執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
大学受験における英語の重要性は、文理志望問わず、年々高くなってきています。社会人になってからも必要になってくる英語は、学習法からしっかりと身につけたいものです。苦手という人は実はやり方がわかっていないだけかも。正しいやり方を学んで、英語を得意にしていきましょう。
英語は今や小学生からみんなが学び、中学生・高校生の学習を通して基本的な四技能(Reading・Listening・Writing・Speaking)を習得します。そこで培った英語力は、社会人になってからも大いに役立ちます。異文化理解や国際的な視野を養い、グローバルなコミュニケーションに英語は欠かせません。また情報収集のためにも必須です。インターネット上の情報の半数以上は英語と言われています。英語がわかれば、世界中の情報にアクセスすることができるのです。
そして大学受験で英語が重要であることは言うまでもありません。外部検定試験のスコアの利用も本格的に広がってきました。配点も大きい場合が多く、英語力が入試の合否をわけることも少なくありません。早い段階で英語に触れ、楽しみながら学習を続けることが、入試だけではなく、みなさんの将来を長期的に見て大きな利点になります。
学習の基本は「単語→英文法→長文読解」の順に学習することです。単語がわからなければ文法は理解できないですし、文法がわからなければ長文は理解できないからです。それぞれの学習の基本を見ていきましょう。
英単語学習は「習慣」です。試験前に詰め込んでいては、結局何も身につかないことになりかねません。以下3つの習慣を身につけるのがよいでしょう。
1つ目は「音声で学ぶ習慣」です。
英語の学習理論でも、単語を音声で学ぶことで、学習効率が飛躍的に向上すると言われています。知らない単語を学ぶときは、電子辞書やオンラインで発音を確認し、音と一緒に単語を覚えるようにしましょう。
2つ目は「日々コツコツ覚える習慣」です。
学校や塾の小テストに合わせて、「毎日3つ」など、自分のペースで単語学習を積み上げてください。おすすめは単語学習をルーティン化してしまうことです。例えばお風呂に入る前に3つ覚えて、お風呂上りにテストするなど、日々の習慣に組み込むと学習が継続しやすいです。
3つ目は「調べる習慣」です。
文法や長文の学習、他にも普段の生活のなかで知らない単語や表現に出会うことがあるはずです。その際に、すぐに調べるようにしましょう。授業中であれば電子辞書、普段の生活のなかであればスマホで調べるのがやりやすいです。慣れてくれば、10秒程度で意味と発音を調べることができます。
英文法の理解は英語学習に欠かせません。ある程度のレベルまでは感覚的に理解することもできますが、難易度が上がるにつれて、正しい文法の理解が必須になります。まずは網羅的に学習し、その後は長文や英作文の学習のなかで、不安のある文法を都度復習するのがよいでしょう。
そのために、自分に合った参考書を見つけるのがおすすめです。学校や塾で配布される参考書でも構いませんし、自分にあったものが見つかれば、それでも構いません。文法の学習では全体像をまず理解することが、Readingのみならず、Writing・Listening・Speakingすべての基礎になります。
英文法は学校や塾の授業で学ぶことも多いと思います。その場合は、授業を聞くだけではなく、例文を覚えて暗唱したり、問題集を問いてみたりするなど、主体的に自分でアウトプットすることを意識しましょう。学んだ知識と実際に使う場面を結びつけることで、文法が「使える知識」として定着しやすくなります。
長文読解は英語の「総合力」が問われます。単語や文法などの「基礎力」に加え、内容理解や情報処理などの「応用力」も要求されるのです。多くの長文を読む練習を通して、「応用力」を身につけながら、必要に応じて「基礎力」を見直すといった複合的な学習が求められます。
