2018年度入試
出題分析と入試対策
  九州大学 化学

過去の出題内容

2018年度

番号 項目 内容
〔1〕 理論 H2Oの構造、同位体を考慮したH2Oの分子の種類、H2O2の電子式、電離平衡、酸化還元、酸化還元滴定
〔2〕 理論 黒鉛、二酸化炭素から一酸化炭素が生成する気体平衡に関する問題
〔3〕 有機化学
(天然有機物)
油脂(グリセリド)とその誘導体(石ケン、長直鎖脂肪酸エステル)に関する小問集合
〔4〕 有機化学 アセチレン、ベンゼンを出発物質とした種々の誘導体についての問題
〔5〕 有機化学
(合成高分子)
スチレンとp-ジビニルベンゼンを共重合させたポリマーをスルホ(ン)化させた陽イオン交換樹脂の製法とその性質に関する問題

2017年度

番号 項目 内容
〔1〕 理論、無機化学 ニホニウム、アルミニウムの各論、銅とマグネシウムとマンガンのイオン化傾向の関係、亜鉛の電子配置、閃亜鉛鉱の単位格子に関する計算
〔2〕 理論 難溶性電解質Aの、溶液の沸点上昇、凝固点降下を題材とした計算問題
〔3〕 理論、無機化学 NH3の分子構造、分子間力、NH3の実験室的及び工業的製法、アンモニアソーダー法、NH3+NH3Clの緩衝液のpH計算
〔4〕 有機化学 分子式C3H6、C5H10のアルケンの誘導体の構造決定
〔5〕 有機化学
(天然・合成高分子)
セルロースを加水分解して得られるグルコースを原料としたアルコール発酵

2016年度

番号 項目 内容
〔1〕 理論 水分子の構造、水素結合、オキソニウムイオンの構造と結合角、水の状態図
〔2〕 理論 単純反応、及び可逆反応を含んだ多段階反応の反応速度
〔3〕 理論、無機化学 溶鉱炉における酸化鉄(Ⅲ)の還元反応に関する熱化学計算及び量的計算
〔4〕 有機化学 分子式C6H10の3種の炭化水素A、B、Cの構造決定
〔5〕 有機化学
(天然有機物)
α-アミノ酸とペプチドの構造に関する知識と検出反応

出題分析

分量

九州大学の化学問題は、2013年度まではほぼ大問6問の出題であったが、2014年度以降は(昨年度も含めて)大問5問の出題となっている。恐らく2019年度以降も、この大問5問の出題形式が続く可能性が高いであろうと思われる。

内容

理論分野の知識問題として、原子の構造、電子配置、化学結合、結晶形態と性質などの小問集合が、第1問ないし第2問で出題されることが多い。特に、原子の構造・電子配置・化学結合については毎年似た問題が繰り返し出題されているので、過去問をしっかりこなしておいた方が良いだろう。周期表に関する問題、あるいは無機化学との融合問題として、第2、3周期の元素の反応などもこの分野からは出題されている。また、理論および無機化学に関する計算問題が第2、3問でよく出題されている。熱化学、化学平衡の法則、溶液、酸・塩基とpH、電池、電気分解を含めた酸化還元反応、混合気体と蒸気圧などの問題が、小問集合の形式の問題でやはり第2、3問で出題されることが多く、混合気体と蒸気圧、溶液に関する問題が出題されると難易度が高くなることが多い。熱化学、ル・シャトリエの原理や反応速度との関係を問う問題も出題頻度が高い。酸・塩基についての問題は、電離定数を用いたpH計算になる事が多い。酸化還元反応についての出題は、近年電池もしくは電気分解の出題に偏っている。有機化学は、第4問で旧課程の化学Ⅰの範囲(有機化学の基本~脂肪族~芳香族)、第5問で旧課程の化学Ⅱの範囲(天然有機物、天然・合成高分子・医薬品)から出題されている(2018年度は第3問も天然有機物(油脂)からの出題であった)。旧課程の化学Ⅰ範囲の有機化学からの出題は教科書レベルの基本的問題であることが多いが、近年、化学Ⅱ範囲からの出題は難化している。2019年度以降も、大問4、5問目で旧課程の化学Ⅰ、Ⅱの範囲からの有機化学の出題は続くであろう。

