2018年度入試
出題分析と入試対策
  九州大学 国語

過去の出題内容

2018年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(随想)
内容説明・理由説明・事例選択 土門拳
『死ぬことと生きること』
現代文
(評論)
内容説明・理由説明・抜き出し 内田義彦
『読書と社会科学』

2017年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
内容説明・理由説明・漢字の書き取り 北原靖子『ヒトらしさとは何か ヴァーチャルリアリティ時代の心理学』
現代文
(評論)
内容説明・理由説明・漢字の書き取り 大庭みな子
『女の男性論』

2016年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
理由説明・内容説明・漢字の書き取り 檜垣立哉
『賭博/偶然の哲学』
現代文
(随想)
理由説明・内容説明・対応箇所の抜き出し・漢字の書き取り 古井由吉
「時の沈黙」

出題分析

《現代文》

総論

まず、文学部の現代文問題と教育・法・経済(経済・経営学科)各学部の現代文問題、経済学部経済工学科の現代文問題全体について見ておこう。

〈教育・法・経済(経済・経営学科)の各学部〉

現代文2題・古文1題・漢文1題

〈文学部〉

05年度まで
古文2題・漢文1題
06年度
現代文1題(教育・法・経済各学部の二と共通)・古文2題・漢文1題
07年度以降
現代文1題(教育・法・経済各学部の一と共通)・古文2題・漢文1題

〈経済学部経済工学科〉

現代文2題(教育・法・経済(経済・経営学科)各学部と共通)

以上からわかるように、九州大学の現代文問題については、教育・法・経済学部の現代文2題がまずあり、文学部ではそのうちの1題が出題される。近年では教育・法・経済学部の一が文学部との共通問題となっている。

九州大学の現代文対策としては、当然、過去問題演習が有効であるが、学部志望がどこであれ、教育・法・経済学部の過去問題をやっておくということになる。文学部志望者については教育・法・経済学部の問題もやっておくとよい。経済学部経済工学科志望者についても同様である。

また、出題傾向や対策についても、基本、教育・法・経済学部の2題の現代文の傾向を確認し、対策をしておいてくれればよいということになる。

というわけで、以降、教育・法・経済学部の一・二について傾向と対策を記しておくが、これが、全学部共通の九州大学の現代文の傾向と対策だと考えればよい。

なお、教育・法・経済学部の2題であるが、どちらが簡単で、どちらが難しいかは、固定しているわけではなく、年度による。教育・法・経済学部志望者は、最初に、2題を見て、どちらからやるか時間配分に気をつけて欲しい。難度の高い方の問題に時間をとられ過ぎて、簡単な問題の方をやろうとしたら、時間がなかったなどということがないように、注意しよう。

分量

本文量 解答記述量
14年度 一 約2500字
二 約2100字
一 8行+135字
二 17行
15年度 一 約3200字
二 約2700字
一 15行+10字
二 19行
16年度 一 約3200字
二 約3000字
一 18行
二 15行+20字
17年度 一 約3800字
二 約3500字
一 20行+50字
二 20行
18年度 一 約2600字
二 約3200字
一 27行
二 24行+15字

18年度の本文量は一・二とも、17年度より減少した。一・二とも1000字程度の幅はあるが、3000字程度をめどとして、4000字程度の文章が出る場合もあると心しておこう。設問数は6問か7問。字数指定の場合もあるが、行数指定の場合は1行の縦が17センチで、18年度の場合は1問あたり、3〜7行だった。合計の記述解答量は上に記したように、一・二とも、17年度より大幅に増加している。行数指定の設問については、たとえば解答欄が3行なら3行目の「最後まで埋める」というのではなく、「3行目まで埋めることが可能だ」という判断が大事だ。つまり、「最終行の最後まで書ききる」のではなく、「解答に必要な要素を過不足なくまとめ、最終行の最後まで使用することが可能だ」という発想で臨みたい。1行25字程度をめどとして、たとえば、解答欄が3行分であれば、25字程度×3行=75字程度、解答は50字程度になることもあれば、75字程度になることもある。

