2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学 法学部 世界史

過去の出題内容

2017年度

番号 テーマ 時代 主な出題内容
中国と周辺世界 3C~19C 中国の主要王朝を中心に政治・文化を扱う
欧州史 古代~19C シチリア島を中心とするヨーロッパ史
西・南アジア史 7C~現代 イスラーム教を中心とする西・南アジア史
ドイツと日本 中世~現代 現代のドイツと日本を中心とする政治史
欧州史 17C~19C 航海法の制定と廃止について

2016年度

番号 テーマ 時代 主な出題内容
中国と周辺世界 古代~20C ベトナムを中心に中国との関係を扱う
地中海世界 古代~19C 混合政体論を題材に政治・文化を扱う
欧州史 16C~18C 英蘭両国関係とイギリスの市民革命
欧州史 古代~17C キリスト教の成立から宗教改革まで
欧州史 19C ドイツ統一の歴史

2015年度

番号 テーマ 時代 主な出題内容
中国と周辺世界 古代~18C 科挙を題材とする文化史・社会経済
西アジア史 古代~20C パレスチナを題材とする東地中海史
欧州史 8C~18C 北欧・ロシア史を中心とする政治史
東西交渉史 古代~16C 海上輸送を題材とする政治経済史
国際関係 現代 民族自決原則の波及

出題分析

分量

2017年度の出題数は、例年と同じく大問5問。出題形式も、第Ⅰ問~第Ⅳ問がマーク式解答で第Ⅴ問が論述と例年通り。論述の字数は、2016年度に200~250字が250~300字となったが、その字数が踏襲された。論述を除くマーク式の小問数には大きな変動はない。