「応用力」を伸ばすのに有効なのが速読です。1つ1つのセンテンスを丁寧に精読するのではなく、ある程度負荷のかかる形で速読し、短い時間で文章の趣旨を理解するようにトレーニングを積んでください。筋肉トレーニングと同様で、自分に負荷をかけて速読することで、自然と読むスピードは向上していきます。
速度の効果はスピード向上だけではありません。速読をすることで、自分の「基礎力」の弱点をあぶりだすことが可能になります。速読をするためには、単語の意味を一瞬で想起したり、文構造を感覚的につかむ必要が出てきます。もし単語の意味がすぐに思い出せなかったり、文構造が理解できなかったりするときは、そこが自分の弱点です。もう一度単語帳や参考書に立ち返り、「速読でも理解できる」レベルまで丁寧に復習することを繰り返してください。
ノートや参考書は日々の学習に欠かすことができません。毎日使うものだからこそ、その使い方は学習効率に大きく影響します。以下のアドバイスをもとに、自分に合ったやり方を身につけましょう。
授業中のノートの取り方の正解は、「復習しやすいノート」です。復習するときに重要事項を思い出すことができるノートを目指しましょう。
例えばこの図のように、授業中の先生の説明をテスト形式にしてページの右にまとめるのがおすすめです。この問題を順に解くことで、自然と授業内容を復習することができます。このようにテストを右側にまとめるものを、「テスト化ノート」と呼びます。
「テスト化ノート」を作ることで、おのずと授業への集中力も増すというメリットもあります。上手にテスト化ノートを作成するためには、先生の口頭説明にも注意をする必要があります。もちろん授業中にここまでまとめるのは簡単ではありませんが、十分に取り組む価値のあるやり方なのでぜひ挑戦してみてください。
参考書選びで重要なのは、自分に適したものを選ぶことです。実際に教材を手に取り、数ページ読んで、難易度を確かめましょう。参考書であれば、「読めば8割理解できるもの」、問題集であれば「5割以上解けそうなもの」が1つの目安になります。自分の目的に適した教材か判断できないときは、先生に相談してみるのも有効な手段です。
また、自分の「好み」も学習効率に直結する重要な要素です。特に、日常的に利用する単語帳などの選定には、携帯性や使用頻度を考慮する必要があります。実際に手に取り、自分の好みに合うかを確認することは、長期的な学習継続のために不可欠です。相性のよい教材は、使用者が自然と手に取りたくなるような魅力を持ち、それが学習効率に直結します。例えば容易にカバンに収納できるサイズ感など、利用シーンを想定して選択するのもよいでしょう。
学習者が直感的に避けたいと感じる教材であれば、たとえ一般的な評価が高くとも避けた方がよいかもしれません。英語には多様な教材が存在するため、自分にとって最適な選択肢を見つけ出すことが可能です。重要なのは、自分が自発的に何度も手に取りたくなるような、使用感に優れた参考書を選ぶことです。
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英語学習には、「リスニング」「リーディング」「ライティング」「スピーキング」の4つの技能習得があります。ひとくちに英語が得意、不得意と言うだけでなく、各技能の中で得意、不得意が分かれる場合もあります。
苦手分野があれば、勉強の仕方を見直してみましょう。
英語学習に「音」は欠かせません。リスニング力を向上させるためには、普段の学習に、音読の習慣を取り入れることが必要です。音読によって、英語のリズムやイントネーションを体で覚えることができます。詳しい音読のやり方は下の「リーディング」の学習法に書きますので、それも参考にしてください。
