2018年度入試
出題分析と入試対策
  九州大学 小論文

過去の出題内容

2018年度

番号 内容 形式
設問1

問1 日本社会のあり方及びそれに対する政府の関与の仕方について、「昭和」の時代と比較した時の、経済産業省次官・若手の問題意識について、資料を読み取り、推測し、まとめる。

問2 ひとりひとりの構成員がより充実した生活を送ることができ、また持続的でもある社会を実現するために、自分はどのような貢献ができるのか、議論を展開する。

出典 経済産業省次官・若手プロジェクトの報告書「不安な人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」(2017年5月)からの抜粋

小論文
図表資料
設問2

問1 介護・認知症の領域でAIを実用化しようとする場合に、想定される諸課題をあげ、それがなぜ問題となるのかを分析したうえで、解決方法について自分の考えを述べる。

問2 AIの研究開発と利用の急速な発展、AIシステムが国境を越えて人間及び社会に広範かつ多大な影響を及ぼすことを踏まえ、AI開発に関するガイドラインを定める必要性について、自分の考えを述べる。

出典 野村総合研究所Webサイト2015年12月2日付ニュースリリース、日経BP ITPro収載記事2017/1/17、情報処理推進機構「AI白書2017」、日本経済新聞電子版収載2017年11月29日付記事、AIネットワーク社会推進会議「国際的な議論のためのAI開発ガイドライン案」

小論文
邦文資料・図表

出題分析

出題分野と資料内容

今年度から始まったばかりの共創学部小論文試験につき、出題の「傾向」を述べることはできないが、本試験問題を見る限り、2017年度に実施した駿台実戦模試での想定通り、共創学部のアドミッション・ポリシー(後述)にふさわしい、現代的な課題を扱う問題であった。

設問1では、「日本社会のあり方及びそれに対する政府の関与の仕方」について、若手官僚の問題意識を複数資料から読み取らせたうえで、「ひとりひとりの構成員がより充実した生活を送ることができ、また持続的でもある社会を実現するために、あなた自身はどのような貢献ができるのか」と問いかけている。九大共創学部受験生の問題意識や貢献意欲をアカデミックな立ち位置から問うというものである。

出題分野としては、広く現代社会・世界の課題ということになるが、より具体的に設問1について言えば、現代日本人の人生観・生活満足度とその問題点ということになる。

資料内容は、経済産業省次官・若手による「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」というプロジェクトの報告書から、8枚のスライドを抜粋したものである。すべて図表であるから、非文書資料の読み取り、複数資料の関連付け、要約の能力が求められている。難度としては、標準的なものであった。

設問2では、「介護・認知症の領域でAIを実用化しようとする場合に、想定される諸課題」と、「AI開発に関するガイドラインを定める必要性」についての自説が問われている。設問1で問われている「満足度」のような内面的心理的課題と比べて、より社会性の強い課題であり、学際的な共創学部にふさわしい、バランスの取れた出題である。

出題分野は、「AI」であるから、高度テクノロジーと将来社会ということになる。AIについては、周知のように自動運転をはじめとして、ビジネス、ゲームなど様々な分野でよく話題となってはいるが、未知・未定の事柄が多く、無秩序な進展・進歩は不測の事態を招く危険があり、なんらかの規制が必要であると考えられる。その反面、規制によって自由な研究開発が阻害される可能性も十分に考慮されなければならず、ここに科学技術の研究開発に伴う進歩の促進とリスクへの規制という一般的なジレンマが見いだされる。先端医学などと同様の課題が今回の出題の背景にある。

資料内容は、すべてAIに関する5種類の短い文書と、それに付随するひとつの図である。総字数は4600字程度、報道文書などからの抜粋であり、明快な読みやすいものであるが、要点を見落とすといったことがないように、精読したい。

設問

設問数は2問で、それぞれ問1・問2の2問構成である。

解答用紙は自由度の高い罫線のみでマス目がなく、各設問とも1行あたり30字程度×25行(約750字分)であった。すなわち、最大総字数は25行×4問である。設問1では、問1・2ともに設問要求の内に「論述を補強するため、文章と合わせて概念図や表を付記してもよい」とあるので、この意味でも自由度の高い罫線の解答用紙が採用されているのであろう。なお、この解答分量であれば、解答時間内で完答するのはかなり厳しいものと考えられる。解答用紙のすべてを無理に埋めようとする必要はないであろう。

設問1

問1は、資料内容の読み取り、要約、資料内容からの推論を求めるものである。問いの要求として「スライド全体を読み取り、彼らの問題意識を推測し、それをあなたの言葉でまとめなさい」とあるように、「読み取り」「推測」「まとめ」が求められているのであり、自説を論じるのではないことに注意したい。複数資料を通覧して、全体的総合的な分析を行うということが大切である。ただし、「あなたの言葉でまとめなさい」ともあり、これは無理にユニークな表現に言い換えるなどということではなく、自分なりに一般的な表現に直すことで、正しく理解でき、適切に伝達できることを示せ、ということである。また、「論述を補強するため、文章と合わせて概念図や表を付記してもよい」とは、視覚的表現能力も評価するということであると考えられる。

