2018年度入試
出題分析と入試対策
  九州大学 世界史

過去の出題内容

2018年度

番号 項目 内容 形式
〔1〕 前5~後7世紀
西アジア
ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の成立過程 長文論述(600字)
〔2〕 14・15世紀
ヨーロッパ史
中・近世イギリス史に関する図像(王の紋章・旗) 論述
(260字×1問・70字×1問)
記述問題(3問)
〔3〕 古代~近代
ヨーロッパ・アジア・アフリカ史
物資の生産・利用(食糧・道具)と物産の流通・取引 論述(35字×2問)
記述問題(10問)
記号問題(1問)

2017年度

番号 項目 内容 形式
〔1〕 6~14世紀
東アジア史
6世紀末~14世紀、中国諸王朝の首都の立地や交通・輸送網と経済の関係 長文論述(500字)
〔2〕 14・15世紀
ヨーロッパ史
中世イングランドに関するグラフ(人口・労賃・小麦価・輸出) 論述
(120字×1問・100字×1問)
記述問題(7問)
選択問題(1問)
〔3〕 古代~現代
ヨーロッパ・アメリカ・アジア・アフリカ史
政治権力をめぐる思想・運動 記述問題(14問)
記号問題(1問)

2016年度

番号 項目 内容 形式
〔1〕 帝国主義時代、国際関係 狭小な植民地がイギリスの世界経営に有した意味 長文論述(500字)
〔2〕 7世紀~現代、イスラーム史 カリフについて言及した3史料(12世紀、13世紀、20世紀) 論述
(200字×1問・150字×1問・40字×1問)
記述問題(4問)
記号問題(1問)
〔3〕 古代~近世、
ヨーロッパ・アジア・アフリカ史
異文化接触における文化習合や独自の受容 記述問題(13問)
記号問題(2問)

出題分析

形式・分量

本年も九州大学文学部の世界史に、大きな変更は見られない。配点は〔1〕・〔3〕が各30点、〔2〕が40点と従来通りであり、〔1〕が長文論述、〔2〕が論述問題と記述問題の組合せ、〔3〕は記号選択問題と記述問題中心という構成も例年と同じであった。ただし、〔3〕で初めて短い論述問題が2問(各35字)出題され、〔1〕と〔2〕での論述字数の増加(〔1〕は500字から600字に、〔2〕は計220字から計330字に)があったため、論述問題の総字数は昨年の720字から大幅に増加して1000字となった(そのため記述問題は21問から13問に、記号問題も2問から1問に減少)。記述問題や記号問題は知識量が比較的素直に反映されるのに対し、論述問題はより深い理解や表現力などが試されやすく、論述へ向けての対策が必須となる。その点からいって、易化した2017年(論述総字数減少、記述問題・記号問題増加)に比べ、2018年の問題は形式面からは難化したといえる。

とはいっても、九大文学部の問題で論述問題が大きな比重を占めていることは、地歴が二次試験に導入された2015年以来一貫している。従って、文学部を目指すのであれば、当然それを踏まえた学習を進めておくべきだろう。

内容

〔1〕 「ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の成立過程」を600字で答える長文論述問題。制限字数は長いが、テーマ自体は非常にシンプルで教科書的な知識で処理でき、条件にさえ注意を払えば高得点の解答が書けたはずだ。

〔2〕 まずリード文でヨーロッパの国家にみられる特徴(国家内に複数の政体、君主が他国出身者)を説明し、イギリスの歴史的経緯に関わる二つの資料が提示される。資料1は五つの王の紋章で下に王名と在位年が記され、資料2は五つの旗の下に名称と一部に地域名が付されている。

問1は資料1の五つの紋章を解説しながら、各王の系譜、統治意識を併せて説明させる問題。王名や時期(ヘンリー4世の場合)を手掛かりに、紋章から分かる情報と歴史的知識を結び付けて解答を作成することになる。問題の要求に従って紋章の情報と知識をどう結び付けて表現すれば良いのかということを考えなければならず、図像の読み取りに慣れていない受験生にはかなりの難問だったのではないだろうか。

問2は、国家イギリスの形成過程での、資料2から分かる国制上の変化について説明する問題。一見すると問1に似ているが、こちらは知識面で注意すべきポイントが少ないため、解答の方向性はつかみやすかったと思われる。

問3は名誉革命で即位したウィリアム3世の即位前に就いていた職を答える問題だが、通常ウィリアム(ウィレム)につく「オラニエ公」という肩書は、「職」ではない点に注意が必要だった。

問4では、アイルランドが1922年に本国から分離して形成した政体が問われている。「政体」という言葉が耳慣れないかも知れないが、「1922年」という年号から考えてアイルランド自由国のことを指していることに気がつけば正答できたであろう。

問5では、既に名前が挙がっているスコットランド以外に、イギリスで独自のケルト系言語が公用語とされた地域が問われたが、これは受験生にとっては少し難しかったのではないだろうか。

