2018年度入試
出題分析と入試対策
  名古屋大学 生物

過去の出題内容

2018年度

番号 項目 内容 形式
生態系
代謝
独立栄養生物と従属栄養生物、水系生態系と陸上生態系、生産構造図、光合成速度 空欄補充、選択、記述、論述、計算
発生、動物の反応・調節、遺伝情報、進化・系統分類 眼の発生と構造・働き、iPS 細胞、脊索動物、遺伝子導入、視覚の進化 空欄補充、選択、記述、論述
代謝
細胞
三大栄養素の消化、タンパク質の呼吸商、グルコースの吸収と輸送タンパク質 空欄補充、記述、論述、計算
遺伝情報
細胞
DNA とRNA の合成、 オートファジー、タンパク質のはたらき 空欄補充、選択、記述、論述、描図

2017年度

番号 項目 内容 形式
代謝・遺伝情報・進化 光合成色素生合成系の遺伝子と進化 空欄補充、記述、論述
動物の反応と行動 神経細胞の膜電位の形成、神経興奮の発生と伝導 記述、論述
遺伝 三毛ネコの遺伝、X染色体の不活性化 記述、論述
進化 自然選択に関する考察問題、用語の説明(共進化、相同器官) 空欄補充、論述

2016年度

番号 項目 内容 形式
細胞の構造と働き
植物の環境応答
細胞伸長と植物ホルモンの働き、細胞小器官の機能、ヒメツリガネゴケ原糸体の屈性におよぼす光と重力の影響 空欄補充、選択、記述、論述
性決定と染色体・遺伝子、減数分裂、伴性遺伝 性染色体構成と性決定の関係、哺乳類のSRY 遺伝子の働き、両生類の性転換、キイロショウジョウバエの染色体の分離異常と性決定、伴性遺伝 空欄補充、記述、論述、計算
刺激の受容 仮想的な生物のコロニー(個体の集合塊)間の情報伝達のしくみの考察 論述
個体群と生物群集
生態系
様々な種間関係(リス個体群の競争・すみ分け、アリと植物の相利共生、外来生物)、生物多様性、かく乱 記述、論述、描図

出題分析

分量

各学部とも試験時間は昨年度と同様に1科目当たり75分であった。大問数は2008~2014年度は3題であったが2015年度以降は4題で、今年度も4題であった。本年度もすべて「生物」からの出題で、「生物基礎」からの出題はなかった。難易度はやや易しくなったが記述・論述量および計算量が多かったため、時間配分には注意が必要であったと思われる。

パターン

近年の名大入試の傾向として、ほとんどの大問で空欄補充や用語・記号選択、正誤判定、論述など様々な出題形式の設問が混在している。年度によって空欄補充や用語・記号選択などの設問が半数以上を占めたり、論述の設問がやや多く取り入れられていたりと少し変動はあるものの、今後も客観式と論述式を交えた出題になると思われる。2007年度以降はほぼすべての設問で論述問題の字数指定が行われており、解答欄にはマス目が用意されていたが、2014年度以降はほとんどの設問で字数指定がなくなり、「解答欄の枠内で述べよ」というスタイルに変わった。今年度もすべての設問で字数指定はなかった(1問のみ、解答欄に罫線あり)。過去の制限字数に関しては、20~30字の短いものから200字程度のボリュームのあるものまでかなり幅がある。リード文や設問文の空欄補充問題は、2008~2010年度は38~55個と非常に多く出題されていたが、2011~2017年度は5~19個と減少していた。2018年度は合計40個出題されており、個数は年度によりかなりばらつきがあるが毎年、複数の大問で出題されている。計算問題は、1996年度以降、2011、2017年度を除いてほぼ毎年出題されている。グラフ作成や描図問題は近年、出題がみられなかったが、2018年度はDNA複製に関する描図が出題された。

内容

例年、1つの大問でいろいろな分野の知識や考察力を試す総合的な内容になっている。出題分野は、1990年度以降をみると、出題頻度の高い方から「反応と調節(刺激と反応、体液と恒常性)」、「遺伝情報(分子生物)」、「代謝」、「細胞」、「遺伝」、「生態」、「進化」を挙げることができる。「反応と調節」では、神経、ホルモン、筋収縮、血液、浸透圧調節などが出題されている。「細胞」では、細胞の構造、原核細胞と真核細胞の比較などのほか、細胞融合や組織培養などをタンパク質の働きを絡めて問う現代的なテーマも要注意である。また、各分野で繰り返し出題されているテーマがあり、類似したテーマの問題が2~3年続けて出題されることもある。例えば、2011年度に出題された「リポソーム(人工膜小胞)の作成」は、2009年度にも出題されている。「GFP(緑色蛍光タンパク質)」に関連した出題も近年は非常に目立っている。「生物」という科目の特性上、「細胞」、「遺伝情報」、「免疫」などの分野では、近年の学問的進展をテーマとした出題が増加している。また、題意を把握して実験を自分で設定するという設問2015年度~2017年度に3年連続して出題されるなど、思考力が試される問題も増加傾向にある。

