2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学 商学部 国語

過去の出題内容

2017年度

番号 科目 内容 出典
現代文
〈評論〉
漢字(書き取り3題)、内容把握(選択2題)、脱文補充(選択1題)、空欄補充(選択3題、記述2題)、抜き出し(記述1題)、趣旨合致(選択1題) 森政稔
『迷走する民主主義』

(古漢融合)
古文
〈私家集〉
(すべて選択)文法(2題)、主体判定(1題)、空欄補充(2題)、人物判定(1題)、傍線部解釈(3題)、内容合致(1題) 『賀茂保憲女集』
漢文
〈思想〉
読み方(書き下し文 選択1題)、内容説明(選択1題)、空欄補充(記述1題) 伏羲
『易経・繋辞下伝』

2016年度

番号 科目 内容 出典
現代文
〈評論〉
漢字(書き取り3題)、内容把握(選択5題、記述1題)、抜き出し(記述3題)、空欄補充(選択1題)、主旨把握(選択1題) 若林幹夫
『未来の社会学』

(古漢融合)
古文
〈歌学書〉
(すべて選択)傍線部説明(2題)、文法(敬語・付属語各1題)、傍線部解釈(2題)、空欄補充(1題)、理由説明(1題)、内容合致(1題) 顕昭
『袖中抄』
漢文
〈漢詩〉
読み方(返り点 記述1題)、内容説明(選択1題)、空欄補充(選択1題) 白居易
『新楽府・其十七「五弦彈」』

2015年度

番号 科目 内容 出典
現代文
〈評論〉
漢字(書き取り3題)、趣旨把握(選択1題)、抜き出し(記述3題)、内容把握(選択1題)、空欄補充(記述1題)、文整序(選択1題)、脱文補充(選択1題)、論旨把握(選択1題) 内山節
『新・幸福論 「近現代」の次に来るもの』

(古漢融合)
古文
〈物語〉
(すべて選択)傍線部説明(4題)、主体判定(1題)、空欄補充(2題)、文法説明(1題)、内容合致(1題) 『松浦宮物語』
漢文
〈逸話〉
内容説明(選択1題)、読み方(返り点 記述1題)、指示内容(選択1題) 班固
『漢書』巻四
文帝紀第四

出題分析

傾向・内容

〈現代文〉

問題文の分量は3500字程であり、昨年の3000字程から若干増加している。商学部の現代文は年によって2500字から4500字と振れ幅が大きい。今回の本文は、長さも手頃であり、段落をこまめに替えて、一段落毎に一つの内容を述べていくものであり、その点で展開は追いやすいものだったと言える。また、内容・論理の難易度もともに標準的と言っていいだろう。しかし、それだけにつまらない失敗や誤読は合否に大きく響く可能性があり、部分部分の情報や論旨を逃さず正確に捉える読解精度が求められる。
設問に関しては、大学が要求している能力は例年ほとんど変わっていない。それは、各部分の論理を的確に追い、そこから浮かび上がる趣旨を明確に理解する力である。一定の速度をもって精度の高い読解を行う能力、つまり、現代文の王道の力を真正面から養成しておく必要がある。
設問数は昨年より一問減少して十一問である。傍線部の内容を問う選択肢問題、本文全体の内容・論旨を問う選択肢問題は例年通りであるが、本年は空欄補充の問題が増加し、語句の選択肢あり、抜き出しあり、文の選択あり、記述解答ありという形になっている。いずれも、空欄前後の論理の流れや論旨の理解を求めるものであり、細部の読解力が出題者の主要な狙いである。また、本年は早大現代文入試の特徴と言っていい脱落文補充の問題が出題されている。
設問の構成パターンがどのようなものになるかは問題文の性質等によって変わり、必ずしも一定はしない。しかし、どのような問いの形態であれ必須となるのは、本文各部分の論理展開を正確に捉えること、その内容上の要点となる文や語句を確実に押さえておくこと、その上で、本文全体の論旨構成を俯瞰的に把握しておくこと、さらに、評論文を読み解くための標準的な語彙を身につけていることである。
本年の設問の難易度は全体として標準的と言っていい。ただ、繰り返しになるが、細部の内容への目配りや理解が粗雑であったり、曖昧であったりすると、各設問で失点を連発し、結果、合格点に届かないといった事態を招くことになろう。問題文に真正面から向き合い、展開に沿って各部分の論旨をきちんと押さえて読み進める。この正統な能力の高いレベルでの養成が必須である。

