2018年度入試
出題分析と入試対策
  大阪大学 国語

過去の出題内容

▼人間科学部・外国語学部・法学部・経済学部

2018年度

番号 種別 内容 出典
現代文
(評論)
漢字の読み取り、理由説明(100字)、理由説明(150字)、内容説明(70字) 猪木武徳
『自由の条件―スミス・トクヴィル・
福沢諭吉の思想的系譜』
現代文
(対話)
漢字の書き取り、空欄補充、内容説明
(80字)、理由説明(80字)、内容説明
(150字)
野矢茂樹
『哲学の謎』
古文
(日記)
現代語訳、理由説明、和歌の修辞(縁語)、和歌の現代語訳、抜き出し、内容説明 和泉式部
『和泉式部日記』

2017年度

番号 種別 内容 出典
現代文
(評論)
語義、内容説明(120字)、理由説明(100字)、内容説明(100字) 竹内整一
『ありてなければ―「無常」の日本精神史』
現代文
(評論)
漢字の書き取り、内容説明(80字)、理由説明(80字)、内容説明(200字) 吉見俊哉
『「文系学部廃止」の衝撃』
古文
(作り物語)
現代語訳、内容説明、和歌の詠み手の把握、和歌の現代語訳、本歌の明示、本歌の作者の明示、和歌の内容説明 『浜松中納言物語』

2016年度

番号 種別 内容 出典
現代文
(評論)
漢字の読み取り、語義(10字)、内容説明(100字)、理由説明(160字) 白井聡
『反知性主義、その世界的文脈と日本的特徴』
現代文
(随想的評論)
漢字の書き取り、理由説明(120字)、理由説明(100字)、理由説明(100字) 内田樹
『街場の戦争論』
古文
(紀行文)
主語の把握、現代語訳、和歌の内容説明、内容説明 武女
『庚子道の記』
▼文学部

2018年度

番号 種別 内容 出典
現代文
(評論)
漢字書き取り(5題)、内容説明4題(解答枠はすべて18.3cm×3.5cm)

野矢茂樹

『心という難問』
現代文
(小説)
表現説明1題、理由説明形式の心情説明1題、心情説明1題、内容説明1題(解答枠はすべて18.3cm×3.5cm)

正宗白鳥

『入江のほとり』
古文
(日記)
現代語訳、抜き出し、和歌の現代語訳、和歌
の内容説明、和歌の内容と心情説明
藤原道綱母
『蜻蛉日記』
漢文
(思想)
返り点、現代語訳、理由説明、読み下し文、内容説明 『韓非子』二柄篇

2017年度

番号 種別 内容 出典
現代文
(評論)
漢字書き取り(5題)、理由説明1題、内容説明3題(解答枠はすべて18.3cm×3.8cm) 石井洋二郎
『芸術作品に客観的価値はあるか』
現代文
(小説)
表現説明1題、内容説明形式の心情説明3題(解答枠はすべて18.3cm×3.5cm) 島尾敏雄
『魚雷艇学生』
古文
(説話)
語の意味、現代語訳、心情説明、内容説明 鴨長明
『発心集』
漢文
(小説)
返り点、現代語訳、読み下し文、内容説明 洪邁
『夷堅志』

2016年度

番号 種別 内容 出典
現代文
(評論)
漢字書き取り(5題)、理由説明1題、内容説明3題(解答枠はすべて18.3cm×3.8cm) 酒井邦嘉
『科学者という仕事』
現代文
(小説)
内容説明形式の心情説明1題、理由説明形式の心情説明3題(解答枠はすべて18.4cm×3.5cm) 佐藤泰志
『海炭市叙景』
古文
(軍記物語)
語の意味、現代語訳、理由説明、和歌の心情説明 『平家物語』
漢文
(思想)
返り点・送り仮名、現代語訳、読み下し文、内容説明 応劭
『風俗通義』

出題分析

▼人間科学部・外国語学部・法学部・経済学部

《現代文》

傾向

問題文はが昨年度より約100字減少し、約3100字になった。は昨年度より約900字減少し、約2300字になった。の本文では、政治体制の違いによって、人間の存在そのものと密接に関わる労働の持つ意味や目的、形態が異なってくるという点を明らかにしたトクヴィルの議論が、現代社会にも多くの示唆を与えていることを論じ、「比較体制論」の現代的な意味を述べた文章が出題された。論旨は明快であり、大学入試レベルとしては標準である。の本文では、人間の行為は意志という動力では説明不可能であることを、対話形式で述べた文章が出題された。平易な言葉で語られた読みやすい文章であった。合わせて文章量はかなり減少したが、文章レベルは昨年度の水準とほぼ同等である。設問は、ほぼ昨年度と変わらず、漢字の書き取り・語義説明・記述説明(内容説明・理由説明)の形式であるが、以前出題されていた空欄補充が今年度は復活した。記述量は、昨年度と比べてやや減少した。今年度の出題をみると、従来の過剰ともいえる分量が調整され、一般的な入学試験の問題として適切な分量になってきたと言える。しかし、大阪大学では大きな出題形式の変化が過去に何度もあったので、様々な文章・設問に取り組み、十分な対策をする必要がある。

