2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学 法学部 政治・経済

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容 形式
政治 立憲主義 記述・選択
政治 現代の民主主義 記述・選択
経済 グローバル化の問題 記述・選択・論述
政治・経済 情報化社会 記述・選択

2016年度

番号 項目 内容 形式
政治 外国人の人権問題 記述・選択
政治・経済 社会保障と財政 記述・選択
経済 市場のメカニズム 記述・選択・論述
政治 国際連合と軍縮問題 記述・選択

2015年度

番号 項目 内容 形式
政治 司法制度 記述・選択・論述
政治 政党政治、選挙制度 記述・選択・論述
経済 自由貿易の理論 記述・選択・計算問題
政治 労働問題 記述・選択

出題分析

分量

配点40に対応して大問が4、解答数は40前後というパターンが定着している。例年、難問の類も見られるが、時間不足になるような分量ではない。2017年度も例年通り4大問の構成であったが、小問数は39と、2016年度より1問多い出題となっている。

難易度

教科書レベルの基本事項を問う問題を中心に、政治・経済の広い範囲からバランスよく出題されている。
早稲田大学の法学部といえば、私立大学の最難関学部の一つであり、レベルの高い難問も少なくないが、最近は易化の傾向にある。基本的知識を問う問題は、一つも落とせないと思ってもらいたい。また、受験生の思考力や文章力を試す問題が増えている。過去問などで、問題の傾向をつかむことが大切である。2017年度の難易度は、教科書レベルの基本事項を問う問題が中心であり、例年よりも易化している。
毎年、題意をつかむのに時間のかかる設問が見られるが、そうした問題は腰を落ちつけてじっくり取り組むしかない。例年、40点の配点に対して解答数が40前後である。ということは、難問も基本問題も、原則的には1点配点という可能性が大きい。したがって、解答の際には、時間のかかる難問は後に回して、まずは基本問題を着実に解き、得点に結び付けるべきである。

パターン

例年、選択式、記述式、論述式というオーソドックスな出題形式の組合せで構成されている。選択式には、語句選択と文章選択の2つの形式がある。2017年度の出題形式のバランスを見ると、解答数39のうち選択式25、記述式12、論述式2となっており、例年と同程度である。論述式問題は継続的に出題されており、2014年度は20~30字程度の論述2問と短文の3問、2015年度は150~200字の論述1問と30~60字の論述2問、2016年度は150字の論述問題1問、2017年度は150字の論述1問と40字の論述1問の出題であり、例年と比較すると、全体の字数は増加している。