〈古文(古漢融合)〉

本文の分量は約1170字で、昨年度(約1110字)とほぼ同じ。漢文の設問があり、六年連続で古漢融合問題となった。設問数は11問(古文10問、漢文1問)で昨年度より1問増加したが、解答箇所は13(古文10、漢文3)で、古文・漢文ともに昨年度と同じ。受験生にはなじみのない出典であり、本文の内容理解が少々難しい。
設問の分野としては、昨年度と同様、傍線部解釈や空欄補充、識別問題、内容合致が中心で、その他、主体判定や人物判定の問題も出題された。
とりたてて難解な設問はないが、幅広く穴のない基礎力と正確で緻密な読解力が要求されている。
漢文部分について、問題文は「古漢融合」の形をとっているが、すべての設問は2015年・2016年と同じく単独で解答可能であり、古文部分の丁寧な読解を要する設問を含んでいた2014年とは異なる。読み方の設問は、書き下し(平仮名)を示して返り点を求める昨年までとは異なり、白文状態による客観択一形式になっている。意味内容をたずねる設問は理由説明の設問になったが、傍線部は昨年同様白文状態であり、漢文読解に慣れていないと時間を要する。あと一つは昨年同様空欄補充であるが、漢文特有の「対偶構造」に着目する。全体の印象は、やや難化である。

入試対策

〈現代文〉

設問の種類やパターンは年によって変わるが、本文の論理展開の正確な把握やそれにもとづく有意味な内容理解を求める問題がほとんどである以上、評論文の論理的な把捉力と理解力を本格的に磨かなくてはどうにもならない。本文各部分のキーとなる語句や文を捉える力、それらの展開と論理的なつながりを見取る力、そして各部の趣旨と全体の構成を把握する力、この三つの力の養成こそが現代文の学習だと言ってよいが、これらの力は一朝一夕には身につくものではない。試行錯誤を重ねながら、相応の期間をかけて、丁寧に文章を読み込む経験の蓄積が是非とも必要である。
まず、問題文のキーセンテンスやキーワードにチェックを施しつつ読むという訓練を繰り返し行うこと。これは漫然と読むのを止め、要点を意識しながら読む頭を作るための訓練である。この際には、時間を気にしてはいけない。要点を押さえる力が安定してくれば、時間は自ずと縮まってくる。読解力が養成されてもいない段階で時間を短縮しようとするのは、現代文伸び悩みの最大の理由である。問題文の要点が捉えられるようになってきた、論理の展開が見えるようになってきた、様々な問題文に対してそういう感覚が生じてくるまで、この訓練を焦らずに続けることである。
上記の読解力が定着してくれば、内容設問については自然と正解率は上がるはずである。傍線部解釈や理由説明などの選択肢にはテクニックなどというものはない。自分で質問の答えとなる内容が本文に見い出せていれば、正解はもはや選べているのも同然である。商学部の内容選択肢は変にひねってはいないものが大半なのでなおさらだ。
ただし、語句の空欄補充問題については、細部の論理を把捉する力に加えて、選択肢に並んだ語句の意味の違いを見分ける語彙力が必要となる。これは次に言う漢字の練習とも絡むが、なにより、上記のような読解訓練をする際に、知らない語や知っていても理解の曖昧な語に当たったら、抜かりなく自分の語彙にしてしまうことである。そういう地道な積み重ねが数ヶ月すると思わぬ力になってくる。一気にと思わない方がいい。何事も少しずつの方が楽であり、確実である。
漢字は書き取りであれ、選択肢であれ、確実に全問正解し、得点をキープしたい。そのためには漢字参考書を最低限一冊は仕上げることである。その上でさらにそこから漏れているものを問題文等から拾って憶える、それくらいの構えが必要である。また、漢字参考書には通常、評論文読解上の重要語や四字熟語なども入っており、語彙力アップという点でも枢要な学習事項と言える。
最後に、実際の過去問を解くことは当然必須である。よく志望大学の志望学部の過去問は最後に残しておこうという受験生がいるが、自分が実際の入試でどんな問題を解くことになるのかは早めに知っておいて損はない。その上で、どんな問題文や設問が来ても大丈夫なように、様々な大学の様々な問題で読解訓練を積んで行けばよいのである。また、早稲田大学の入試問題は、多少の差異はあるものの、例えば語句の空欄補充など各学部で共通の点も多く、レベルも基本的に高い。したがって、いろいろな学部の入試問題に果敢にチャレンジすることも大変有効な訓練となろう。

