2017年度入試
出題分析と入試対策
  慶應義塾大学 理工学部 物理

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容
1 力学 (1)万有引力を向心力とする等速円運動
(2)楕円軌道上を運動する物体
(3)2物体の分裂、相対速度
2 電磁気学 (1)電流が磁場から受ける力
(2)動く導体棒による電磁誘導、抵抗の消費電力
(3)電源を含む回路による電磁誘導、電源がする仕事
3 熱力学 (1)気体分子運動論
(2)熱力学第1法則
(3)可逆的断熱変化、定積変化

2016年度

番号 項目 内容
1 力学 (1)糸に取りつけた質点の非等速円運動
(2)質点と剛体の二体問題、相対運動
(3)静止する剛体、剛体が回転する条件
2 電磁気学 回転コイルによる交流発電、交流回路における抵抗での消費電力や電流と電圧の位相のずれ、電流が磁場から受ける力
3 波動 マイケルソン干渉計、ドップラー効果

2015年度

番号 項目 内容
1 力学 (1)容器と内部に閉じ込めた物体の弾性衝突、相対速度
(2)(3)摩擦力を受ける物体の等加速度運動、相対変位
2 電磁気学 (1)磁場中を動く導体棒に生じる誘導起電力、電流が磁場から受ける力
(2)電気的に結合した2本の導体棒の磁場中での運動
(3)電池の起電力と誘導起電力を含む回路
3 熱力学 弾性力が作用するピストンで閉じ込めた気体の熱サイクル、状態方程式、ピストンに働く力のつりあいによる気体の状態の決定、熱力学第1法則を用いた気体の状態変化におけるエネルギー収支計算

出題分析

分量

近年、大問3題という設定が定着している。やや増加傾向にはあるが、試験時間60分に対する設問数(過去5年の小問数は25~30)は適量であるといえよう。

出題形式

空所補充の問題が大部分を占める。グラフや図を描かせる問題も散見される。

内容

「力学」および「電磁気学」に関する問題が必ず1題ずつ含まれる。その他の1題は「波動」または「熱力学」で、ほぼ毎年交互に出題されている(05年と06年は波動が、13年と14年は熱力学が続いた)。15年から新課程に移行し「物理基礎」と「物理」を合わせた全分野からの出題となり、今後は旧課程では選択分野のため除外されていた「原子・原子核」からの出題の可能性もあるだろう。
《力学》
円運動、単振動そして2体問題の出題頻度が高い。単振動は弾性力以外の力も作用する設定が多く、たとえば非慣性座標系を用いて考える、等加速度運動する台や回転する円板の上での単振動にも慣れておきたい。2体問題(本書に載っている問題としては13年第1問、16年第1問、17年第1問)は運動量保存則、力学的エネルギー保存則を用いて確実に解けるようにしておこう。また、相対運動や動く座標系で見た物体の運動を扱った問題も多い。
《電磁気学》
コンデンサーおよび電磁誘導に関する出題が多い。コンデンサーの問題を解く際には「静電誘導の原理」、および「回路中の孤立部分についての電荷保存則」は必須である。電磁誘導の問題では、誘導起電力の他、電流が磁場から受ける力、力学的エネルギーと抵抗で発するジュール熱の関係を問う問題がよく見られる。回路の問題ではキルヒホッフの法則が不可欠となるので自由自在に立式出来るようにしておくこと。交流回路も疎かにならないようにしたい。
《波動》
波動の問題は、変位の空間変化(位置による変化)と時間変化がうまくつかめるかがポイントとなってくる。必要に応じて、イメージの手助けとなるグラフや図を積極的に書いてみよう。出題内容は干渉に関する問題が多い(過去10年に出題された波動の問題5題中3題)、いろいろな干渉実験について、経路差の計算に習熟しておく必要がある。ドップラー効果の仕組みや、ホイヘンスの原理を用いた屈折の法則の説明なども押さえておくこと。
《熱力学》
熱サイクルを含む、気体の状態変化に関する問題が多く出題されている(過去10年に出題された熱力学の問題5題中3題)、微小な状態変化における近似計算もしっかりと身に付けておこう。また、気体の分子運動論やモル比熱の定義に基づいた計算も欠点とならないようにしたい。
《原子・原子核》
旧課程では出題範囲外であったことも関係して、00年を最後にこの分野からの出題はない。しかし、もし出題されたとしても対応できるように、教科書に載っているような典型的な現象に関する問題は確実に解けるようにしておきたい。

難易度

標準レベルの問題が多い。12年までは大問のうちの1問の難易度を高く設定している年度もあったが、13年以降はそのような問題は出されていない。

入試対策

標準的な問題が多いとはいえ、型にはまった解法で片付けられるというようなものではなく、目新しい問題設定により真の物理の能力が試されている。このような問題に対応するためには、まず基本法則をしっかりと理解し、その上で、それらの法則を問題に適用する練習を積まなくてはいけない。その際に、結果が求められたらすぐに模範解答と照らし合わすのではなく、結果が意味することをグラフに示したり、計算の次元チェックをしてみたり、紙の上で鉛筆を動かしながらいろいろと吟味することが重要である。物理の問題が解ける能力は一朝一夕に高まるものではなく、地道な努力の結果として完成されるものである。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。