また、リスニング教材を使って日常的に英語に触れることも重要です。初めは理解できなくても、繰り返し聞くことで徐々に耳が慣れてきます。英語のニュースやポッドキャスト、英語で話される映画やドラマを視聴するのもよい方法です。特に、興味のある分野の内容を選ぶことで、楽しみながらリスニング力を養うことができます。また、リスニングの際は、聞き取れた単語やフレーズをノートに記録し、後で確認することも有効です。定期的にリスニングの練習を行い、徐々に聞き取りのスピードや内容の理解度を高めていきましょう。
リーディングは訓練すれば伸びやすいという意味で、英語試験で得点源になりやすい分野です。リーディング力を伸ばすためには、まず基本的な語彙・文法学習が欠かせません。まずは単語や熟語、文法の学習を丁寧に進めましょう。
普段の学習をする上で、音読を取り入れることがリーディング力向上につながります。音読のやり方は3つあります。自分のレベルに合ったものを取り入れるようにしましょう。
1.リピーティング
音源を1文ごとに一時停止し、音声に倣って音読をすることです。1回目はテキストを見ながら1文ごとに音読します。正しい発音とリズムを身につけることが目的です。2回目以降はテキストを見ずに取り組めるとよいでしょう。
2.オーバーラッピング
テキストを見ながら、音源と同じタイミングで音読をすることです。リピーティングを繰り返した英文で、テキストを見ながら取り組めるとよいでしょう。英文を読むスピードが遅い生徒は、一文ごとに後ろから意味を整理しながら読解することが多くあります(これを「返り読み」と呼びます)。オーバーラッピングは強制的にネイティブの音声についていこうとするため、英文の語順通りに内容を理解する力をつけることができます。同じ英文を繰り返しオーバーラッピングすることで音声化・検索のプロセスを自動化することができ、英文を読むスピードを上げることができます。
3.シャドーイング
音源が流れたら、そのすぐ後に続いて音読をすることです。シャドーイングは、テキストを見ずに実施します。英文を聞くことと英文を話すことの両面に集中する必要があるため、英語を聞きながら情報を整理する必要があるリスニング力や、話しながら次に話す英文を組み立てるスピーキング力を高めることができます。
英作文・ライティングでは、伝えたい内容を簡潔にまとめ、わかりやすい英語で表現することが求められます。求められるのは「適切な訳」であり、比喩などのテクニックは求められていないことに注意が必要です。ポイントは伝えるべき内容の本質を明確にし、平易な単語でそれを表現することです。
例えば、
「技術の進歩は、私たちがデジタルコミュニケーションをどのように認識するかについてのパラダイムシフトを引き起こした。」
という和文を英訳することを考えてみましょう。
一般的には、
Technological advancements have led to a paradigm shift in our perception of digital communication.
などと訳せそうです。しかし「paradigm shift」「perception」などの単語を用いるのは簡単なことではありません。
元の和文の「認識のパラダイムシフト」を「見方の変化」と言い換えることで、以下のように簡単な単語・表現で英作文を書くことができます。
Technology improvements have completely changed how we see digital communication.
このように、英作文では「まず日本語で本質をとらえる」ことを意識することが大切です。
スピーキングで求められる「素早く英文を作る」能力を伸ばすには、短時間でアウトプットするトレーニングが有効です。まずは日常生活で感じたことや、街中の看板に書いてあることなどを英訳することから始めましょう。
「今日は寒くなりそうだからコートを着よう」(It’ll be cold today, so I should wear a coat.)
「月額2,980円」(You have to pay only 2980 yen per a month.)