出題形式の特徴

●マーク・記述式問題の特徴は?
第Ⅰ問~第Ⅳ問のマーク・記述式解答の部分では、(1)冒頭にまとめて長文形式の問題文が掲げられる場合(17年度第Ⅱ・Ⅳ問、16年度第Ⅰ~Ⅳ問、15年度第Ⅱ~Ⅳ問、14年度第Ⅱ・Ⅲ問、13~11年度第Ⅱ問~第Ⅳ問、10年度第Ⅲ・Ⅳ問など)も、(2)幾つかの設問ごとに問題文が分けられている場合(17年度第Ⅰ・Ⅲ問、16年度は出題されていない、15年度第Ⅰ問、14年度第Ⅰ・Ⅳ問、13~11年度第Ⅰ問、10年度第Ⅱ問など)も、下線部や空欄に関する設問に答える形式であった。また、08年度に新しく登場した、設問自体が数行にわたり下線部や空欄のない形式(08年度第Ⅲ問)の問題は、17~09年度には出題されていない。
出題形式では、正誤問題が再び増加してきたが、問われている知識自体には難易度が高いものも含まれているとは言え、微妙な文章表現から正誤判定に悩むような設問は見当たらない。また、後述するように文化史も減少したため、文化史まで手が回らなかった準備不足の受験生には幸運であった。よって、正誤問題や文化史の質・量から見れば、2017年度は受験生にとって取り組み易い問題であったと言えよう。
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 00 99 98
正誤問題 23 20 17 24 21 23 29 23 19 26 28 29 25 27 21 26 26 23 24 15
選択問題 11 14 17 10 13 11 5 11 13 8 6 7 9 7 14 8 8 12 9 20
記述問題 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0
合計 34 34 34 34 34 34 34 34 32 34 34 36 34 34 35 34 34 35 34 35
*問題文で「正しい」または「誤っている」という表現を用いていなくとも、筆者の判断で設問内容から正誤問題に分類した設問もある。また下記の〈組み合わせ問題〉〈時代順を問う問題〉は選択問題に分類した。
また本学部では、正しい単語の組み合わせを選ぶ問題が出題される。17年度は第Ⅳ問-設問4の1問、16年度は第Ⅲ問-設問4・第Ⅳ問-設問3の2問、15年度は第Ⅳ問-設問3だけであったが、次頁の表のようにタイムスパンを長く取って見てみると4~6問が出題されている年もある。特別な対策が必要な高いレベルの問題ではないが、心構えだけはしておいた方が良い。これまで出題されたこの形式の問題の例を上げておくと、以下のようになる。14年度は第Ⅰ問-設問6および設問7・第Ⅱ問-設問6および設問9、13年度は第Ⅰ問-設問3、12年度は第Ⅰ問-設問7・第Ⅳ問-設問8、11年度は第Ⅱ問-設問8・第Ⅲ問-設問8、10年度は第Ⅱ問-設問7。なお09年度の第Ⅳ問-設問3は、人名と思想の組み合わせを3組選ぶ新傾向の問題であったが、その後は出題されていない。
〈組み合わせ問題〉
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 00 99 98
問題数 1 2 1 4 1 2 2 1 2 4 1 3 2 1 6 4 4 4 3 3
次に、年号そのものを問う出題が稀に出題されることがある。17年度・16年度がそれに当たり、選択問題で久しぶりに1問ずつ出題された。年号の出題例を調べてみると、05年度第Ⅰ問-設問2や97年度第Ⅳ問-設問4程度であるので、実に11年ぶりの出題となった。もっとも、年号をズバリ問わなくても時代順を問う問題は、毎年のように出題されている。詳しく述べると、時代順を選ぶ問題の形式は、(1)歴史事象を時代順に並べた短文を選ぶ形式、(2)歴史事象を正しく時代順に並べた場合に○番めに入る用語を選ぶ形式の2種類がある。17年度は(1)が2問、16年度は(1)のみが、15年度は(1)(2)の両方が1問づつ出題された。なお、(1)に当たるのが17年度第Ⅱ問-設問5、第Ⅳ問-設問1、16年度第Ⅲ問-設問5、15年度第Ⅲ問-設問7、14年度第Ⅲ問-設問2および設問6、13年度第Ⅱ問-設問2、12年度第Ⅲ問-設問4、11年度第Ⅲ問-設問7、10年度第Ⅲ問-設問3などである。(2)に当たる出題は少なく、21世紀に入っては15年度第Ⅳ問-設問7が16年ぶりの出題となった。
〈時代順を問う問題〉
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 00 99 98
問題数 2 1 2 2 1 1 1 1 2 1 1 0 2 1 2 2 1 0 3 1
*この他に1997年度には、年号自体を選択肢から選ぶ問題(スペイン第二共和政の成立年代)が出題された。
なお、選択肢の数は基本的に4択であるが、00年度第Ⅱ問などは、5択になっている。しばらく5択の選択肢は出題されていないが、出題されても驚かないように心しておきたい。また選択肢から解答を2つ選ぶ形式の問題も90年代に出題されたが、21世紀には姿を消している。
●論述問題の特徴は?
第Ⅴ問として論述問題が、92年度入試より毎年出題されている。従来の制限字数は150~250字であったが、16年度に初めて250~300字に増えた。論述を重視する傾向は昨今の入試の特徴であるので、来年度も同様の制限字数で出題されると考えておいた方がよいであろう。形式としては、指定語句を挙げて記述するべき内容を制限している場合が多い。14年度と16年度には「列記した順に用いて」との指示があり、また、06年度のように「各語に付せられている条件を満たしたうえで」との指示がついたこともあった。いずれにせよ、このような指示があると解答作成にとっては手助けとなることが多いので、必要以上にナーバスになる必要はない。
〈論述問題の指定語句数〉
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 00 99 98
問題数 4 4 4 4 4 4 4 4 4 2 5 3 6 7 7 6 3 6 5 4
*2008年度は事実上の指定語句数である。

