2018年度入試
出題分析と入試対策
  京都大学 化学(理系)

過去の出題内容

2018年度

番号 テーマ 必要な知識
⒜氷の結晶構造 結晶格子と密度計算、ファンデルワールス半径、水素結合
⒝NaCl水溶液の電気分解
NaHC3-Na2CO3緩衝液
イオン交換膜法、電極反応、緩衝液とpH変化の計算
⒜凝固点降下 凝固点降下度計算の公式、溶液の冷却曲線
⒝気体反応の平衡計算 気体の状態方程式、モル計算、圧平衡定数
⒜ベンゼン環の置換反応における置換基の効果とm-ブロモトルエンの合成経路 芳香族化合物の反応、電子供与性基と電子吸引性基
o、p-配向性とm-配向性
⒝アリザリン(染料)の合成 スルホン化からアルカリ融解によるフェノールの製法、水層-エーテル層への分配、モル計算
⒜不飽和脂肪酸の構造決定 炭素間二重結合の酸化開裂
⒝アミノ酸の電気泳動と等電点 pHによるアミノ酸の電離構造の変化、アスパラギンの加水分解
⒞ペプチドの構造と滴定曲線 ペプチドの電荷、多段階中和

2017年度

番号 テーマ 必要な知識
⒜CuFeS2とFeS2、銅の製錬と酸化溶解 結晶格子と密度計算、反応式の作成、酸化剤と還元剤
⒝金属水酸化物の沈殿生成と再溶解に関する計算 溶解度積、ヒドロキシド錯イオン生成の平衡定数の取扱い
⒜光変異性タンパク質の反応に関する計算 反応速度と速度定数、物質収支の濃度関係式、浸透圧計算
⒝揮発性混合物の温度・圧力による組成の変化 比熱を含む熱量計算、飽和蒸気圧とラウールの法則、理想気体の法則
⒜C16H18O6に関する構造決定 種々の基本的有機化学反応、油脂の構造、幾何異性体
⒝乳酸、ラクチド、ポリ乳酸の立体構造と性質 立体異性体、立体構造のくさび形表記、D体-L体の性質
⒜DNAの構造と化学修飾 核酸塩基の構造、塩基対間の水素結合、ジアゾ化、ケト・エノール互変異性、モル計算
⒝シクロヘキサン及びヘキソースの椅子形構造と置換基の立体反発 シクロヘキサンの立体構造、ハース投影式、グルコースの構造、α型とβ型

2016年度

番号 テーマ 必要な知識

⒜11族金属、Fe、Ti、の無機化学

各金属元素の性質、イオン化傾向、結晶格子、AgNO3aqの電気分解、ファラデーの法則、酸化還元反応式、濃度平衡定数or圧平衡定数、気体の状態方程式
⒝TiのH2吸収を利用した気体反応の平衡定数の測定(2HI⇌H2+I2
サリチル酸と異性体の電離平衡と電気泳動 2価の弱酸の電離とその平衡定数の取扱い、分子内水素結合、電気泳動

⒜脂肪族化合物(ジエステルとその加水分解物)の構造決定

種々の基本的有機化学反応、分子式の決定、異性体(構造、幾何)、フェノールの配向性、エーテルとアルコール・フェノールの識別法と沸点の違い
⒝芳香族エーテルの切断反応と構造決定

⒜甘味に関連する8種の天然・合成有機化合物の決定

ニンヒドリン反応、ビウレット反応、変性、二糖~多糖の加水分解、糖の還元性の有無、ペプチド結合、L型とD型の区別、アミノ酸側鎖の疎水性と親水性
⒝環状ペプチドとアミノ酸

出題分析

分量

Ⅰ~Ⅳの4題(理科2科目で180分)。長文、計算問題、有機化合物のX決定問題が多く、また近年は論述問題も増加している。新傾向問題が出題されたときには時間不足になることが多い(ここ数年の例では、時間内での完答はほぼ不可能と言っていいだろう)。

パターン

与えられた文章中の空欄の記入、下線部に関する問、Xの決定などが主であるが、現在は計算過程も含めたものや論述問題も必ず出題される。

内容

Ⅰ、Ⅱは主に無機物質を素材としてそれらの反応性などの知識を問いながら、化学反応の理論、状態の理論、化学反応式、変化量計算などをからめた問題になることが多い。Ⅲはほぼ有機物Xの構造決定問題、Ⅳは天然有機物(か合成高分子化合物㊟)に関する問題となっている。(㊟2001年度を最後に大問は出されていないが、必修項目に戻った現行課程入試では出題可能性大である。)
各分野ごとで頻出の内容は以下の通りである。

<構造の理論>

電子配置、イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度、電子式、分子の極性、分子間力、水素結合、各種結合、結晶格子と単位格子計算、錯イオンの形と異性体

<状態の理論>

気体法則の計算、蒸気圧を使う計算、実在気体と理想気体、希薄溶液の性質

<反応の理論>

平衡定数の計算(電離平衡、溶解度積、気体反応、分配平衡、その他色々)、平衡移動、熱化学の計算、反応速度

<無機化学>

化学反応式(酸化還元、沈殿、中和、錯イオン生成が主)、電気化学、元素別各論(Fe、Cu、Al……)、グループ別各論(酸化物、気体、イオン等)、滴定実験操作とデータの解析

