2017年度入試
出題分析と入試対策
  東北大学 国語

過去の出題内容

2017年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字書き取り、理由説明(50字)、意図説明(50字
)、内容説明(50字・60字)
高階秀爾
『芸術空間の系譜』
現代文 小説 語意説明、理由説明(40字・60字)、内容説明(30字・70字) いしいしんじ
『ぶらんこ乗り』
古文 随筆 語意、内容説明、口語訳(50字・45字)、理由説明(80字) 本居宣長
『玉勝間』
漢文 論説 訓み、書き下し、口語訳、内容説明(30字・40字) 方孝孺
『深慮論』

2016年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字書き取り、内容説明(35字・30字・75字)、理由説明(60字) 藤田省三
『全体主義の時代経験』
現代文 小説 語意説明、理由説明(40字)、内容説明(40字・60字)、心情説明(70字) 宮下奈都
『終わらない歌』
古文 日記文学 語意、内容説明(25字)、和歌解釈、心情説明(60字)、口語訳 阿仏尼
『うたたね』
漢文 随筆 訓み、書き下し、口語訳、内容説明(50字)、心情説明(60字) 劉廷璣
『在園雑志』

2015年度

番号 科目 類別 内容 出典
現代文 評論 漢字書き取り、内容説明(25字・45字・60字)、理由説明(75字) 鶴岡真弓
『装飾する魂 日本の文様芸術』
現代文 小説 理由説明(25字・75字)、内容説明(15字)、著者の意図の説明(45字)、心情説明(30字) 開高健
『揺れた』
古文 評伝 口語訳、俳諧の意味、狂歌の意味(45字)、内容説明(20字・60字) 八島定岡
『狂歌現在奇人譚』
漢文 随筆 訓み、書き下し、口語訳、内容説明(40字)、理由説明(60字) 向璿
『羅麻伝』

出題分析

《現代文》

東北大の現代文は2問の出題で、第一問は例年きちんとした論理構成を持つ社会科学的あるいは哲学的な内容の評論である。抽象度の高い硬質な文章が多い。設問形式は、内容説明、理由説明が中心で、25字~80字の記述設問となっている。漢字の書き取りは必出で、3~6個常用漢字程度のものが出されている。また、慣用表現・比喩的表現・難解な表現の意味を問われることも多い。ほかに、指示内容や同内容表現の指摘、空所補充、漢字の読み、論旨等が過去に出されてきた。
第二問は原則、小説・随想から出題される。しかも、芥川賞・直木賞受賞の現代作家の作品から出されることが多い(2001年・2014年と、ごくまれに文芸評論が出されている。これは1994年以前の出題パターンである)。過去に遡って小説で取り上げられた作家を列挙すれば、いしいしんじ、宮下奈都、開高健、三木卓、小川洋子、浅田次郎、丸山健二、よしもとばなな、遠藤周作、高橋昌男、山川方夫、高橋治、出久根達郎、伊集院静、宮本輝となる(例外的に2013年は岡本かの子、2008年は菊池寛と戦前の作品が出されている。1994年以前は、夏目漱石・菊池寛・有島武郎・堀辰雄といった近代の有名作家の作品が取り上げられていた)。小説の設問形式は、主人公の心理を読み取らせようとするオーソドックスな設問がほとんどである。ほかに漢字の書き取りと読み、語意が出されている。
東北大はほとんどすべてが記述設問なので、制限字数内でむだなくポイントをおさめる表現力が必要とされる。もちろん、それ以前に的確な読解力が求められていることは言うまでもない。東北大の設問は全般に良問で無理がないが、制限時間内に制限字数内の適切な解答を作るとなればかなり難しいと言えるだろう。