設問要求をふまえて、必要な内容を的確に書くという解答姿勢で取り組もう。いずれにしろ、かなりの記述量なので、覚悟しておこう。

設問内容

従来、漢字の書き取りと記述説明問題に、抜き出し、選択肢問題が出題されたりされなかったりしている。選択肢問題は16年度、17年度は出題されていなかったが、18年度は出題された。逆に、例年出題されていた漢字の書き取り問題が18年度は出題されなかった。

記述説明問題では、指示語の指示内容をストレートに問う問題も含めて、内容説明問題も理由説明問題も指示語がポイントになることが多い。指示内容をきちんとふまえて説明しよう。

本文内容

14年度一は倫理に関する文章であり、倫理学が現在抱える病弊、その背景、今後の課題について論じた文章であった。二は「凝視=よく見ること」について、その困難さを具体例を挙げて説明し、言葉との関係について論じた文章であった。

15年度一は、筆者自身の体験を通して、歌舞伎を知るための条件について述べた文章であった。二は、ホッブスの考え方を通して、社会科学のあり方について述べた文章であった。

16年度一は、自己責任と自由について、社会や科学技術との関わりから論理的に説明した文章であった。二は、不死の観念について、近代社会や科学技術との関わりから述べた文章であった。

17年度一は、「ヒトらしさ」と「リアリティ」について、ヴァーチャルリアリティという観点から論じた文章であった。二は、「他人の眼」について、日本人の生き方や教育との関わりから述べた文章であった。

18年度一は著名な写真家である筆者による、写真論であった。写真について、それが機械による単なる実物の描写といった「記録性」「機械性」にはなく、主体としての人間の表現の欲求にこそ、写真の本質ともいうべき「写真性」があることを述べた文章であった。二は、著名な経済学者による読書論。インタビューに基づいて、作品を読む際の作者の意図の忠実な理解について述べた文章であり、音楽作品に触れつつ、主に台本や脚本を読んで、作者の意図を再現する舞台作りについて、また、古典を現代に上演することについて説明したものであった。

哲学・思想、文化・文明論、言語論・文学論を含む芸術論、社会学などから出題されており、大学入試の現代文のなかではかなり難度の高い評論、場合によっては随想までが出題されている。現代社会が抱えている諸問題を論じたり、哲学や思想などの人間の感性や思考の本質を考察する抽象度の高い文章も多い。

入試対策

論理的な文章を論理的に読解する日頃の訓練が欠かせない。内容が難解なだけに、接続語を意識して、前後の論理関係を正確に把握すること、一般論と具体例の関係を見極めること、指示語の指示内容を正確におさえること、同義内容・対比関係をおさえて筆者の主張を整理することなど、オーソドックスな読解力をつけることが何よりも大切だ。16年度の二は随想が出題されたが、読解の基本的な手順は同じである。文章の形式に惑わされない、確かな読解力を身につけることが不可欠である。現代文に苦手意識のある人は、まず、センター試験本試験の第1問レベルの評論読解から始め、次にセンター試験追試の第1問レベルの評論読解へと進めていくとよいだろう。

難度の高い文章の場合、時間をかけて丁寧に読んでも、どういうことが書いてあるのかわからないままに時間だけが過ぎ、結局、問題を解ききれないで終わる、という失敗をしがちである。むしろ、話題をおさえ、論理関係を把握しながらとにかく最後まで読み終えるという姿勢で先へ先へと読み進んでいくと、徐々に内容が把握できることもある。「わからない。だめだ〜」などと動揺しないことだ。

簡単な文章でも、難解な文章でも、文法や構文、接続語の働き、指示語の役割は変わらない。逃げずに、論理を追っていこう。そうすれば、どこかで道は拓ける。理解できない部分を理解しようとして焦るのではなく、理解できるところを確実に理解して、その理解を次の理解につなげていくことが大事だ。具体的な練習方法として、以下の(2)を参考にしてほしい。

