2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学 商学部 世界史

過去の出題内容

2017年度

問題 テーマ 時代 主な出題内容
中国史 古代~18C 人口動態からみた中国史
欧州史 中世~20C 国家連合の歴史
欧米史 16C~現代 大航海時代・アメリカ史
欧州史 20C 欧州統合・国際経済

2016年度

問題 テーマ 時代 主な出題内容
アジア史 古代~19C 軍事制度の変遷
欧州史 18~19C 英仏間の抗争
欧米史 中世~現代 憲法をテーマにした政治史
経済史 近代~現代 自由貿易の歴史

2015年度

問題 テーマ 時代 主な出題内容
アジア史 8~17C 陶磁器をテーマとした東西交渉史
欧州史 14~16C 政治・文化史
欧州史 17C~現代 政治・経済史
アメリカ史 20C 1920年代の社会と外交

出題分析

分量

年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08
マーク式 36 36 36 36 36 36 36 34 35 44
記述式 13 13 13 13 13 13 13 13 13 16
論述式 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0
合計 50 50 50 50 50 50 50 48 49 60
17年度は過去4年間と同様に、第Ⅰ問から第Ⅲ問がマーク式(各12問)で、第Ⅳ問が記述式13問+論述式1問であった。論述問題の分量も100字で、09年から変化はない。ここ10年の標準的な問題数といえよう。

出題の特徴

●出題される時代は?
現代史の出題が、17年度は論述を除く小問49問中19問で、戦後史については12年度以来の出題数の多さとなった。もっとも現代史(基本的には帝国主義時代の開幕以降を指すが、19世紀中期の中国史や欧米史に関する問題も内容から便宜上含めた場合もある)および、その中の戦後史(第二次世界大戦後の世界)の出題数は、以下の表のように振幅が激しい。しかし総じて全問題の3~4割は現代史からの出題であり、高いウェイトを占めていることは傾向として言えよう。
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08
現代史 19 14 17 13 15 26 14 10 17 35
うち戦後史 12 3 2 5 3 15 13 3 1 0
●出題される地域は?
地域別に論述を除く小問数を見てみると、17年度も商学部の例年の傾向に近い。
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08
アジア史 12 12 12 13 13 20 14 11 12 24
欧米史 37 37 37 36 36 29 35 36 36 36
アジア史は大半が中国史および中国周辺地域からの出題であり、特に中国の社会経済に関する問題は頻出である上に難易度が高いので、深い学習が必要である。また西アジア・イスラーム史は出題が少ない傾向にあるが、16年度は小問2問、15年度は小問6問が出題されたので、警戒は怠らないようにしておきたい。欧米史ではアメリカ合衆国史・ラテンアメリカ史が、ほぼ毎年出題されている。また国際経済に関する現代史の出題も多い。
●出題の形式は?
第Ⅰ問から第Ⅲ問のマーク式部分に関しては、13年度以降安定している。正誤問題についての対策を十分に積んでおこう。
〈マーク式出題の内訳〉
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08
正誤問題 20 20 20 20 20 21 23 20 26 18
選択問題 16 16 16 16 16 15 13 14 9 26
*問題文で「正しい」または「誤っている」という表現を用いていなくとも、筆者の判断で設問内容から正誤問題に分類した設問もある。また「時代順を問う問題」などは選択問題に分類した。
なお、13年度には、リード文中の空欄の単語を選択させるのではなく、その単語に関連した内容を問う正誤問題が、11年度には史料問題が、07年度には地図問題が、それぞれ出題されている。"○番目にあたるもの"を答えさせる年代整序問題は頻出である。年号自体を問う問題は近年出題がなかったが、16年度は変則的な形の選択問題で出された(Ⅲ-問B マグナ=カルタ)。
〈年号問題〉
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08
記述式 0 0 0 0 0 0 2 1 1 2
選択式 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0
*「○世紀前半(後半)に起こった出来事」のように、世紀を問う問題は除く。
論述問題には指定語句はなく、"~について、内容と歴史的意義を答えよ"という問い方が多い(01年度、08年度は出題なし)。
年度 字数 論述するべき内容
2017 100字以内 1970年代の世界的な経済危機
16 100字以内 米中国交正常化の経緯と背景
15 100字以内 孤立主義の形成の経緯と外交政策上の意義
14 100字以内 ECSCの独仏関係史上における意義
13 100字以内 NIESの語義と該当する国・地域の経済発展の要因
12 100字以内 ドル=ショックの内容と歴史的意義
11 100字以内 1964年の公民権法の内容と意義
10 100字以内 ホームステッド法の内容と意義
09 100字以内 1920年代に普及した「アメリカ的生活様式」の内容と意義
08  −
07 150字以内 現在の地域経済統合と戦間期のブロック経済の相違点
06 100字以内 全国産業復興法の内容と意義
05 100字以内 ブレトン=ウッズ体制の内容と意義
04 100字以内 モンロー教書(宣言)の内容と意義
03 100字以内 アメリカ労働総同盟の成立と組織・活動の特色
02 100字以内 欧州統合の最も重要な経済的要因
01  −
00 100字以内 キューバ危機の概要と歴史的意義

難易度

難易度の経年変化を見てみると、13~17年度は前年並み→前年並み→易化→前年並み→前年並み→難化と、安定した難易度になっているといえる。
選択問題、とくに正誤問題では、「うろ覚えな知識」「あやふやな理解」は通用しないので、甘く見ないこと。近年は減少したが、世界史用語集に未掲載の内容さえ問われることもある。また時代順を問う問題は頻出で、ここを苦手とする受験生も多い。
記述問題は、基本的事項を問う問題が多く、ここで点数を稼いでおきたい。ただし、経済に関する問題や一般名詞を答えさせる問題には解答しにくいものもある。準備不足の受験生には難問と思われたであろう。
論述問題について、最後に述べておきたい。17年度のテーマ(1970年代の経済的危機)は12年度のテーマの類題であり、過去問およびアメリカ史対策に十分に取り組んだ受験生にとっては、取り組みやすい出題であった。

入試対策

●各地域・時代の'学習漏れ'や不得意箇所をなくし、基本的問題で得点しよう!

難問にばかり目がいってしまうが、本学部の世界史の問題を注意して見ると、基本的問題も多数含まれている。基本的問題こそ得点のチャンスである。傾向に慣れておくのはよいが、学力の不足を小手先の技術でカバーしようとしてはならない。
それゆえ、全時代・地域を漏れなく勉強しておくこと。勉強が及んでいない分野があると不安であがってしまう。学習が済んでいないため大問1問全く手が付けられない、といった事態は避けたいものだ。

●正誤問題・論述問題に慣れておこう!

正誤問題については、問題に数多く当たり、誤文の理由を指摘できるよう慣れておこう。正誤問題の出来が合否を分けることになろう。
論述問題は近現代史からのみ出題されている。「知識」を修得するのが大前提であるが、制限字数が100~150字と非常に少ないので、数多くの必要事項を制限字数内に盛り込む文章作成の「技術」も要求される。ある事項について長い文章を、(必要事項を削らずに)簡潔にまとめる'練習'をしておくことを勧める。

●過去問に注目しよう!

類題が出題されているので、過去問を用いた学習は必須。たとえば、17年度の論述は12年度の、15年度の論述は04年度の類題であった。また13年度の論述は07年度第Ⅴ問の類題であった。また、12年度第Ⅲ問(19世紀のイギリス)は本学部08年度第Ⅳ問と時代と地域が重複するし、10年度第Ⅳ問(19世紀後半の米国)は、本学部03年度第Ⅳ問と時代が重複していた。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。