2018年度入試
出題分析と入試対策
  京都大学 世界史

過去の出題内容

2018年度

番号 分野 内容 形式
西アジア史 19世紀後半~第一次世界大戦後におけるトルコの国家統合 長文論述(300字)
 A 東アジア史 秦~宋代の皇帝 空欄補充(1問)
下線関連(14問)
B 東アジア史 中華人民共和国の直轄市(上海・天津・重慶) 空欄補充(2問)
下線関連(13問)
ヨーロッパ史 十字軍の性格の変化と政治・宗教・経済への影響 長文論述(300字)
 A ヨーロッパ史 古代・中世のヨーロッパにおける地図・地理書 空欄補充(2問)
下線関連(10問)
短文論述(2問)
B ヨーロッパ・アメリカ史 「二重の革命」と「長い19世紀」 下線関連(11問)
短文論述(3問)

2017年度

番号 項目 内容 形式
北・東アジア史 前3~後4世紀初頭における中国との関係を中心とした匈奴の歴史 長文論述(300字)
 A 東アジア史 梁啓超の「新史学」 空欄補充(3問)
下線関連(8問)
短文論述(3問)
B 西アジア史 エジプトにおけるキリスト教徒 空欄補充(5問)
下線関連(10問)
ヨーロッパ・アジア史 1980年代のソ連・東欧諸国・中国・ベトナムにおける政治・経済の動向 長文論述(300字)
 A ヨーロッパ史 古代・中世のヨーロッパにおける民族移動 空欄補充(3問)
下線関連(8問)
短文論述(2問)
B ヨーロッパ史 近世以降のバルト海周辺地域史 空欄補充(5問)
下線関連(5問)
短文論述(3問)

2016年度

番号 項目 内容 形式
中央・西アジア史 9~12世紀におけるトルコ系の人々のイスラーム化の過程 長文論述(300字)
 A 東アジア史 3~6世紀における粛慎の朝貢 空欄補充(3問)
下線関連(12問)
B 東アジア史 古代~現代における中国の「党」 空欄補充(3問)
下線関連(10問)
ヨーロッパ史 18世紀のイギリス・プロイセンにおける啓蒙思想の受容・影響 長文論述(300字)
 A ヨーロッパ史 古代・中世のヨーロッパにおける船舶と海運 空欄補充(3問)
下線関連(6問)
B ヨーロッパ史 近世・近代のヨーロッパにおけるディアスポラ 下線関連(9問)
短文論述(1問)
C ヨーロッパ・アメリカ・アジア史 冷戦における多極化の動き 下線関連(4問)
短文論述(3問)

出題分析

問題形式と分量

京都大学の世界史における出題形式は、1998年以降一貫しており、が300字の論述問題、は記述問題や短文論述問題という構成をとる。の問題総数は、短文論述問題(配点は1~2点)や複数事項を答える問題(二つの事項を答える場合は配点2点)の数により増減するが、53~60問出題される(2018年=58問、2017年=55問、2016年=54問、2015年=54問)。
以上のことから、制限時間90分以内で問題全体に解答するためには、時間配分がポイントになることに注意したい。受験生は論述問題を解答する際に完成度を優先させがちだが、の論述問題を1問あたり25分で完成させたとして、残りの40分でを処理しなければならない。それでも時間的にはかなりタイトであり、素早く知識を引き出す訓練と論述問題に解答する技術を習得することが必須である。具体的な方法は「入試対策」に譲るが、"なんとか暗記できた"というレベルの知識では京大の問題に対応することは難しいと肝に銘じて、早目の学習を心がけて欲しい。

出題傾向と問題内容

まず、の300字論述問題から見ていこう。
2018年の は「19世紀後半~第一次世界大戦後におけるトルコの国家統合」というテーマだが、これは近・現代アジア史の基本パターンである"A列強の進出→B進出された側の反応→C自立"に沿ったものである。このパターンの問題では、A~Cの一部のみを切り取って答えさせることもあるが、本年の問題はB(ミドハト=パシャ~ムスタファ=ケマルの政策)→C(共和国樹立)と捉えることができ、複数の"反応"の相違をきちんと説明することがポイントとなった。近・現代アジア史の問題は、2015年(A・B、中国)、2010年(A~C、中国)、2009年(B・C、インド)、2006年(A~C、西アジア)、2005年(A・B、中国)とほぼこのパターンに即しており、特に2015年、2010年、2009年は、本年と同じく複数の"反応"の相違を踏まえて答える問題である。