文章 では、過去10年の期間でみれば、社会科学系、人類学系の評論が多く出題されており、今年度は社会科学系の評論が出題され、猪木武徳『自由の条件―スミス・トクヴィル・福沢諭吉の思想的系譜』(2016年)が採用された。2009年度以前は、2006年度の末弘嚴太郎の「噓の効用」は1922年の著作、2007年度の小林秀雄の『考えるヒント』は1964年の著作、2008年度の山崎正和『混沌からの表現』は1977年の著作、2009年度の丸山眞男「ある自由主義者への手紙」は1950年の著作となっており、はやや古めの著作が出題されていたが、2010年度以降は、近年出版された新しい著作から出題されている。
今年度の『自由の条件―スミス・トクヴィル・福沢諭吉の思想的系譜』では、トクヴィルの著した『アメリカのデモクラシー』における自由労働と奴隷労働の比較を紹介し、「比較体制論」の現代的な意味を述べた文章が出題された。対比を軸に論じられた文章であり、大学入試問題として標準レベルである。
設問 設問数は例年4~5問である。今年度の設問は、昨年度の語義説明が廃止され、漢字の読み取り、記述式の内容説明・理由説明となった。例年記述問題は、本格的な問題が2~3問出題されている。今年度の記述の解答字数は、昨年度と同じ320字であった。
問一の漢字の読み取りは、やや難であった。問二の理由説明は、本文の要点に即したもので、標準レベルの問題であった。問三の理由説明は、解答内容に比して制限字数が厳しく、やや難しい問題であった。問四の内容説明は、傍線部を含む段落に解答内容が集中しており、標準レベルの問題であった。

文章 では、過去10年の期間でみれば、人文系、哲学・思想系の評論が多く出題されており、今年度は哲学・思想系の対話文が出題され、野矢茂樹『哲学の謎』(1996年)が採用された。2000年度以降、石川淳や柳田国男といった古めの著者の文章が採用され文芸評論が中心であったが、近年は古めの著作だけでなく、たとえば、2017年度では吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』(2016年)のような近年出版された新しい著作も出題されている。また、2001年までは小説・随想も出題されてきたが、2002年以降は評論、あるいは随想的評論しか出題されていない。
今年度の『哲学の謎』では、人間の行為を意志という動力では説明できないことを論じた文章が出題された。日常的な事例を多用しながら、対話形式で議論を深めていく文章であり、一般的大学入試の問題とは異なる形式であったため、受験生はとまどったかもしれない。しかしながら、論旨は明確であり、大学入試問題としては標準レベルである。
設問 設問数は例年4~5問である。今年度の設問は、昨年度とほぼ同等の漢字の書き取り、記述式の内容説明・理由説明である。例年記述問題は、本格的な問題が2~3問出題されている。今年度の記述の解答字数は、昨年度より50字減少し、310字となった。
問一の漢字の書き取りは、すべて標準的なレベルであった。問二の語句の空欄補充は、空欄の前後から解答が導出可能であったため、易しかった。問三の内容説明は、本文の具体的表現を適切な一般表現に換言しながら解答しなければならない点で、やや難しかった。問四の理由説明は、論理関係が明快であり、標準レベルの問題であった。問五の内容説明は、本文後半の広い領域から解答を導出せねばならない点で、やや難しかった。

《古文》

パターン

出典の『和泉式部(いずみしきぶ)日記』は平安時代成立の日記。昨年度(2017年度)は平安時代成立の作り物語である『浜松中納言(はままつちゅうなごん)物語』、2016年度は江戸時代成立の紀行文である『庚子道(こうしみち)の記(き)』、2015年度は南北朝時代成立の紀行文である『小島のすさみ』、2014年度は平安時代成立の説話集である『今昔物語集』からの出題だった。昨年度に続いて平安時代の文章が出題されたが、過去10年間において平安時代の文章が出題されたのは3度目で、その他は中世や近世からの出題である。また、日記は過去10年間には出題されていない(2011年度の『帰家(きか)日記』は「日記」というより、実際には「紀行文」である)ので、今年度の出題は4学部としてはめずらしいものだったといえる。過去10年間の4学部で最も多かった出題ジャンルは紀行文で、昨年度に『庚子道の記』、2015年度に『小島のすさみ』、2011年度に『帰家日記』が出題されている。
昨年度の青本で注意を促した通り、今年度も和歌を含む文章が出題され、和歌に関する設問が組まれていた。過去5年間で和歌を含まない文章だったのは2014年度の『今昔物語集』のみである。昨年度も問三を6つの小問に分け、すべてで和歌に関することを問うという、例年以上に和歌を重視したものとなっていたが、今年度も問三・問四・問六が和歌に関する設問で、昨年に引き続いて和歌を重視する傾向が続いている。
今年度の字数は590字程度で、昨年度の560字程度と同じくらいの長さである。設問数は、昨年度は問一~問三までで、小問を含めると合計12問、今年度は問一~問六までで、小問を含めると10問なので2問減少したことになる。しかし、短い記述は問五(1)の抜き出し問題のみであり、昨年度のように和歌の詠み手や知識のみを尋ねる短い記述問題が減少しただけなので、受験生の負担が軽くなったわけではないと思われる。
設問形式は例年通り、現代語訳と説明問題を中心とするものである。これに加えて昨年度は二首の歌のそれぞれの詠み手を答えさせるもの、「本歌取り」の「本歌」を答えさせるもの、本歌の作者を答えさせるものが出題されていたが、今年度は傍線部と同じことを指す言葉を抜き出す設問が加えられたのみだった。
字数制限付きの説明問題は、2016年度は2問、昨年度は1問だったが、今年度は全くなくなっている。