内容

●出題される地域は?
2017年度の出題数は例年通りの35問(論述を含む)であるが、欧米史(欧州・北米地域)からの出題が16問、中国とその周辺地域から11問、そして西アジア・南アジアから8問出題された。16年度は11年ぶりに欧米史偏重の傾向(欧米史-26問、中国・周辺地域-9問、西・南アジア-0問)がみられたが、バランスに配慮した出題に戻ったようだ。なお15年度の出題も、欧米史が16問に対してアジア史が19問(アフリカ・南米史の出題はなし)で、十字軍・大航海時代・パレスチナなど両地域にまたがる問題も7問含まれており、各地域のバランスや「世界史」的な視点に配慮した出題であった。しかも、IS(イスラーム国)の勢力拡大やムハンマドの風刺画に対するテロ事件が注目を集める中で、西アジア・イスラーム世界に関する問題が、関連問題を併せて数えると9問も含まれていた。ちなみにアフリカや中南米史の出題は3年間ともに無かった。
必ず出題されている中国史については、秦漢(04年度)・後漢~魏晋南北朝(05年度)・隋唐(06年度)・宋~清(07年度)と時代を追った出題が一段落して、土地制度(08年度)・税制(09年度)とテーマ史へと移行していたが、10・11年度は古代を中心とする雑題、12年度は近代を中心とする雑題、13年度は文化史を中心とする雑題、14年度は文化史を中心に中国の周辺世界を織り込んだ雑題、15年度は科挙制度をテーマに文化史や政治経済史を扱った雑題で、朝鮮史(高麗)が含まれていた。そのような中で16年度は、一転して政治史を中心に中国側から見た中国・ベトナム関係が出題された。南シナ海を巡り対立する中国・ベトナム関係を念頭においていることは間違いあるまい。17年度は主要な王朝や時代にまつわる問題であり、テーマ性は薄かった。中国と周辺世界との関連を問う問題は、10年度は第Ⅱ問で「中国側から見た東西交渉史」が、12年度は第Ⅰ問で「明清帝国と周辺世界との関係」がそれぞれ出題された他、95・97・02・04年度と繰り返し出題されているので、要注意である。
次に、05~08年度と4年続いて出題されたイスラーム史(05・07年度は論述問題)では09年度は出題されず、代わりに東南アジア史が出題された。基本レベルの出題であったが、学習時間の不足からインドシナ半島の歴史まで手が回らなかった受験生は、悔しい思いをしたのではないか?(駿台生は講習会で必修となっている『周辺地域史』を受講しているはずなので得点源となったことと思う)。なお、10年度もイスラーム史の出題はなかったが、11年度は第Ⅲ・Ⅳ問で計6題のイスラーム史が出題された上に、12年度ではオスマン帝国とギリシアとの関係が問われた。ギリシアの財政問題に端を発してEUの動揺とユーロ安が続いていることに関連しての出題であろう。13年度はイスラーム史に代わり、ムガル帝国以降のインド近現代史が出題された。14年度がイスラーム史からの出題は1問だけであった反動だろうか、15年度はイスラーム史6問がパレスチナ問題や東西交渉史の中で取り上げられた他、東西交渉史の中でイスラームに触れた設問が3問あった。このようにイスラーム世界に関する出題が続いた後、16年度はイスラーム史のみならず西アジア・南アジア世界からの出題が皆無となったため、来年度は注意するよう指摘したとおり、17年度はイスラーム史の大問が出題されている。時事的な要素としてもイスラーム世界は目が離せない地域であるので、今後とも注意しておくと良いだろう。
最後に欧米史(欧州・北米地域)について。中国史同様に必ず出題されており、出題数が全体の過半数を越えていることも多い上に、16年度のように欧米史偏重と思われるような出題傾向のこともある。欧米史のマスターは点数UPの必須条件であると言って良いだろう。特に米国史は、16年度・17年度には出題されなかったものの、93~96・98・01~03・05・08~10・11・14年度と頻出である(08・10年度は論述問題の形式で出題された)。米国史の出題がなかった13・15年度には'十四カ条の平和原則'が論述問題の一部として出題されている。また、ロシアのクリミア半島併合で一気に注目を集めているウクライナ状勢など、ロシアの南下政策関連の出題にも要注意である。
●出題される時代は?
前近代と近現代の割合は、年により大きく変化する。15年度は3年続いた近現代史優位の状況が一変して前近代史中心であったが、16年度は前近代・近現代がほぼ同数の出題となった。半々でバランスよく出題された。前近代/近現代の割合を詳述すれば、22問/13問(10年度)→23問/12問(11年度)→10問/25問(12年度)→12問/23問(13年度)→13問/22問(14年度)→24問/11問(15年度)→18問/17問(16年度)→23問/12問(17年度)となっており、論述問題は各年度とも近現代史から出題されている。
また、近現代史の中では近代史が中心である。近現代史に含まれる現代史部分(帝国主義~第二次世界大戦後)の出題は、1問(10年度/論述)→5問(11年度/論述を含む)→0問(12年度)→13問(13年度/論述を含む)→3問(14年度/論述を含む)→3問(15年度/論述を含む)→2問(16年度)→8問(17年度)と、13年度の突出が際立っている。結論を言えば、年度によって出題される時代に振幅があるだけに、やはり全ての時代を手抜かりなく学習しておく必要があるのだろう。それが自信に繋がるのだから。
