模試とは、各予備校や塾、企業などが実施する、入学試験(以下入試)本番を想定した試験のことです。小学生、中学生だけでなく資格試験を対象にした模試もありますが、この記事では、大学受験を控えた受験生に向けて、模試の有効な活用方法や、目的に合った模試の選び方などを、駿台模試を例にとって解説します。模試を受けるときのスケジュールの組み方や、結果の見方、復習の進め方についても説明していますので、ぜひ参考にしてください。
模試とはなにか? 言葉の意味と定義
模試とは「模擬試験」の略称で、その名のとおり入学試験(以下入試)本番を想定して行われる試験のことです。駿台予備学校をはじめとする大手予備校や、ベネッセコーポレーションなどの企業がそれぞれオリジナルの模試を実施しています。中学生を対象とした模試には、駿台の中3駿台全国模試などもあります。
最近では会場で受ける模試のほかに、ネットで受けられるオンライン模試・自宅模試なども登場しています。
模試を受ける意味とは? 基準となる偏差値の意味
模試を受けるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか? 模試の結果の基準となる「偏差値」の意味も交えて解説します。
偏差値とは?
模試の結果でよく耳にする偏差値とは、その試験の受験者全体の中で自分がどのあたりの位置にいるかを統計的に割り出した数値です。模試は受ける度に内容や難易度が変わるため、同じ60点を取ったとしても、その結果が優れているものなのか、単に難易度の低く受験者の大半が取れていたものなのかはわかりません。その点、偏差値は「平均点」と「点数のバラつき」を加味して相対的に算出するので、その得点がどの程度のレベルなのかを把握できます。
自分の立ち位置を知る
学校のテストで学年上位になったからといって、入試でも通用するとは限りません。なぜなら、入試は全国の生徒がライバルとなり、自分と同じレベルの生徒が大勢いるからです。そこで重要になるのが模試です。全国の学生が対象となる模試を受ければ、志望校に合格できる確率がどれくらいなのかを始め、自分の立ち位置が把握できるようになります。
自分の弱点を知る
個人成績表には、偏差値や科目別成績だけでなく、設問別の全国平均点との差なども掲載されています。自分の不得意な単元が目に見える形として表れるので、苦手分野の把握にも役立ちます。
模試の種類と目的に合った選び方
模試を主催する団体は複数あり、内容や特色もさまざまです。模試の種類やレベルについて解説し、それぞれの目的に合った形式の選び方を紹介します。
模試の種類は? 難しさやレベル感
模試の形式は「マーク式」と「記述式」の2種類に大別できます。
また、それぞれ模試の目的に合わせて大きく3つに分類されます。
共通テスト模試
マーク式はその名のとおり、全設問がマーク式の模試のことです。大学入学共通テストに準拠したものがほとんどであることから、「共通テスト模試」とも呼ばれています。
例:駿台atama+共通テスト模試
記述模試
もう一方の「記述式」は、文章を書いて答える設問が多くを占める模試です。難関国公立大学、私立大学や医学部医学科対策として受験する学生も多いため、マーク式よりも難易度やレベルが高いとされています。
例:駿台全国模試、駿台・ベネッセ記述模試
大学別模試(冠模試)
特定の難関大学受験者向けに実施される模試を、「冠模試」と呼ぶこともあります。各大学の出題傾向に沿った試験になっています。
例:東大入試実戦模試、京大入試実戦模試
同じ予備校・企業が主催している模試でも、内容によって難しさが異なります。一般的に、難関国公立大学、私立大学対策のための模試や冠模試は、ハイレベルな内容になることが多いようです。
- 参照:駿台
今の実力、基礎力を見る
高校1・2年生向けに今現在の自分の学力レベルをチェックする模試もあります。駿台の模試の中では、「駿台atama+学力判定テスト」が、教科書に沿った基礎的な内容が出題されるため、自分の基礎力をチェックするのに最適です。年6回開催されるので、定期的に受験して、自分の実力を把握する手段として活用するといいでしょう。
小論文を実施する学校を受験予定なら、自分がどれくらい書けるのかをチェックするために、あらかじめ小論文対策模試を受けるのも対策の1つです。
- 参照:駿台 駿台模試
予行演習 より本番に近い形で受ける
受験直前は、より本番に近い形の模試で入試の予行演習を行うといいでしょう。
駿台模試を例に挙げると、大学入学共通テストに準拠した「駿台atama+プレ共通テスト」、「駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試」、大学入学共通テストに加えて私立大のマーク式試験にも対応した「駿台atama+共通テスト模試」などがあります。
また、より確度の高い判定が知りたい場合は、ドッキング判定が行われる模試を受けるといいでしょう。ドッキング判定とは、主催元が同じ共通テスト模試と記述式模試を受けることで、両者の結果から総合的に判定を導き出すものです。実際の国公立大学の入試と同様に、大学入学共通テスト模試と記述式模試(二次試験対策)の2つの結果を総合して判定するので、精度の高い判定結果が得られやすくなっています。
志望校別模試は受けるべき?