《古文》

14年度以前の出典は、14年度が近世の随筆『北窓瑣談』、13年度が中世の日記文学『とはずがたり』、12年度が近世の歌論『新学異見』、11年度が中世の御伽草子『かざしの姫君』、10年度が中世の説話集『沙石集』、09年度が中古の物語『源氏物語』、08年度が近世の随筆『広益俗説弁』であった。04年度から10年度までは、物語・中世説話・近世随筆のいずれかから出題されている。11年度は御伽草子であったが、これは擬古物語の系譜に連なる作品なので、物語の中に入れて良いかもしれない。12年度の近世歌論と13年度の日記文学は、東北大としてはやや目新しい傾向。14、15年度は近世随筆の系統で、16年度、再び日記文学にもどった。問題文の長さは、1000字前後のことが多い。試験時間から考えれば、長すぎず短すぎずというところだろう。設問は解釈問題と内容や理由を説明させる問題が中心。文法問題は08年度を最後に出題されていないが、助動詞や係り結びといった基本事項が中心だった。08年度を除けばそれほど難問とは言えず、もし文法が出題された場合、確実に正解することが求められる。文学史の問題は、98年度以来、出題されていない。
全体の難易度としては、03~06年度はやや難度が高く、07、08年度は比較的平易であったが、09年度、11年度、13年度、16年度と飛び飛びに難問が出題されている。

《漢文》

分量

220字~330字の文章が出題されている。12年度は162字、13年度は350字、14年度は230字、15年度は299字、16年度は216字、17年度は241字で、平年並。

ジャンル

近世の逸話・論説が多く主題されている。年度ごとに難易度に差はあるが、訓読に少し慣れれば、国語の近代文語文を読むような気持ちで読めるのが普通である。17年度は明代の論説が出題された。

設問形式

1 単語の読み:副詞の読みが問われることが多く、頻度の低い字の読みが出題されることもある。07年度・10年度・13年度・14年度は出題なし。08年度・09年度・11年度・12年度・15年度・16年度には出題があり、全てで副詞の読みが問われた。17年度の出題は「固」「故」の読みであった。

2 書き下し:白文を書き下す問題。返り点が付された年度もあったが、基本的に白文で出題されると考えておく。傍線部に句法が含まれる場合と含まれない場合とがある。後者の場合、文脈から考えることになり、難しい。17年度は2題の出題があり、「豈…与」「未」「可」「得而」を問われた。

3 口語訳:白文を口語訳する問題。08年度・09年度は返り点が付されたが、10年度以降は白文に戻っており、基本的に白文で出題されると考えておく。傍線部に句形が含まれる場合と含まれない場合とがある。後者の場合、直訳しただけでは意味をなさない類の表現を好んで取り上げる。17年度は1題の出題があり、使役「使」、接続詞「以」の用法、「有」を問われた。

4 説明:内容・理由・意図などを「説明せよ」「述べよ」「記せ」という設問がある。1~3題の出題があり、字数は1題あたり25~70字。合計で70~100字程度になるよう調整されている。17年度は2題の出題があり、記述量は、30字、40字だった。

入試対策

《現代文》

東北大の現代文は、例年良質で高度な"これぞ国立大の入試問題の典型"といった趣きのある記述問題である。論理的で固い言葉の続く評論、オーソドックスに主人公の心情を問う小説、ともにセンター試験の記述問題版といったところである。さて、まさに国立大学の問題の王道を行く東北大の現代文を攻略するにはどうすればよいのだろうか。相手が奇手を打ってこないのであるから、こちらとしても奇手に走らず王道で行くべきだろう。必要な力としてはまず、読解力を高める訓練をすることだ。指示語・接続語・同内容・対立等に注意して、文章を論理的に構造的に分析し理解しよう。どんなふうに筋道がついているのか、何が結局イイタイのか。それを確実につかまえられるようになるまで繰り返し訓練しよう。小説では5W1H(いつ、どこで、だれが、なぜに、なにをした、どう思った)をつかまえよう。場面別での主人公の心情とその要因をとらえる、チェックする、推理する訓練をしよう。次に、要約力を高めよう。文全体の構造を考え、重要なものを抜き出し、100字から200字でまとめる訓練を怠らずに続けよう。継続は力なりだ。各段落の要点をまとめて段落相互の関係を読み取り、要約する訓練は、大変面倒なことであるが、確実に読解力のつく唯一無二の方法である。時間を惜しまず、頑張って続けてゆこう。さらに、語彙力を身につけよう。評論に頻出する科学・哲学・文芸用語・漢字・故事成語・慣用表現、文学史知識等を覚える努力を怠るわけにはいかない。基礎体力が不足すれば高い山には登り切れないのだ。そして本文をちゃんと読めるようになるとともに、制限字数内で的確にポイントを入れて表現する答案記述力を身につけなければならない。これはもう実際に自分で書いてみるしかない。そのうえで、解答例と比較してどこがどう違うのか、その原因は何にあるのかを考えることである。自分の答えの欠けている部分、間違っている部分を冷静に見極めるのだ。いい加減なところで妥協していると、進歩が止まってしまうことになる。この本の解答例を参考にしてもらいたい。謙虚に自分の解答を添削することが重要なのである。

