2017年度入試
出題分析と入試対策
  慶應義塾大学 経済学部 日本史

過去の出題内容

2017年度

番号 時代 テーマ 形式
明治 明治期の政治・外交・社会経済 選択・記述・論述
近世~近現代 近世・近現代の外交・経済 選択・記述・論述
戦後 戦後の経済 選択・記述・論述

2016年度

番号 時代 テーマ 形式
江戸~明治 江戸~明治の政治・外交・経済 選択・記述・論述
戦前 近現代の総合問題 選択・記述・論述
戦後 戦後の外交・経済 選択・記述・論述

2015年度

番号 時代 テーマ 形式
近世~明治 16世紀から明治期までの日本と欧米との関係 選択・記述・論述
戦前 1930年代から太平洋戦争の敗戦に至る時期についての問題 選択・記述・論述
戦後 日本のオリンピック大会への参加およびその開催に関する問題 選択・記述・論述

出題分析

分量

大問は3題。試験時間は80分。総問題数は50問程度。2017年度は、2016年度から5問減少して47問であった。単純な語句選択・記述問題だけではなく、論述問題、長い文章選択問題、グラフ読み取り問題などが含まれていることを考えると、分量は多い。

パターン

慶應義塾大学経済学部の日本史は、論述問題をはじめ、史料問題・文章選択問題・地図問題・グラフ問題など、同大学の他学部と比べ、バラエティに富んだ出題形式が特徴である。論述問題は、行数の指定のみで、字数の指定がない。駿台では、1行あたり40字前後(最大44字)と判断して解答例を作成している。問題の中には、高校の履修範囲を逸脱したものも見られるが、まずは、基本事項で取りこぼしのないようにすることが大切である。2017年度は、論述が8問出題され、合計行数は16行であった。

内容と特徴

大問は3題だが、各大問でどの時代を扱うかは、年度によって異なる。2017年度は、Ⅰでは明治期の政治・外交・社会経済が、Ⅱでは近世・近現代の外交・経済が、Ⅲでは戦後の経済が出題された。
慶應義塾大学の入学試験要項では、経済学部の日本史の出題範囲は「1600年以降を中心とする」と示されており、近世・近代・現代が中心であることは言うまでもない。しかし、あくまで「中心とする」としているだけで、1600年以前からの出題がないとは限らない。2017年度はなかったが、2015年度には織豊政権期から出題があった。
論述問題の出題内容も、「1600年以降を中心に」、政治・社会経済・外交・文化すべてから出題されているので、特定の時代・テーマにヤマをはることは許されない。日ごろから穴のない学習をし、設問の要求に従って範囲内にまとめる力を養成することが求められる。
また、年表を用いた問題が出される。多くは「下の年表は○○に関する事項を年代の古いものから順に並べたものである。次のa~cの出来事が起きた時期を、下の年表中の空欄1~8の中からそれぞれ選びなさい」という設問文である。この形式の問題では、年代の知識に加え、年表の事項と「a~cの出来事」との 関係
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を考察する力を問われることが多い。すなわち、普段の学習の中で、歴史事項そのものの知識だけでなく、歴史事項と歴史事項の関係を考察し、理解を重ねることが求められる。
史料問題は必ず出題される。史料問題は、大きく2つの種類に分けることが出来る。1つは、「基本史料問題」と呼ばれるものである。この基本史料問題は、教科書に記載されている史料を用いた問題で、受験生が読んでいることが前提である。もう1つは、「未見史料問題」と呼ばれるもので、受験生が読んだことがないということが前提である。本学部では、この両方が出題される。未見史料であっても、丁寧に読み込み、何についての史料であるかを判断することが求められる。
グラフ・表を用いた問題も必ず出題される。歴史の知識を総動員してグラフ・表を読み取り、設問に答える力が求められる。設問形式の性格上、近代・現代の経済からの出題が多い。なかでも、戦後の為替のグラフは繰り返し出題されている。教科書にあるグラフ・表は必ず確認しておくこと。

難易度

慶應義塾大学は、早稲田大学とともに私大最難関と言われているが、経済学部の日本史は、基本知識を総動員すれば
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解けるものばかりである。しかし、言い換えれば、基本知識があるだけ
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では解けない問題が出されるということでもある。基本知識をもとに、グラフ・表・史料を読み取り、解答する力が求められているのである。

