解する。
という2点が上げられる。ここでいう「物理や化学の素養」というのは、入試問題を解くことをいっているのではない。たとえば、「電流」は荷電粒子の流れであり、電流が流れるとその周囲に磁場が生じる、といった中学理科程度のことを理解しておくことである。すると、太陽風が荷電粒子の流れであることから、それに付随する磁場と地球磁場が影響しあうことは予測できるようになる。2017年度でいえば、問題Ⅰのウランの価数の問題、問題Ⅱの重力異常の説明、問題Ⅲの天体間の距離の求め方やケプラーの法則の使い方などが物理や化学の素養に当たる。このような素養の上に立って、
天文分野:太陽の表面現象 太陽系の形成 惑星 恒星の物理 銀河(宇宙論)
地球物理分野:地震 地球の熱収支 超高層大気 プレートテクトニクス
地質鉱物分野:マグマの発生と火成岩、岩石の変成条件、全地球史の概要
などに学習上の力点を置けばよいのではないか。ただし、あくまでも高校地学の基本をしっかりと身につけた上で、という条件が付いて上記のⅠ~Ⅲに力点を置くことが大切である。間違ってもⅠ~Ⅲだけを学習すればよいなどと考えないように。さらに、三角比を含めた図形の取り扱い、指数・対数を用いた計算法や対数グラフの読み方、描き方といった数学的な力、有効数字の考え方と計算法なども必要である。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。