内容

問題文は、女(和泉式部)と宮との恋をめぐるやりとりが描かれているが、宮は女のところに自分以外の男が通っていると誤解しており、女はそのことを嘆いているという場面である。場面の最後は二人の和歌の贈答となっている。
問題文自体は本格的な古文で書かれているものの、登場人物も少ないので、和歌を除けば比較的読み易い場面だったかと思われる。問一(小問で4問)は主語を補う現代語訳の問題。昨年に引き続いて、どれも傍線部が短く、語法としては主に「聞こしめす」・「聞こえさす」の訳を問うものだった。主語の補いについても、この文章では「宮」は敬意対象者で「女」が非敬意対象者になっていることに気付けば、十分に正解できたはずである。問二は理由説明の問題で、傍線部の直前と第1段落、第2段落の内容をふまえて書かなければならなかった。問三は和歌中の縁語を答えさせるもの。答えるべき縁語は5つである。問題文ではそのうちの3つが平仮名表記となっているが、縁語としての関連性がわかるように漢字で答えさせる意図かと思われる。問四は問三と同じ和歌を現代語訳させるもので、「比喩表現をふまえて」という指示が入っている。
「あまの小舟」が女の見立てだと気付くのがポイントである。問五(1)は傍線部「あさましきことども」と同じことを指す言葉を抜き出すもの、(2)は「あさましきことども」の具体的内容を答えるもの。「あさまし」や、(1)の正解に含まれる「けしからず」の語意を理解しているだけでなく、第1~第3段落の展開が正確につかめていなければ答えられない問題である。問六は問四と同様に、比喩表現をふまえての和歌の現代語訳の問題。「舟」が宮の、「あま」が女自身の見立てであることに気付くのがポイントである。掛詞が駆使された和歌なので、これをどこまで現代語訳に反映させるかで悩んだ受験生が多かったのではないだろうか。

▼文学部

《現代文》

問題本文

は、概ね例年人文系の評論文から出題され、今年度出題された『心という難問』も、著名な哲学者による、人間があるものごとを典型的な物語を備えた概念で表現し、その記述が対象の知覚に影響を与えることについて述べた文章であった。本文難度はほとんどが標準~比較的平易なレベルであり、今年度も標準的な難度の論理的文章であった。
は、2005年度以降小説の出題が定着し、14年連続で小説が出題されている。近代小説や昭和初期の作品からの出題もあり、本文難度は難しい場合が多い。の今年度の本文は、『入江のほとり』からの一節で、三十近くなっても不如意な実家暮らしを送る辰男と四年ぶりに帰郷した兄との確執を、辰男が拠り所とする英語学習を軸に描いた場面である。本文は昨年度から若干難化している。
は、総じて国公立大学二次試験で多く見られる標準的な評論問題であるが、は、阪大文学部に特有の小説の出題で永井荷風『あめりか物語』(2005)、車谷長吉「ある平凡」(2006)、山本文緒「いるか療法―〈突発性難聴〉」(2007)、島尾敏雄「硝子障子のシルエット」(2008)、宮本輝「力」(2009)、小川洋子「果汁」(2010)、野坂昭如「夏わかば」(2011)、永井龍男「一個」(2012)、岡本かの子「晩春」(2013)、北杜夫『少年』(2014)、堀辰雄「墓畔の家」(2015)、佐藤泰志『海炭市叙景』(2016)、島尾敏尾『魚雷艇学生』(2017)と、毎年出題されている。また、2005年度には近代小説が出題され、昭和40年代、50年代の作品も多く出題されていることから、現代の価値観のみにとらわれず、多様な時代の小説に対応できるように、普段から準備しておく必要がある。
近年、大学入試センター試験でも大正期や昭和初期の小説の出題が続いているので、それらの過去問題を利用すると同時に、大学入試センター試験レベルで対応しきれない難度の高い文章については、阪大文学部の過去問題の分析を通じた早期の対策が必要である。
さらに、出題の可能性は高くないが、随想や文芸評論の出題歴があることをふまえて、広く文芸分野一般からの出題も想定しておきたい。
本文量については以下のとおりである。

2007年度 約2600字 約4000字
2008年度 約2500字 約3700字
2009年度 約3500字 約3300字
2010年度 約3000字 約4100字
2011年度 約1600字 約3300字
2012年度 約3700字 約2500字
2013年度 約3100字 約1700字
2014年度 約3400字 約2000字
2015年度 約3100字(約300字減少) 約2200字(約200字増)
2016年度 約2700字(約400字減少) 約3200字(約1000字増)
2017年度 約3600字(約900字増) 約3500字(約300字増)
2018年度 約4900字(約1300字増) 約3700字(約200字増)