のように、ちょっとした日本語を素早く英語にしてみるのです。その場で小さな声で発音してもいいですし、難しければ心の中で英訳するだけで十分です。
加えて、短時間で英語の日記を書くトレーニングもおすすめです。「5分」などタイマーで計って短時間で取り組むのが継続のコツです。書いた文章を声に出して読むことで、スピーキングのスキルは更に向上します。もし時間に余裕があれば、書いた英文を、目を瞑って思い出しながら読んでみましょう。書いた英文と完全に一致していなくても構いません。むしろ、途中でちょっとしたアドリブなどを加えることで、臨機応変なスピーキング力が身につきます。
受験に通じる英語力の基礎は普段の学校の英語学習から。定期テストの高得点を目指し、学習法を見直してみましょう。
英語コミュニケーションのテストでは、まずは教科書に載っている英単語や英熟語を暗記することが必須です。直前にすべてを覚えるのは負担が大きく、暗記効率の観点からもおすすめできません。普段の学習の予習・復習に語彙学習を組み込むことが大切です。
また、多くの場合授業で扱う長文やリスニングの文章がそのまま出題されます。文章を徹底的に理解することが高得点につながります。いったん文章が理解できたら音読を繰り返し、文章理解を深めましょう。長文の音読は「リード&ルックアップ」が最適です。まずは一文英文を見ながら音読(リード)し、直後に今後は英文を見ない(ルックアップ)で英文を暗唱してみましょう。
論理表現のテストでは身につくまで繰り返しトレーニングをすることが重要です。一度覚えるだけではなく、何度も繰り返すことで記憶が定着し、英作文などへの応用力も培われます。
対策としては、問題集の反復演習が必須です。学校から配布されているものがあればそれを使用しましょう。特に指定されたものがなければ、カリキュラムに対応したものを1冊準備することをおすすめします。問題集は最低2周を目安に取り組みましょう。1回で完璧に理解できたもの以外は、何回も繰り返し取り組むようにしてください。
問題の形式によっては、問題部分(下線部やカッコ)のみで解けることもあります。余力がある人は問題を解くだけではなく、文全体を理解するように努めましょう。知らない単語や表現を覚えたり、既出の単語を復習するよい機会になります。
英語の試験は出題形式が様々。傾向を知り、日々対策を進めましょう。高校2年生以下も、先に傾向を知ることが、普段の学習の質向上につながります。
共通テストのリーディングはスピード勝負です。語数が多く、3年連続で6000語を超えています。リーディングの試験の80分のうち、問題を解く時間を除くと、長文を読むのに充てられる時間は40分ほどです。つまり40分で6000語、1分当たり150語を読む速読力がないと、時間内に解き終えることができません。
また「マークシート方式」であることにも注意が必要です。大問ごとに「マークずれ」がないかを確認する習慣をつけましょう。不慣れだとマークすること自体に少し時間がかかってしまうので、見直しのタイミングも含めて練習を重ねておく必要があります。
それでは共通テストの傾向も踏まえ、「速読」「パラフレーズ」「設問先読み」の3つのコツを習得する必要があります。順に攻略のコツをみていきましょう。
(例)You are studying / in the US, / and as an afternoon activity / you need to choose / one of two performances / to go and see.
(英文は共通テスト(2024年1月14日実施)から抜粋)
例えば2022年の共通テストでは、本文中に「receive free one-day zoo passes」とある内容が、設問では「get free entry to the zoo for a day」と言い換えられています。
パラフレーズを見抜くためには単語力だけではなく、文法力が必要です。共通テストのリーディングの試験は基本的には長文に特化した試験ですが、このように細部で語彙や文法の力が問われることにも注意が必要です。
共通テストについては、以下の記事も参考にしてください。
「共通テストとは?日程や科目、2024年度予測も駿台がわかりやすく解説」
模試を受験する目的は、客観的に自分の力を把握すること、苦手を発見することにあります。全国統一模試などの受験者が多い模試で算出される偏差値は、受験校を選ぶ際の重要な指標です。加えて、模試は2-3ヵ月おきに実施されます。苦手な単元や出題形式に特化した問題集を1冊仕上げるなど、2-3ヵ月の中期的なスパンで苦手を克服しましょう。
