2017年度入試
出題分析と入試対策
  慶應義塾大学 医学部 生物

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容
光合成 植物の光合成と細菌の光合成(記述、論述)
原核生物の構造(記述)
初期生物の進化(論述)
神経 興奮の伝導と伝達(選択、記述、論述、考察)
活動電位と静止電位(記述、描図)
DNA複製と細胞分裂(記述)
蚊を中心とする種間関係 種間関係(記述、論述)
生殖様式(記述、論述)
生活環(選択)
自然選択(記述、論述)
遺伝子突然変異(記述)

2016年度

番号 項目 内容
動物の発生 卵の種類・卵割様式、発生過程(記述、客観、描図)
中胚葉誘導(記述、客観、考察)
ゴンズイの行動と感覚 聴覚器(記述、客観)
味覚に関する実験(記述、客観)
動物の神経系と系統分類(記述)
中枢神経系の機能(客観)
ゴンズイの感覚と行動の実験(記述、考察)
ミトコンドリアに関する総合問題 共生説とミトコンドリアの機能・遺伝子(記述、客観)
ミトコンドリアの融合のしくみ(記述、考察)
PCR法と電気泳動(客観、記述、描図)

2015年度

番号 項目 内容
カエルの遺伝と種分化 遺伝の法則(客観、記述)
配偶子形成と生殖(客観、記述)
細胞での物質輸送 遺伝子の発現(記述)
細胞小器官の構造(描図、記述)
ゴルジ体の機能(考察、記述)
タンパク質の構造と機能(記述、客観)
エキソサイトーシス(記述)
眼球の発生と機能 眼球の形成(記述)
眼球の構造と機能(記述)

出題分析

分量

毎年3題の出題で、論述量も多い。途中の考察問題に時間をかけ過ぎ、後にある平易な設問に答える前に時間切れ、というような危険もないとは言えない。
確実に解答できる問題を手早くこなした上で、じっくり時間をかけて論述・考察問題に取り組む必要がある。試験時間が始まったら、いきなり鉛筆をもって問題を解き出すのではなく、できれば問題全体をざっと一読し、気持ちを落ち着かせ、時間配分を考えてから取り組みたい。

パターン

2007年度以降、作図問題が頻繁に出題されている。本年度は計算問題はなかったが、客観、記述、描図、計算とバラエティーに富む出題形式が例年の特徴である。この傾向は来年度以降も続くと考えてよいだろう。論述式の設問の場合、極端な長文論述はまれであるが、それだけにポイントを的確にとらえた解答が要求される。じっくり問題文を読み込んだ上で解答したい。

内容

知識として、高等学校のカリキュラムから大きく離れた内容が要求されることはほとんどない。しかし、なじみのない内容を題材として考察する問題は多く見られる。現課程となって3回目の受験となったが、旧課程での出題と特別に変わった点は感じられなかった。
分野としては、刺激・反応・恒常性に関する問題、発生に関する問題と、遺伝子に関連する問題が目につく。これらの内容に力を注ぎ、確実に得点できるようにしておくことはもちろんであるが、逆に、これらの分野の問題では差がつきにくいともいえる。たとえば、進化・系統に関する問題も本年度は大問Ⅰの問13、大問Ⅲの問5、問7で出題があり、2000年度以降、2002年度、2010年度、2011年度、2013年度を除き毎年出題されている。また本年度は大問Ⅰが植物の光合成であり、しばらく出題のない題材だった。受験生のレベルからいって、十分学習していない分野から出題されると致命傷になりかねない。全分野をまんべんなく、そして過去に出題された分野は特に重点的に学習しておきたい。

難易度

他の私立大学医学部の入試問題と比較すると、論述力、考察力を問う内容が多く、やはりトップクラスの問題といえる。しかし、他の私立大学医学部の入試問題と比較して、あまり細かい知識を問う問題が多くないのも事実である。
ここ数年の問題については、全体として国立大学の入試問題に近い出題姿勢になっている。本年度は特になかったが、やや発展的な知識を備えていた者の方が有利と考えられる設問も例年見られる。
私大医学部専願の受験生の場合、慶大の看護医療学部・東京慈恵会医科大の入試問題は出題姿勢が似ているため、取り組んでみるのもよいだろう。また、国立大受験生の場合、大半の大学は出題姿勢が慶大と似ているため、特に慶大対策の必要性は低い。したがって、以下の留意点は国公立大対策にも通用する。

入試対策

教科書を確実に

一見すると特殊な題材を含む設問が含まれているため、なにか特別な学習が必要と考えている人がいるかもしれないが、その心配は無用である。ほとんどの設問は教科書に関する基礎的理解と、その基礎に立った論理的考察能力を問う問題であり、教科書さえ確実に理解しておけば確実に高得点が期待できる。ただし、あくまでも確実な「理解」であって、細かく暗記するということではない。基本的な事柄の一つ一つについて、それはどのような実験をもとに明らかになったか、なぜその実験材料を使ったのかなど、論理的に理解しておくことが必要である。

論述問題の演習を

論述式の問題は、解答を作るのに手間暇がかかり、ついつい敬遠してしまう人が多い。しかし、文章をまとめることそれ自体、自分の考えをまとめることにつながり、これ以上確実に力を伸ばす方法はない。また、かなりの論述量の問題を限られた時間内でこなすためには、書くことに慣れておく必要がある。

時事的な話題や発展的な内容にも関心を

本年度のデング熱、2012年度のカエルツボカビ症、2009年度の蛍光タンパク質、2008年度のiPS細胞など、時事的な題材が登場することがしばしばある。2011年度のⅢのサンショウウオの肢の再生も、再生医療に通じる内容をもつものである。新聞にもできるだけ目を通し、興味のある話題については新書判の解説書などを読んでおけば、意外に役立つことがあるかもしれない。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。