上記のように、2010年度までは二問合計で6000~7000字といった、試験時間に比して多い本文量が続いたが、2011年度に大幅な文章量の削減があってからは、多少の増減はあるものの5000~6000字となっていた。ところが昨年度、久しぶりに二問合計で7000字を超える本文量となり、今年度さらに昨年度から1500字増加して、二問合計が8600字という長大な本文量となった。
駿台の実戦模試においても、本文量が合計6000字後半を超えると明らかに時間不足とみられる答案が増える。阪大の入試でも、これまでは本文の中略を多く行い、分量抑制の傾向がみられたが、昨年度、および今年度では、本文が長文になっても、出題に適切な内容的にまとまった部分を、中略をせずに出題しようとしていると考えられる。出題としては正当であるが、すべての設問を十分に考えて解答することは難しい。時間配分の工夫や訓練がより要求されていると言える。入試対策としては、概ね合計6000~7000字前後の本文量と考えつつ、最大では8000字を超える字数の想定をしておく必要があるだろう。

設問

設問数はが漢字問題を含めて4~5問程度、は漢字問題無しで4~5問程度である。ともに、基本的にはほぼ全問が本格的な記述説明中心の問題である(例外的に2009年度には空欄に語句を補入させる問題がで出題された)。
今年度は、漢字問題1問と記述問題4問の全5問で、昨年度同様である。設問の形式は、例年通り、標準的な記述問題のみである。
今年度も、昨年度と同様4問の出題で、形式も例年通り、すべて記述問題であった。
記述解答(内容説明・理由説明・心情説明・表現説明など)の総字数について、今年度は、解答欄が昨年と比較して横幅が3mmほど狭くなったものの、字数は変化なく、4問で合計480字程度(約1cm幅1行、1行約30字換算)と考えられる。は昨年度から解答枠、字数ともに変動はなく、4問で合計360字程度であった。ともに、解答枠はすべての設問で一律の大きさである。
阪大は、罫線で行数を指定しない解答枠のみの解答欄で、その場合通例は、横幅1cm程度で1行と考えて解答を作成する。ただし、解答枠が一律の大きさであることから、解答枠の大きさが解答の字数を厳しく限定すると考えにくい場合もあり、試験時間を考えると解答枠いっぱいに埋めて書く必要もなく、解答の要点だけをまとめた短い解答で十分な得点を得られることもある。したがって、解答枠の大きさは一つの目安と考え、柔軟な対処をするとよい。なお、縦は例年18cm程度で、約30字書くことが出来る。いたずらに字数を増やすことで、逆に、問われたことに対して不整合な答案にならないように注意したい。
いずれにしても、難度、本文量、解答量を考え合わせると、時間配分はかなり厳しいと思われるので、古文・漢文も含めた解答手順のシミュレートを事前に十分に行っておくべきである。
設問の種類について、は、問一が漢字問題にほぼ固定されており、問二以下の設問において例年、内容説明や理由説明などの基本的な記述問題が2、3問、要旨(ないしは結論部の要旨)把握を問う問題が1問程度出題され、空欄に語句や文を補入する問題や抜き出し問題等はほとんど出題されない。
漢字問題は、1、2問程度難問が出題されることもあるが、ほとんどが標準的な問題なので、できるだけ完答を目指したい。ここでつく点差は無視できない。
部分的な内容説明は、難度の高い問題が出題される場合も稀にはあるが、比較的平易なものの方が多く、要旨の一部を詳しく書かせる部分要旨の説明問題であることがほとんどである。理由説明問題に関しても同様だが、この場合は、全体の論理構成や筆者の意図を理解したうえで解答箇所を把握する必要から、難度はやや上がる。要旨問題とあわせても記述設問は3~4問程度で、本文の重要箇所さえ把握できていればある程度の確実さで解答できる問題が多い。では、論理構成を意識した要旨の把握力が問われている。
一方、は、小説ならではの設問で難度も高い。心情説明問題に加えて、表現説明問題が出題されることが多く、難問である。2007年度、2011年度、2016年度のように例外的に表現問題が出題されない年もあるが、出題があることを想定して対策しておきたい。今年度は昨年度に引き続き表現問題が1題出題されている。また、阪大文学部特有の「考えを述べなさい」という「解答ポイントが本文中にすべて明記されているわけでない」ことを許容する条件が付帯された設問が出題されることにも注意が必要である。その場合、小説の出題の中心である心情問題に関しても、本文からシチュエーションと心情表現を把握し、その表現をほぼそのまま用いて書けるという基本的な問題ではなく、本文の表現に基づいた解釈や推論が求められていて、特有の難しさがある。
また、過去には、表現の言い換え問題や心情根拠などの抜き出し問題が出題されたこともある。これらの設問の場合、比較的平易なものであることが多い。
最大の難関は表現説明問題で、比喩や象徴といったレトリック、描写・語りの視点などの文体的特徴の把握、作者の表現意図やその効果、さらに本文全体の構成にまで言及させる設問が多く、難問である。「何が書かれているか」という一般読者的な視点に加えて、「どう書かれているか」「どのような効果が意図されているのか」といった作品研究的な次元でのアプローチまで踏み込んだ読解が求められているのである。