●史料問題や地図問題、文化史は?
史料を利用した問題が出題されることもある。07年度第Ⅱ問・02年度第Ⅱ問・01年度第Ⅰ問・94年度第Ⅲ問が史料問題であるし、03年度第Ⅳ問-設問2および96年度第Ⅲ問-設問8では、小問の中で史料が扱われている。特別な対策は必要ないと思われるが、心の準備だけはしておいてほしい。地図を利用した問題が出題されることもあるが、11~92年度の間に小問6問のみであるので出題比率は高くはない。但し、歴史上の地名を問う問題は頻出なので要注意! ちなみに、00年度第Ⅱ問-設問2・5(南欧)、98年度第Ⅱ問-設問5①②③(カリブ海域)、96年度第Ⅰ問-設問8(中国と内陸アジア)が地図問題である。
文化史について。16年度は10問を数え激増したかに見えるが、それは第Ⅲ問のキリスト教史に関する4問が数値を押し上げたためであり、これらの問題を除くと15年度と同水準である。17年度は出題がさらに減少している。過去を振り返ってみると、05年度までは小問で文化史関連事項が数問ずつ出題されているにとどまっていたが、06年度第Ⅰ問・07年度第Ⅲ問では、まとまって文化史が出題された。その後も、09年度を除き文化史の出題比率は高く、14年度は06・07年度の11問・8問に並ぶ水準となった。文化史まで手が回らなかった受験生にはきつかったであろう。文化史の出題は、かなり細部にわたる知識を必要とする難問が多いので、要注意である。
〈文化史に関する問題〉
年度 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 00 99 98
問題数 4 10 6 8 7 4 5 7 1 6 8 11 4 2 3 2 2 3 1 1
●論述問題は?
論述問題の出題内容は次頁の通り。出題される時代は、98年度を除き近現代(特に19~20世紀)に限定されている。出題される地域は、従来の欧米史一辺倒の状況が変わり、14・11・07・06・05・01年度のようにアジア史の出題が増加しつつある。10年度は本学部頻出のアメリカ史から論述の基本問題が出題されたが、欧州世界と非欧州世界との接点や第二次世界大戦後が問われた09・11年度は、受験生の苦手箇所だったのではないか。これに比べて、12・14・16年度で問われた英蘭戦争前後の両国関係や第二次世界大戦後の中華人民共和国の外交関係さらにドイツ統一の経緯は、論述し易いテーマだったように思う。13年度の出題は、いかにも国際法の講座を抱える法学部らしい出題内容であるが、ハーグ万国平和会議の内容は受験生の盲点であり、解答に苦しんだ受験生も多かったものと思う。15年度の出題も、国際法の発展に絡んだ出題であった。17年度は航海法について出題されたが、法学部では頻出の事項であり、対応しやすかったのではないだろうか。
なお、本学部の論述では時事性の強いテーマが選ばれる傾向がある。具体的に見てみると、10年度は前年のオバマ米大統領就任とミシェル夫人から奴隷制度に関連する南北戦争が、11年度はGDPが日本を抜いて世界第2位になり高度経済成長を続ける中国の内政が、14年度は東シナ海や南シナ海での勢力拡大が周辺諸国との軋轢を引き起こしている中華人民共和国の外交が、さらに15年度はロシアによるクリミア併合やウクライナ東部状勢に関連して民族自決の動向が、それぞれ問われている。
年度 字数 論述するべき内容
2017 250~300字 航海法の制定と廃止の理由
16 250~300字 ドイツ統一の経緯とオーストリアの役割
15 200~250字 民族自決の考え方の世界への波及
14 200~250字 中華人民共和国の外交関係の展開
13 200~250字 国際紛争の平和的処理
12 200~250字 17世紀における英蘭関係の変遷
11 200~250字 中華人民共和国成立以降の歴史(指定語句は全て内政関係)
10 200~250字 南北戦争前に南部と北部が置かれていた状況の違い
9 200~250字 北アフリカにおける仏領植民地の成立と独立運動の展開
8 200~250字 フーヴァーとF=ローズヴェルトの大恐慌に対する国内政策
7 200~250字 シーア派における「後継者」と16・20世紀のイランの動向
6 200~250字 朝鮮王朝末期の政治状況
5 200~250字 オスマン帝国におけるタンジマートの展開
4 200~250字 近代バルト海域におけるスウェーデンを中心とする覇権の推移
3 150~200字 19世紀における米国の外交政策
2 250字以内 中世~現代の欧州における主権国家の変容
1 250字以内 清朝末期の政治状況
0 250字以内 19世紀後半~20世紀初頭のロシアの改革政策と近隣諸国
1999 250字以内 20世紀前半~中期のイギリスのパレスチナ・スエズ政策
98 150~200字 古代ローマ支配下の諸都市の変遷
97 250字以内 ミュンヘン会談開催の経緯と結果(史料から会談名を判別する)
96 200字以内 イギリスの産業革命とインド植民地化
95 200字以内 ビスマルク外交の時代から三国協商への変化の経緯
94 200字以内 1950年代の東欧の自由化と挫折と1989年の東欧革命の経緯
93 150字以内 ヴァイマル共和国誕生からヒトラー政権成立への経緯
92 150~200字 「1848年革命」について

