2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学 教育学部 政治・経済

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容 形式
[Ⅰ] 日本政治 精神の自由と政教分離 記述・選択
[Ⅱ] 国際政治 「社会 society」「社会的 social」という言葉の多様性 記述・選択
[Ⅲ] 日本経済・国際経済 日本の経常収支の推移 記述・選択
[Ⅳ] 経済理論・日本経済 2020年東京オリンピックの経済効果 記述・選択

2016年度

番号 項目 内容 形式
[Ⅰ] 日本政治・国際政治 立憲主義と憲法・人権 記述・選択
[Ⅱ] 日本政治 自由権をめぐる動向 記述・選択
[Ⅲ] 日本経済 日本の企業 記述・選択
[Ⅳ] 日本経済 労働問題・労働市場 記述・選択

2015年度

番号 項目 内容 形式
[Ⅰ] 国際政治 国際政治と平和維持機構・人権 記述・選択
[Ⅱ] 国際政治・日本政治 差別問題と日本国憲法 記述・選択
[Ⅲ] 日本経済・国際経済 戦後経済史 記述・選択
[Ⅳ] 日本経済 税制の理論と制度・現状 記述・選択

出題分析

分量

近年は大問数が4題、設問数が45~50問で、おおむね定着している。2017年も大問数は昨年度と同じ4題、設問数も例年並みの45問であったが、昨年度に比べ全体の分量が増加しており、解答数も2つ増えて51となった。一部に選択肢の検討に手間のかかる設問がみられたものの、時間を必要とする論述問題がないため、60分の試験時間内で十分解答できる分量といえる。

パターン

出題形式は、記述式の空欄補充問題が中心である。しかし、2013年度以降は、文章選択式の問題が大幅に増加している。また、2008年度~2017年度まで、選択式の空欄補充問題が連続して出題されている。論述問題は1996年度以降、出題されていない。

内容

例年、政治と経済の両分野からバランスよく出題されている。2016年度、2017年度も、政治分野から2題、経済分野から2題であった。
最近の出題傾向をみると、全体として基本事項に関する設問が中心である。しかし近年の時事知識、日本や世界の近現代史に関する知識、やや専門的な用語などについて問う問題も出題されている。
政治分野では、日本国憲法に関する出題、人権宣言などの重要な歴史的文書に関する出題が少なくない。また、時事問題について問う設問も増えている。たとえば、日本の安全保障政策(2008年度)、地方自治における三位一体の改革(2009年度)、アメリカ合衆国の大統領選挙(2010年度)、情報通信白書(2011年度)、2009年の政権交代以降の日本政治(2013年度)、ヘイトスピーチ(2015年度)などである。2016年度も、2013年に成立した特定秘密保護法に関するやや細かな知識が問われた。2017年度も、2016年のアメリカ合衆国大統領選挙について細かな時事知識を問う設問や、新自由主義(ネオリベラリズム)に関する設問がみられた。
経済分野では、とくに経済理論からの出題が多い。財政(2000年度)、経済理論全般(2001年度)、財政・金融(2005年度)、企業・金融(2008年度)、財政・金融政策(2012年度)、市場・財政・国民所得(2013年度)、労働市場(2016年度)など、コンスタントに出題されている。2017年度も、実質GDPや実質経済成長率について理論的な出題がみられた。
経済分野でも、時事問題が出題されている。たとえば、消費者庁と消費者委員会(2010年度)、経済財政白書(2011年度)、福島第一原発事故(2012年度)、少子高齢化と非正規雇用(2013年度)、新しい金融政策とアベノミクス(2014年度)などである。2017年度も、世界的な経済格差の拡大や、2020年に予定されている東京オリンピックの経済効果について出題された。
国際経済からの出題も少なくない。近年では、サブプライムローン(2009年度)、国際収支(2012、13年度)、外国為替の動向(2015年度)などが出題されている。2017年度も、国際収支、FTA(自由貿易協定)、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、為替レートなどについて出題された。
その他、政治・経済両分野を問わず、近現代史に関する細かな知識が出題されることもある。たとえば、イギリスの議会政治史(2002年度)、イラク戦争(2003年度)、女性参政権の歩み(2005年度)、戦争の歴史(2006年度)、日本の政党史(2010年度)などである。2011年度も財政に関連して、20世紀後半の経済史に関する知識がないと、解答が困難な問題が出題されている。