の主な出題内容

2018年
19世紀後半~第一次世界大戦後におけるトルコの国家統合
2017年
前3~後4世紀初頭における中国との関係を中心とした匈奴の歴史
2016年
9~12世紀におけるトルコ系の人々のイスラーム化とイスラーム世界で果たした役割
2015年
清末の4回の対外戦争の講和条約とその結果・影響
2014年
中国の科挙制度の歴史的変遷
2013年
ウンマ成立の経緯と正統カリフ時代の主要な政治的事件およびその結果
2012年
魏晋南北朝時代の仏教・道教の発展と政治・社会・文化に与えた影響
2011年
4~12世紀における江南地方の発展
2010年
党結成から中華人民共和国成立時に至る中国共産党の歴史
2009年
19世紀末から1947年の分離独立に至るインドの民族運動とイギリスの政策
2008年
宋代以降の士大夫層の新しさ
2007年
前2~後16世紀における中国が北方民族勢力に用いた懐柔策・外交政策
2006年
1910年代~50年代の英仏によるアラブ地域の分割と諸国家の独立・勢力離脱
2005年
1911年の辛亥革命時から1937年の日中戦争開始に至る時期の日中関係
2004年
セルジューク朝・モンゴル帝国・オスマン朝のイスラームに対する姿勢や対応
2003年
宋・明・清における皇帝独裁強化をもたらした政治制度の改変

一方、2018年の は「十字軍の性格の変化と政治・宗教・経済への影響」がテーマであったが、が300字の論述問題となった1998年以降、中世ヨーロッパの後半期(11~15世紀)を正面からとりあげた初めての問題である(2010年の問題は中世史全体の展開を踏まえさせている)。
また、では中世~現代史の問題の多くが二国間関係や複数地域、あるいは広域(地中海域・大西洋域)に関わるテーマである点に特徴があり、本年も地中海域で展開された十字軍運動を題材とする。時代による変化が著しいヨーロッパ史は、古代を除けば一国史の形をとりにくい。こうした傾向を踏まえて、広域を把握する地理感覚や各時代を俯瞰できる広い視野を身に付けてもらいたい。

の主な出題内容

2018年
十字軍の性格の変化と政治・宗教・経済への影響
2017年
1980年代のソ連・東欧諸国・中国・ベトナムにおける政治・経済の動向
2016年
18世紀の英・普における啓蒙思想の受容者と政治・社会への影響
2015年
前3~前1世紀におけるローマ帝国の軍隊・政治体制の変化
2014年
第二次世界大戦終結から冷戦終結時に至るドイツ史
2013年
ウィーン会議から露仏同盟成立時に至る露仏関係
2012年
18世紀後半~19世紀前半における南北米で生じた変化と支配体制の特徴
2011年
1921年~30年における米が関与した政治的・経済的な国際秩序の在り方
2010年
古代ギリシア・ローマと西洋中世における軍事制度のそれぞれの特徴と変化
2009年
「新大陸」の発見が新・旧両世界にひきおこした直接の変化
2008年
前6世紀末からの約1世紀間におけるアテネ民主政の歴史的展開
2007年
1960年代に世界各地で起きた多極化の諸相
2006年
4~8世紀における地中海地域の政治的変化
2005年
七年戦争からナポレオン帝国崩壊期に至る英仏関係の変化
2004年
4世紀のローマ帝国で起こった中世世界形成に意義を有したと考えられる事象
2003年
第一次世界大戦中に英がインド・エジプトに対してとった政策とその結果

なお、本年は前近代(中世)からの出題であったが、特にでは近・現代史の問題が非常に目立つ(2017年・2014年・2013年・2012年・2011年・2007年・2005年・2003年)。複雑で分量も多い近・現代史の学習は後手に回りやすいので、できるだけ早目に近・現代史の学習を進めるよう努めて欲しい。