リスニング・長文が苦手な人は、対策が後回しになりがちです。これらは短期的な取り組みによる改善が難しく、効果が実感しにくいのも要因のひとつです。習慣的に英語を聞いたり、長文を読んだりするなど、次々回以降の模試も見据えて、長期的な視点で改善を進めましょう。
また、「東大入試実戦模試」などの志望校大学別模試では、受験者のレベルが絞られ、本番と同じ形式の問題が出題されるので、全国統一模試よりも精緻な結果を得ることができます。受験前には過去問を見て、出題形式を把握しておきましょう。
英語の学習では、模試を利用して弱点を克服することが重要です。模試の結果から苦手分野を明らかにし、改善して次の模試を受験する…というサイクルを作りましょう。特に文法に弱点が見つかったときは、最優先で復習するようにしてください。文法問題は模試が返却される前でも復習可能です。模試受験直後の1習慣を「文法復習期間」とし、計画的に復習しましょう。参考書を読み、問題集を解くのは基本的な復習のやり方になりますが、やり方がわからないときは、先生に相談するようにしましょう。
文法は短期集中で復習すべきなのに対し、長文やリスニングの改善には時間がかかります。次の模試までに数ヶ月をかけて、じっくりと力を蓄えていきましょう。模試の結果をきっかけに、「毎週末実践的な長文問題集に取り組む」「通学中に毎日15分リスニングをする」など、よい習慣をつくることを目指してください。
外部試験は、運営元によって出題形式が大きく異なるのが特徴です。たとえ十分な実力があったとしても、形式に不慣れでは不合格になることも多々あります。その試験専用の問題集や過去問を用いてたくさん問題を解き、出題形式に慣れることが必要です。また、時間配分を考え、自分なりの戦略を決めてから試験に臨みましょう。
高校生が特に対策すべきは英作文です。普段の授業で十分に扱われていないことも多く、解答のコツを1から学ぶ必要があることもあるからです。英語が得意な人も、英作文は必ず先生に添削してもらってください。
外部試験で高得点を取れば、個別試験で英語が免除されたり、得点が加算されたりする大学もあります。(志望大学にもよりますが、CEFRのB2レベル以上が高得点の目安です)大学入試は基本的に受験のチャンスが1回ですが、外部試験は複数回受けられるのがメリットです。丁寧に準備をして納得のいく点数が取れるまで繰り返し受験してください。
高校生の英語学習目標を、学年別にみていきます。
高校一年生の目標は基礎固めです。特に予習の習慣化を目指しましょう。特に長文の学習は先に自分で読むことで、「初見力」を身につけることができます。学校の「英語コミュニケーション」の授業などで、ぜひ予習をするようにしてください。
まずは長文の予習のやり方です。授業の前に不明単語を調べたり、長文を読んだりして授業を受けることで、授業を有効活用することができます。不明単語はリスト化することで復習にも取り組みやすくなります。
授業の前日に長文を読み、全体像をあらかじめつかんでから授業に臨んでください。うまく読み取れない箇所には下線や「?」をつけて授業を受けましょう。もし余裕があれば先に書いた音読法を試すとより効果的です。
次に文法の授業の予習のやり方です。高校範囲は中学で習った内容に深く関連するものばかりです。中学範囲を復習してから授業に臨むことが、文法の基礎を固めることにつながります。例えば高校範囲の「関係副詞」の範囲の予習では、中学範囲の「関係代名詞」を復習するのがよいでしょう。中学生のときに使用していた参考書や問題集を用いるのもよいですし、復習用に、網羅的な参考書を1冊購入するのもおすすめです。
高校3年生になると受験に向けた学習が本格化します。高校2年生までメインで進めていた英数国の学習に加え、理社の学習に多くの時間を割く必要が出てきます。
そのためにも、英語は高2のうちに志望校を意識した実戦的な学習を開始すべきです。高校2年生の前半には基礎固めを終わらせ、後半からは過去問や志望校の傾向に合わせた対策を開始しましょう。
単語・熟語の基礎固めは、それぞれ問題集に3周取り組むのが目安です。1周目でひとつの意味、2周目で複数の意味を覚え、3周目に単語を含むフレーズを覚えましょう。1回で完璧にするのではなく、繰り返し学習することで語彙知識を少しずつ広げていくイメージです。複数回繰り返し学習することで、単語学習で覚えたことを長文読解で使えたりと、その単語を多角的に学ぶ機会を増やすことができます。
