2018年度入試
出題分析と入試対策
  名古屋大学 国語

過去の出題内容

2018年度

番号 項目 種別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取りと読み、接続語の空欄補充、傍線部の理由説明(100字以内)、傍線部の内容説明(100字以内)、傍線部の理由説明(100字以内)、傍線部の理由説明(90字以内) 池上俊一「音と声から立ち現れる新たな歴史像」
古文 軍記物語 現代語訳(4問)、内容説明(2問)、文学史(1問) 『太平記』
漢文 説話 語句の読み(1問、語句3)、書き下し(1問)、現代語訳(1問、2句)、指示内容指摘(1問)、内容説明(1問)、理由説明(1問) 計6問 韓嬰『韓詩外伝』

2017年度

番号 項目 種別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取りと読み、傍線部の理由説明(70字以内)、空欄補充、傍線部の内容説明(30字以内)、傍線部の内容説明(100字以内)、傍線部の内容説明(50字以内) 山崎亮「豊かな「縮充」社会へ」
古文 雅楽書 現代語訳(5問)、内容説明(1問) 『龍鳴抄』
漢文 論説 語句の読み(1問、語句3)、理由説明(1問)、現代語訳(2問)、書き下し(1問)、本文要約(1問) 計6問 『晋書』「魯褒伝」より「銭神論」

2016年度

番号 項目 種別 内容 出典
現代文 評論 漢字の書き取りと読み、接続語の空欄補充、傍線部の理由説明(50字以内)、傍線部の事例選択、傍線部の内容説明(50字以内、70字以内)、傍線部の内容説明(110字以内) 山極壽一「負けない構えの美しさをゴリラに学ぶ」
古文 芸術論 発言主の特定(3問)、現代語訳(3問)心情説明(100字以内)、指示内容説明(50字以内)、夢の範囲抜き出し 『梁塵秘抄口伝集』
漢文 論説 語句の読み(1問、語句3)、内容説明(1問)、現代語訳(2問)、書き下し(1問)、要約型内容説明(1問)計6問 帰有光『震川先生集』「張雄字説」

出題分析と対策

《現代文》

試験時間

名大の国語は文系・理系学部を問わず、全学部共通問題で試験時間は105分である。現代文のみが課される理学部の試験時間が45分であることから、105分のうち、現代文に配当される時間は45分と判断される。

出題分析

2010年度、2011年度と随想が続いたが、今年度は2012~2017年度と同様、評論が出題された。2017年度の本文が「人口減少する日本社会」をめぐる文章であり、具体例や歴史的背景の説明によって分かりやすく構成された読みやすい内容であったのと同じく、今年度も具体例や並列・対比によって明確に構成された文章であった。
名大現代文の本文のテーマとしては、子どもやジェンダー論、美術など文化論、哲学・現代思想など人文系の文章から出題されている。これは、理系学部にも国語が課されるようになった2008年度以降も変化していない。

2016年度の本文 2015年3月発行の雑誌『學燈』に掲載された文章
2017年度の本文 2016年4月発行の雑誌『世界思想』に掲載された文章
2018年度の本文 2016年10月発行の雑誌『思想』に掲載された文章

2018年度は入試の前々年に雑誌に掲載された文章であったが、2017年度、2016年度は入試前年の春に雑誌に掲載された新しい文章が本文として使用されている。これは2017年度、2016年度に限らない。名大現代文は原則として入試前年、入試前年でない場合も、その前年に公になった文章が出題されている。2019年度についても、2018年3~6月に出た雑誌、単行本から出題される可能性は高い。いずれにしろ、最近の文章が出題されるということである。
本文字数は約3400字で、昨年度より1000字程度減っている。2013年度以降は、4000~5000字弱の長文が続いていたが、今年度はそれより少ない分量となった。

・問題本文字数
2014年度 約4800字
2015年度 約4800字
2016年度 約4000字
2017年度 約4400字
2018年度 約3400字

設問

大問数は例年と変化はなく6問である。ただし、小問が設けられている。

2014年度 問二 接続語の空欄補充問題2問
2015年度 問二 空欄補充問題7問
2016年度 問五 内容説明問題2問
2017年度 問三 空欄補充問題2問
2018年度 問二 接続語の空欄補充問題4問

以上、設問内容は異なるものの、今年度も問二が小問4問となっていた。
傍線部読解に関わる記述問題と漢字の書き取りと読みが必ず出題されている。ここ数年の傾向としては、選択肢問題が出題されるようになったことである。今年度は2014年度と同様、接続語の空欄補充問題が出題されている。該当箇所の抜き出し問題は今年度は出題されていないが、以前から断続的に出題されており、今後も視野に入れておきたい。さらに、要旨要約型の記述問題に関しても対策を怠らないようにしたい。記述問題の総字数は390字で、2017年度より140字増えている。