《古文》

パターン

出典の『蜻蛉(かげろう)日記』は日記で、成立は平安時代。作者は藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)である。昨年度(2017年度)は『発心集』(説話集)、2016年度は『平家物語』(軍記物語)、2015年度は『古本(こほん)説話集』(説話集)、2014年度は『宿直(とのい)物語』(随筆)からの出題だった。文学部では物語が多く出題されており、2008年度から2011年度は連続して物語からの出題。(2009年度の『十訓抄』は説話集だが、説話集も大きくは物語の系統に属するものなので、物語としてカウントした。)2012年度の『都のつと』(紀行文)でいったん物語の連続は途切れたが、2013年度は『今鏡』で、再び物語からの出題となった。2014年度の『宿直物語』は随筆だが、出題箇所の内容は説話に近いものなので、物語的な文章が出題されたと見てよいだろう。そして、昨年度の『平家物語』も軍記物語なので、物語の系統の文章からの出題が多いことになる。
昨年度は珍しく和歌が含まれない文章だったが、昨年度の青本で注意を促した通り、今年度は和歌が含まれる文章が出題されている。2007年度の『百人一首一夕話』以来、和歌が含まれなかったのは、2009年度の『十訓抄』と昨年度の『発心集』のみで、あとはすべて和歌を含む文章が出題されている。
字数は600字程度で昨年度の1450字程度と比べると大幅に減少しているが、明らかに今年度の文章の方が難度が高いので受験生の負担が軽減されたわけではない。今年度は答案をどのように仕上げるか以前に、問題文の読解の段階でかなりの差が開いたかと思われる。平易な古文が出題された年もあるが、その場合でも設問に十分答えられるレベルの読解となると、受験生の間でかなりの差が生じているだろうし、また、読み取ったことを答案として、きちんと書けるかどうかということになると、さらに差が生じることになるだろう。文章自体が難解か否かに関わらず、受験生の点数差が開きやすいというのは、阪大の古文でよく見られるパターンであるので、今後平易な文章が出題された場合でも油断はできない。

内容

問題文は、作者の母親の一周忌前後の記事で、母の死から時間が経過しても尽きることのない作者の悲しみが、繰り返し吐露されている場面である。問題文中には作者と叔母の贈答歌を含めて計三首の和歌が含まれている。
問一は現代語訳の問題。昨年、一昨年同様に基本的な語句・文法で対応できるものだった。今年度は「動作主(主語)を補って」という指示が付いていたが、展開がおおむね追えていれば難しくはない。問二は「眼とぢたまひしところ」と同じ場所をさす言葉を抜き出す問題。「眼とぢたまひしところ」が母が亡くなった場所だと理解するのがポイントである。問三は掛詞の両意を踏まえながら、和歌を現代語訳する問題。掛詞になっている語は「きし」で、「岸」と「着し」との掛詞である。問四は和歌中の「いまはとて弾きいづる」の意味内容を説明する問題。「いま」が服喪の期間が終わったことをいっていることに気付かなければならない。しかし、服喪の期間には楽器の演奏を控えるという当時の風習を知らないと、なぜ「いまはとて弾きいづる」のかがピンと来にくいため、受験生にはやや難しい問題だったのではないだろうか。問五は和歌の内容とそこに込められた心情を説明する問題。「亡くなった母は訪れないのに、命日は巡って来た」という対比の構造がつかめ、これが解答に反映できていれば、完璧な答案でなくても十分に合格点であったかと思われるが、「琴の緒を絶ちし」という表現が難解なので、対比の構造に気付けた受験生は少なかっただろう。したがって、正解率はかなり低かったものと思われる。
今年度は2015年度から連続して出題されていた語の意味を答えさせる問題が出題されなかった。この問題は以前にも一度姿を消したのに復活したという経緯があるものなので、来年度以降も復活には要注意である。出題されていたのは、重要な語というより、古文の学習をしていれば頻繁に目にする基本語であるので、今後も出題された場合は必ず正解できるようにしておこう。

《漢文》

分量

過去10年間の問題文の総字数及び設問数を下に示す。
2009年 総字数268字・設問数5問
2010年 総字数188字・設問数5問
2011年 総字数258字・設問数5問
2012年 総字数115字・設問数5問
2013年 総字数181字・設問数5問
2014年 総字数175字・設問数5問
2015年 総字数223字・設問数5問
2016年 総字数156字・設問数5問
2017年 総字数191字・設問数5問
2018年 総字数132字・設問数5問
問題文の分量は昨年度より増加したが、設問数は変化がない。