〈古文(古漢融合)〉

問題文の長さは900字から1400字程度で、出典は平安物語から近世紀行文まで幅広いジャンルが使われているが、ここ2年ほど大学入試ではあまり目にしない作品が使用されている。特定のジャンルにとらわれることなく、多くの文章に触れておくことが肝要であろう。
設問は、今年度は昨年度同様、傍線部説明や空欄補充が目立ったが、助動詞の識別問題も出題されており、例年、文法の基礎・和歌の修辞法・古文常識・内容説明等、幅広い基礎力を問う正統派の設問がほとんどである。よって、本学部を志望する場合は、古文学習のすべての領域に対して備えておくことが必要である。三年前に復活した内容合致の設問は本年度も出題された。全体的に本文の内容を的確に把握できる読解力が求められていると言える。
では、どういった学習対策を立てるべきであろうか。まずは、正確な解釈ができるように、重要語彙・文法等の語学的な基礎力を充実させることである。『日々古文単語365』〈駿台文庫〉や『古典文法10題ドリル(古文実戦編)』〈駿台文庫〉などの利用をお勧めする。そして、「その設問で出題者は何を問うているのか」を正確に理解した上で、問題文全体の構造を分析し、適切な選択肢を見抜く力をつけてゆかねばならない。「何となくこんな感じだろう」「何となくこれが答えだろう」などというフィーリングに頼る読解で高得点が取れるような甘いレベルの出題ではない。
以下に問題を解く上での、ひとつの指針を提示しておく。
○正確な解釈がすべてに優先する。
○出題者が、その設問で何を問うているのかを考える。
○その要素を問題文全体から抽出する。
○上記の作業で得られた要素が、選択肢のどの部分に提示されているかを検証する。
○上記の作業で得られた部分に関して、各選択肢を比較する。
○不適切な選択肢を消去してゆく。
○決定された選択肢を問題文にフィードバックして、文脈に適合しているかを確認する。
11年度以降は、(07年以前のように)毎年漢文に関わる設問が出題されているので、漢文の学習も怠ってはならない。早大の他学部同様、基本的な句法や重要単語、文構造についての学習を積み、返り点・書き下し文・解釈のどれを問われても得点できるようにすることが必要だ。また、漢文で出会う基本単語の読み方や用法を記憶し、基礎的な語彙力を確実なものにするとともに、レベルの高い日本語の文章にも日常的に触れ、国語辞典や漢和辞典、国語便覧などをフルに活用して現代日本語の漢語的語彙力をも高めておくようにしたい。加えて、問題文の構造を正しくとらえ、文脈に応じた幅広い文字解釈を行う習慣も身につけておこう。
なお、年度によっては古典の背景常識(国語的教養)が役立つこともあるので日頃の学習においても興味を持つように心がけよう。加えて、昨年度のように漢詩が出題される可能性も十分あるので、漢詩読解のルールもチェックしておくべきである。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。