難易度

過去の入試問題で難度が高かった出題を見てみよう。

本文の内容難度が高かった出題
1997年度に出題された大森荘蔵「「後の祭り」を祈る」、1999年度に出題された鷲田清一「身体、この遠きもの」が共に哲学系の文章で、本文内容としては難度が高かった。
本文量・解答記述量が多かった出題
2008年度に出題された佐藤道信『美術のアイデンティティ』は本文内容の難度は高くないが、本文量・設問量が多く、量的な点でやや難しかった。
本文の内容難度が高く、同時に、解答量も多かった出題
2010年度に出題された入不二基義『足の裏に影はあるか? ないか?』は哲学系の文章であり、本文内容の難度が高く、加えて、記述解答量も多く、名大の現代文の中ではかなり難度の高い問題であった。

こうした問題と比較すると、今年度の出題は、本文量、本文内容、記述量から見て標準よりやや取り組みやすいレベルであったといえるだろう。

入試対策

〈総論〉

問題本文のテーマについては、このまま人文色の強い文化論、現代思想などが出題されていくだろうが、2014~2017年度のように現代社会に関する問題意識を前提とするテーマが出題される可能性もある。幅広く、人文系の文章を読み、テーマについて理解を高めておくと、本番で類似のテーマについて出た場合に本文読解の速度を上げることができる。
問題本文の長さや記述解答量については、2008年度・2012年度の分量を最大と考え、5000字程度の本文、400字程度の記述に対応できる読解力と解答力をつけておきたい。
名大の現代文は、原則、本文の論理構造の把握を前提にしたオーソドックスな設問が出題されている。論理構造を意識しながら読み、漢字の読みと書き取りや空欄補充、短い傍線部読解系の記述説明問題で確実に得点できるようにしよう。さらに、現代文を得点源にしたり、他の学生と差をつけたりするためには、要旨まとめのような長い記述問題にきちんと対応できる記述力をつけておくことが必要だ。また、2010年度のように難度の高い哲学系の文章が出題された場合にも対応できるように、一定レベルの内容読解力をつけておくことも必要である。

〈各論〉

まず、量的な対応として、とにかく、長い文章を迅速にかつ正確に読み、その論理を把握することができないと高得点は望めない。センター試験の評論対策を兼ねて、4000~5000字の評論を10分程度で読み、テーマ、全体の構造、論理展開を確認できる客観的読解力を身につけたい。加えて、設問を解くために、関連箇所を丁寧に読んで詳細に理解する高度な読解力も必要となる。
さらに、2010年度の評論のように、内容や表現の難度の高い文章が出題された場合に備えて、文章読解の精度や深度を上げる必要がある。日頃からある程度の長さのある論理的な文章を読むことを心がけ、加えて、様々なテーマについて知識を蓄えておくことも必要である。テーマについて知識があれば、内容を理解しつつ迅速に読んでいくことが可能であるし、全体を読んだ後に把握できる情報量が格段に増加する。哲学や現代思想の入門書などを読んでおくとよいだろう。
問題本文の読み方だが、評論であれ、随想であれ、具体的に言えば、接続語などに注意して、対比関係・並列関係・同義関係・論と例の関係・因果関係などを把握し、論理構造をきちんとおさえるとともに、キーワード、キーセンテンスに注目して、内容を把握したい。
傍線部読解問題は、傍線部を中心として、傍線部を含む文脈、傍線部の文構造に注意し、設問の要求に沿って解答を作成していこう。「問題本文の読解(論理構造の把握→内容の理解)→設問要求の確認→解答ポイントの発見・確認→解答作成」の手順で解くことを心がけたい。
筆者の考えや全体の要旨をまとめる設問は、本文の論理構造を踏まえて、関連箇所をチェックし、字数を意識して、どこを書くか取捨選択することが大切だ。漠然と、全体をまとめるのではなく、「これとこれがまず必要だ、次に、これが必要だ。まだ、字数にゆとりがあるから、これも書ける、これでだいたい字数の8割くらいになるから、これでいこう」と戦略を立て、書き始めるようにしたい。設問文に条件が示されていたり、ヒントがあったりする場合もあるので、問題本文だけでなく、設問文もきちんと読むことが必要となる。日頃から、評論の文章を150字程度で要約する練習をしておこう。
選択肢問題については本文読解がきちんとできれば対応が可能だ。また、空欄補充、同義内容・対応箇所の抜き出しはここ数年で断続的に出題されている。今後も出題される可能性はある。過去問できちんと対策しておこう。

