2018年度入試
出題分析と入試対策
  九州大学 国語

過去の出題内容

▼文学部

2018年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(随想)
内容説明・理由説明・事例選択 土門拳
『死ぬことと生きること』
古文
(日記)
内容説明・現代語訳・文法・文学史 紫式部
『紫式部日記』
古文
(随筆)
現代語訳・文法的説明・内容説明・理由説明 新井白石
『折たく柴の記』
漢文
(随筆)
書き下し文・解釈・内容説明・語句の読み・文化史 范鎮
『東斎記事』

2017年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
内容説明・理由説明・漢字の書き取り 北原靖子
『ヒトらしさとは何か ヴァーチャルリアリティ時代の心理学』
古文
(歌論)
語意・語意の違いの説明・内容説明・現代語訳・心情説明 尾崎雅嘉
『百人一首一夕話』
古文
(軍記物語)
文法的説明・現代語訳・内容説明・理由説明 『平家物語』
漢文
(説話)
解釈・書き下し文・理由説明・語句の読み・文化史 『晏子春秋』

2016年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
理由説明・内容説明・漢字の書き取り 檜垣立哉
『賭博/偶然の哲学』
古文
(作り物語)
内容説明・空欄補充(敬語)・表現の違いの説明・心情説明・文学史 『有明の別れ』
古文
(日記)
現代語訳・助動詞の文法的説明・主語・理由説明・内容説明・心情説明・掛詞を含む和歌の現代語訳 『弁内侍日記』
漢文
(説話)
解釈・書き下し文・内容説明・主張説明・語句の読み 劉基『郁離子』
▼教育・法・経済学部

2018年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(随想)
内容説明・理由説明・事例選択 土門拳
『死ぬことと生きること』
現代文
(評論)
内容説明・理由説明・抜き出し 内田義彦
『読書と社会科学』
古文
(日記)
内容説明・現代語訳・文法・文学史 紫式部
『紫式部日記』
漢文
(随筆)
書き下し文・解釈・内容説明・語句の読み・文化史 范鎮
『東斎記事』

2017年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
内容説明・理由説明・漢字の書き取り 北原靖子
『ヒトらしさとは何か ヴァーチャルリアリティ時代の心理学』
現代文
(評論)
内容説明・理由説明・漢字の書き取り 大庭みな子
『女の男性論』
古文
(歌論)
語意・語意の違いの説明・内容説明・現代語訳・心情説明・文学史 尾崎雅嘉
『百人一首一夕話』
漢文
(説話)
解釈・書き下し文・内容説明・語句の読み・文化史 『晏子春秋』

2016年度

番号 科目 内容 出典
現代文
(評論)
理由説明・内容説明・漢字の書き取り 檜垣立哉
『賭博/偶然の哲学』
現代文
(随想)
理由説明・内容説明・対応箇所の抜き出し・漢字の書き取り 古井由吉
「時の沈黙」
古文
(作り物語)
内容説明・空欄補充(敬語)・心情説明・文学史 『有明の別れ』
漢文
(説話)
解釈・書き下し文・内容説明・抜き出し・語句の読み 劉基
『郁離子』

出題分析

《現代文》

総論

まず、文学部の現代文問題と教育・法・経済(経済・経営学科)各学部の現代文問題、経済学部経済工学科の現代文問題全体について見ておこう。

〈教育・法・経済(経済・経営学科)の各学部〉

現代文2題・古文1題・漢文1題

〈文学部〉

05年度まで
古文2題・漢文1題
06年度
現代文1題(教育・法・経済各学部の二と共通)・古文2題・漢文1題
07年度以降
現代文1題(教育・法・経済各学部の一と共通)・古文2題・漢文1題

〈経済学部経済工学科〉

現代文2題(教育・法・経済(経済・経営学科)各学部と共通)

以上からわかるように、九州大学の現代文問題については、教育・法・経済学部の現代文2題がまずあり、文学部ではそのうちの1題が出題される。近年では教育・法・経済学部の一が文学部との共通問題となっている。