入試対策

① 基本事項の取りこぼしをなくす

基本知識を総動員して解答する力が問われる。したがって、前提となる基本知識の取りこぼしがあるようでは勝負にならない。高校・予備学校などの授業・予習・復習などを通して基本事項の取りこぼしのないようにすること。

② 時事的トピック

毎年、時事的なトピックに対応した出題がある。普段の日本史の学習と現在起きていることを関連させて考察する力が求められている。このような力は、入試に限らず、今を生きていくうえで身につけておかなければならない力である。

③ 論述問題対策

論述問題は、まず設問の要求に従うことが大前提である。設問の要求は「推移」「意図」「理由」「変化」など様々である。「意図」を説明する問題で「影響」を書いても点数にならないことは言うまでもない。
次に、論理的に記すことが大切である。歴史事項の背景・原因・経過・結果・影響などをふまえ、問われていることを確認し、主語・述語関係や修飾語・被修飾語関係を明確にして文章を構成すること。問題を解く際は、まず論理関係に沿ってメモを作成してから文章化する、という手順を経ること。
そして、具体的に記すことが大切である。設問の要求を確認し、「なにを書けば加点ポイントとなるか」を常に意識して解答作成にあたること。「加点ポイント」となるのは、歴史用語が大半である。言い換えれば、出来るだけ歴史用語を用いて解答を作成することが大切である。
これらをふまえ、実際に慶應義塾大学経済学部の論述問題を解くことが何より重要である。方法に悩む時間があったら、少しでも実践にうつすこと。
自分なりに満点と思う答案を作成したら、解答例と比較し、分析すること。その際、自分の答案になくて解答例にある要素、逆に自分の答案にあって解答例にない要素はなにかを確認すること。そして、解説を熟読し、もう一度自分にとって満点の答案を作成するようにすること。
慶應義塾大学経済学部の論述問題は同じテーマから出題されることが多い。したがって、このようなトレーニングを日ごろの学習に加えて行うことが求められる。

④ 戦後史対策

他の大学の入試と比べ、戦後史の比重が高い。しかも、戦後改革・高度経済成長といった、頻出テーマだけでなく、1990年以降からの出題も多く見られる。短期間で効率的に戦後史を得点源にしたい受験生には、駿台予備学校の夏期講習・冬期講習『日本現代史徹底整理(戦後史)』の受講をお勧めする。

⑤ 正誤判定問題対策

長い選択肢の正誤判定問題は、本学部の特徴の一つである。基本知識を総動員して選択肢を吟味し、選択肢の長さに惑わされることなく、正誤を判定する力が求められている。過去問演習だけでなく、『センターで学ぶ日本史−センター・国公立・私大の完全攻略−』(駿台文庫)によって対策をしておく必要がある。

⑥ 年表問題対策

年表問題では、基本的な歴史事項の年代を覚えることが大前提である。そして、普段の学習のなかで、歴史事項と歴史事項の関係を理解すること。あとは、過去問演習を通して、基本的な知識をもとに問題に向き合い、自力で解答に到達できる実力を養うことが求められる。

⑦ 過去問演習

繰り返し同じテーマから出題されることが多い。過去問演習・過去問研究を通し、頻出テーマを攻略することは、効果的である(効果的ではあるが全てではない)。その際、解説を熟読し、知識を増やし、理解を深める努力を厭わないこと。2017年度も、論述問題において、前年とほぼ同じテーマから出された。過去問演習をやっていたかどうかで差がついたと思われる。

⑧ 穴のない学習

当然のことだが、本番では、初見の問題を自力で解かなければならない。本学部では、繰り返し同じような問題が出されるとはいえ、近世以降の政治・社会経済・外交・文化すべてのテーマを偏りなく学習することが前提である。過去問演習によって、「ここが出題される」と勝手に想像し、その分野だけを勉強して「対策した気になっている」ようでは、合格は厳しい。どの時代・どのテーマから出題されても対応できる本当の実力を養成することが、本学部志望者に限らず、求められる。勝手な選別をすることなく、穴のない学習を丁寧に進めることが、何よりも大切である。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。