志望大学、高校が明確に決まっている場合は、各志望校の出題傾向に合わせた冠模試(志望校別模試)がおすすめです。志望校別模試は、個別試験の特徴を押さえた作りになっているので、出題傾向に慣れるためにも受けておくべきでしょう。同じ志望校の受験者が集うこともあり、自ずと本番の状況と似た状況での受験が可能になるのもメリットの1つです。
- 参照:駿台 駿台模試
高校3年間で受けられる模試の種類は?スケジュールの組み立て方
実際に模試を受ける前に、どの時期にどんな模試が開催されているのか確認しておきましょう。
高校1・2年生を対象とした模試は、学習指導要領に準拠した基礎的な内容を出題するものが多く、授業の理解度を把握するのに有用です。基礎を固めるには、日頃から自分の学力や苦手分野をチェックすることが重要なので、定期的な受験をおすすめします。
高校3年生・高卒生を対象とした模試になると、大学入学共通テストや各大学の前期入試に準拠したものがほとんどになります。
なかには出題範囲が最初から公表されている模試があったり、受験教科を選択できたりする模試もあります。志望校の必要教科に合わせて、受験する模試や教科を調整するといいでしょう。
開催される模試のすべてを受験しなければならないということではありません。模試は受けること自体が目的ではなく、勉強したことが定着しているか、実力がついているかを確認するために受けるものです。
どの模試を受験するかあらかじめ計画をたて、模試の受験日を中間目標として、学習スケジュールを立てていくのも一つの方法です。
試験当日の心構え
模試の意義は、志望校判定や学力チェックだけではありません。入試本番に向けて、試験形式に慣れるためにも重要な役割を果たします。
最初はまず試験形式・会場の空気に慣れる
入試本番で緊張しないためにも、知らない試験会場で、知らない受験者とともに試験を受ける体験は貴重です。最初のうちは、学校の定期テストとは異なる試験形式や、会場の空気に慣れることを意識しましょう。
直前は本番のつもりで受験する
入試直前に受ける模試は、これまで努力してきた成果を最終確認する場でもあります。本番のつもりで挑みましょう。
その結果が思ったより力が発揮できなかった、不安な点が出てきたら、「本番でなくて良かった!」と頭を切り替えて、同じ問題が出たら必ず正解するつもりで復習し、入試本番に活かしましょう。
模試の結果の見方、復習の進め方
模試で重要なのは、結果を受けて復習することです。苦手分野を把握し、つまずいたポイントを振り返ることが、学力向上に繋がります。駿台模試を例に挙げて、模試の結果の見方と、復習の進め方を解説します。
駿台模試結果の見方
駿台模試の個人成績表には、復習すべき分野が確認できる「科目別偏差値」や「設問別成績」が掲載されています。
科目別偏差値では、受験科目の本人偏差値と平均偏差値がレーダーチャートで表されます。本人偏差値が平均偏差値よりも大きく下回っている科目を重点的に復習するといいでしょう。
設問別成績では、設問ごとに全国平均点との差が棒グラフで表示されるので、より重点的に復習すべき単元がひと目で分かるようになっています。
模試の内容は必ず復習しておく
模試の結果から自分の弱点が分析できたら、苦手を克服するためにも必ず復習をしましょう。
復習のタイミングは、以下の3回が理想です。
当日、自己採点をした時
模試当日は全体を解き直し、正解した中にも理解できていない問題がなかったかチェック。
模試を受けた1週間後
模試が終わった1週間後に、正解できなかった問題や、理解できなかった問題を解き直します。これらの問題をノートにまとめて復習ノートを作っておくと、入試直前に自分の苦手分野を効率よく見返せるので便利です。
入試直前
入試本番で、模試と同じ問題が出たら儲けものです。「二度目は必ず正解する」という気概を持って、復習に取り組みましょう。
こちらもチェック 模試の復習ノートの作り方
一喜一憂せず、次へ活かす。仮に模試の結果が悪くても、落ち込む必要はありません。なぜなら、模試は入試本番に後悔しないための予行演習の場であり、苦手分野を見つけるための手段だからです。重要なのは結果ではなく、結果から自分の弱点を分析し、苦手克服に繋げること。点数が伸び悩んでいる場合は、むしろ成績を伸ばすチャンスととらえ、復習にまい進しましょう。
ただ漫然と勉強するのではなく、定期的に模試を受けることで、弱点が見つかったり、自信がついたりします。
計画的に模試を受けましょう。