次に記述問題を中心とするの傾向を確認しよう。
まず、形式面から。2016年まではA・B・Cの3パートだったが、2017年にはA・Bの2パート編成となり、本年も2パートであった。従って、は2パート編成に変更されたとも考えられる。なお、昨年は通常のみで出題される短文論述問題がでも出されたが、本年はまたのみでの出題であったから、こちらは単年での変更と考えられる。
一方、内容面では、ともに近・現代史の比重が高かったことが特筆される。Bは19世紀以降の中国史、Bも産業革命以降の欧米史からほぼ全ての問題が出されている。のテーマも近・現代の西アジア史であったから、本年は得点(=各20点、=各30点)の5割(Aでも近代史を数問出題)を近・現代史が占めたことになる。また、あわせて10問以上が文化史関連であったことも目を惹く。これにBを中心として出された経済史関連問題を加えれば、 の約1/3が文化・経済分野だったことになる(にも「経済」が含まれる!)。では、政治史だけではなく経済史や文化史からもまんべんなく出題される。これら分野を苦手とする受験生もいるが、本年の問題はそれが大きなハンディとなりかねないことを示している。是非とも、苦手分野を作らないように気を付けてもらいたい。
その他、では、リード文のテーマに沿った形で出題分野が集中する傾向が強いので、簡単にそれぞれで扱われているテーマの傾向を見ておこう。

 の主な傾向

① 前近代の中国史が中心。都市史などのテーマ史の形での通史的問題が多い。
② 朝鮮半島など周辺地域、モンゴル帝国とその後継勢力、イスラーム時代の西アジア・中央アジア史、南アジア史などからも出題。
③ 近・現代の中国史も頻出。
① 西欧史が中心。キリスト教・集団などの切り口での通史的問題が多い。
② 地域史が多く、バルト海域・バルカン半島などの切り口で中・東欧史も頻出。
③ 近・現代史の比重が高く、アメリカ合衆国史やグローバル化との関わりで東南アジア・アフリカ・太平洋・第三世界などからも出題。

最後に先の近・現代史と経済史・文化史以外に、注意しておきたいことを二つ指摘しておく。一つは、テーマ史や地域史という形での通史が多いということだ。通史では、様々な時代の知識を自在に引き出す力が求められやすい。もう一つは、いわゆる周辺史が頻出であるということ。東南アジアや中央アジア、アフリカ、東欧といった地域の歴史は、どうしても中国史や西欧史に比べて知識があやふやになりやすい。この2点を十分に考慮して、むらのない知識を身に付けていこう。

入試対策

以上の分析をもとに、京大の世界史にチャレンジするための前提を二つ確認しておこう。

① 問題形式・分量の分析で見たように、90分以内で全問題に答えるためには素早く知識を引き出す力と論述問題を手際よく処理する技術が必要である。
② 出題傾向・内容の分析からうかがえるように、京大の世界史では教科書の全範囲についての知識を隈なく問われる可能性がある。

この二つの前提を踏まえて、対策を考えよう。

対策1 教科書の全範囲をできるだけ完璧にマスターしよう!

"マスター"とは、単に事項・年号を暗記することではない。例えば、重要な歴史用語なら即座に説明できる程度にまで理解して、はじめてマスターしたことになる。何度も教科書を読み込んで、理解を伴った厚みのある知識を心がけてもらいたい。

対策2 各地域のテーマ史(ジャンル毎の展開)を通史的に確認しよう!

論述問題で制度や経済の展開を説明したり、特定ジャンルについてまとめて問われたりした場合、テーマ毎の展開を想起できれば慌てずに対応できる。対策1にある程度目途がついた段階で、テーマ史の確認を進めていこう。

対策3 素早く知識を引き出す訓練も忘れずに!

論述問題・記述問題とも、多様な問いかけ方に応じて知識を引き出さねばならない。そのためには「時間」(前近代→"世紀"、近・現代→"10年")+「地域」+「ジャンル」の3情報で自在に知識を引き出す力がカギを握る。これを身に付けるためには、対策1・2が済んだ段階で、「時間」を基準として各地の知識を引き出す訓練を進めることが効果的だ。例えば"8世紀の中国における税制の変化"で"租庸調制から両税法へ変化"といった具合に、「時間」毎に各地・各分野の動きがパッと頭に浮かぶように確認していこう。

対策4 夏からは論述問題対策も進めよう!

300字論述の解答を20分強で作成することは、知識だけでは覚束ない。問題文を正確に読み、それにあわせて構図を考え、文章で説明するという一連の作業をスムーズにこなす技術が求められる。書いて説明すること自体は論述問題に解答することを繰り返せば慣れることができるが、他の必要な技術を自学自習だけで習得することは少し難しい。過去問の添削や駿台の夏期・冬期の論述講座など、あらゆる機会を捉えて技術を身に付けるよう努めよう。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。