<有機化学>

X決定、組成式と分子式を求める計算、異性体数、立体異性体の構造と性質、分離操作、天然有機物の知識、糖間の縮合部位の決定、ペプチドのアミノ酸配列の決定、酵素の作用の特徴、脂質の構成脂肪酸の決定、核酸とその構成物質の構造と名称、高分子に関する計算

入試対策

上記の項目は繰り返し出題されている。出題側は1つの問題の中で主に上にあげたような項目について理解しているかどうかチェックしている。これらでほぼ6割から7割を占めると考えてよい。あとの4~3割は、化学の重要な概念を平素から深く考えて理解し応用力をつけておかないと手がつけられない問題である。高得点を得るためには、暗記学習をやめ、化学の基礎的な方法や概念(熱化学、平衡定数、電子配置、電気陰性度など)を使って化学現象を考えることに重点をおいた学習が必要だろう。また、実験に関する問が出されることもある。高校で行われる実験を大切にして、実験力、観察力を日常的に高めておくことも大切であろう。

物質の化学的性質、物理的性質を日常的にミクロのレベルから理解しようとする

物質の性質は、電子配置、価電子の状態、電気陰性度、結合の種類、結合の極性、分子の構造、結晶構造等、物質のミクロレベルの姿をもとに説明される。したがって、構造の理論は、単に知識として覚えるのではなく、化学で日常的に習う各物質の反応や性質を理解するときどんどん応用的に使うことが大切である。これによって、ゆるぎない化学の基礎学力が養成されていくであろう。

基本的化学反応式を書くトレーニングを徹底的にする

中和、酸化還元、沈殿、錯イオン生成、分解は無機反応の基本である。これらの中の特に重要な反応式については、ほぼ瞬時に書けるところまで練習しよう。必ず、まずイオン反応式を書いて、反応の本質を理解することが重要である。

平衡定数計算、気体量計算、変化量計算、熱化学計算を完全にマスターする

これらについては、いろいろなパターンの問題が出題されている。しかもかなりの計算力を要求するものも出題されているので、それら過去問を十分に研究しておくと同時に、どのような変形パターンの問でも応じられる原則的な解法をしっかりと身につけておこう。

無機物質の性質は、グループ別でまとめ比較しながら覚える

重要な元素(工業的製法は特に重要)、酸化物、イオン、気体などグループ別に物質を扱い各グループ内の物質の間で比較しながらまとめることが大切。その際、酸化数直線を利用したり、[単体、酸化物、水酸化物、塩]のどこに属するかを確認したり、酸化力や還元力、酸性度や塩基性度の強さの順などを考えると整理がうまくいくことが多い。

有機化学はX決定問題をいかに速く解くかを常に意識しながら学ぶ

①分子式と与えられた条件から可能な構造式を書く練習を行う。
②代表的な官能基の性質を理解し、あわせてそれらの検出反応にも習熟する。ケト-エノールも必須。
③有機物の構造決定は、つきつめると、(ⅰ)C骨格(ⅱ)官能基(ⅲ)その位置の3つを決めることである。与えられた情報は、結局(ⅰ)~(ⅲ)の何を指定しているのかに意識を集中して、早急にそれらを決定できる能力を身につける。
④異性体と不斉炭素原子に強くなろう。必ずと言っていいほど、異性体の数やその構造式を書かせる問題が出される。また、京大ではX決定問題において、不斉炭素原子の有無や数が決め手になることが非常に多い。日頃から立体異性体にまで留意して、与えられた分子式に対してすべての異性体を、もらさず、ダブらず、速やかに書き出す練習をしておく必要がある。
⑤立体化学的センスをみがく。立体表示法もマスターする。
⑥未知の反応に出会っても、ヒントや前後の流れから生成物を推定できるようにする。
⑦天然有機物、合成高分子についての構造・知識、それを素材にしたモル計算に強くなっておく。

読解力を養う

問題文の流れに沿って、与えられた条件をもとにしてそこで述べられている化学的な状況を素早く頭に描いたり、図式化したりするトレーニングを行おう。長文に慣れることも大切。

実験のセンスをみがく

実験、観察、その解析、グラフ描図、記述などを問う問題が増加している。学校で行われる実験で器具の取り扱い方に十分慣れておき、各作業の意味を常に考えるようにしよう。'14年では有機物の合成実験が論述を含めて大きく取扱われた。今後も要注意!さらに、各種のデータの処理力、結果の考察力すなわち解析力などを普段から身につけるようにしよう。

記述・論述力をつける

'08年以降毎年、解答欄の大きな論述問題が続き、'11年からは字数を指定するタイプも現れた。'13年には各大問に1題ずつ、計4題の論述問題(字数指定なし)が出題された。'14、'15年は字数指定タイプが3題ずつ出され、'16年では構造式を用いる論述や、グラフの作製も出題された。'17年には過半数の計算問題で導出過程が要求された。'18年では有機化学反応における置換基の効果について、レベルの高い論述問題(50文字程度×2)が出題されている。迅速かつ的確に、現象、理由、操作法、導出過程等の記述ができるよう普段から練習しておこう。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。