《古文》

口語訳で部分の正確な理解を問い、説明問題で全体の把握と記述力を問うというのが、東北大古文のパターン。したがって、受験生は部分にも全体把握にも偏らない総合的な読解力の向上を目指さねばならない。具体的には、基本的な文法の学習をすませたら、学校で使用しているテキスト等の文章を自分の力で現代語訳する練習を積み重ねていくことである。その中で、部分の正確な理解と全体の文脈との関わりを体験的に学んでいくしかあるまい。要するに当たり前の古文の学習を地道に繰り返すことが、結局は合格答案への近道なのである。記述力を養うためには、本学の過去問題に取り組むことが必須だが、近いレベルで似たような方向性を持っている国公立大の入試問題で練習するのも有効だろう。その際、信頼できる学力を持った人に自分の答案を添削してもらえるとなお良いだろう。文学史問題は、98年度以降出題されていないが、とりあえず、受験生は各時代各ジャンルの代表的作品について、ある程度勉強しておいた方が良いだろう。仮に文学史問題が出題されなくても、文学史の知識を読解に生かせることもあるのだから。

《漢文》

東北大は典型的な国立2次型の問題を出す。わずかな例外を除いておおむね全5問で、毎年(1)書き下し・口語訳問題、(2)25~70字程度の説明問題が出題される。そのほか(3)漢字の訓み方もしばしば問われる。
(1)では、返り点も送り仮名もない白文が出題されてきた。08年度・09年度には傍線部に返り点が付された問題もあったが、10年度以降は全て白文で出題されている。したがって書き下し問題・口語訳問題ともに白文の対策をしておいた方がよい。句法は、「使・令」(04・06・08・17年度)、「当」(06年度)、「将」(08年度)、「況」(09年度)、「莫不」(10年度)、「不若」(10年度)、「非惟」(11年度)、「不亦…乎」(11年度)、「豈」(14・17年度)等、基本的なものが出題される。17年度も「豈…与」「未」「可」「使」「有」など、基本的な句形が出題されていた。そこで、まずは学習範囲を絞って基礎を身につける。そのうえで国文法(古典文法)と漢文法の実践・応用の訓練をしよう。なお、数年、「克(よク)」「烏(いづクンゾ)」のように、難度の高いものが出題されていたが、この傾向は続かなかった。来年も続かないことを祈る。
(2)では、部分の論理を理解できているか、本文全体の主旨を理解できているか、といった総合的な読解力を試してくる。傍線部近辺の答えらしいところを抜いて訳しても点数は取れない。国立2次型の記述式問題に数多く当たって慣れるか、漢文の全訳あるいは要約といった訓練が有効だろう。
(3)では、基礎的なものから難度の高いものまで幅広く出題される。意識して広く学習しておくと良い。とはいえ、問題演習を数多くこなしておけば自然と身につくものばかりである。副詞だけを取り上げて暗記するのではなく、問題演習量を増やす形で対処した方が良いだろう。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。