【2024年度】大学入学共通テストの結果分析と解説

監修者:駿台予備学校 教務課

実施4年目となる2024年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、前年と比べて出題傾向が大幅に変わることはなく、平均点のアップダウンもみられませんでした。この記事では、2024年度共通テストの点数分布や出題傾向を解析するとともに、2025年度から始まる新課程入試に対策するポイントを解説します。

目次

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2024年の共通テスト受験者の最終志願状況

共通テスト 最終志願状況

2024年度共通テストの最終志願者数は、前年から20万667人少ない49万1914人でした。志願者数が50万人を下回るのは、実に1992年度の大学入試センター以来32年ぶりです。

志願者数が減った原因としては、少子化に加えて、12月までに結果が確定する「年内入試」が広まったことが考えられます。

参照:

独立行政法人 大学入試センター「センター試験 志願者数・受験者数等の推移

現役生の受験比率は年々上昇

共通テスト志願者のうち、現役生の比率は85.3%でした。この比率は、5年連続で上昇しました。つまり、年を追うごとに浪人生の数が減っているということです。

これから受験を控える生徒の親世代の受験当時は、現在よりも受験者数も多く、浪人して大学へ進学するのも当たり前でした。早期から準備を始めることで、今では現役で難関大に合格することも十分に可能です。

こちらも参照
「大学受験で浪人するメリット・デメリットは?-向き不向きや勉強方法別の特徴も紹介-」

共通テストの難易度が安定化!2024年各教科平均点の動向

大学入学者選抜大学入試センター試験(以下、センター試験)から共通テストに変わって、今年で4回目を迎えました。その結果、前年と比べて出題傾向が大幅に変わることはなく、5教科平均点の大きなアップダウンもみられませんでした

科目別平均点・前年比
 

2024年各教科平均点の動向

予想平均点は、5教科8科目文系で536点(前年より+4点)5教科7科目理系で559点(前年より+8点)と、いずれもアップしています。とくに、国語、生物基礎、生物での平均点上昇が目立ちました。これにより、同一教科内の科目間の平均点差が小さくなりました。

ここからは、各教科の平均点について、増減の原因を解説します。

英語(リーディング)の平均点は51.5点、前年比-2.3点

2024年の共通テストで特徴的だったのは、リーディングの単語数が、昨年に比べて多かったことです。問題量も多く、最後まで解ききれなかった生徒が多くいました。ただし、難易度は例年通りだったので、最終的な平均点は前年に比べて-2.3点と、あまり変わらない結果になりました。

一方、リスニングでは解きやすい問題が多く出題されたため、平均点は67.2点、前年に比べて+4.9点と上昇がみられました。英語ではリーディングのマイナス分をリスニングのプラス分が相殺する形になったため、最終的に英語の平均点は若干の上昇に留まりました

国語の平均点は116.5点、前年比+10.8点

国語の中でも、「現代文はかなり解きやすかった」という声が多くあがっています。国語の平均点上昇が目立ったのも、現代文で点数を稼いだ人が多かったからかもしれません。共通テスト900点満点の予想平均点が、前年に比べて上昇したのも、国語の平均点がアップしたためと考えられます。

数学I・Aの平均点は51.4点、前年比は-4.3点

数学は、数学I・Aの平均点が51.4点、前年比は-4.3点。数学Ⅱ・Bの平均点が57.7、前年比は-3.7点でした。

大学受験における学部系統別志望動向

今年度の学部別志望動向をみていきましょう。

国公立大学の学部系統別志望動向

国公立大学の学部系統別志望動向

国際関係学の人気が回復するなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類に移行した影響がみられました。また、コロナ禍で人気が高まっていた薬学は、志望者数が落ち着いてきました。今後、薬学の分野に進みたいと考えている学生にとっては、好機となるのではないでしょうか。

2025年の新課程入試を控えた安全志向はみられない?

2025年度から入試が新課程に切り替わる影響で、2024年は浪人を避けるために安全志向が働くのではと予想されていました。しかし、ふたを開けてみると、難関国立10大学前期日程の志願者数は前年比指数101、医学系統は国公立大学前期日程で前年比指数99と、さほど変わらない結果になり、予想していたほどの安全志向は見られませんでした。

厳密に言えば、安全志向がみられなかったというよりも、安全志向の受験生の多くが、年内に合否が決定する「年内入試」を選択したからだと考えられます。平均点がアップしたことで、共通テストを受験した人については強気に出願していったのが今年度の特徴といえます。

新課程入試については、こちらの記事を参照してください。
「2025年 新課程入試を知る」

各科目別の得点分布グラフと出題傾向

ここからは、各科目別の得点分布グラフとともに、今年度の出題傾向を解説します。

英語の出題傾向

英語リーディングと英語リスニングの得点分布グラフ

リーディングでは、高得点になるほど前年度よりも人数が減る結果になりました。一方、リスニングはリーディングとは対照的に高得点になるほど前年度よりも人数が増えています。