《古文》

出典

03年度・歌論、04年度・歌物語、05年度・説話、06年度・随筆、07年度・擬古物語、08年度・説話、09年度・随筆、10年度・説話、11年度・随筆、12年度・私家集と日記、13年度・随筆、14年度・私家集、15年度・随筆、16年度・芸術論、17年度・雅楽書、18年度・軍記物語と、これまで出題された作品のジャンルは、中古から近世にかけての随筆、日記、物語、説話、歌論、物語評論、私家集と多種多様である。

パターン

記述式が通例であり、今年度もすべて記述式であった。

内容

例年現代語訳問題(和歌を含む)、説明問題(理由説明、内容説明、主題説明)が主に出題されるが、その他に文法(品詞分解・文法的説明)、和歌の修辞に関するもの、主語判定、夢の範囲、文学史などが問われることもある。すべて記述式であるが、古文に振り分けることができる時間は30分程度であるので、問題文を手早く読み解いて現代語訳や説明をわかりやすく書く練習を十分に行うことが大切である。
今年度は和歌を含む現代語訳問題と内容説明問題に加えて、軍記物語の作品名を問う文学史問題が6年ぶりに出題された。一昨年度初めて字数指定(100字・50字)の内容説明問題が出題されたが、昨年度今年度と再び字数制限のないものに戻っている。

分量

問題文…
例年1000字程度の文章の出題が多い。今年度も昨年度とほぼ同じ1100字程度の文章であったが、1800字(13年度)や430字(14年度)のものが出題されることもある。
設問数…
すべて記述式で、現代語訳(3~5問)と説明(1~3問)のみの出題傾向が定着しつつある。今年度は現代語訳4問・説明2問という標準的な設問数に文学史問題1問が加わった。

難易度

年度によって多少の違いがあるが、概して基礎力に重点をおいた標準的な問題である。昨年度(『龍鳴抄』)はやや読み取りにくい内容で記述量も増えたが、今年度は読みやすい内容であったのでやや易化したといえる。

◆入試対策◆

○ 語彙…
頻出語、古今異義語に重点をおき、特に多義語は語源から理解するのが望ましい。日頃から前後の内容からふさわしい意味を考えるように心がけたい。また、古文常識も基本的なもの(月の異称、時刻、方角など)はマスターしておきたい。
○ 現代語訳…
語彙、文法を踏まえ、文脈に応じて必要な説明的要素を補った現代語訳ができるように常に練習を繰り返すこと。
○ 説明問題…
古文に配当される時間は30分と短いので、「内容を吟味し的確に把握する思考力と、それを題意にそって時間内にまとめる記述力」を養成すること。傍線部だけでなくその前後、ひいては文章全体の趣旨を常に考えることが重要である。頭の中で考えるだけではなく、解答欄のスペースに応じた解答ができるように、実際に書くという行為を繰り返し練習することが肝要である。
○ 文法…
品詞分解、同型語の識別が確実にできるようにする。特に助動詞の文法的意味を確実に理解すること。また、解答例が示されていない場合の書き方にも留意することが必要である。
○ 和歌…
和歌の修辞(特に掛詞)はもちろんのことであるが、解釈力を養うことも怠ってはならない。特に、問題文中での和歌の位置づけに注意して、詠み手の心情の把握を常に心がけることが重要である。
○ 文学史…
教科書の各時代の概説を踏まえた文学史的理解を系統立て、固有名詞は正確に漢字で書けるようにしておくこと。