パターン

13年度は、心情説明(1題)・読み下し文(1題)・返り点(1題)・現代語訳(1題)・内容説明(1題)、14年度は、現代語訳(1題)・理由説明(2題)・返り点(1題)・読み下し文(1題)、15年度は、返り点(2題)・現代語訳(1題)・書き下し文(1題)・内容説明(1題)、16年度は、返り点・送り仮名(1題)・現代語訳(2題)・読み下し文(1題)・内容説明(1題)、17年度は、返り点(1題)・現代語訳(1題)・読み下し文(1題)・内容説明(2題)となっている。今年度は、返り点(1題)・現代語訳(1題)・読み下し文(1題)・理由説明(1題)・内容説明(1題)となっているが、句形・語法・語句の意味や内容把握を問うものであり、例年通り、問題の偏りが無くバランスのよいものだった。返り点の問題が出題されるのが阪大漢文の特色の一つであったが、10年度と12年度はなかった。しかし13年度以降は出題されている。

内容

13年度は東晋の干宝『捜神記』から出題され、内容は董永の父に対する親孝行によって天帝が助けてくれた話から「孝」という儒学的徳について述べられたものである。14年度は南北朝・宋の范曄『後漢書』巻八三・逸民列伝から出題され、内容は梁鴻とその妻とが隠遁生活を望むという価値観を共有することについて述べられたものである。15年度は元末の文人楊維楨の「中山盗録」から出題され、内容は汚職をしている役人が不仁であり、盗賊が仁義ある者であるという対比が語られたものである。16年度は後漢の応劭の『風俗通義』から出題され、内容は人々が塩漬けの魚を「鮑君神」として祭ったことから、神は人が創り出したものだとして俗説を戒めている。17年度は南宋の洪邁の『夷堅志』から出題され、内容は茶店の娘の仁愛に富んだ行動が呂翁との宿縁を引き寄せ、娘の無欲さが願い以上の幸福を手に入れたと述べるものである。本年度は『韓非子』から出題され、韓の昭侯が衣服を掛けてくれた典冠を罰した話から君臣関係を述べたものであった。例年どおり、価値観・主張の理解が重視されている。価値基準を表現するキーワードを示す必要がある。総じて標準的な良問であった。

入試対策

▼人間科学部・外国語学部・法学部・経済学部

《現代文》

漢字問題については、標準的なレベルのものが多いので、駿台文庫から出版されている漢字問題集などで繰り返し練習する。難字は出題されないが、語彙力を問う問題になっているので、問題集をやるときには国語辞典で意味確認をし、文脈ですぐに語を特定できる力をつけておきたい。
評論については、部分の内容を問う記述問題と全文要約の記述問題の2つの記述対策を重点的に行う。部分の内容を問う問題は、部分の要旨を要約させる単純要約レベルから要素の論理的な再構成をさせるレベルまで様々な問題が出題される。部分要旨の要約については、設問の要求に適合する箇所を特定し、必要な解答要素を短時間で絞る読解練習を欠かさないようにしたい。論理的に再構成させる問題については、設問の要求する個々の要素の内容を比較し、論理的な筋道を自力で見つける読解力を養っておくようにしたい。部分の内容を問う内容説明や理由説明の問題では、様々な注文がついていることが多いので、設問の要求をしっかり確認した上で、要求に合うような解答要素の絞り込み、字数や注文を考慮した解答作成の作業の練習を重ねておく。
字数の多い設問は全文要約タイプが多く、配点も高いので、120~200字の要約問題をこなせるように過去問で反復練習をしておく。解答を作成する際には、主題と結論、構成と要点をおさえる読解練習を繰り返し、部分の内容を問う問題との要素の重複に注意してまとめる練習を重ねておく。センター試験の第1問などを使って全文を200字にまとめる要約練習を繰り返しておくのも効果的である。
語句の空欄補充問題については、過去問を用いて、対比・同義・並列などの空欄前後の構成を踏まえて解く練習と、空欄前後の論旨を踏まえて解く練習を重ねておくこ と。

《古文》

語彙・文法などに留意しつつ、人物や指示内容の補いを意識し、正確に問題文を読解する訓練を積んでおくことが必要。4学部の出典は長期的に見ると、時代・ジャンル、そして文章の長さや難易度も決して一定していないが、昨年度から連続して、以前にはほとんど出題されていない平安時代の本格的な古文が出題されている点は特筆すべきだろう。今年度も昨年度と同様に和歌を除けば比較的読み易い文章だったが、やはり和歌以外の箇所の難度の高い文章の研究も不可欠である。ジャンルについても、物語・日記・随筆、さらに歌論を含む評論文の理解まで広げる必要がある。また、今年度は590字程度の短い文章だったが、1000字を超える、国公立大の2次試験としては長めのものが以前には出題されているので、長い文章への注意も怠らないこと。標準程度の難易度の文章でも1000字を超えるものを読み切るのは決して楽ではないので、しっかりと訓練しておきたい。そして、阪大の古文の問題は読み取った内容を設問の意図に従って、いかに論理的に説明できるかも重要である。したがって、作文の能力(表現力)向上のためのトレーニングも不可欠となる。過去問題などを解く時には、単に要素を頭の中でつなぎ合わせてみても、あまり訓練にはならない。組み立てをよく考えながら、実際にいくつも書いてみて自分なりのコツをつかむことが大切。
予想通り、今年度も和歌を含む文章が出題された。今後も和歌の研究は必須である。やはり和歌の問題は、最低限の内容を把握するために逐語訳が重要な作業となるので、単語の意味通りに逐語訳できる力は十分に養っておきたい。また、和歌自体だけでなく、和歌の詠まれた状況や詠み手の心情の理解なども答案を作成する時の重要な要素となる場合が多い。今年度は縁語や比喩に関する出題があったが、和歌の学習は、表面的な修辞技法のみの学習にとどまることなく、答案作成の大切な要素となる詠み手の心情や行動、受け手の心情や行動、和歌の詠まれた状況までも正確に読解していく学習が必要。心情理解の必須アイテムである形容詞・形容動詞などの研究もとても重要である。単語の「現代語訳」の暗記に止まらず、辞書を丹念に引くとともに、辞書をよく読み込んでおこう。 
なお、今年度の4学部の出題傾向は以前以上に文学部のものと近くなっているので、受験生諸君は是非とも文学部の問題も研究しておいてもらいたい。

