2018年度入試
出題分析と入試対策
  九州大学 物理

過去の出題内容

2018年度

番号 項目 内容
〔1〕 力学 力学的エネルギー保存則、円運動、慣性力、運動量保存則
〔2〕 電磁気 ローレンツ力、誘導起電力、消費電力、電流が磁場から受ける力、運動方程式
〔3〕 波動 音波のドップラー効果、屈折、全反射

2017年度

番号 項目 内容
〔1〕 力学 力学的エネルギー保存則、運動エネルギー変化と仕事、放物運動、衝突、反発係数、運動量保存則
〔2〕 電磁気 円電流がつくる磁場、電流、等速円運動、静電気力、ローレンツ力
〔3〕 波動
原子物理
光の反射、光子、光波の干渉

2016年度

番号 項目 内容
〔1〕 力学 力学的エネルギー保存則、単振動、等速度運動、衝突
〔2〕 電磁気 電流、電気抵抗、抵抗率、抵抗率の温度係数、ホール効果
〔3〕 波動 レンズ

出題分析

分量

大問の数は、1994年以降3題である。解答数は平均すると35個程度であるが、2012、2014年度では大きく増加し、制限時間(理科2科目で150分)内に答案をまとめるには時間配分に注意が必要であった。ところが、2010、2015、2017年度は解答数が大きく減少するなど、最近は変動が激しくなっている。また、〔1〕の力学の問題が他の2題に比べて解答に時間がかかることが多く、解答する順番で得点が大きく変わる可能性がある。

形式

計算結果の式や数値のみを答える記述式の設問がほとんどであるが、2002年度以降、語句を記入したり、記号を選択する設問が含まれるようになった。また、2004年度以降の力学の問題では、不等式で表されるような「条件」、保存則を示す式、運動方程式を問う設問が含まれることが多くなり、運動方程式を書かせる設問が、2014年度は7つ、2015年度は3つあった。
論述式の設問は、2004年度まではほぼ毎年あったが、2005年度以降はあまり出題されなくなり、出題があったのは、2009、2014、2016年度である。2009年度は「導出過程も記すこと」という形式であり、2014年度は150字以内、2016年度は60字以内で、理由を説明する設問があった。
また、描図式の設問はほぼ毎年1~2問出題されて、九大物理の大きな特徴となっていたが、最近はグラフを描かせる代わりに、グラフから数値を読み取ったり、グラフを選択させる設問が増加している。2014年度はグラフを描く設問が3つ、グラフを選択する設問が1つあり、2016年度はグラフや図を描く設問が4つあった。今後もグラフや図を描いたり、選択するような設問の出題があると思われる。
最近の特徴としては、2004年度には運動方程式、エネルギー保存則、運動量保存則を示す式を、2005年度にはキルヒホッフの法則、熱力学第1法則を示す式を、2009年度には導出過程を、2012、2014、2015、2018年度には運動方程式を書かせる設問があった。単に計算結果だけを問うのではなく、考え方を確認しようという姿勢の現れであろう。今後も、適用される法則を示す式や条件を表す式を書かせたり、考え方を説明させるような設問が出題される可能性は十分高いと考えておいた方がよいであろう。
《過去10年分の出題形式別の解答数》
年度 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018
計算結果のみ 28 21 30 38 32 34 26 29 27 26
不等式 1 1
方程式 1 7 3 2
語句 3 1 4 2
記号選択 1 4 6 4 2 4 1 3 1
論述 3 1 1
描図 2 2 3 4 1
合計 38 25 33 45 40 47 33 37 31 30

難易度

2000年度から2004年度にかけては、計算力を要求される設問や、現役生には難問と感じられる問題も含まれていたが、2005、2006年度は一転して易化し、非常に基礎的な問題も含まれるようになった。2007~2009年度は再び難化し、いずれの問題も教科書やどの問題集にでものっているような典型的な装置を用いたものではなく、類型問題のパターンの暗記というような学習をしてきた受験生には難しく感じられるものとなった。2010年度以降は設定自体は問題集にもあるような典型的なものであるが、設問はありきたりのものではなく、しっかりと誘導に沿って考える必要があり、類題をやったことがあるかどうかではなく、理解の深さを問うような問題となっている。近年は解答数が多くなって、かなり基礎的な設問から、現役生にはやや困難な設問まで幅広くなっており、習熟度に応じた得点が見込まれるようになっている。