難易度

17年度は、第Ⅰ問=標準/第Ⅱ問=標準/第Ⅲ問=標準/第Ⅳ問=標準/第Ⅴ問=標準であり、16年度並の問題だが、15~12年度に比べると、全体として易化したようだ。正誤問題は、正確な知識や理解を必要とする設問が多いので、細部にわたる学習が必要である。
論述問題について。13年度は、指定語句についての知識を欠いている受験生には、取り組みにくかったと思う。また11年度は、指定語句から内政を中心に答案を組み立てざるを得ず、準備不足を痛感した受験生が多かったのではないか。これに対して17・16・15・14・12・10年度は、必ず授業で扱う基本的問題であった。実は、10年度の論述は高校世界史の範囲を超える西部問題との絡みこそが要点なのだが(過年度版の「青本」の解説参照)、受験生は教科書の範囲で論述すれば、高得点が期待できたのではないか?09年度に論述が求めた地域・時代は、受験生には馴染みが薄く答案を作りにくかったようだ。同様に08年度も、教科書に記載されていない点をついた問題であり、難しかった。但し、上述した13・11~09年度を含めて例年は良問が多く、きちんと正面から世界史学習を行っている受験生には、取り組みやすい出題内容である。

入試対策

正誤問題については、用語集・世界史辞典・人名辞典などを丁寧に読み、細部にわたる知識の修得に努めるとともに、数多くの問題に当たり出題形式に慣れておくこと。史料問題・地図問題については、通常の注意を払っていれば良いであろう。論述問題は、近現代史を中心に十分な知識をつけた上で(これがないと練習しても無意味である)、150~300字の論述を実際に書いてみること。本学部の論述問題は多くの指定語句を伴っていることが多いので、その語句をヒントと考えて論述するべき内容を整理してから、解答に臨むとよい。歴史を見る目を養うことが大切である。また、本大学では毎年のように各学部で類題が出題されているので、各学部の過去問を必ず解いておくこと。来年度入試に関しても、法学部より前の日程で入試が行われる他学部の問題に、出来る限り目を配っておくと良いだろう。
最後に、学力不足を小手先の技術でカバーしようとしてはならない。世界史の'学力'(知識と理解)をつけることこそが肝要である。ワセダを目指す諸君は、正攻法で行こうではないか!
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。