九州大学の現代文対策としては、当然、過去問題演習が有効であるが、学部志望がどこであれ、教育・法・経済学部の過去問題をやっておくということになる。文学部志望者については教育・法・経済学部の問題もやっておくとよい。経済学部経済工学科志望者についても同様である。

また、出題傾向や対策についても、基本、教育・法・経済学部の2題の現代文の傾向を確認し、対策をしておいてくれればよいということになる。

というわけで、以降、教育・法・経済学部の一・二について傾向と対策を記しておくが、これが、全学部共通の九州大学の現代文の傾向と対策だと考えればよい。

なお、教育・法・経済学部の2題であるが、どちらが簡単で、どちらが難しいかは、固定しているわけではなく、年度による。教育・法・経済学部志望者は、最初に、2題を見て、どちらからやるか時間配分に気をつけて欲しい。難度の高い方の問題に時間をとられ過ぎて、簡単な問題の方をやろうとしたら、時間がなかったなどということがないように、注意しよう。

分量

本文量 解答記述量
14年度 一 約2500字
二 約2100字
一 8行+135字
二 17行
15年度 一 約3200字
二 約2700字
一 15行+10字
二 19行
16年度 一 約3200字
二 約3000字
一 18行
二 15行+20字
17年度 一 約3800字
二 約3500字
一 20行+50字
二 20行
18年度 一 約2600字
二 約3200字
一 27行
二 24行+15字

18年度の本文量は一・二とも、17年度より減少した。一・二とも1000字程度の幅はあるが、3000字程度をめどとして、4000字程度の文章が出る場合もあると心しておこう。設問数は6問か7問。字数指定の場合もあるが、行数指定の場合は1行の縦が17センチで、18年度の場合は1問あたり、3〜7行だった。合計の記述解答量は上に記したように、一・二とも、17年度より大幅に増加している。行数指定の設問については、たとえば解答欄が3行なら3行目の「最後まで埋める」というのではなく、「3行目まで埋めることが可能だ」という判断が大事だ。つまり、「最終行の最後まで書ききる」のではなく、「解答に必要な要素を過不足なくまとめ、最終行の最後まで使用することが可能だ」という発想で臨みたい。1行25字程度をめどとして、たとえば、解答欄が3行分であれば、25字程度×3行=75字程度、解答は50字程度になることもあれば、75字程度になることもある。

設問要求をふまえて、必要な内容を的確に書くという解答姿勢で取り組もう。いずれにしろ、かなりの記述量なので、覚悟しておこう。

設問内容

従来、漢字の書き取りと記述説明問題に、抜き出し、選択肢問題が出題されたりされなかったりしている。選択肢問題は16年度、17年度は出題されていなかったが、18年度は出題された。逆に、例年出題されていた漢字の書き取り問題が18年度は出題されなかった。

記述説明問題では、指示語の指示内容をストレートに問う問題も含めて、内容説明問題も理由説明問題も指示語がポイントになることが多い。指示内容をきちんとふまえて説明しよう。

本文内容

14年度一は倫理に関する文章であり、倫理学が現在抱える病弊、その背景、今後の課題について論じた文章であった。二は「凝視=よく見ること」について、その困難さを具体例を挙げて説明し、言葉との関係について論じた文章であった。

15年度一は、筆者自身の体験を通して、歌舞伎を知るための条件について述べた文章であった。二は、ホッブスの考え方を通して、社会科学のあり方について述べた文章であった。

16年度一は、自己責任と自由について、社会や科学技術との関わりから論理的に説明した文章であった。二は、不死の観念について、近代社会や科学技術との関わりから述べた文章であった。

17年度一は、「ヒトらしさ」と「リアリティ」について、ヴァーチャルリアリティという観点から論じた文章であった。二は、「他人の眼」について、日本人の生き方や教育との関わりから述べた文章であった。

