2019年度私立大一般選抜志願状況

3月23日現在で駿台が集計した私立大188大学の一般選抜(推薦・AO入試等の特別選抜を除く)の延べ志願者状況を中心に、その特徴を見ていくことにします。また、主要私立22大学の一般選抜の志願状況にも触れます。
※なお、文中の( )内の数値は、志願者数の前年度同時期対比指数を示しています。

 延べ志願者数全体概況

図1 私立大延べ志願者数推移

図1 私立大延べ志願者数推移

2017年度までは、文部科学省発表数値。

2018年度は駿台による、500大学集計による推定値

2019年度は駿台による3/23現在、188大学集計による推定値

○延べ志願者数は13年連続増加が確実

図1のグラフは、2005年度から2019年度までの私立大一般選抜の延べ志願者数の推移を表したものです。188大学集計での一般選抜の延べ志願者数は、331.4万人(105)となっており、前年度同時期との対比で増加しています。最終的な延べ志願者数も増加が継続して、382万人近くとなり、13年連続増加が確実と思われます。なお、増加率は7%以上だった過去2年間と比べてややダウンし、5%程度になると思われます。

図2 私立大一般選抜志願者数 前年対比増減率推移(方式別6ヶ年比較)

図2 私立大一般選抜志願者数 前年対比増減率推移(方式別6ヶ年比較)

○センター利用方式は10%以上の増加
入試方式別での志願者数の増減率を見ると、一般方式が微増、センター利用方式は10%以上の増加で、過去5年間で最も高い増加率だった前年度に次ぐ高さとなっています。新規に導入されたセンター利用方式の募集区分を除いても5%あまり増加しています。

近年の合格者数絞り込みで厳しくなった入試への不安から出願校数は増えましたが、結果として出願先は受験料が安価で、センター試験の成績のみで合否が決まる募集人員が多いセンター利用方式に向かったことがわかります。

○私立大延べ志願者数増加の要因
2019年度入試で私立大一般選抜の延べ志願者数(105)が増加した要因として、以下の3点が挙げられます。

① 入学定員管理の厳格化に伴う合格者数絞り込みへの不安
入学定員管理の厳格化とは、大都市部の大学への学生集中を是正するためにとられた措置で、前年度は大都市圏の総合大学での合格者数の絞り込みが厳しく、2019年度も厳しい入試が継続するという不安から、併願校数を増やした可能性が高いことが志願者数増加の最大要因といえます。

② 併願時の受験料割引拡大
複数の学部、学科や受験方式を併願する場合に受験料を割り引く制度の拡大が併願校数の増加につながっており、これも志願者数増加の大きな要因です。また、インターネット出願を導入する大学の増加により、出願手続がかつてより手軽にできるようになっています。このインターネット出願システムの改善や工夫が進んでいることも併願校数増加の要因です。

③ 入試方式の複線化・多様化、学部新設・改組
2019年度では、英語外部試験を用いた入試方式の新規実施や対象試験の拡大、スコア変更が多く見られました。また、一般方式やセンター利用方式でも募集区分の新設が目立ち、入試方式の複線化や多様化がさらに進んだことも要因です。

また、2019年度は青山学院大・コミュニティ人間科学、順天堂大・保健医療、中央大・国際経営、国際情報などが新設されました。主要私立大での学部新設は近年では比較的落ち着いていますが、学部・学科も新設、改組などで出願時の選択肢が増えたことも増加要因です。

 系統別志願状況

図3 私立大一般選抜志願者数 系統別志願状況

図3 私立大一般選抜志願者数 系統別志願状況

○文系は増加率がダウン、理系は理、工が連続増加、薬、農・水産は連続減少
系統別では、文系の増加が継続しているものの増加率はダウンしています。大学別では首都圏の大規模な総合大学で減少している大学が多くなっていますが、募集人員に占める文系の割合が大きいため、この減少が増加率ダウンの要因につながっています。なお、増加は継続していることから、競争はさらに厳しくなっています。