英語(リーディング)の出題傾向

日常的な場面をモチーフにした文章や説明文が扱われるなど、出題傾向は昨年と変わらず。文章量は増加しましたが、難易は昨年並でした。

英語(リスニング)の出題傾向

昨年に続き、場面に応じた聞き取りなど、実践的な英語力が問われました。また、音声情報とイラストや図表などの視覚情報を組み合わせて答える問題も出題されました。

国語の出題傾向

国語の得点分布グラフ

昨年の得点分布の頂点が100点あたりだったのに比べて、今年度の頂点は130点あたり。前年と比べて、全体的に得点上昇がみられました。

国語の出題傾向

推敲や鑑賞など「言語活動の充実」を意識した設問が出題されました。全体の分量はほぼ昨年並で、内容は昨年よりも易化しています。

数学の出題傾向

数学Ⅰ・Aおよび数学Ⅱ・Bの得点分布グラフ

数学Ⅰ・Aおよび数学Ⅱ・Bの点数分布は、昨年とほぼ変わらない結果になりました。

数学Ⅰ・Aの出題傾向

太陽高度などを利用し、電柱の高さやその影の長さを求めるといった、現実事象の問題が出題されました。解法の方針が立てにくい問題が多く、昨年より難化した印象です。

数学Ⅱ・Bの出題傾向

今回、初めて「式と証明・複素数と方程式」を主題とした問題が出題され、そのほかでも目新しい設問が目立ちました。後半は抽象的な設問が続き、昨年よりやや難化した印象です。

地歴・公民の出題傾向

世界史B・日本史B・地理Bの得点分布グラフ

地理Bにおいては、68点以上を取った受験生が昨年よりも増加しましたが、そのほかの科目はほぼ例年通りの得点分布となっています。

世界史Bの出題傾向

昨年と同様、文献資料やグラフを読み解く問題が頻出しています。難易は昨年並。資料読解と基本的な知識を組み合わせる「思考力が求められた大問数」が1問減り、解答数も34個から33個に減少しました。

日本史Bの出題傾向

「印刷の歴史」や「古代の食物」なと、身近な題材の問題が出題されました。文章資料に加え、統計グラフ、写真など多彩な資料を通じ、読解力が求められる出題が目立ったのも特徴です。昨年よりやや難化しました。

地理Bの出題傾向

地図や統計表、写真などを含む多様な資料が用いられ、限られた時間のなかで図表読解力と地理的思考力が問われる設問が多く出題されました。昨年よりやや易化しました。

倫理・政経・現代社会の得点分布グラフ

倫理、政治・経済と倫理の点数分布は昨年とほぼ変わらず。政治・経済では44点以上の分布に大きな落ち込みがみられ、現代社会でも点数分布の頂点が昨年は68点だったのが56点にずれ込む結果となりました。

倫理の出題傾向

選択肢の数と文章量が増えました。難易は昨年並みだったものの、資料を用いた多面的・多角的な出題が増加したため、総じて解答の時間に余裕がなかった印象です。

政治・経済の出題傾向

文献・判決文・統計・模式図などの多様な資料を読み解いたり、計算力が求められたりと、解答に時間を要する問題が目立ちました。昨年より難化しました。

現代社会の出題傾向

文章選択問題が減少し、8択の組合せ問題が増加しました。また、政治分野の出題が増加。文献や統計、模式図など、多くの情報を読み解く問題も変わらず出題されました。難易は昨年並でした。

生物、物理など理科②の出題傾向

物理・化学・生物・地学の得点分布グラフ

物理と化学の点数分布は昨年とほぼ変わりませんでしたが、生物と地学においては、全体的に点数の上昇が見られました。

物理の出題傾向

設定の把握に時間を要する、探究的な問題が頻出しました。目新しい問題としては、「太陽の中心部にある原子核を題材として、原子核1個あたりの運動エネルギーを問う」というものが出題されています。難易は昨年並でした。

化学の出題傾向

文章を読み解いたり、図やグラフを読み取ったりと、読解力と思考力を要する問題が頻出。目新しい内容としては、高校の教科書ではあつかわれない、質量分析法に関する問題が出題されました。昨年より易化しました。

生物の出題傾向

さまざまな分野からバランスよく出題された印象。問題の解答に必要な情報の読み取り量は減少し、昨年より易化しました。

地学の出題傾向

複数のグラフや表を組み合わせて考察する問題が頻出。目新しい内容としては、表を用いて未完成のグラフを完成させ、さらに考察するという問題がありました。昨年より易化しました。

来年以降に受験するみなさんへ

2025年度から新課程入試に切り替わります。出題範囲が変更される科目もありますが、2021年度から始まった共通テストとしての出題方針は変わりません。したがって、共通テストの過去問は試験対策としては大いに役立ちます。

来年度以降に受験を控えている生徒は、ぜひ日ごろの授業の予習復習をおこたらず、まずは基礎を固めるようにしてください。今年度の出題傾向を見てもわかるとおり、共通テストでは身に付けた知識を実際に活用できるかどうかが重視されます。そのため、まず学校の授業で習う知識をしっかり定着させ、そしてその知識を使えるようにすることが重要です。

高校3年生ごろからは演習問題や過去問を解く段階になりますが、本番より少し短い時間で問題を解けるよう訓練するといいでしょう。というのも、共通テストでは、センター試験と比べても問題量が多くなる傾向があります。今年度の英語(リーディング)で顕著でしたが、問題量が増加して最後まで解ききれなかったという声が目立ちました。2025年度から国語の大問数は5題に増える予定です。このように、問題数や問題量が増加しても対応できるように、問題演習でも制限時間を短めに設定して、スピードアップをはかるといいでしょう。

共通テストの対策に近道はありません。諦めずにコツコツと勉強を積み重ねることこそが、結果を出す唯一の方法です。このことを忘れずに、日ごろの学校の勉強に真摯に取り組みましょう。

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