18年度一は著名な写真家である筆者による、写真論であった。写真について、それが機械による単なる実物の描写といった「記録性」「機械性」にはなく、主体としての人間の表現の欲求にこそ、写真の本質ともいうべき「写真性」があることを述べた文章であった。二は、著名な経済学者による読書論。インタビューに基づいて、作品を読む際の作者の意図の忠実な理解について述べた文章であり、音楽作品に触れつつ、主に台本や脚本を読んで、作者の意図を再現する舞台作りについて、また、古典を現代に上演することについて説明したものであった。

哲学・思想、文化・文明論、言語論・文学論を含む芸術論、社会学などから出題されており、大学入試の現代文のなかではかなり難度の高い評論、場合によっては随想までが出題されている。現代社会が抱えている諸問題を論じたり、哲学や思想などの人間の感性や思考の本質を考察する抽象度の高い文章も多い。

入試対策

論理的な文章を論理的に読解する日頃の訓練が欠かせない。内容が難解なだけに、接続語を意識して、前後の論理関係を正確に把握すること、一般論と具体例の関係を見極めること、指示語の指示内容を正確におさえること、同義内容・対比関係をおさえて筆者の主張を整理することなど、オーソドックスな読解力をつけることが何よりも大切だ。16年度の二は随想が出題されたが、読解の基本的な手順は同じである。文章の形式に惑わされない、確かな読解力を身につけることが不可欠である。現代文に苦手意識のある人は、まず、センター試験本試験の第1問レベルの評論読解から始め、次にセンター試験追試の第1問レベルの評論読解へと進めていくとよいだろう。

難度の高い文章の場合、時間をかけて丁寧に読んでも、どういうことが書いてあるのかわからないままに時間だけが過ぎ、結局、問題を解ききれないで終わる、という失敗をしがちである。むしろ、話題をおさえ、論理関係を把握しながらとにかく最後まで読み終えるという姿勢で先へ先へと読み進んでいくと、徐々に内容が把握できることもある。「わからない。だめだ〜」などと動揺しないことだ。

簡単な文章でも、難解な文章でも、文法や構文、接続語の働き、指示語の役割は変わらない。逃げずに、論理を追っていこう。そうすれば、どこかで道は拓ける。理解できない部分を理解しようとして焦るのではなく、理解できるところを確実に理解して、その理解を次の理解につなげていくことが大事だ。具体的な練習方法として、以下の(2)を参考にしてほしい。

漢字問題は全問正解を目指して、センター試験の第1問の漢字を選択肢も含めて、書けるようにしておこう。

記述問題対策は、以下の(1)(3)(4)に記したが、特に(1)は大切だ。センター試験対策と九州大学の二次記述対策は重なる部分が多い。センター試験対策がそのまま九州大学の二次記述対策になるように勉強していこう。

読解力も得点力も、地道な努力を積み重ねることが大切だ。後回しにしないで、早めに対策をしていこう。

[具体的な対策]

  1. 入試現代文の基礎力をつける。センター試験の傍線部読解問題を消去法で解くのはやめよう。
    • 与えられた選択肢にまどわされることなく、傍線部と設問文を手がかりに、本文を確認する。
    • 自分で解答ポイントを見つけて、選択肢を吟味する。

    こういう方法でセンター試験の傍線部読解問題を解いていれば、二次記述でも慌てることはない。

  2. 本文の読解力をつける。
    • 一定の難度の文章を一定の時間で読みきる訓練をする。

      たとえば、センターの追試の問題でも、東北大学や早稲田大学などの他大学の過去問題でもよいから、「一定のレベルの評論を短い時間で論理的に読む」訓練が有効だ。「読むのにどうしても時間がかかる」と嘆いていても何も始まらない。「一定の時間内で読むしかない」と覚悟を決めよう。先に制限時間があるのだ。その制限時間内で、どのくらい読みとれるかが勝負であり、その「速度と精度」を上げていくしかない。

      もちろん、そのためには、何年もかけて、本を読み、考え、知識を蓄え、論理的思考力を徐々に高めていくのが理想である。でも、受験生にはなかなかそんな時間はとれないだろう。

