2017年度入試
出題分析と入試対策
  慶應義塾大学 理工学部 英語

過去の出題内容

2017年度

大問 項目 内容 形式
1 読解 (テーマ)「逆境に対する回復力についての考察」
下線部の同義語選択、空所適語(句)選択、要旨を完成させる空所適語選択
選択
2 読解 (テーマ)「veganism(厳格な菜食主義)について」
下線部の同義語選択、空所適語選択、語句整序、段落の見出しの選択、内容一致文選択
選択
3 読解 (テーマ)「親友の最も好きなところについて」
下線部の同義語句選択、内容一致文選択、内容についての英問英答文の選択
選択
4 文法・語法 5つの単語のうち、第一アクセントの位置が異なるものを1つ選択 選択
5 語彙・語法 文脈に合わせて与えられた単語の形を適切に変化させる問題 記述
6 語彙・語法 文意に合わせて書き出し指定文字を使って適切な語を完成させる問題 記述

2016年度

大問 項目 内容 形式
1 読解 (テーマ)「エネルギー保存について」
下線部の同義語選択、空所適語(句)選択、語句整序、内容一致文選択
選択
2 読解 (テーマ)「死を悼む動物の研究」
空所適語句選択、下線部の同義語句選択、要旨を完成させる空所語句選択
選択
3 読解 (テーマ)「おもてなしに関する教師と生徒の対話」
下線部の同義語句選択、空所適語句選択
選択
4 文法・語法 空所適語句選択 選択
5 語彙・語法 文脈に合わせて与えられた単語の語形を適切に変化させる問題 記述
6 語彙・語法 文意に合わせて書き出し指定文字を使って適切な語を完成させる問題 記述

2015年度

大問 項目 内容 形式
1 読解 (テーマ)「エネルギーの貯蔵について」
空所適語選択、一文の本文中への挿入箇所選択、語句整序、内容一致文完成、内容一致文選択
選択
2 読解 (テーマ)「創造性と創造的洞察について」
下線部の同義語句選択、空所適語選択、適切な接続詞の選択、要旨を完成させる空所語句選択
選択
3 読解 (テーマ)「東京オリンピックに関する友人同士の会話」
空所適語句選択、内容一致文選択
選択
4 文法・語法 下線部で文法上の誤った箇所を選択 選択
5 語彙・語法 文脈に合わせて与えられた単語の語形を適切に変化させる問題 記述
6 語彙・語法 文意に合わせて書き出し指定文字を使って適切な語を完成させる問題 記述

出題分析

分量

本学部の出題は近年、読解問題3題(論説文2題+対話文形式1題)と、文法・語彙・語法問題が2~3題という形で一貫している。2017年度においては、読解問題の本文の長さは、大問1が560words、大問2が621words、大問3が198wordsであった(総語数は昨年度とほぼ変わらず)。設問数は、大問4までの選択問題でマークすべき解答箇所が51個(2016年度は47個、2015、2014年度は49個、2013年度は45個)、記述問題が大問5、6で設問13(過去5年と変わらず)であった。90分の試験時間に対しては妥当な分量と言えるが、読解問題の本文は語彙レベルが比較的高く、論理展開をつかみながら読み進め、精密に内容を理解することが内容一致問題などの解答に直接結びつくので、全体の分量を見渡して時間配分を考慮する必要がある。