難易度

近年の名大入試では、教科書を確実に理解していれば高得点が期待できる標準的な問題が大部分を占めている。しかし2009年度頃から、教科書の知識があれば容易に解答できる問題に加えて、やや高度な思考力を要する設問や新しいテーマが割合多く出題されるようになった。単なる知識よりも、考察力、応用力、論述力などを試そうという姿勢が感じられる出題が増加している。また、ややマニアックな設問が一部にみられる。2010年度は「イチョウの受精」、「サイトカイン」、「インターロイキン」などが詳しく取り上げられていて、教科書に詳細な記載のない事柄が問われた。2011年度は「ES 細胞」や「生物多様性」などの教科書での扱いの小さいテーマが出題されており、詳しく学習していない受験生もいたと思われる。2013年度に出題された「水晶体と眼杯の相互誘導」や「表皮と真皮の組み合わせの実験」の正誤判定には、一部の教科書にしか記載のない知識が必要であった。2014年度に出題された「ギムザ染色」は、検定教科書のうち一社にしか記載のないテーマであった。このような設問は以前からも時折出題がみられるが、ほとんど打つ手がなく、せいぜい平素の学習で細部もおろそかにせず"何にでも興味を持つ"よう心懸ける以外に対策がない。また、このような設問はどの受験生にとっても解答しづらいものであるため、そこで他の受験生と差がつくわけではない。限られた問いだけなので、むしろ教科書レベルの標準的な問題を短時間で正確に解答できるように努めるのが賢明だろう。

入試対策

★ 確実な知識を身に付ける
知識を確実にすることは、考察問題や論述問題を解く上での土台でもある。まず、教科書の知識が基本となるので、教科書を反復して精読し、内容を確認する。重要と思える事柄にはマーカーで印をつけたり、下線を引いたり、とにかく自分が覚えやすい方法でよい。教科書レベルの知識が身に付いたら、あとは問題演習をこなすなかで知識を徐々に増やしていく。繰り返し間違えるような事柄があれば『生物用語集』(駿台文庫)などを利用してサブノートにまとめることも有効な対策である。このときに留意しなければいけないポイントは、単に用語とその意味を記憶するといった断片的な知識ではあまり役立たないということである。調節の仕組み、生物現象の適応的意味、さまざまな生物間での比較、生物どうしの関係といった具合に全体の繋がりを意識し、かつ論理的に内容をしっかりと理解するということを忘れないように。

★ 思考力を鍛える
種々の"考えて解く問題"を掲載していて、丁寧な解説がなされている信頼できる(解答や解説に誤りや誤植のない)問題集を利用するのがよい。問題を解いてただ答え合わせをするのではなく、解説を読んで自分の実験データの分析、グラフの読み取りなどが妥当なものかどうか絶えずチェックすること。こうした作業の繰り返しにより、徐々に生物学的思考力が身に付くものである。また、名大実戦模試などの模擬試験を受け、モチベーションを高めるとともに知識や理解に不十分な点はないかを定期的に確認する作業も非常に重要である。単に点数だけに一喜一憂せず、間違えた部分や減点された部分は解答解説をよく読んで、次に同じ間違いをしないように備えることが大切である。

★ 論述問題に強くなる
名大入試において論述対策は大変重要である。論述の答案には受験者の実力のあらゆる側面が現れるので、知識・思考力などすべてを磨く必要があるのはいうまでもないが、文章で表現するのだから、文章表現の上手下手が答案の出来栄えに影響することもまた事実である。読み手(採点者)にわかりやすい答案を書けるようになるには、教科書や問題集、模擬試験の模範解答や解説などを細部までよく読み、生物現象や実験手法などの説明の仕方を真似しながら徐々に慣れていくことである。早い時期から継続的に論述答案を作成し、模範解答と照合して論旨や表現について自己添削をする。また、出来れば信頼できる指導者の添削を仰ぐのが望ましい。こうした作業を根気よく繰り返し行うことが大切である。

★ 記述や計算の練習も忘れずに
空欄補充問題などで生物用語の記述解答を要求されることが多いため、誤字などのケアレスミスには注意が必要である。普段から自分の手を動かして、生物用語を実際に"書く"練習をしておくこと。また、毎年出題されている計算問題への対策も重要である。これも模範解答をただ眺めて解答方針を確認するだけでは不十分である。有効数字などにも気を配り、正しい解答を限られた時間で導出できるかを実際に確認しておきたい。

★ 出題傾向に備えよう
2009年度入試から、問題量が増加し、難易度がやや難化し、出題範囲が広くなった。あまり頻出分野を意識するのではなく、全範囲についてしっかりとした知識を身に付け、問題演習を十分にこなすようにすること。とはいえ、繰り返し出題されているテーマもあるため、名大の過去の入試問題(できれば10年以上)を解いておくことが重要である。特に近年、新しいテーマや他大学で最近取り上げられたテーマの出題が割合よくみられるので、比較的最近の入試問題を収めた問題集などやっておくことも有効である。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。