      入試問題の評論を、10分程度で読む。話題、論理展開などをおさえる。

      時間を制限せず、今度はじっくりと本文を読み、一回目で十分にチェックできなかった部分もしっかりとチェックをする。

      本文要旨を簡単にメモする。

      という読解訓練を、(3)の過去問演習と並行してやっていくとよい。

  3. 得点力をつける。
    • 過去問題演習

      九州大学の近年の過去問を解いてみよう。最初に述べたように、教育・法・経済学部以外の受験生も、自分の学部の過去問題だけではなく、教育・法・経済学部の過去問題も解いておこう。

      1. 時間制限をして、問題を解いてみよう。
        • 一定の時間で本文を読み終える訓練をする。接続語や指示語に注意して、論理関係をおさえる。
        • 設問を解く。 → 一回目の解答
      2. 時間をかけて、じっくり読み直してみよう。わからない語や語句は辞書を引こう。
        • 設問はメモをとって、解答のカタチも工夫して、行数の7〜8割で解答を作成してみよう。 → 二回目の解答
      3. 青本の解答、解説を見て、自分の答案を採点してみよう。10字程度で1ポイントと考えて、解答例のポイントが自分の答案にあるかチェックしていく。何ポイント中の何ポイントとれたかを確認していく。目標は6割。5ポイント中3ポイント確保で6割である。まずは、二回目の解答で6割をめざし、徐々に、一回目でも6割近くとれるように心がけていこう。
  4. 解答姿勢を保つ。

    本文を見て、傍線部周辺を適当に書き写すという解答作成をしていては、いつまでたっても高得点は望めない。正攻法で取り組む姿勢を早期に身に付け、地道に練習することが高得点への第一歩である。解答ポイントを自分で発見しよう。

    当然、解答ポイントをおさえるには、それ以前の本文読解が欠かせない。

    まず、本文の論理的構造を把握する。次に大きく全体を整理する。そして、各設問に答えていく過程で、傍線部や傍線部を含む文脈の論理構造を再確認し、内容を理解して、論理と内容を解答に反映していくことが大切である。

出題分析

《古文》

18年度の出題について

文学部と教育・法・経済学部の共通問題である『紫式部日記』は、平安時代に紫式部が著した日記で、筆者が自分の身を顧みて思うところを記した文章が出題された。共通問題での日記の出題は、11年度の『和泉式部日記』以来であった。文学部単独問題では、16年度に『弁内侍日記』が出題されている。設問は、内容説明・現代語訳・文法・文学史で、文学史以外はすべて記述式。問2の現代語訳は、文学部は2箇所、教育・法・経済学部は4箇所の出題であった。文学史は、17年度は教育・法・経済学部のみの出題であったが、18年度は同じ問いが文学部にも出題された。

文学部のみ出題の『折たく柴の記』は、江戸時代に新井白石が著した随筆で、青年時代に縁談が持ち上がった際の自分と父の言動を記した文章が出題された。近世の文章は、共通問題でも文学部単独問題でもかなりの頻度で見られる。設問は、現代語訳・文法的説明・内容説明・理由説明というオーソドックスなもので、文章全体の理解をはかる本格的な記述問題が課せられている。

ジャンル

共通問題では、作品の成立時代やジャンルは年度によって異なるが、物語・日記・説話など、人物の動向や心情を描いた文章が多く出題されている。和歌を含む文章からの出題も多い。

共通問題と文学部単独問題のどちらかで近世の作品が出題されることが多く、18年度は文学部単独問題の『折たく柴の記』が近世の作品であった。中古・中世の作品からも多く採られ、18年度の共通問題の『紫式部日記』や、17年度の文学部単独問題の『平家物語』などの有名作品もしばしば出題されている。

問題文の字数

18年度は、共通問題の『紫式部日記』は約740字で、17年度の『百人一首一夕話』や16年度の『有明の別れ』が1400字ほどであったのに比べるとかなり短いものが出題された。文学部の『折たく柴の記』は約950字で、こちらも、17年度の『平家物語』の約1140字よりもやや短かった。年度によってまちまちであるが、短いもので約700字、長ければ約1400字のものが出題されている。

