2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学 商学部 政治・経済

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容 形式
政治 国際社会と国際法 マーク・正誤・客観
経済 宗教と法制度・経済活動 マーク・正誤・客観・論述
経済 現代の企業 マーク・正誤・客観
経済 少子高齢社会 マーク・客観

2016年度

番号 項目 内容 形式
政治 基本的人権の保障 マーク・正誤・客観
経済 日本企業の国際化 マーク・正誤・客観
経済 市場の仕組みと企業 マーク・正誤・客観
経済 情報化社会 マーク・客観

2015年度

番号 項目 内容 形式
政治 司法制度 マーク・正誤・客観
経済 市場のしくみと企業 マーク・正誤・客観
経済 社会保障と財政 マーク・正誤・客観・論述
経済 地球環境問題、資源・エネルギー問題 マーク・客観

出題分析

分量

大問は2010年度が例外的に全5問であったが、通常は全4問である。また、設問総数は毎年約60問で変化していなかったが、15年度は39問と大幅に減少した。16年度と17年度はともに40問であったが、17年度には論述問題(100字)が復活したため、受験生にとってのボリューム感は重くなった。一問一答形式の設問が多くを占めているものの、解答に時間を要する設問も含まれるので、日頃から数多くの問題演習をこなして、スピードアップをはかる訓練を積んでもらいたい。

パターン

過去19年間、出題パターンに大きな変更はなく、私大の入試問題としては、ごくオーソドックスな形式である。五肢択一形式の語句選択と正誤判定の問題、空欄補充問題を中心とした出題パターンは、今後も大きく変わることはないと予測される。2005年度、本学部としては初めて、字数制限のある論述問題(Ⅲ・問5、100字)が出題され、09年度に再び出題された(Ⅱ・問5、25字)。それ以降、出題されてこなかったが、15年度に復活した(Ⅲ・問1、35字)(Ⅲ・問3、90字)。そして17年度には、再び本格的な論述問題が出された(Ⅱ・問1、100字)。今後も出題される可能性が高いので、重要用語について短い文章でまとめる訓練をしておいた方がよいであろう。また、計算を用いる問題の出題頻度が高く、08年度以降、14年度と16年度、17年度を除いてほぼ毎年出題されてきた。数学的なセンスが求められる問題が出題されたこともあり、類題の演習などによって慣れておく必要がある。

難易度

早稲田大学商学部の政治・経済の特徴として、「誰でも解けるような問題」と「誰にも解けそうもない問題」の両方が含まれ、設問によって難易度のバラツキがきわめて大きいことがあげられる。2015年度には全体的な難易度がやや易化し、空欄補充形式の設問の大部分は、教科書レベルといえる。ただし、Ⅲの問4、Ⅳの問4・問7・問8はやや詳細な知識が求められている。16年度も、Ⅱの問2、Ⅲの問8・問9などはしっかりした考察力が求められたが、空欄補充問題を中心に平易な設問が多い。全体的な難易度は易化しており、受験生にとって取り組み易いものとなっていた。しかし、17年度の問題は、近年の易化傾向に逆行し、難易度が著しく高まった。教科書レベルの設問が大幅に減少したうえ、政治・経済の学習領域を逸脱した内容を問うものが数多く出題されている。ここ数年間の問題とのギャップが極端であり、合格を目指して懸命に取り組んできた受験生といえども高得点を得ることは難しい。努力が報われない問題が出題されたことに困惑した者が少なくないであろう。

内容

過去の問題を見るかぎり、出題分野は多岐にわたるが、政治・経済で学習すべきすべての範囲を満遍なく網羅していると言えよう。ただし、2017年度は政治・経済とは無関係な内容も出題されている。また、計算問題や新聞記事・政府刊行物の穴埋め問題など見慣れないパターンの設問もあり、多くの受験生がまどわされたであろう。なお、11年度以降は、大問4題のうち政治分野が1題、経済分野が3題となっており、経済分野の比重が高くなっている。

特徴

早稲田大学商学部では、2015年度の「検察審査会」「年金支給開始年齢引き上げ」「社会的責任投資(SRI)」「再生可能エネルギー固定価格買取制度」、16年度の「女性の再婚禁止期間の廃止」「障害者権利条約の批准」「BRICS」「タックスヘイブン」「デファクト・スタンダード」「ユビキタス」、17年度の「イギリスのEU離脱」「マイナス金利政策」「企業の大型合併」など、時事的な内容を含む問題が毎年必ず出題されている。時事問題を好む傾向は、商学部に限らず早稲田大学の他学部にも共通している。一般の教科書・参考書の学習だけでは、このような知識を獲得することはできない。日頃から時事問題に関心を持ち、新聞の社説やテレビのニュース解説番組などにも目を向けてもらいたい。また、11年度と17年度を除き、市場メカニズムの理解を問う問題が出ている。問題演習を積み重ね、きちんと対応できるようにしよう。

入試対策

早稲田大学商学部の政治・経済の問題は、分量がやや多い以外には、内容・形式ともオーソドックスなもので、他大学と比べて顕著な特徴は見出せない。全設問の70%ほどは標準的な難易度で、教科書・参考書を確実に身につけていれば正解できる問題である。特に、問題文中の空欄に入る適語を答えさせる設問は、一般の教科書・参考書に載っている用語が多くを占めている。各用語の意味を確実につかんでいれば答えられるレベルであり、日頃の学習の蓄積が直接反映される設問である。
もちろん、先に述べたように「誰にも解けそうもない問題」も出題されてはいる。特に2017年度は「倫理」「世界史」「地理」など他科目の学習内容が出されており、政治・経済選択者には答えられない設問も見られた。しかし、そのような設問の出来で差がつくというよりは、むしろ一般的かつ基本的と思われるレベルの取りこぼしで差がついているのが実状である。
高い学力をもつ優秀な受験生が競い合う本学の入試において、基本レベルの設問で失点することは致命的といえよう。したがって、政治・経済のさまざまな分野の基本知識・基本用語を満遍なく確実に習得するようなオーソドックスかつオールマイティーな学習を徹底すべきであろう。
また、時事的な要素に絡めた設問が毎年必ず出題されるが、これには十分な対策を講じてほしい。先の「特徴」に例示した時事的な設問は、すべてその年にテレビや新聞を賑わせていたものばかりであり、新聞の社説や解説記事に目を向けていれば、自ずと知識として身についているはずの事柄である。さらに、時事用語で意味がわからないものがあれば、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)、『朝日キーワード』(朝日新聞出版)などで調べる習慣をつけ、政治・経済用語のボキャブラリーを増やしていくとよいであろう。各新聞社のホームページを利用して、重要な時事用語の理解を深めることも有効である。
商学部の場合、いわゆる「早稲田対策」的な特殊な学習方法を見つけることはできないし、その必要もない。まず、基礎的事項の徹底理解と用語知識の習得をこなしていく堅実な学習を心がけるべきである。また、政治・経済に関わるニュース、新語、新たに制定もしくは改正された法律、新たに下された判決などについて整理し、それらを確実に身につけてもらいたい。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。