パターン

<問題形式>
読解問題をはじめ、大部分が記号選択の客観式である。記述問題としては、英文の空所に与えられた日本文に合うよう書き出し指定の適語を書かせる問題が近年続いて出題されている。2011年度は一文中で答える問題6問であったが、2012年度以降、本年度も、文意に合わせて単語の語形変化を書かせる問題と、短い文章の中で空所8ヵ所を補充するもの(従来はこの出題形式が多い)であった。以前には条件付き作文問題、熟語句を構成する1語を書かせたりする問題が出題されたこともある。
<問題の種類>
先に記したように、読解問題3題(論説文2題+対話文形式1題)と、文法・語彙・語法問題が2~3題という出題が続いている。論説文の読解問題(大問1、2)は、本文自体はそれほど長いものではないが(最大でA4版1ページ程度)、語彙レベルは比較的高い。設問は読解力が多面的に試されるもので構成され、本文中の空所選択補充や同意語選択、内容一致といった問題はほぼ毎年出題されている。残る1問の読解問題は、問題文が対話形式になっている場合が多く、時に新聞記事の一部という形式で出題されることがあった。2014年度まで、長らくインタビュー形式の対話文であったが、今年度は、2015、2016年度に続き3人以上の人物が登場する会話文であった。こちらの読解問題では、従来は会話の流れをつかんだ上で前後のやりとりが成り立つよう空所に適切な語句の選択問題が必須であったが、今年度は会話文中の同意表現の選択、内容一致文の選択などであった。今年度は大問4で、過去5年に渡って出題されていた文法・語法問題に代わってアクセントの問題が出題された(アクセント問題は、2011年度に大問の1題として出題され、その後3年に渡って、読解問題の本文中の単語に関する問題として出題されていた)。昨年度までは大問4では、2016年度には文法・語法に関する空所適語句選択問題が出題された。2014年度は、英文中の2ヵ所の空所に入る適語の組み合わせを選択肢群から選ぶという新しい形式の語彙・語法問題が出題されたが、2012、2013、2015年度は、文法上の誤りを選択する問題が出題されている。大問5、6の単語の語形変化を記述、書き出し指定つきの単語を記述する問題は近年連続して出題されている形式である。

内容

<読解問題>
1.
「逆境に対する回復力についての考察」というテーマの読解問題。語彙レベルも比較的高く、テーマでもあるresilienceが意味するものをいかに文脈から読みとるかがカギ。[1]下線部の同意語選択では、下線部の語は必ずしもなじみのある語ばかりではなく、文脈を把握して選択肢にアプローチする必要がある。[2]、[4]の空所選択では、前後の文脈をしっかりと読み取ることが求められている。[5]要旨を完成させる空所語句選択の問題は、4年続けて出題された形式である。内容一致問題としては該当箇所を照合しやすいという側面はあるものの、空所の数も多いので、段落ごとの展開をつかみ、論理を追いかけながら言い換え表現に注意する必要がある。
2.
「veganism(厳格な菜食主義)について」の読解問題。vegansがどのような考えの人々なのかを本文中の記述から理解し、段落ごとに要旨をつかみながら内容理解に努めることが求められている。[1]の下線部の同義語選択は、下線が付された語(句)は、なじみのない動詞や表現も含まれており、文脈からの類推で解答に結びつける必要がある。[2]空所適語選択でも同様のアプローチがポイントとなる。[5]段落の見出しを選択する問題は新しいタイプ。段落内の要旨をまとめながら文章を読む力が求められたが、[ア]は、[3]で完成させた段落の第1文がポイントとなる。[6]内容一致問題は、英語の選択肢が9つ示され、一致するものを4つ選択するという形式であったが、過去には、日本語の選択肢による「本文と一致するもの」、「しないもの」、「どちらとも判断できないもの」に判別する問題も出題されていたことを付しておく。
3.
「親友の最も好きなところについて」の対話文問題は、この問題のみ設問文もすべて英語という形が踏襲された。会話文中の同意表現の選択では、熟語表現の言い換えを選ぶものが多く見られる。
<文法/語彙・語法問題>
4.
アクセント問題では、頻出の単語も多く含まれていたが、persevere、admirable、interface、accessory、momentaryなど間違えやすいものも多く出題された。
5.
文脈に合わせて単語の語形を変化させる問題では、英文の構造から求められている品詞を特定すること。加えて派生語の知識が必須である。
6.
書き出し単語完成記述問題では、①propel(推進する)、④friction(摩擦)、⑤typically(通常は)、⑦routine(日常的な)などが難しい。日本文と英文を照らし合わせながら、空所に求められている単語の意味をきちんと把握し、適切な形にすることが重要である。

