2017年度入試
出題分析と入試対策
  東北大学 数学(文系)

過去の出題内容

2017年度

番号 内容 科目名
1 位置ベクトルの表示と、比の変化による線分の長さの最大値についての問題 数学B
2 2次関数の最小値と、その条件から描ける領域の面積 数学Ⅰ・Ⅱ
3 ある等式を満たす0以上の整数の存在を示す証明問題 数学A
4 箱から数字の書かれたカードを取り出し得点を定める試行における確率
数学A

2016年度

番号 内容 科目名
1 ベクトルの係数がある範囲を変化するときの内積の最大値 数学B
2 2直線(折れ線)と放物線が共有点を持つための条件 数学Ⅱ
3 3元1次方程式の整数解を求める問題 数学A
4 垂線と辺で作られる四角形が円に内接することの証明、および角についての証明 数学A

2015年度

番号 内容 科目名
1 いくつかの条件を満たす数列の一般項の決定 数学B
2 鋭角三角形である条件と垂心の座標、および四面体の体積 数学A
3 サイコロの目を係数とする方程式の解と確率 数学A
4 3次関数の最大値と接線の傾き
グラフを利用して最小値を求める問題
数学Ⅱ

出題分析

分量

毎年4題が出題されている。今後もこの形が続くだろう。
問題は標準的であり、基礎事項やよく使われる事項を用いて考えていけば解答できる。対策としては、各分野にわたり標準レベルの問を中心に、与えられた問題内容から関係を見抜き、式を立て、確実に計算していく力をつける学習が必要である。

パターン

4題とも記述式である。要領よく簡潔に書いていく必要がある。また、関数の変化の分析や確率などにおいて、場合分けの正確さや計算力が要求される。そして、「確率」の分野でなくても「場合分け」の起こる問題の出題頻度が高いので、慣れておく必要がある。

内容

出題範囲は、数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学Aと数学Bの「数列」「ベクトル」となっている。数学Ⅰの「2次関数」「数と式」もおろそかにできないが、出題の中心は、数学Ⅱ「図形と方程式」「三角関数」「指数・対数」「微分・積分」の各分野と、数学A「場合の数と確率」および、数学B「数列」「ベクトル」である。
いままでの出題内容から見ると、特にどの分野が多いというわけではなく、各分野から満遍なく出題されている。確率やベクトルの分野からの出題は頻度が高いとみてよい。そのほか数学Ⅱでは、微分や積分(面積の計算など)がよく出題されている。
数学Ⅱの問題を解くときに数学Ⅰの「方程式・不等式」、「数と式」の計算を用いる場合も多いことはもちろんだが、もっと意識的に各分野を融合させていくものも出題されるだろう。たとえば、「図形と方程式」と「微分・積分」や「三角関数」、あるいは、「ベクトル」との融合問題である。2015年度4の(3)では、グラフから直接、関数の変化を考察するよりは、「2つのグラフが共有点をもつ条件から値の範囲がわかる」という「図形と方程式」の分野の考え方を用いる方が得策である。2017年度の2は、数学Ⅰの2次関数の分野と数学Ⅱの積分の分野の融合問題であった。
また、教育課程の変更に伴い、数学Aにおいて整数の内容が入ってきて、2016年度3では方程式の整数解を求める問題が出題された。
以下、最近3カ年に絞って分析をしていく。
2015年度1は、数列の隣接2項an,an+1の等式に対してnを1つ増やしたan+1,an+2の等式を作り、辺々引くことによりan+an+2an+1で表すことができるものである。2では(3)を解答するときに前問の(2)を利用することがポイントであり、三角形を折り曲げて作られる立体の頂点から対面に垂線を下したとき、垂線と面との交点が三角形の垂心であることに気づけば、あとは計算により解答できるものである。3は確率であるが、丹念に場合分けして数えていけば答が得られる平易な問題である。4の(3)は前出の(2)を利用し、が原点を通る直線の傾きを表すことが分かれば、(2)で求めた接線のときが最小であることが見通せる。
2016年度1は、与えられた係数の範囲からベクトルの成分の範囲を求め、内積の最大値を求める問題(領域と最大最小)であり、よく出題される内容である。2は、放物線と直線がある範囲に共有点をもつための条件を求めるもので、2次方程式の基礎事項をしっかり適用すれば、解答できるものである。3は3元1次方程式の整数解を求めるものであるが、約数・倍数の関係や数の大小により、整数のとる範囲を考えていけば容易に分かるものである。4は数学Aの円周角に関連した定理を用いて証明するものであった。ふだんから「図形」の証明問題についても練習しておきたい。
2017年度1は(1)では、ベクトルの係数を決定する問題であり、比を置いてベクトルの1次独立性から求める方法でもよいが、メネラウスの定理を用いる方が計算がしやすい。2は2次関数と領域の面積についてのごく標準的な問題であった。3は解答方針の焦点(どういう事に注目すればよいか)をはずすと、非常に見通しの悪い解答に入ってしまうということと、0以上の整数の存在を示す時の不等式の細かい考察が必要であるという意味で、時間内でしっかりした解答を書くにはかなりの難問であった。4は与えられた条件により、場合の数を数えていけば解答できる問であるが、該当する場合を正確に数えるよう注意が必要である。

難易度

いままでの出題構成や内容を見ると、全体としては、基本的で標準的な問題がほとんどであると言える。ただ、限られた時間内で解答を仕上げるには、十分計算力をつけておく必要がある。2013年度は全体的に問題は標準的で、やや易しくなったが、2014年度では正解を出すのにかなり気をつける必要のある問が出された。2015年度では立体の問題や微分の問題において、先に出た小問の結果を利用することで、答を求めることのできる問題が出題されている。2017年度は124は標準的な問題であったが、3は整数についての証明問題で、解答するにはふだんからのかなりの学習、練習が必要とされる問題であった。今後も標準的な問題のみならず、やや難しいレベルの出題があるだろう。

入試対策

各分野の基本事項をしっかり理解し、その分野の標準的な問題が一通り解けるように学習しておくことは絶対必要である。そして、やや応用的な問題や総合的な問題にも取り組み、解法を自分でまとめていけるように練習しておくこと。合格には、4題中3題完答するかあるいは2題完答で、残り2題の半分ずつぐらいを確実に得点していければよいだろう。
◎問題解決のポイントをつかもう。

◎答を導く過程を大切にし、計算方法をしっかり把握しよう。

問題に取り組んで、それを解いていく各段階で、「どういう考え方にたってどのようにすればよいか」(解決の方法とその実行)……(*)が処理できていけばよいわけであり、各分野のいろいろな問題について、(*)についての研究と練習をしておくことが大切である。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。