内容

どこの大学でも同じであるが、九大でも「力学」および「電磁気」からは必ず出題されている。その他の「波動」、「熱力学」、「原子物理」の各分野については、2006~2014年度は、「波動」と「熱力学」がほぼ半々の出題であった。この間は、「原子物理」の分野については、九州大学学生募集要項で『その知識を前提とした出題はしませんが、背景を十分説明した上で題材として用いることもあります』となっていたが、出題はなかった。しかしながら、2005年度以前は、「波動」、「熱力学」、「原子物理」の各分野がほぼ同じくらいの頻度で出題されており、現行過程でもそれと同様となっている。
これまでの出題から見て取れる各分野の内容の特徴は、以下のようである。
〔力学〕
・等加速度運動、単振動、円運動およびそれらに衝突を組み合わせた問題の出題頻度が高い。
・放物運動の出題頻度が高い。
・摩擦力(特に動摩擦力)が作用する場合が多く、その扱い方をよく理解しておかなければならない。
・運動方程式が正しく書けるかどうかを問われる。
・運動量に関しては、保存則が正しく使えるかどうかを問われる。
・エネルギーに関しては、力学的エネルギー保存則だけでなく、力学的エネルギーの変化量が非保存力(特に動摩擦力)のする仕事に等しいことを用いる場合が多い。
・速度などと時間の関係のグラフを描く練習をしておく必要がある。
・万有引力による運動は出題されていない。
〔熱力学〕
・気体の状態変化の問題がほとんどであり、断熱変化の問題がよく出題されている。
・気体の状態変化の過程を圧力-体積図にまとめる練習をしておくとよい。
・液体や固体における熱量計算の問題は出題されていない。
〔波動〕
・以前は音波のドップラー効果、光波の干渉についての問題がほとんどであった。
・最近はレンズの問題や波の式を扱った問題も出題されている。
〔電磁気〕
・コンデンサーを含む回路、電磁界中の荷電粒子の運動、電磁誘導についての問題が多い。
・荷電粒子の軌道を描いたり、電流などの時間変化の様子をグラフにする練習をしておくとよい。
・電気回路の問題では、回路内の各素子の間の電圧の関係式(キルヒホッフの第2法則)と電荷保存則を連立させて、電流や電荷分布を決定すればよい。
・電磁界中の荷電粒子の運動の問題では、粒子にはたらく力と初速度より粒子が描く軌道を決定する。
・電磁誘導では、磁界中を導体棒が運動する場合の問題が多い。ファラデーの電磁誘導の法則を用いて誘導起電力を計算すればよいが、力学との融合問題になったり、電気回路の問題と連立されるケースがほとんどである。
〔原子物理〕
・旧課程では、『その知識を前提とした出題はしないが、背景を十分説明した上で題材として用いることもある』という扱いになり、出題はなかった。現行課程ではこの分野も出題範囲となった。
・2005年度以前は、光子、物質波、エネルギー準位、原子核反応など、特にテーマに偏りなく出題されていた。
・半減期の問題は出題されていなかった。

入試対策

九大の物理問題に対する準備としては、
計算の面倒な設問も含まれているので、普段から丁寧かつすばやく計算することを心掛けたい。
各大問とも文章量が多いので、そのような問題の演習をしっかりとこなしておく必要がある。
論述式の設問に対しては、論旨を的確かつコンパクトにまとめる練習をしておく必要がある。導出過程の記述に関しては、まず「適用できる法則や特徴は何か」を述べ、次に「成り立つ式」を示し、「その式から得られる解」を書く、という構成でまとめればよい。
描図問題に対しては、普段から問題演習の際に、作図をすることによって問題で与えられた条件を整理したり、物理量の関係をグラフ化するようにしよう。
といった点を考慮して学習しよう。
とは言えもとより、こういう勉強をすればこの大学に入れますよというノウハウが各大学ごとにあるわけはない。小手先の技術に左右されるような甘い世界ではないのである。物理の考え方をしっかり身につけることによってのみ道は開かれるのである。
それにはどうしたらよいか。物理といってもさまざまな分野があるが、それらに特有な現象や式を羅列的に平板にとらえてはいけない。各分野の物理現象を支配している基本法則(もしくは原理)とは何かをはっきり意識して、それをどう使いこなすか習熟すべきである。いたずらに何でもかんでも公式として丸暗記してしまうのは当面成績が上がる場合もあろうが、実は物理的センスを一方で崩してしまうことになっている。最も基本的な法則は数少ないものであり、他のいわゆる公式などは、それら基本法則から派生したものに過ぎないのである。このようにあなた方のいう"公式"には"階層"があるのだということを認識してほしい。
これから何をやったらよいのだろうか。まず、各分野の基本法則とは何なのかを煮詰めてみよう。それから導かれる式とはどれなのかを識別してみよう。一挙にはできないであろうが、基本的な問題を解きながら、少しずつ物理の体系を自分ながらに作っていこう。気がついてみると、物理を自分のものにしているはずである。そうなればしめたものだ。類似問題をやったことがあるとかないとかでなく、どのような問題もすべて基本事項に基づいた論理展開によって解答にたどり着くことができるようになる。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。