設問数

18年度は、共通問題の『紫式部日記』は7問、文学部の『折たく柴の記』は6問で、ほぼ例年通りの分量であった。それぞれ、現代語訳の問題が2~3箇所、説明問題が3問程度に加えて、文法・文学史などの問題が1つずつ出題されるのがおおむねのパターンである。

文学部と教育・法・経済学部の共通問題

文学部第二問と教育・法・経済学部第三問は例年同じ文章が出題され、18年度は、現代語訳の問いの傍線部が、文学部では2箇所、教育・法・経済学部では4箇所という違いがあった。ほとんどの年度で、一部の設問が多少異なる形となっており、17年度は、同一の6問に、教育・法・経済学部のみ文学史的知識を問うものが加えられていた。

16年度は7問のうち5問が同一で、敬語の空所補充が文学部では1箇所、教育・法・経済学部では2箇所出題された点と、説明問題として、文学部では表現のニュアンスを問うものが出題されたのに対して、教育・法・経済学部では和歌の心情説明が出題された点に違いがあった。

代表的な設問

例年、現代語訳(口語訳・解釈・意味)、文法、説明が中心で、和歌修辞や文学史が加わることが多い。

  1. 現代語訳

    古文の語句・語法に基づいた標準的なものがほとんどである。逐語訳が原則であるが、設問の要求によっては、文脈に即して適宜言葉を補ったり、文章全体の理解を反映させたりしなければならない場合もある。

  2. 文法

    活用と接続、敬語など標準的な設問である。

  3. 説明

    心情や理由の説明、内容の要約など多岐にわたっている。文章の表面的な読解だけでなく、表現の意図の説明など、一歩踏み込んだ一段高いレベルで考えることが要求されることもある。

  4. 和歌

    18年は共通問題『紫式部日記』で引き歌を踏まえた心情説明が出題された。和歌の出題は非常に多く、ここ10年間では、17年度を除いて、共通問題と文学部単独問題のいずれかまたは両方で和歌に関する問いが立てられている。問われる内容は、和歌自体の現代語訳や内容説明、和歌に詠まれた心情の説明など、文章の内容を踏まえた和歌の理解とともに、掛詞や縁語などの修辞技法に関わるものもある。和歌を含む本格的な古文が九州大学の一つの大きな特徴であると言えよう。和歌への対策を万全にしておきたい。

  5. 文学史

    基礎知識を確かめるものであるが、近世の文学者や作品については、受験生にはあまりなじみのない事項が出題されることもある。

入試対策

●読む力の鍛練

一つは、解釈の裏付けとなる文法(語法に関する知識)を整理して、正確な読解に応用できるようにしておくこと。一つは、現代語訳の方法を身に付けること。

文法は重箱の隅をつつくような知識は必要ない。古文を正確に読むために必要な事項、つまり、繰り返しよく出る事項に慣れて、即座に判断できるようにしておくこと。平安時代中ごろの標準的な言葉遣いはこういうものだという理解があれば十分である。

現代語訳は大体こんな内容だろうということを書くものではない。一語一語を現代語に置き換える逐語訳ができるようになることである。

  1. 助動詞や助詞、敬語などは型通りの現代語訳がてきぱきできるように練習をする。
  2. 動詞や形容詞などは、単純な置き換えで済むものもあるが、内容や文脈、場面の理解までも盛り込む必要のあるものもある。十分な練習が必要である。
  3. 設問の要求に応えて表現や形式を整える。 言葉そのものについての深い知識を要求することがあるので、いつも辞書を片手にして、疑問に思った言葉や不確かな言葉はそのつど十分に理解しておくこと。語彙力は日常の学習の積み重ねがものを言うので、怠らず頑張ること。

●考え書く力の鍛練

説明問題は、あなたはどう思うかということではなく、問題文に書かれていることに基づいて、心情・理由・内容などの説明をするのがポイントである。また、限られた解答欄の中でスマートでコンパクトな説明ができるよう、表現にも注意をはらっておくことが必要である。