入試対策

<読解問題>

読解問題で扱われる素材文はそれほど分量の多いものではないが、内容は身近な話題のものからやや難解なものまで多彩である。本学部では単に科学的テーマの論説文にとどまらず、コミュニケーションや言葉、言語的表現をテーマにした英文を問題文として採用することも多い。文章の話題や形式によって理解の度合いが影響を受けるということがないように、さまざまなテーマ及び形式の英文に触れる機会を持ち意欲的に取り組んでもらいたい。その上で合格に向けて学習していく上での留意点を挙げておく。

内容を正確に読みとるために、英文の構造を正しく捉えられるか。長い文も一文一文を正確に読むことから始まる。文法の知識、語順の規則などに裏打ちされた構造把握力を培うこと。
一文一文を適確に読めるようになったら、語句と語句の受け継ぎやパラグラフ内における文と文の論理関係をつかんで、まとまったパラグラフ単位で要旨をまとめながら読み進める練習に努めたい。本文についての内容一致文に関わる出題は本学部では必須であり、選択肢の真偽を判断するためには本文中の該当箇所をピンポイントで見つけ出し、参照する必要がある。設問の度に何度も本文に戻って該当箇所を探すような読み方では試験時間内で解答し終えることが難しくなる。
上記のことが確実になったら、文脈を追いかけ、パラグラフとパラグラフの論理関係と展開を意識した精密な読解が出来るように、教科書・各種教材・過去問などを通して時間を意識した実践的な訓練を続けること。
対話文問題では、会話の流れに注意しながらやりとりを完成させる問題が必須。中には会話ならではの独特の口語表現も含まれるので、同様の対話文形式の文章や問題に触れる機会を増やしていくこと。
英文中の語彙レベルも比較的高いので、まずは過去問を通してどの程度の語彙力が要求されているか確認してみることが必須。自分の語彙力とのギャップを知ることで単語学習の目安を得るとよい。本文中にはある程度未知の単語もあるだろうし、専門的な用語に近いものもあるが、受験生向けに書かれた設問中の単語であればすべてわかるというレベルになっておかねばならない。

<文法/語彙・語法問題>

今年度は出題されなかったが、文法/語彙・語法に関する知識は、直接そうした問題を解くために必要であるのにとどまらず、読解においても不可欠である。まずは、単元別や問題形式別の問題集などを用いて、体系的な知識を構築することに励んでもらいたい。そのためには、解答の正誤だけではなく、解答の根拠となる考え方や規則を確認しながら進めることが肝心である。問題に対して解答解説が詳細なものを選んだり、ただ問題を解くだけではなく、関連箇所を文法の解説書や参考書で確認したり、英和辞典の語法や用例を参照するなどの工夫をすることで、丸暗記などに頼らない、理解に基づいた知識として使いこなせる力に変わっていくものである。

<記述問題>

本学部では、与えられた日本文に合わせて、書き出し指定つきの単語を記述する問題が近年連続して出題されている。また、文脈に合わせて単語の語形を変化させて記述する問題も出題されたが、いずれにしても、単語を文脈に即して使う上では、文法・語法上の知識に基づいて英文の構造から品詞や語形を配慮して解答しなければならない。過去には簡単な英作文が出題されていたことも考慮すれば、英作文学習用の基本例文集などを利用し、与えられた日本文に対してその例文が正しく書けるかを確認しながら基本的な語法や表現を定着させる方法をとることを勧める。また、単語学習においても品詞や用法の特徴にも注意しながら、派生語にも目を向けるようにするとよい。

<発音・アクセント問題>

3年ぶりにアクセント問題が出題されたが、本学ではアクセント問題、発音問題がたびたび出題されてきた。センター試験の第1問で出題されるような発音・アクセント問題の対策が十分にできていれば特に神経質になる必要はないが、出題の有無には関わらず、本来単語学習、英文読解の学習においては音声を連動させた学習の効果は高い。日常的に発音やアクセントの位置に留意しながら声を出して読むことも心がけよう。

※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。