難易度

国際政治の分野は難問が少なくないが、その他の分野は標準レベルの出題が中心である。ただし、時事知識が多く出題されると、難易度が高くなることがある。また、2009年度以降、各国の輸出依存度やGDPの項目別内訳に関する細かな数値が問われるなど、「政治・経済」の標準的な学習範囲を逸脱するような設問が、一部ではあるがみられるようになった。2014年度も、日本銀行の金融政策に関連して、マネタリーベース、マネーストック、短期金融市場などについて、標準レベルの学習範囲を超える詳細な知識が問われている。また、2016年度は、労働市場における需給曲線のグラフ問題で、グラフの座標軸(縦軸と横軸)についての理解が問われた。
とはいえ、全体としては高校教科書レベルの標準的な設問が多く、全体を通じて難易度があまり高くならないように調整が重ねられている。ここ数年は、全体の難易度に大差はなかったが、2016年度は時事的な知識や歴史的な知識を問う問題が出題されたこともあり、全体の難易度はやや難化した。
2017年度も全体の難易度はほぼ昨年と同じレベルであるが、日頃の学習が得点に反映される標準レベルの設問が多い。とくに選択式や記述式の穴埋め問題は基本事項が中心であり、基本的な知識をどれくらい確実に習得できているかが問われている。しかし、正確な基本知識があっても正誤判定しづらいもの、高校教科書の内容を超えるもの、細かな時事的な知識を求めるものなども一部に含まれている。基本事項を正確に押さえた上で、グラフ分析力や論理的思考力などの応用力を鍛えることが求められている。

入試対策

①基本的事項の確認と論理的思考力の養成

難問対策も必要であるが、基本事項の理解があれば正解できる標準レベルの設問が多くを占めている。したがって、教科書や用語集の基本事項を理解したうえで、それらを時事問題や歴史的な動きと結びつけて整理・理解し、正確に記述できるようにすることが大切である。また、資料集を活用し、グラフを読み取るトレーニングにも取り組もう。知識を確実に身につけるためには、『政治・経済用語集ちゃーと&わーど』(駿台文庫)などの用語集を座右において、適宜調べながら学習を進めることが有効である。政治・経済という科目は論理的思考力が重視されるので、選択式の文章問題などを解く際には、知識を丸暗記するのではなく、なぜそうなるのかを考え、論理の筋道を正確に理解することが大切である。

②日本国憲法の基本的理解

日本国憲法の人権保障や政治制度についての知識を整理しておくことは必須である。まず、憲法条文は繰り返し読み込む必要がある。そのうえで、条文に関連する重要な法律、最高裁の判例、近年話題になっている論点について、正確な知識を身につけるよう心がけたい。

③経済理論・用語を習得

経済理論については、基礎的なレベルから難解なものまで、様々な水準の問題が出題されている。したがって、経済分野の学習では、用語集など関連知識にあたりながら、高校教科書や参考書を読み込むことが不可欠である。

④時事問題への関心とその理論的解明

時事的知識に関する出題が多いので、高得点を獲得するには政治・経済に関する時事的な関心を高めるとともに、一歩踏み込んだ学習を積み重ねることが大切である。そのためには、新聞の政治面・経済面や社説を読む習慣を身につけたい。受験直前になってあわてて新聞を読み始めても遅すぎる。日頃から社会の出来事に興味をもつことが、政治・経済の学力向上には不可欠である。特に国際政治や国際経済の大きな流れをつかむには、全部を理解できなくてもよいから、毎日、こまめに新聞記事を読む習慣を身につけることが大切である。また、新聞には、週ごと、月ごとに主要なニュースがまとめて掲載されるので、知識をチェックする際に活用するとよいであろう。

⑤近現代史の基本的知識

政治分野では、基本的人権や議会制度の歴史、市民革命と近代の政治思想、選挙権の拡大、国際社会の成立・戦争の歴史など、歴史的な観点からの理解が求めらることが少なくない。また、日本や世界の近現代史について、細かな知識が問われることもあるので、日本史や世界史の高校教科書程度は読んでおくことが望ましい。
いずれにしても、基本的レベルの出題について着実に得点できることが、合格の前提条件であり、それに加えて時事問題や歴史問題を他の受験生よりも多く正解できればよいわけである。日頃から社会的なテーマについて興味をもち、意味を知らない用語については、最新の資料集、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)などでチェックすることも役に立つ。そうした地道な努力の積み重ねが、勝負の分かれ目となる1点、2点を押し上げてくれるはずである。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。