難易度

基礎的な知識や考え方を中心とした、基礎的ないし標準的な問題が出題される問題の多数であるが、毎年1問ないし2問程度、難度の高い問題も出題されている(最近では、2010年度〔4〕の酵素反応におけるミカエリス・メンテン式を用いた反応速度の計算や、2011年度〔6〕のメチレンブルーを用いたグルコースの酸化還元滴定、2012年度〔2〕の金属陽イオンA・B・Cの決定、2014年度〔1〕の蒸気圧を考慮した状態方程式からの分子量算出、2017年度〔2〕難溶性電解質Aの、溶液の沸点上昇、凝固点降下を題材とした計算問題など)。このような難度の高い問題を克服できるかどうかが高偏差値の学部の合否を左右するであろう。

入試対策

◇教科書レベルの基礎的知識の確立◇

理論、無機化学:出題分析のところで述べたように、原子の構造や電子配置のような基礎的知識に基づいた問題が出題されることが多い。水素からカルシウムまでの典型元素について、単体や化合物の性質と反応を、周期表を頭において整理しておくことが必要である。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、希ガスなどのように、同族元素の性質を理解しておくことも必要である。遷移元素については陽イオンの性質が重要であるが、鉄の製錬や銅の電解製錬などについても理解しておかなければならない。過去の出題例からみて、非常に細かい知識を必要とするような問題が出題されることはないと思われるが、知識がバラバラに出題されることが多いので、単に覚えればよいというわけではなく、頭の引き出しから常に出し入れできる能力が必要である。
有機化学:異性体、脂肪族化合物の性質と反応、芳香族化合物の性質と反応、高分子化合物について、まず教科書の記述を理解することから始める。基礎的な知識問題が出題されることが多いので、複雑な問題や高度な問題は必要ないであろう。有機化合物の反応についても、酸・塩基反応や酸化還元反応の原理の理解が伴えば次第に整理され、化学反応式が自分でつくれるようになれば充分であろう。

◇化学現象と化学反応の原理を理解する◇

化学計算を行うためには、いろいろな化学現象や反応の原理が正しく理解されていなければならない。化学計算にもいわゆる公式なるものが存在しないわけではないが、これらのほとんどは原理を理解しておけば自分で導くことができるようになる。化学反応の大半は酸・塩基反応、酸化還元反応で説明されるので、これらの反応の原理を理解することができれば、上で述べた基礎的知識の大きな支えとなる。さらに、有機化合物の反応についても、両者の反応原理はおおいに役立つことになる。
希薄溶液の性質については、溶液の蒸気圧降下と沸点上昇が関連していること、半透膜の性質と浸透圧の生じる原因など、現象をしっかり理解しておくことが必要である。いわゆる公式に数値を代入して答えが求まったからといって、これらが理解できたと錯覚してはならない。

◇思考力の向上◇

これまで述べてきたように、九州大学の問題はどちらかといえば知識型であるが、広範囲から出題されるので、決して安易な問題ではない。また、合格点が高くなり、小さなミスや考え違いが致命的になることが予想される。これに対処するためには、膨大な知識を調整集約化する必要がある。あれもこれもと細かい知識にとらわれることなく、基本になる考え方を確固たるものにしておけば、どのような問題が出題されようとも的確に対応できるものである。そのためには、覚えようとするのではなく、よく考えて説明しようとする心構えを常日ごろからもたなければならない。実力がつくということは思考力の向上の結果である。

◇的確な表現力◇

これまで九州大学では論述式の問題はあまり出題されなかったが、他大学の出題を見ると、今後は論述問題の出題も増加する可能性は否定できない。論述式の問題が出題されたら、何を問われているのか、何を書かなければならないのか、ということを頭にえがき、どこか余白にまず下書きを作ってみよう。そして、自分の考えたことが的確に表現されているか、相手が読んでその意をくみとってくれるような文章になっているか、全体として文章の体をなしているか、など熟考した上で文章を作成し、解答欄に記入すればよい。断片的な知識をつないだだけの支離滅裂な文意では点数はもらえない。日常、文章によって表現する能力を養っておくことが大切である。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。