2017年度入試
出題分析と入試対策
  東北大学 化学

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容
1 理論・無機 〔Ⅰ〕気体計算、平衡移動、触媒の働き
〔Ⅱ〕アンモニアの電離平衡、緩衝溶液、錯イオン生成の平衡反応
2 理論・無機 〔Ⅰ〕鉄に関する様々な問題、結晶格子、電気分解
〔Ⅱ〕鉄の腐食に関する様々な問題
3 有機 アルコールを中心とした有機化合物の構造決定

2016年度

番号 項目 内容
1 理論・無機 水に関する様々な問題、飽和蒸気圧、固体の溶解度、溶解度積、熱化学
2 理論・無機 金属の反応性に関する様々な問題、物質量計算
3 有機 エステル結合を含む化合物の構造決定

2015年度

番号 項目 内容
1 理論・無機 窒素化合物に関する総合問題
2 理論・無機 Ⅰ.燃料電池・電気分解
Ⅱ.化学結合・極性・結晶の性質
3 有機 脂肪族化合物の構造決定

出題分析

分量

大問3題で、しかも各問が特定のテーマを題材とする総合問題が主流であり、年度によっては大問3題の中の一、二題がさらに小テーマごとに(Ⅰ)、(Ⅱ)と分けられることがある。論述形式の設問もあるが、設問数が特に多くないので、じっくりと考えて解答できる程度の分量である。

パターン

1理論化学中心、2無機化学中心、3有機化学の各分野から一題ずつ合計大問が3題出されている。ただし、年度によっては、12の内容が相互に混ざりあって出題されることがある。

内容・特徴と難易度

ここ10年間ぐらいの問題内容を見る限り、問題12ではいかなる系(固体、気体、希薄溶液など)の問題であれ、化学の基本法則・基本知識や理論に対する理解度を見ることに主目的があり、それに加えて反応速度・化学平衡に関する到達度を何らかの形で試そうとしているようだ。また、問題3ではレベルの高い構造決定の設問を課すことによって有機の知識の定着度を見ることに主目的があるようだ。以上のような出題の狙いは数年来続いており、今後も大きくは変わらないものと思われる。では、従来の傾向をふまえて、大問ごとに内容的特徴を具体的に記しておく。
1に関しては、気相中や液相中の化学平衡や、それをからめた気体計算(飽和蒸気圧なども含む)、反応速度、熱化学に関する問題は頻出である。問題のレベルは"標準"から"やや難"であり、状態・反応の理論(の各テーマ)を正確に理解し、応用する力が無いと対処できないことがある。また、元素の性質や化学の基本法則を扱う問題、構造(化学結合、分子、結晶格子)や希薄溶液の性質に関する問題などもよく出題されている。基本理論を重要視した意図的な出題のようで、今後も理論的テーマならどの分野の出題もありえる。
2に関しては、ある物質もしくは元素を素材にして、広範囲な知識(製法、単体の反応、イオンの反応、種々の無機化学反応)を問う問題が多い。特に金属の性質や金属単体の反応、金属化合物の反応は頻出である。標準レベルの問題が大部分だが、塩の反応や酸化還元反応については、滴定をからめた物質量計算についての"やや難"の問題が出されることがある。また、無機理論の方も重要視されており、無機反応とからめて電離平衡、沈殿平衡、電池・電気分解に関するハイレベルの問題も出題される。
3に関しては、有機化合物の反応性、分離、異性体をからめた難レベルの構造決定の問題が毎年出されている。入試問題としては他の難関大学よりもレベルが高く、内容が充実しており、良問が多い。したがって、過去問を十分に解いて実力をつけておくことが必要不可欠である。また、環構造を含む有機化合物の構造決定問題の出題率が高く、最近では本年度と2015年度に出題された。

入試対策

高校化学の学習事項で対応できないような難問はほとんど出されていないので、高校で扱わない、高度で、複雑な知識には目を奪われず、教科書レベルの知識や基本的考え方を全範囲にわたって正確に把握し、それを自分なりに応用しうる学力を養うトレーニングを行うことが、最も確実かつ有効的な入試対策である。なお、そのときに、次の①~③に特に留意してほしい。

①理論・計算問題に強くなる

蒸気圧や反応速度・化学平衡が関与する気体計算、中和反応、電離平衡、酸化還元反応(その応用として電池や電気分解)に関する計算、結合エネルギーと反応熱の計算、結晶格子の計算などは納得いくまで問題演習をしていくこと。なお、理論・計算は"知識"ではなく"理屈"勝負だから、まずはテーマに関するポイントを認識し、それをもとにすべての問題を攻めていく姿勢を確立すべきである。

②無機化学反応に強くなる

金属や非金属の性質(元素別各論)、酸・塩基・塩の反応、酸化還元反応、単体の反応(や製法)、イオンの沈殿・錯イオン生成反応を扱う上で必要な基礎知識を暗記し、それをもとに反応を予想し、かつ反応式を自分で書くトレーニングをしていくこと。無機化学反応のマスターは、化学全体の実力を向上させる上で(物質量計算の問題をこなす上でも)必要不可欠である。また、金属や非金属の性質(元素別各論)は問題演習に加えて、教科書や図説なども詳しく見ておくとよい。

③有機化学を完璧にする

分子式や与えられた条件からの構造推定の考え方、立体異性体の正確な知識、有機物の分離(抽出)の原理と実験方法、種々の有機化学反応などをきっちり把握し、それとともに構造決定の問題に対して徹底演習していくことが大切である。最終的には有機化学の過去問を十分に解いておくことが、絶対的に必要である。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。