▼文学部

《現代文》

については、まず漢字問題の完答と本文読解のベースとなる確実な語彙力を身につけておきたい。漢字問題の漢字そのものは、小学校高学年で習う漢字がほとんどであり、漢字問題は、要するに文脈に応じた変換力=語彙力が問われているのである。とはいっても、漢字そのものが書けなければ得点にはならないので、手間を惜しまず実際に書いて練習しておこう。その手段として、単純な一問一答式ではなく、文脈における変換力を問う、語彙力養成に役立つような漢字問題集を完成させておきたい。
内容説明は、要旨問題も含めて比較的書きやすいものが多いが、ときに難問も出題される。
まずは本文全体の要約を構成する各部分の重要要素(部分要旨)を用いて書ける問題について、確実に答えられるようにしておきたい。通読の際、本文の表現(意見表明や強調の表現、問題を提示しそれに答える形式など)によって明示される重要箇所を、短時間でピックアップできるような練習を日ごろから重ねておくとよいだろう。そのような箇所が解答要素となってくるのである。
論理構成の難しい部分の理由説明などになると難度があがるので、日ごろから、論理構成を意識した本文読解のトレーニングも積んでおくことが重要である。
要旨問題については、その性格上、部分要旨問題と連関しているので、要素の振り分けも考慮しながら(要素の重複が生じる場合もあるが、その他の設問で詳しく説明したものは軽い説明でよい)、主題、結論、論理構成を明確に提示しておきたい。主題や結論などの各要素が正しくても、論理構成が間違っていれば大きな減点(場合によっては零点)となる。
どのようなタイプの問題にしても、効果的に得点するには、より設問に即した解答を作成することが肝要である。そのためには、設問の要求に応じた解答のアウトラインをまず想定し、それに本文からピックアップした具体的な要素を肉付けしていくような方向で解答を作成したい。解答枠から想定される字数を勘案したうえで、解答要素を取捨選択し、表現を調整していくトレーニングも必要である。
繰り返すが、重要箇所のピックアップと論理構成の把握ができていれば、かなりの設問に対処できるということである。
全体的な戦略について言えば、要旨問題は配点が高く比較的書き易い場合が多いので、必ず答えておきたい。そのためにも、全設問を見通した解答根拠の振り分けと難度判断を行い、 時間配分に十分注意して解答を作成する練習をすることが肝要である。解答のアウトラインも想定できないまま傍線部周辺の要素を漫然と連ねても、得点にはならない。
については、特別な対策が必要である。まずは過去問題とその解答を参照しながら、特殊性と難度を体感しておくこと。
スタンダードな心情説明問題については、大学入試センター試験などと基本的に同型である。指定の場面のシチュエーションと心情表現を本文からピックアップし、傍線部以外の表現であれば、その表現を用いて解答を作成すればよい。もちろん、指示語や比喩表現、難解な表現などは言い換えて説明しておくこと。言うまでもないが、傍線部の心情表現が根拠となる場合は、その正確な言い換え説明も必須である。
設問形式としては、心情の外的表現である表情や言葉、身振り・態度などを傍線部に指定し、その理由を問う理由説明の形式をとった設問も多い。その解答要素は典型的な心情設問と同じく、シチュエーションと心情である。たとえば「なぜ笑っているのか」という問いには「○○(あるシチュエーション)に対して○○(ある心情)を感じているから」という形式で答えればよいのである。においてはまずこのタイプの心情説明問題を手堅く解いておくことが必要である。
発展的な心情問題としては、直接的な解答根拠がなく(あるいは少なく)、人物像やシチュエーション、背景を理解したうえで解釈や推論を加える必要のある問題がある。
この場合、設問に「どう思うか」「考えを述べなさい」などの指示が加わる。この場合も勝手な考え、恣意的解釈を極力排除し、できうる限り傍線部やその他の本文の表現を「手がかり」=間接的な解答根拠とすることが肝要である。阪大文学部の場合、このパターンの心情問題が頻出である。
最大の難関は、表現説明問題である。前述のようにこの設問は作品研究的なアプローチも求められるので、説明の観点を事前に知っておくことが必要である。まずは比喩、象徴などのレトリックに関する理解をベースに、その表現効果や作者の意図といった定番の要素を用いて記述する練習を積んでおこう。さらに、本文全体の構成や文体的な特徴、たとえば時間的な場面の転換や、描写・語りの視点についての指摘と、その効果の説明などの本文分析の観点も用意しておきたい。阪大の過去問題を十分に分析し、解答例を見て、その解答方法をマスターするだけでなく、大学入試センター試験小説読解の際にも、このような視点をもって本文を読む習慣を身につけたい。大学入試センター試験にも、難度の差はあれ表現問題が出題される。選択肢を見る前に正解を自前で想定するトレーニングを積めば、大学入試センター対策としても効果的である。近年の大学入試センター試験の第2問 問6型〔本文の表現に関する説明問題〕の選択肢を参考に、説明の観点やパターンなどをつかんでおこう。ともあれ、では非常に難度の高い設問が多く出題されるので、場合によっては完答を目指さず、解答のアウトラインが定まったものから(あるいは、定まったもののみ)確実に書いていく、という本番での時間配分的戦術が以上に必要になってくる。
また、では文芸評論や随想が出題される可能性もわずかながらあるので、融合問題や詩歌・韻文まじりの文章の読解、文学史に関する基礎知識の蓄積などにも、時間の許す範囲で取り組んでおきたい。文学史の知識は、読解の背景知識として役に立つ場合もあるのである。