文学史は、時間の余裕のあるうちにクリアしておきたい。一つ一つの知識を確かなものにした上で、文学史の流れの中で作品を把握し、解釈の裏付けとすることができる有機的な理解を心がけてほしい。

出題分析

《漢文》

分量

過去5年間の問題文の総字数及び設問数を下に示す。

文学部 教育・法・経済学部
2014年 247字(9問) 247字(7問)
2015年 175字(6問) 175字(6問)
2016年 204字(7問) 204字(5問)
2017年 239字(7問) 239字(7問)
2018年 145字(7問) 145字(6問)

18年度の問題は06~17年度の問題と同じく、問題文が全学部共通、総字数は145字と昨年度より減少した。設問数は文学部が7問、教育・法・経済学部は6問であった。

各学部の論述問題の字数指定については以下の通りである。特に16年度は、文学部で内容説明(30字以内)と主張説明(70字以内)の2問出題されている。

文学部 教育・法・経済学部
2008年 本文から得られる教訓(60字以内) 理由説明(字数指定なし)
2009年 筆者の主張(80字以内) 内容説明(字数指定なし)
2010年 あらすじ(100字以内) 内容説明(字数指定なし)
2011年 筆者の主張(80字以内) 内容説明(字数指定なし)
2012年 会話主の主張(100字以内) 理由説明(字数指定なし)
2013年 理由説明(100字以内) なし
2014年 理由説明(80字以内) なし
2015年 理由説明(60字以内) なし
2016年 内容説明(30字以内)
主張説明(70字以内)
内容説明(字数指定なし)
内容説明(字数指定なし)
2017年 理由説明(70字以内)
理由説明(字数指定なし)
内容説明(字数指定なし)
2018年 内容説明(60字以内)
内容説明(字数指定なし)
内容説明(字数指定なし)

パターン

06年度から、問題文が、全学部で共通のものになり、18年度も同じく全学部共通であった。この傾向は今後も続くだろう。ただし、15年度から、文学部の配点が60点から45点に変更され、設問数が減少した。設問は書き下し文、解釈、説明などは毎年出題されているが、14年度はことわざの問題が、15年度は教育・法・経済学部で段落分けの問題が出題された。また、文化史(思想・歴史・文学)の常識問題が、08年度、15年度文学部、16年度をのぞいて出題され続けている。しかも、17年度は文学部と教育・法・経済学部とでは選択肢が異なり、正解数も違っていた。18年度は文学部と教育・法・経済学部で問題も選択肢も共通であった。この文化史(思想・歴史・文学)の常識問題は九大漢文の大きな特色となっているので、十分準備しておきたい。さらに、10年度では、例年出題されていた語句の読みの問題がなくなったが、11年度以降は出題されている。基本的な漢字・慣用句の読みと意味は覚えておこう。

内容

文学部は、例年、歴史・文学・思想とバラエティーに富むが、ストーリー性のある文章という点において変化はなかったが、04年度は、吉田泰の『読書論』という江戸時代の日本漢文の随筆で、前年度までと大きく出題傾向が変わった。05年度は、利瑪竇の『天主実義』というキリスト教の教理書の一節であった。ただし、ストーリー性のある文章という点では、以前の傾向に戻ったと言える。この傾向は、06年度の王士禛の『池北偶談』にも引き継がれた。ところが、07年度は白居易の『白氏文集』の「賛」の文章が出題され、作者の意図を読み取らなくてはいけなくなり、テーマ性が重要視されるようになった。さらに、08年度は岡直養の『彪邨文集』という昭和時代の日本漢文の随筆が出題された。内容は、ストーリー性とテーマ性の両方を兼ね備えていた。09年度は蘇軾の「李氏山房蔵書記」という随筆であった。ストーリー性はなく、テーマ性が重視されている。10年度は劉向の『説苑』が出題された。ストーリー性もあるが、テーマ性が重視されている。11年度は張士元の『嘉樹山房集』、12年度は呉兢の『貞観政要』が出題され、それぞれテーマ性が重視されている。13年度は薛福成の『庸盦筆記』、14年度は司馬遷の『史記』、15年度は司馬光の『涑水記聞』が出題されテーマ性、ストーリー性ともに重視されている。16年度は劉基の『郁離子』が出題され、テーマ性、ストーリー性を重視し、さらに作者の主張を読み取るものだった。17年度は『晏子春秋』が出題され、君子として召し使いの身分から解放した越石父に対して、無礼なあつかいをした晏子は自分の非を認め改めたというものだった。テーマ性、ストーリー性が重視されていた。18年度は『東斎記事』が出題され、王景彝という人物の「人と為り」が引き起こした事件とそれに対する作者范鎮の意見で構成されており、テーマ性、ストーリー性は依然重視されていた。字数制限の論述問題については前掲の一覧表のとおりであるが、近年は100字以内の字数制限となっている。16年度は内容説明(30字以内)と主張説明(70字以内)あわせて100字以内となっている。あらすじをまとめたり、内容説明をする記述問題に対しては、十分な準備が必要である。また、15・16年度は出題されなかったが、文化史の問題が17年度には復活し、18年度も出題された。十分準備しておこう。15年度からは配点が45点と変更されたため設問数が減少したが、時間配分を間違えないように、余裕を持っておきたい。