増加している系統では、文理のいずれからも志願者がいる総合科学(118)の大幅増加が目立っています。これは、この系統に分類される青山学院大・コミュニティ人間科学、中央大・国際情報、武蔵野大・データサイエンスの新設が大きく影響していますが、新設の3学部を除いても(110)と10%近く増加しています。

文系の系統では外国語(109)、国際関係(109)の増加が目立っています。いずれも人文科学、法、経済・経営・商、社会と比べると志願者数がはるかに少ないため、増減率が大きくなりやすい系統ですが、外国語は昭和女子大・国際(英語コミュニケーション)(159)、杏林大・外国語(英語、中国語)(152)、武蔵野大・グローバル(141)、摂南大・外国語(132)などの大幅増加が影響しています。国際関係では、新設の京都産業大・国際関係(250)が前年度の外国語(国際関係)との比較で激増したことや津田塾大・学芸(多文化・国際協力)の新設に加え、既存の津田塾大・学芸(国際関係)(133)などの大幅増加が影響しています。

理系では、理(112)、工(109)が増加しています。AIやIoTへの注目がさらに高まっていることで、情報科学、情報工の人気が上昇していることが要因ですが、その他の主要な専攻も増加が目立ち、全体として増加傾向が継続しています。一方で、農・水産(93)は減少が継続しています。主要な専攻で減少が目立ち、特に獣医学(81)は大幅減少しています。

メディカル系では薬(93)、医(97)、保健衛生(97)がやや減少しているのが特徴的です。職業直結のメディカル系の人気のダウンが見られ、保健衛生は系統全体の志願者数の半数以上を占める看護(95)の減少が系統全体の減少につながっています。

 主要私立22大学入試志願状況

表1 主要私立22大学一般選抜志願者数 2ヶ年比較

表1 主要私立22大学一般選抜志願者数

表1は、2019年度入試における主要私立22大学の志願者数です。すべての大学で確定値となりました。

2018年度入試では慶應義塾大、関西学院大を除いた20大学で増加し、22大学合計では4年連続増加でしたが、2019年度は(99)の微減でした。先にも述べたように、定員管理の厳格化による合格者数絞り込みで、厳しい入試が続いたことから、一般選抜では慎重になったことがうかがえ、増加傾向が一段落していると言えます。

大学別では、増加したのは駒澤大(109)、専修大(123)、中央大(105)、東京理科大(107)、東洋大(106)、京都産業大(109)、龍谷大(107)、関西大(101)、甲南大(116)の9大学に留まりました。

東洋大は、5年連続増加で志願者数が初めて12万人を上回りました。これは、前年度同様に新規実施の募集方式や試験日を1日増やした募集区分が多かったことが要因でした。

中央大の増加は、国際経営、国際情報の2学部新設が要因でしたが、既存の6学部のみでは減少しました。

慶應義塾大(97)、関西学院大(92)は2年連続減少しました。近畿大(99)は7年ぶりに減少しましたが、6年連続で全国最多の志願者数でした。また、立命館大(96)は6年ぶりに、青山学院大(96)、明治大(93)は5年ぶりに、学習院大(94)、日本大(88)、法政大(94)、早稲田大(95)、同志社大(92)は4年ぶりに、上智大(90)、立教大(96)は3年ぶりにいずれも減少しました。

ここまで述べたように大都市部の私立大入試は前年度と比較しても、慎重さが目立つ入試となっています。2020年度入試もこの傾向は継続しそうですが、新高3生のみなさんが、慎重になるあまり、志望校をランクダウンすることは決して得策ではありません。むしろ、学力の伸長が鈍り、安全校と思った大学の合格も怪しくなっていきます。

特に、いよいよ来春に入試を迎えることになる新高3生のみなさんは、気持ちも新たにやる気に満ちていることでしょう。今の気持ちを忘れずに、まずはしっかりとした第1志望大学を決めて、それをしっかりと目標として見据えて、日々の勉強に励んでください。みなさんがこれからの1年、最後まであきらめず、努力を続けていくことを期待しています。

(2019年4月1日掲載)