〔3〕 世界史上の物資の生産・利用と物産の流通・取引についての文章を導入として、様々な地域や時代から出題された。その点ではこれまでの〔3〕と同じではあるが、本年の問題には二つ特徴があった。一つは出題範囲が少し狭まったということであり、地域的には西アジア史や欧米史の問題がなく、また時代的には近・現代史からは出題されなかった。もう一つは、〔3〕で初めて短文論述問題(35字ずつ)が出されたことである(これもあって論述問題の総字数が大幅に増加したことは先述した)。もっとも内容的には、これまでと同じく、全ての問題が基本的レベルであったから、地道に学習していた受験生であれば完答できたはずだ。

大問ごとに外交・文化などのテーマ性のあるリード文もしくは史料が提示されているが、設問は政治・社会・経済などいろいろな分野からなされており、複合的である。2016年度・2017年度は、約4割が文化史からの出題であった。古代では律令制度に関する問題、近世では江戸幕府の外交や貿易に関する問題がほぼ例年出題されている。昭和戦後史についての出題も毎年あるので、きちんと学習しておきたい。また、史料問題も多い傾向があり、その史料の内容を読み取って、歴史事象の背景を考える論述問題が出されている。

難易度

大問毎に昨年の問題と難易を比較してみよう。

〔1〕の長文論述の制限字数は、昨年から100字増加して600字となった。だが、2017年の問題は中国王朝の都の位置と経済との関わりがテーマで、教科書とは違った視点での分析が必要であった。一方、本年のテーマは教科書の説明に沿って解答できるものだったから、内容的には本年の問題の方がかなり考えやすかったものと思われる。

次に〔2〕を見ると、昨年に比べて論述問題の制限字数が増加して、代わりに記述問題は減少し、記号選択問題は出題されなかった(昨年の記述問題・記号選択問題はいずれも基本レベル)。従って形式的にはやや難化している。では内容面ではどうだろうか。論述のテーマを見ると、昨年はグラフを基にして14世紀の「人口の変化の内容とその背景」・「労働者の生活環境に生じた変化」を答えさせており、社会経済分野のやや答えにくい問題であった。本年のテーマも先述のように図像と組み合わせて答えさせる凝った問題であったから、内容の点では昨年・本年の難易はほぼ匹敵しているといえるだろう。ということは、結果的には形式的難化があるため、〔2〕は全体として難化したと考えられる。

そして〔3〕は、昨年・本年とも完答可能な基本事項ばかりであったが、短文論述が2問あったことを考えると、これもやや難化したという印象である。

以上の結果を見ると、〔1〕が易化、〔2〕と〔3〕は難化となり、全体としては昨年よりやや難化したといえるだろう。ただし、形式上の難化という結論は、論述問題を苦手としやすいという受験生全体の傾向から導いたものであり、実際には論述対策の有無で各人にとっての難易は変わってくる。九州大学文学部を志望する受験生には、論述問題を重視する骨太の問題が出されることを前提として、早目に知識・技術の両面で対策をたてることを強く勧める。

入試対策

最後に、九州大学の「世界史」に挑むために必要なことを、二つにまとめて確認しよう。

  • ① 出来る限り世界史の学習に時間をかける
    九州大学の文学部は知識の幅(時代や地域、ジャンル)だけでなく、内容の深い理解も求めている。これは文学部で専攻する諸分野(歴史学・文学・哲学など)でも使えるような、骨太の知識を身につけておいて欲しい、というメッセージだと解される。知識を豊かなものにするためには当然手間ひまがかかるが、文学部を志すとはそう言うことなのだと自覚して欲しい。しかも、問題は時代・地域・ジャンルに偏りがなく教科書全体から出題されているので、高得点を狙うなら教科書を隅から隅までチェックしておかなければならない。手薄になりがちな近・現代史(教科書の4割)や周辺史(東南アジア・中央アジア・アフリカ等)、文化史などをしっかりと学習するためにも、できるだけ世界史の学習時間を確保してほしい。
  • ② 論述問題への対策を怠らない
    例え知識があっても、いざ文章での説明を求められるとなかなか書けないものだ。論述問題で的確な解答を作成するためには、慣れ(論述=書いて説明することに慣れる)と技術(問題の意図を精確に読み取る読解力、その意図にあわせて全体の構図や説明内容を考える構成力)が必要である。加えて論述問題でよく出される頻出テーマについての知識があると、本年の〔1〕のように頻出テーマに沿って出題されたときには短時間で解答の方向性を見出し、解答を作成しやすい。こうした論述問題対策は、自分だけではなかなかやれない部分も多い。可能な限り機会を捉えて、学校の先生に論述問題の添削をお願いするか、あるいは予備校の論述対策講座で腕を磨いてほしい。知識と技術の両輪が備われば、500~600字の論述問題にも自信を持って臨むことができる。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。