《漢文》

◆出題分析◆

出題文章の総字数は244字(末尾「詩云」以下18字を省略」)で、昨年度の『晋書』「魯褒伝」(の「銭神論」)の245字にほぼ同じ。設問は計6問で昨年度と同じ。問三の現代語訳が2問あるが、そのうちの1問は短い慣用句、もう1問も短い一文なので、2問で旧来の1問分に相当し、バランスはとれている。注は、文章の内容を鑑みると少なめで、あまり親切なものとは言えない。
名大の入試漢文は、近年300字前後の長文が続いていた(09年『後漢書』311字、11年『資治通鑑』339字、12年『管子』282字、13年王陽明「文禄一」259字、14年『大唐新語』315字、15年『遜志斎集』295字)。しかも、内容面では13年度の王陽明「文禄一」は「儒学 ― 陽明学」、15年度の『遜志斎集』は「儒学 ― 士大夫のあり方」、16年度の『震川先生集』「張雄字説」は「老子の思想」と、中国の伝統思想に基づいた文章で、文章構成の密度も文章内容もともに非常に高度で、近年の入試漢文問題のうち最高峰と言って良いものであった。これらに比べると、本年度の『韓詩外伝』からの出題は、昨年度の『晋書』魯褒伝「銭神論」に続き、字数も内容も取り組み易いものであった。本質的な文章内容の難しさという点ではピークを超えたのかも知れない。
しかし、300字前後の長文、少なめの注、あくまで文章全体の内容の把握を問うための設問作りといった傾向は今後も続くと考えられる。
06年度以後、名大漢文では150字の要約もしくは要約を含む内容説明問題を課して来た。近年はそれに加えて、上述のような中国の思想や文化に対する素養を前提とする、より高度な読解能力を問うものとなっていた。しかし、中国の思想や文化に対する素養を前提とする作問はここ数年だけのことではなく、名大漢文のもともとの傾向 である。本年度の文章が比較的分かりやすいものであったからといって、決して楽観 は許されない。
設問は、全文の主題を把握する上での重要ポイントを、意味説明や現代語訳、書き下しなどのさまざまな形で問う、名大らしい優れた作問である。最後の要約(もしくは要約を前提とする)問題は、150字以内という字数制限もあり、解答作成に要する時間という面でも多くの受験生が苦闘したに違いない。総合的には、現在の国公立大学の入試漢文のうちでも最も難しい問題の一つと言ってよい。このことに誇りを持って受験して欲しい。
なお、出題本文の漢字の字体は、以前は本格的な旧字体であったが、2010年度からはすべて新字体による出題となった。
以下に近十年の出題出典とジャンル、文字数などをまとめておく。

2009年 『後漢書』巻八十一「独行列伝」「王忳伝」(※1)(旧字体) 史伝 311字
2010年 江戸後期 菊池五山『五山堂詩話』(新字体) 日本漢文・詩論 226字
2011年 『資治通鑑』巻一九二「唐紀八」(※2) 史伝 339字
2012年 『管子』「小問」 史伝 282字
2013年 明・王陽明「文録一」「答徐成之・辛未」 思想・書簡文 259字
2014年 唐・劉粛『大唐新語』巻七「容恕」婁師徳(※3) 史伝 315字
2015年 明・方孝孺『遜志斎集』巻十四「送凌君入太学序」(※4) 思想・論議 295字
2016年 明・帰有光『震川先生集』巻三「張雄字説」 思想・論議 235字
2017年 『晋書』魯褒伝より「銭神論」(※2) 思想・論議 245字
2018年 前漢・韓嬰『韓氏外伝』巻二 (※5) 史伝 244字
※1、初めと末尾の計80字を省略。
※2、節略有り。
※3、若干の脱文と文字変更有り。
※4、末尾の68字を省略。
※5、末尾「詩云」以下18字を省略。

◆入試対策◆

全文の構成を捉える力と、要約のためのスタミナ
名大の入試漢文では、要約、もしくは要約を前提とした説明(理由や事の推移など、ポイントを絞った上で、それについて説明することを求める)が必ず問われる。主題を捉えた後に、その主題を説明・補足する話柄をしっかり整理する必要がある。つまりは、全文の構成(論の運び方、話の展開の仕方と、そのための具体例や比喩)を正確に捉え、整理する力が不可欠である。
語句の読みの問題では、近年では慣用句や語句などの意味を直接問うことは少なくなり、副詞や接続語の読みなどを問う設問に変わって来ている。副詞や接続語の読みは得点源である。習熟しておくべきだ。また、多義の漢字の読みや意味、いかにも漢文らしい慣用的表現の意味を問うのがかつての名大入試の特徴であった。近年では直接的に問うのではなく、傍線部以外の語句・表現の理解が傍線部の現代語訳や内容説明、理由説明に必要となるような設問の作り方をしている。多義語や慣用的表現の意味を洞察する力を養っておく必要がある。
直接問うことは殆どないが、中国の歴史・文化・文学・思想などに関する「教養」を前提とした問題の作り方をするのが名大の特徴であった。近年、またこの傾向が復活しているように思われる。本年度では「夏」「殷」など。年表に線引きしてあるようにスパッと切り替わるものではない。中国の歴史・文化・文学・思想などに関する「教養」「知識」は勿論、記号的でない、常識的なとらえ方も身につけておくべきである。
総じて、中国に関する教養を前提として、注を少なくし、難解な語句の意味も文脈から洞察することを求め、しかも全文の内容を十分に把握することを求める。中国の歴史や文化に関する単純な「知識」ではなく、それを内容理解に活かすための深い洞察力を養っておく必要がある。
基本的な語彙や句法で得点を損なわないように準備しておくことは勿論のこと、300字を超える長文にも息を切らさずについて行き、全文の構成を捉えて要約できるだけのスタミナを養っておくことが第一である。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。