教育・法・経済学部の問題は、06年度以降は文学部と共通の問題から出題されている。歴史・思想・文学・仏教とバラエティーに富むが、09年度・11年度・12年度以外はストーリー性のある文章である。特に『三国志演義』『百喩経』『右台仙館筆記』『幽明録』『池北偶談』『彪邨文集』『嘉樹山房集』『庸盦筆記』『東斎記事』などは極めて特殊な素材であり、入試問題として取り上げられることは稀である。しかし、設問は高校課程を逸脱したものでなく良問と思われる。平易な内容で読み取りやすく、ストーリー性のある文章でテーマ性も重視されている。06年度以降は字数制限付きの問題はなくなり、解答欄の大きさから察するに30〜45字程度の内容説明・理由説明の問題になった。13~15年度は、内容説明・理由説明の問題がなくなり、解釈問題になっていたが、16~18年度は内容説明が出題された。また、15年度では段落分けの問題が出題されたように様々な設問が予想されるが、16年度は出題されなかった文化史の問題が17・18年度は出題されたので、十分な準備が必要である。配点は40点と変更はなかったが、やはり時間配分には注意したい。

入試対策

九大の漢文は全国の二次試験の中でも、要求する知識、記述量でトップレベルを誇っていたが、06年度では、問題文が全学部共通となったこともあり、少し易化した。だが、07年度は本文字数も増え、文学部の記述内容も少し難化し、それ以降も記述内容は易化しているとは言い難い。特に17年度は難化したといえる。18年度は本文字数が減少したことで全体の難易度は易化したが、説明問題の難度は保たれている。そのため、あらすじをまとめる問題や、内容説明の記述問題に対応するためには十分な準備が必要である。九大漢文を攻略するためには、まず使役・受身・再読文字・反語・否定などといった頻出句形を十分マスターし、文語文法に習熟することである。そのためには、センター試験用の問題集等を活用すればよいだろう。次に説明問題に対処するため読解力・表現力・作文力を身に付けておくこと。こうした学力は一朝にして身に付かないから、日頃から漢和辞典を活用し、問題文を通釈したり、あらすじをまとめたりしていくことで訓練してほしい。また、思想・歴史・文学に関する文化史の問題は九大特有のものである。16年度は出題されなかったが、17年度は復活したので、中国文化史を世界史の用語集で覚えたり、国語の総覧・便覧などの漢文学史の部分を読んでおきたい。特に諸子百家、漢代の史書、唐代の詩人、唐宋八大家、明清の小説などが頻出している点に注意しておこう。また、07年度では四字熟語の問題、14年度ではことわざの問題、15年度では教育・法・経済学部で段落分けの問題が出題されたように、様々な設問が出題されるだろう。四字熟語・故事成語・ことわざなどの国語常識も覚えておきたい。九大の過去問は全学部とも繰り返し解いておいてほしい。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。