内容と特徴

第1に出題分野についてみると、2017年度は政治分野から2題、経済分野から1題、両分野が融合したものが1題の出題であった。出題されている内容は、日本国憲法の基本原理や選挙制度についての理解力を問うもの、情報化社会、国際経済に関する問題が多く見られる。また、設問は社会的に関心が高い事柄がテーマになっている。Ⅰでは、憲法改正の限界論についての知識が出題された。Ⅱでは、公職選挙法について時事的知識を問うものが出題された。さらに、Ⅳでは、情報化社会をテーマに、ネット選挙やサイバー攻撃などについて時事的な内容が出題された。いずれの問題も様々な立場から賛否が議論されているテーマである。
出題範囲は、2008年度と2009年度、2011年度、2014年度、2015年度は、政治分野から3大問、経済分野が1大問、2007年度と2010年度は経済分野が3大問の出題、2012年と2013年は政治分野と経済分野からともに2大問の出題であった。2016年度と2017年度は、政治分野から2大問、経済分野から1大問、政治経済融合の1大問の出題となっている。これらから政治分野からの出題が多い傾向にあることが伺えるが、経済中心の出題の場合もあるので、いずれの分野に偏ることなく、両分野をきちんと学習してもらいたい。
第2に、「現代社会」で学習するような社会学的テーマを題材にして出題されることがある。たとえば、2015年度のⅣでは、日本の労働問題の現状をテーマとする出題、2016年度のⅡでは、ベーシックインカムについての出題、Ⅳでは、昨今のICJとICCの訴訟について、2017年度のⅣでは、情報化社会の問題点をテーマとする出題があった。
第3に論述問題がほぼ毎年出題されている。2013年度は30~50字の論述と短文の2問の出題、2014年度は20~30字の論述と短文形式が3問出題だったが、2015年度は150~200字の論述と30~60字の論述の2問、2016年度は150字の論述が1問、2017年度は150字の論述と40字の論述の2問の出題であった。近年の論述は、制限字数が増える傾向にある。論述問題では、政治経済の理論についての理解力や読解力、また問題点を見つける思考力の有無を問うものが多い。
第4に、近年は教科書レベルの知識を問う基本問題が中心であるが、柔軟な応用力や論理的な思考力を問う設問が増加している。2014年度の問題では、政治経済の正しい知識を身につけているかを問う出題が多く、ここ数年、この傾向が続いている。ただし、2017年度のⅠの問8、Ⅱの問2、問7、Ⅲの問3、Ⅳの問1、問10などは、難易度が高く、なおかつ論理的思考力を試す要素が含まれている。また、問題作成者の出題意図が読み取りにくい問題が出題されることもある。このような問題に対しては、過去問などでその傾向に慣れていないと、得点するのは難しいだろう。
第5に、近年の時事的な動向を踏まえた設問が少なくない。一人別枠方式や消費税増税問題といった政治・経済分野のみならず、限定正社員、ヘイトスピーチ、ネット選挙、ベーシックインカムなど社会的な出来事について広く出題されている。近年の問題からは《時事問題に関心を持ち、自分の頭で考える学生がほしい》という大学側のメッセージが伝わってくる。2017年度は、例年と同程度の時事問題が出題されており、今後もこの傾向に変化は見られないと思われるので、時事問題への対策をしっかり行ってもらいたい。
第6に、計算問題が出題されることが少なくない。分野的には経済分野での出題が多く、2009年度はリカードの比較生産費説に関する計算問題、2010年度は期待値を求める計算問題、2011年度は付加価値を求める計算問題と有効需要を求める問題が出題された。2012年度は需要曲線と供給曲線を使用して超過需要と超過供給の価格を求める計算問題が出題された。さらに、2013年度は信用創造を求める計算問題、2014年度は需要曲線と供給曲線の方程式から均衡価格と超過供給を問う問題、2015年度は比較生産費説について出題され、ほぼ毎年度出題されてきた。2016年度と2017年度は計算問題の出題がなかったが、来年度以降も継続的に出題されると予想されるので、経済分野の計算問題についての理解を深めてもらいたい。

入試対策

第1に、教科書レベルの基本事項をしっかり学習することが不可欠である。法学部の場合、政治分野のウェートが比較的高いため、民主主義の基本原理から国際政治まで、全分野をまんべんなく押さえておかなければならない。特に、日本国憲法については深く勉強する必要がある。基本的な条文を押さえることはもちろんのこと、判例や憲法解釈などについても資料集などを活用して学習してもらいたい。また、論理的な思考力や柔軟な応用力などを問う問題は、政治・経済どちらでも出題されているので、日頃から論理的な筋道を重視した「考える学習」を心がけるべきである。対策として法学部の過去問を繰り返し解き、正解を導く思考方法を身につけてもらいたい。
第2に、必ず論述問題が出題されるので、思考力や文章表現力を養成するトレーニングが不可欠である。論述の字数は年度によって異なるが、「立憲主義」(2013年度のⅠ)や「ねじれ国会」(2014年度のⅡ)など、基本的な用語の意味を問う短文の問題が出題されてきた。また、ここ数年100字前後の長文論述が出題されている(2010年度:75字、2012年度:100~120字、2015年度:150~200字、2016年度:150字、2017年度:150字、)。対策としては、まずは教科書レベルの基本用語の意味を30字程度で説明することから始めるとよいだろう。論述対策は、実際に書いてみて「手で覚える」ことがとても大切である。また、テーマを決めて、書く内容をまとめてみたり、答案構成を考えるトレーニングも役に立つだろう。
第3に、時事的なテーマに気を配ることが重要である。政治・経済分野に限らず、社会的な出来事について広く出題されており、視野の広い学習が必要になっている。そのため、日頃からニュースに関心をもち、新聞に目を通すことや、社説を読む習慣を身に付けることが不可欠である。また、市販の時事問題の解説書などを活用するのも有効である。
第4に、「現代社会」特有分野についても目を配る必要がある。過去問をみると社会学的なテーマを問題として出題していることがあるので、「現代社会」の教科書にも目を通し、特有分野の箇所は熟読しておこう。
第5に、政治経済特有の計算問題に慣れることが重要である。過去の出題をみると、受験生の応用力や解読する力を試している問題が見られる。2014年度の需要曲線と供給曲線に関連する計算問題は、早稲田大学のどの学部でも定期的に出題されている問題である。対策として、政治・経済分野の計算問題の公式をしっかりと理解すること、過去問の計算問題を実際に解いてみて、応用力を養成するとよいだろう。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。