2018年度入試
出題分析と入試対策
  京都大学 物理(理系)

過去の出題内容

2018年度

番号 項目 内容
力学 速さに比例する抵抗力と速さの2乗に比例する抵抗力
電磁気 電場および磁場の中での荷電粒子の運動、ローレンツ力
熱力学 鉛直容器内の気体の圧力分布と数密度分布

2017年度

番号 項目 内容
力学 鉛直面内の二重レールに沿った小球の運動、衝突、放物運動
電磁気 ホール効果、コンデンサー内の誘電体に注入された電子群の運動と電流
波動 音波のドップラー効果と干渉

2016年度

番号 項目 内容
力学 斜面とばねをもつ台とその上の小球、運動量保存則、力学的エネルギー保存則、単振動
電磁気 平行レール上の導体棒、コイルを含む回路、誘導起電力、運動方程式、キルヒホッフの法則、単振動
熱力学 U字管内の液体によって閉じ込められた気体の状態変化、熱力学第1法則、ポアソンの式、つりあいの安定性

出題分析と入試対策

分量

各学部とも共通に3題の出題。問題文がかなり長く、内容も豊富なので、時間配分には十分気をつけたい。

パターン

出題形式は固定されていて、穴埋めと選択肢による文章完成問題が中心。それに、論述形式の設問やグラフを描かせる問題が加わる。すべて誘導形式になっていて、出題者の意図をつかみ、その論理の展開の流れにのってしまえば解答は容易である。また、問題文中に解答のヒントが含まれていることも多い。
穴埋め式の問題の場合、最初の部分でのわずかなミスが後に大きく響くケースがある。論理の出発点での基本事項の確認を大切にしたい。
また、選択肢による設問では、「大きいか、小さいか」あるいは「増加するか、減少するか」型の問いが多い。複雑な計算が要求されているわけではなく、物理的状況を的確に判断して直観的に正しい結論を得なければならない。物理的なセンスを磨いておく必要があろう。
なお、論述問題では、結果に至る過程を示したり、理由を説明したりすることが要求される。これらの設問に対して的確かつ簡潔に答えるには、普段の学習においても、結果を出すだけではなく、途中の過程や理由を文章にまとめる習慣を身につけておくことが重要である。

内容

3題のうち2題は『力学』と『電磁気』の分野から、残り1題が『熱力学』、『波動』、『原子物理』のいずれかの分野から選ばれるという出題パターンが最も多いが、『電磁気』と『力学』、『波動』と『原子物理』といった融合問題の形で出題されることもある。いずれにしても、京大の物理の出題には、『力学』と『電磁気』を中心として、できるだけ広い範囲にわたって物理的考え方を問おうという姿勢が見られる。
次に、各分野毎の出題傾向を見ておこう。

《力学》

力学の問題の素材の中心になるのは、衝突、ばね、そして円運動である。衝突の問題では運動量保存則を正しく適用すること、ばねの問題については単振動の特質を正しく理解していること、そして円運動をする物体については運動方程式を正しく書けること、がポイントになる。また、力学的エネルギーが保存するかしないか、保存しないとすれば何に変化しているか、という点を正しくとらえることも重要である。

《電磁気》

この分野で出題頻度が最も高いのは電磁誘導および電・磁場内での荷電粒子の運動である。誘導起電力の大きさとその向き、ローレンツ力の大きさとその向きなどについて正しく理解しておく必要がある。また、コンデンサーやコイルを含む回路も重要である。さらに、力学と同様に、仕事とジュール熱などエネルギーの関係について問われることが多いことにも注意しておこう。

《熱力学》

京大の熱力学の問題は、出題に用いられる装置には毎年変化が加えられているものの、問われる内容は一貫している。理想気体の状態変化で、サイクルをなすものが多い。各状態について成立する状態方程式と各状態変化について成立する熱力学第1法則を組み合わせればよい。また、京大で特に出題頻度が高いのは、断熱変化についてのポアソンの式「pVγ=一定(γは比熱比)」を用いる問題である。計算ミスをしやすい式なので、これを使う練習をしておいた方がいいだろう。

《波動》

この分野では、ドップラー効果の問題あるいは波の干渉の問題のどちらかが出題されることが多い。ドップラー効果については、ただ公式をおぼえているというだけではだめで、原理に基づいた理解が必要である。干渉は、光についての問題が多く、複スリットや回折格子、あるいは薄膜による光の干渉などさまざまな形で出題される。いずれの場合も、「光路差」および「位相差」の概念を正しく把握していなければならない。

《原子物理》

旧課程では選択分野だった原子物理の分野が現行課程では必修分野に戻った。旧課程のとき、ほとんどの大学では原子物理の分野は出題範囲からはずされていたが、京大は出題範囲に含めていて、実際に出題されたこともあった。
現行課程初年度の2015年度でも出題されたが、今後もこの分野からの出題が増加すると考えられる。その場合も、旧課程時代の募集要項に書かれていた「現代物理の諸項目については、現代物理の個々の事象の単なる知識を問う出題はしませんが、それらの事象を素材にして物理の基本的法則や考え方を問うことはあり得ます。」という基本方針は変わらないだろう。いずれにしても、光の粒子性や質量とエネルギーの等価性などの基本事項は十分理解しておくことが必要だ。

難易度

京大の物理では"難問"といえるような問題は過去ほとんど出題されておらず、基本的な内容が中心となっている。とはいえ、けっして平易な問題ばかりというわけではない。特殊な状況が設定されたり、特別な考え方が要求されることは少ないが、設問には十分な工夫がこらされており、安易に取り組むとミスをする。与えられた物理的状況を正しく把握し、正しい論理に従って深い洞察を加えなければ正解が得られないということが多く、単なる物理の"知識"や"公式"だけでは高得点は望めない。物理の根本原理と正しい論理の展開の仕方を確実に身につけておかなければならない。

2018年度

昨年よりは難化した。といっても、それは昨年の問題が非常に易しかったためで、今年が特別に難しかったわけではない。目新しい素材や聞きなれない用語が登場したり、昨年はなかった近似計算が復活したりするなど、京大らしさがやや戻った感がある。問題Ⅰと問題Ⅲはどちらも微分方程式に関連した問題で、内容が似通っており、数学的色合いが強いセットになっていた。指数・対数が登場したこともその色合いを強める要因になっただろう。3問中1問くらいなら京大らしくていいと思うが、2問ともなると、物理の入試としてはややバランスを欠いていると言わざるを得ない。また、「数値の場合は単位を明記すること。」という指示が下線付きで新たに登場した。しかし、特に難しい単位があるわけではないので、解答欄に書き忘れないように注意すればよいだろう。単位も含めて数値であるという認識を持っておきたい。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。