
執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
数学の学習では特に演習が重要です。授業で分かった気になっても、実際に問題を解けるようになっていないことも少なくないからです。また解法を理解していても、実際に正答を得るためには計算力が必要です。入試の合否は計算力で決まるといっても過言ではないほど、計算力は重要と言えます。
ここでいう演習には「解き直し」も含みます。一度間違えた問題をその場で理解し、時間が経ってから解き直すことで初めて理解が定着したと言えます。しかし実際には解き直しをできなかったり、「すべて解き直す」という効率の悪いやり方をしている人も少なくないようです。数学の演習を効率よく進めるためには、演習の管理のやり方を身につけることが必要なのです。
ここではその管理のやり方として「○△×管理」を紹介します。
問題ごとに「○」「△」「×」の印をつけるシンプルなやり方です。それぞれの定義は以下のようにします。
「○」 …初見で自力で正解できた
「△」 …初見で間違えたが、解答解説を読んで自力で理解できた
「×」 …初見で間違えた上で、解答解説を読んでも理解できなかった
問題を解いたら必ず答え合わせをします。結論だけではなく、解答解説を読み適切な解法選択ができているかまで確認しましょう。「△」の問題はその場で自力で解き直しをすることに留意します。自力で解決する力はその後の学力の伸びを大きく左右します。
「×」の問題は授業の解説を聞いたり、質問をして解決します。解決したのちに改めて自分で解き直しをしてみます。このように学習のプロセスを決めることで、効率的な復習が可能になります。
全体を通したポイントは以下の2つです。
①「○」「△」「×」の記号は問題集に書き込むことで、進捗を一覧でわかるようにします。
②「△」「×」の解き直しのために「復習ノート」を準備します。解き直し時には解答解説を必ず閉じるようにしてください。
数学では初見の問題に対応する力が求められます。もちろん授業と復習が学習の基本になります。しかし入試本番ではこれまでやってきた内容に加え、「初見力」が求められることがあります。
たとえば上の問題を見てみましょう。この問題は東京大学理系の2020年の入試問題です。一見して単元が分かりづらい問題です。類題を解いたことがある受験生はほとんどいなかったのではないでしょうか。(少なくとも私は見たことがありません。)
この問題を解くために必要な1つ1つの知識は受験生であれば当然学習済みですが、それらをどう組み合わせて解くかはその場で試行錯誤し、自分で見つけるしかないのです。
この初見力とも言うべき力は、授業と復習だけでは身に付きません。予習でまず自分で考えることが必要なのです。
ちなみにですが、この問題を解くためには高度な知識は不要です。内容としては「中学入試」の範囲で解くことができます。しかし入試本番では力のある生徒が戸惑ったと聞いています。
このように、知識よりも思考力が求められる問題は今後も増えてくると予想されています。そういう意味でも初見力にこだわった取り組みは、今後の受験生には必須と言えるでしょう。
初見力を伸ばすために、予習時に留意すべきことは次の2つです。
予習段階では解けなくてOKです。逆に見てすぐに解法が浮かぶ問題であれば、その問題はすでに習得済みですから、あまり学習する意味がありません。予習時には「解けなくてOK」くらいの気持ちで、自分でできることから手を付ける習慣をつけましょう。「分からないから白紙」という状態が一番よくありません。
また、解答解説を読み込む習慣も重要です。分からない部分を明確にすることで、授業の学びをより深くすることができます。初見力を伸ばすためには「発想力」が必要です。授業では発想のやり方が口頭で説明されることも多く、気を抜くと聞き逃してしまうこともあるでしょう。予習時に課題を明確にし、口頭説明に集中できる状態であることが大切なのです。
授業で理解した問題は必ず自力で解き直しましょう。解き直しは「イチから自分で解く」のが基本です。解き直しの際は必ず解答解説を閉じて、自力で答案を作成するようにします。よく解答を見ながら解き直しをする生徒がいますが、それは「答え写し」で学習効果は上がりません。自分で思い出そうとすることで記憶が強固になるからです。
記憶がまだ新しい授業直後に解き直しをするのは、あまり効果的ではないように感じる人もいるかと思います。その場合は、少し間をあけてから解き直すのも有効です。1週間後くらいに改めて解き直すことで、解法の発想から自分で思い出すことができるかを試すことができるでしょう。
解けるようになった問題は積極的に友人に解説しましょう。自分の理解の確認にもなりますし、友人の助けにもなります。難問がわからないのはみんな同じです。学び合える友人がいることは、学力を伸ばす上でとても大切なことです。
解説はただノートを読み上げるのではなく、授業をやるように自分の言葉で説明してみましょう。やってみると分かりますが、解答解説を読み上げる以上に、方針や発想法など行間の説明
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「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。
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