漢字問題は全問正解を目指して、センター試験の第1問の漢字を選択肢も含めて、書けるようにしておこう。

記述問題対策は、以下の(1)(3)(4)に記したが、特に(1)は大切だ。センター試験対策と九州大学の二次記述対策は重なる部分が多い。センター試験対策がそのまま九州大学の二次記述対策になるように勉強していこう。

読解力も得点力も、地道な努力を積み重ねることが大切だ。後回しにしないで、早めに対策をしていこう。

[具体的な対策]

  1. 入試現代文の基礎力をつける。センター試験の傍線部読解問題を消去法で解くのはやめよう。
    • 与えられた選択肢にまどわされることなく、傍線部と設問文を手がかりに、本文を確認する。
    • 自分で解答ポイントを見つけて、選択肢を吟味する。

    こういう方法でセンター試験の傍線部読解問題を解いていれば、二次記述でも慌てることはない。

  2. 本文の読解力をつける。
    • 一定の難度の文章を一定の時間で読みきる訓練をする。

      たとえば、センターの追試の問題でも、東北大学や早稲田大学などの他大学の過去問題でもよいから、「一定のレベルの評論を短い時間で論理的に読む」訓練が有効だ。「読むのにどうしても時間がかかる」と嘆いていても何も始まらない。「一定の時間内で読むしかない」と覚悟を決めよう。先に制限時間があるのだ。その制限時間内で、どのくらい読みとれるかが勝負であり、その「速度と精度」を上げていくしかない。

      もちろん、そのためには、何年もかけて、本を読み、考え、知識を蓄え、論理的思考力を徐々に高めていくのが理想である。でも、受験生にはなかなかそんな時間はとれないだろう。

      入試問題の評論を、10分程度で読む。話題、論理展開などをおさえる。

      時間を制限せず、今度はじっくりと本文を読み、一回目で十分にチェックできなかった部分もしっかりとチェックをする。

      本文要旨を簡単にメモする。

      という読解訓練を、(3)の過去問演習と並行してやっていくとよい。

  3. 得点力をつける。
    • 過去問題演習

      九州大学の近年の過去問を解いてみよう。最初に述べたように、教育・法・経済学部以外の受験生も、自分の学部の過去問題だけではなく、教育・法・経済学部の過去問題も解いておこう。

      1. 時間制限をして、問題を解いてみよう。
        • 一定の時間で本文を読み終える訓練をする。接続語や指示語に注意して、論理関係をおさえる。
        • 設問を解く。 → 一回目の解答
      2. 時間をかけて、じっくり読み直してみよう。わからない語や語句は辞書を引こう。
        • 設問はメモをとって、解答のカタチも工夫して、行数の7〜8割で解答を作成してみよう。 → 二回目の解答
      3. 青本の解答、解説を見て、自分の答案を採点してみよう。10字程度で1ポイントと考えて、解答例のポイントが自分の答案にあるかチェックしていく。何ポイント中の何ポイントとれたかを確認していく。目標は6割。5ポイント中3ポイント確保で6割である。まずは、二回目の解答で6割をめざし、徐々に、一回目でも6割近くとれるように心がけていこう。
  4. 解答姿勢を保つ。

    本文を見て、傍線部周辺を適当に書き写すという解答作成をしていては、いつまでたっても高得点は望めない。正攻法で取り組む姿勢を早期に身に付け、地道に練習することが高得点への第一歩である。解答ポイントを自分で発見しよう。

    当然、解答ポイントをおさえるには、それ以前の本文読解が欠かせない。

    まず、本文の論理的構造を把握する。次に大きく全体を整理する。そして、各設問に答えていく過程で、傍線部や傍線部を含む文脈の論理構造を再確認し、内容を理解して、論理と内容を解答に反映していくことが大切である。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。