2017年度入試
出題分析と入試対策
  早稲田大学
基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学部物理

過去の出題内容

2017年度

番号 項目 内容
三角プリズム  回折レンズ  光の屈折と干渉
力学 直方体の箱の中での二球の衝突
衝突、反発係数、等加速度運動
電磁気、原子 電磁場中での荷電粒子の運動
一様な磁場中の正方形コイルに働く力、コイルを回転させたときに生じる起電力を求める
ボーアの水素原子模型

2016年度

番号 項目 内容
電磁気 複数の金属板からなるコンデンサー、電気振動、誘電体
力学 ばねで連結された2物体の落下
熱、電磁気 気体分子運動論、温度勾配があるときの分子の流れ、金属電子論

2015年度

番号 項目 内容
凹面鏡による像  幾何光学
力学 一定角速度で回転する円筒の内側に小物体を置く
摩擦がない場合、摩擦がある場合、それぞれについて小物体の運動を調べる
摩擦、単振動、円運動
電磁気 磁場中の平行レール上を動く導体棒はコンデンサーと同じはたらきをする
平行レールの他端に、抵抗、コンデンサー、コイルなどを接続したときの回路について考察する
電磁誘導  回路の方程式  電気振動

出題分析

出題形式と分量

物理は3題で、〔Ⅰ〕マーク形式、〔Ⅱ〕〔Ⅲ〕記述または選択式という出題形式。物理選択の場合、基幹、創造、先進理工学部とも共通問題。試験時間は理科2科目で120分、つまり物理1題あたりの平均解答時間は20分。1題の設問数は7~10問(10年〔Ⅱ〕の小問数17は例外的)あり、図やグラフを描かせる、理由を述べさせることもある。06~08年に比べ、09~11、13~16年は難易度が高く、計算も面倒な出題が続いている。さらに、分量も非常に多い。

出題傾向

「力学」「電磁気」は必ず出題される。他分野の問題にも「力学」「電磁気」関連の設問が含まれるので、この2分野が物理3題中で占めるウエイトは非常に大きい。「力学」では「ばね」「単振動」からの出題が多く、次いで「円運動」「衝突」「万有引力」である。「電磁気」は「電磁誘導」「ローレンツ力」「コンデンサー」など万遍なく出題される。「波動」では「光波」とくに「回折」、「熱」では「気体分子運動論」からの出題が多い。近年、設問数を多くして難易度の異なる設問を並べ受験生の学力をきめ細かく測ろうとしているようである(が、分量過多でもある)。

入試対策

物理の平均解答時間60分に対して分量は非常に多く、十分に考えて全問解答することは到底不可能である。難問(例えば09年〔Ⅱ〕〔Ⅲ〕、11年〔Ⅲ〕、13年〔Ⅱ〕、14年〔Ⅱ〕、15年〔Ⅱ〕)には深入りせず他の問題で点数を補えば合否に影響はないだろう。難問といっても最初の方の設問は易しい(例えば11年〔Ⅲ〕問1~4、13年〔Ⅱ〕問1~3、14年〔Ⅱ〕問1~7)。複数の設問がグループをなし、グループごとに独立して解答可能だから、面倒な設問はとばして解答する戦略が必要である。後の方にある設問でも独立して解答できることがよくあるから、とばす前に必ず一読しよう。
ただし、不得意分野を作らず、早大理工の標準レベルの全設問に手をつけて70%以上正解できる能力は、一夜漬けでは決して生まれない。レベル、分量からいって間に合わせの学習でどうにかなる入試問題ではない。入試物理の5分野「力学」「電磁気」「波」「熱」「原子」を原理からきちんと理解することが合格への最短ルートである。

物理学の成り立ちをきちんと理解すること

物理学に登場するさまざまの"公式"には、何からも導けないものと、別の"公式"から導出できるものがある。また、単に実験結果を近似的に表現する"公式"もある。例えば、運動の第2法則(運動方程式)は原理であって証明はできないが、ドップラー効果の公式は証明可能である。衝突のはね返り係数の式は実験結果である。物理公式一つ一つについて、原理なのか、定義式なのか、実験式なのか、それとも原理や定義から導出できることがらなのかを区別して理解する必要がある。

導出可能な"公式"は必ず証明してみること

そうすることで"公式"の適用条件がはっきりと理解できて、自然に覚えてしまう。

演習問題は頭と手で解くこと

必ず図を描いて、手を動かして計算すること。解答例を目で追っても実力はつかない。

計算結果をチェックすること

文字式の結果なら、あるパラメータが変化して特別の値になったとき(例えば質量が0や∞、角度が0や90°、電界の強さが0になったときなど)を想定して、結果が物理的に妥当かどうかチェックすること。普段からこのチェックを欠かさず実行することで物理的センスが磨かれるのである。普段の学習では、問題に指示がなくてもグラフを描いて結果の妥当性を確かめること。

計算力の向上に常に努めること

近似計算(微小量に関する計算、2項定理を利用した近似計算、微小角近似)に強くなること。数値の概算に慣れること。
※本ページ内容は一部のコメントを除き、駿台文庫より刊行の『青本』より抜粋。