問2は、問1とは異なり、「ひとりひとりの構成員がより充実した生活を送ることができ、また持続的でもある社会を実現するために、あなた自身はどのような貢献ができるのか。自分の知識や経験を踏まえながら、自由かつ論理的に議論を展開しなさい」とある。これは、「あなた自身は」=主体性、「どのような貢献が」=課題解決意欲、「自分の知識や経験を踏まえ」=知識の蓄積や日々の問題意識が、それぞれ問われているということである。また、「自由かつ論理的に」であるから、発想力・構想力が問われていることになる。論理性を損なわないようにしつつ、自説を思い切って展開するよう努めよう。なお、問2でも「論述を補強するため、文章と合わせて概念図や表を付記してもよい」とあり、こちらにおいても、視覚的表現能力も評価するということである。

設問2

問1は、5種の文書資料(一部図あり)の読み取りを前提として、「介護・認知症の領域でAIを実用化しようとする場合に、想定される諸課題をあげ、それがなぜ問題となるのかを分析したうえで、解決方法についてあなたの考えを述べなさい」と要求している。設問1の問1とは異なり、「あなたの考えを述べなさい」であるから、問1の段階から既に主体性や課題解決意欲が求められていることになる。ただし、「それがなぜ問題となるのかを分析したうえで」という条件があるように、非論理的な飛躍や単なる当て推量では評価されない。5種類も資料が与えられているのであるから、それらの資料から必要な情報を取り出して「分析」し、十分に活用する能力も問われていると考えなければならない。

問2は、「AI 開発に関するガイドラインを定める必要性について、あなたの考えを述べなさい」という設問要求である。すでに資料4で「ガイドラインを定める必要性」には言及されており、また、資料5は「AI開発ガイドライン案」そのものであるから、問1だけではなく問2においても、資料の分析・情報の抽出・活用を十分に心がけるべきである。むしろ、資料5における「ガイドライン」の多様性・多面性(原則①~⑨)に着眼できたかどうかが、答案のできを決定したとさえ考えられる。

入試対策

九大共創学部の「アドミッション・ポリシー」には、以下の内容がある。

人類は今、歴史上かつてないほど大きな変化の時代に生きています。これは急激に進む科学技術の進歩や、グローバル化の進展などの影響で、ヒトを含む生命や社会、国や地域、そして地球環境の「在り方」が、大きく変動していることに由来します。この変化は、人工知能(AI)やIoTの活用など、人類に新しい可能性を拓く一方で、大規模地球変動、生物多様性の減少、宗教・民族対立、テロ、越境犯罪、貧困・格差、エネルギー資源問題、食料問題など、様々な問題を引き起こしています。これらの問題の多くは種々の要因が複雑に絡まりあって生じているために、今までの学問体系のどれか一つだけを使って解決することは、極めて困難です。今こそ、これまで人類が積み上げてきた様々な学知を適切に組み合わせ、我々が直面している課題を解決し、新たな未来を切り開くことが求められています。
共創学部は、これらの現代社会が直面している問題に取り組む意欲をもち、その解決に貢献できる能力をもった人材の育成を目的とします。

(九州大学・共創学部ホームページより)

また、共創学部では、「能動的学習能力」「課題構想力」「協働実践力」「国際コミュニケーション力」の4つの態度・能力を通して「共創的課題解決力」の獲得を目指すとしている。"School of Interdisciplinary Science and Innovation"すなわち、「学際的な科学と革新の学部」である共創学部における小論文試験で求められる能力は、次のように考えられる。

(a)分析力(読解力)・表現力
文章・図表資料を正確に読み取れるか。そこから何を汲み取り、どう伝えることができるかである。
(b)課題発見能力・自説構築力
課題発見型・自説構築型問題が出題される。資料を分析しつつ、そこから自力で解決課題や必要な情報を発見・抽出し、主体的に取り組みを模索する力と意欲が求められている。
(c)科学的かつ斬新であること
学際的な共創学部として、一方では「科学」を、他方では「革新」を、それぞれ追究する。科学的な客観性や論理性と、現実課題の解決のための斬新な発想とが、同時に問われる。
(d)複数資料・多様なデータなどを処理する力
「共創」の名の通り、学際的、協働的であるから、複数資料を分析し、関連付け、全体的に情報をまとめる力が問われる。

以上から、まず、複数資料の処理、図表データの分析、要約などを、幅広く練習しておこう。普段の一般教科の学習に積極的主体的に取り組み、小論文試験の資料分析・読解、要約のための基礎力を向上させておきたい。基本としては、「読み取り(分析)、整理して理解し(思考)、要点をまとめて書く(表現)」ということである。他大学や他学部の小論文試験の過去問題を活用するとよい。とくに学際系(人間科学・総合系など)や、政治経済系を用いるとよい。

次に、現実世界における課題解決のためには、そもそもどのような課題が現に存在するのか、いろいろと理解を深めておく必要がある。ニュースを見る、新聞を読む、インターネットで情報を収集する(ただし信頼性の高いもの)、新書・選書などを読むといった、「多様な現実世界への、正しく深い理解」をできる限り養っておくことが肝要である。

最後に、時間配分によるミスは大きな失点につながりやすいので、直前期には時間内にまとめる練習を繰り返そう。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。