《古文》

語彙・文法などに留意しつつ、人物や指示内容の補いを意識し、正確に問題文を読解する訓練を積んでおくことが必要。昨年度の『発心集』、2016年度の『平家物語』は、阪大文学部で出題された文章としては比較的読み易かったかと思われるが、今年度の『蜻蛉日記』を含めてこれまでの出題歴から考えれば、本格的な古文で書かれた文章の研究は不可欠である。ジャンルについては、最もよく出題されている物語だけでなく、日記・随筆、そして歌論を含む評論文の理解まで広げる必要がある。また今後も、2013年度の『今鏡』のように、問題文が1200字を超える、国公立大学の2次試験にしてはかなり長めのものが出題される可能性があるので、長い文章への注意も怠らないこと。標準程度の難易度の文章でも1200字程度を読み切るのは決して楽ではないので、しっかりと訓練しておきたい。そして、阪大の古文は、読み取った内容を設問の意図に従って、いかに論理的に説明できるかも重要であるため、作文の能力(表現力)向上のためのトレーニングも不可欠となる。過去問題などを解く時には、単に要素を頭の中でつなぎ合わせてみても、あまり訓練にはならない。組み立てをよく考えながら、実際にいくつも書いてみて自分なりのコツをつかむことが大切。
また、今年度は和歌を重視する傾向が顕著だった。前述のように、過去10年間で和歌が出題されなかったのは二度だけであるので、今後も和歌の研究は必須である。答案作成にあたっては、最低限の内容を把握するためには逐語訳が重要な作業となるので、逐語訳の力やそのベースとなる文法知識の運用力は十分に養っておくこと。また、和歌自体だけでなく、和歌の詠まれた状況や詠み手の心情の理解などが答案を作成する時の重要な要素となる場合が多い。和歌の学習は、枕詞・序詞・掛詞・縁語・比喩などの表面的な修辞技法のみの学習にとどまることなく、答案作成の大切な要素となる詠み手の心情や行動、受け手の心情や行動、和歌の詠まれた状況までも読み取れるような学習が必要。心情理解の必須アイテムである形容詞・形容動詞の研究もとても重要である。単語の「現代語訳」の暗記に止まらず、辞書を丹念に引くとともに、辞書をよく読み込んでおきたい。
なお、今年度の文学部の出題傾向は以前以上に4学部のものと近くなっているので、受験生諸君は是非とも4学部の問題も研究しておいてもらいたい。

《漢文》

本年度の出題は、なべてバランスのよいものだった。例年出題される返り点・読み下し・現代語訳・内容説明問題という4 つの設問内容は阪大漢文のオーソドックスなスタイルと言えよう。素材の分量や難易度は予想しがたいが、この4 パターンの出題は来年度も予想されるところである。このような予想の下で、阪大(文)を志望する受験生の入試対策としては、まず返り点の規則を再確認することと重要句形をしっかりマスターすることである。その上で読み下しの問題に対処するために日頃から音読を励行し、書き下し文を作成し、白文に返り点・送り仮名を付けながら意味を考えるようにしよう。このような意味なのでこのように読む、逆にこの読みなのでこのような意味になる、ということがわかるようにしよう。現代語訳の問題に対処するために適切な表現ができるように訓練すること。理由説明・内容説明の問題に対処するために過去問等を使って、所与の解答欄でまとめられる作文力や読解力を養っておくことである。全体の文脈から現代語訳・内容説明問題に対応できるようになることが大切である。また、問題文のテーマを理解するには、中国思想・中国史に関しての書物、特に儒学・老荘思想に関してのものを読んでおくのも大変有益である。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。