文法はただ解けるだけではなく、その答えになる理由を説明できることが大切です。解説を読み込み、自分で解説できるまで理解を深めましょう。このように解説できるレベルまで深く理解することが、英作文やスピーキングの力向上にも直結します。
長文読解は「精読→長文演習」の順で取り組むのが鉄則です。短い英文が収録された和訳用の問題集で精読=構造分析の方法を習得し、その後長文問題集で様々な問題に触れましょう。和訳は1冊を丁寧に仕上げ、長文演習は基礎レベル・標準レベルを1冊ずつ仕上げれば十分です。
長文問題集には音源がついていることがほとんどです。答え合わせや復習の際にオーバーラッピングやシャドーイングをおこなうことで、リスニング力も伸ばしましょう。
高校3年生は英語の仕上げの時期です。前にも書いたように、高校3年生は2年生までと異なり、英語に割くことができる時間が減ります。それまでの蓄積をベースに、効率よく実戦的な力をつけることを意識しましょう。
とはいえ、まだ基礎が十分でない人は夏休み前が最後の基礎確立の時期です。やるべきことを整理し、計画的に夏休み前に復習を終わらせましょう。復習にも可能な限り実戦的な要素を取り入れることを意識します。例えば、単元別に並んでいる問題集ではなく、ランダムに配列された問題集を選ぶのがよいでしょう。単元別に並んだ問題集でも、解く順序を工夫することで、より実戦を意識した取り組みにすることができます。
文法の復習には「センター試験の過去問の大問2」を活用します。15分の制限時間で85%以上の正答率があれば、文法の基礎力は身についたと判断できます。
夏休みからはいよいよ実戦です。まずは過去問を1年分解き、傾向を把握しましょう。すべての問題に取り組むことで、自分の弱点を明確にすることが大切です。正確に苦手を把握できれば、秋以降の学習でやるべきことがおのずと明らかになるはずです。
秋からは過去問演習に取り組みます。英語の過去問対策は時間配分が命です。まずはカウントアップで時間を計り、自分の現状を確認します。多くの場合、時間が不足するはずです。その結果を踏まえ、大問ごとの目標時間を決め、時間内に解ききれるように練習を重ねます。解く順番や、必要に応じて「飛ばす」ことも考慮して自分なりの戦略を作り上げていきましょう。
基本的には、リスニングは必要な人のみ取り組めばOKです。しかし、リスニングがあまり出題されない私立専願の人も、リスニングの要素を学習から完全に排除するのはおすすめできません。リスニングは英語全体の学力を向上させるために必要だからです。傾向を意識しつつも、四技能にバランスよく取り組むことが、最後まで英語力を向上させるコツです。
ここからは、英語の得意・苦手に応じた勉強のやり方を解説します。
英語が得意な人や、語学系の大学に進学するなど、英語を大学入学後も重点的に学びたい人は、高校生のうちから「1つ上のレベル」を意識した取り組みに挑戦してみましょう。
まずは日々の学習から英英辞典を活用することから始めてみましょう。英語を英語のままで理解することで、ネイティブに近い表現を探究するのに役立ちます。
例えば、「議論する」と日本語で言っても、その訳語には「argue」「discuss」など異なる単語が考えられます。これを英英辞典で調べてみましょう。
argue:to state, giving clear reasons, that something is true, should be done etc
discuss:to talk about something with another person or a group in order to exchange ideas or decide something
このように、同じ「議論する」でもニュアンスの違いが感じられますね。
他にも普段の生活に英語を積極的に取り入れてみましょう。英語のニュースを読んだり聞いたりするのもよいでしょう。部活動などの課外活動で英語を使用するものがあれば積極的に参加してみましょう。可能であればですが、留学するのもよい選択肢です。百聞は一見に如かず、興味がある人はぜひ検討してみましょう。
それでは、英語が苦手な人はどのように学習を進めればよいでしょうか。まず英語は「語学」であり、努力すればある程度まで成果がでやすい教科という特性を知っておきましょう。適切な努力を積み上げれば成果が出やすいということですし、逆に言えば、積み上がなければ成績が伸びづらい特性があるということです。
苦手意識の一番多い原因は「単語を知らない」ことです。英語が苦手な人は、まず自分の単語学習の習慣を見直すのがよいでしょう。例えば、学校や塾で毎週英単語の小テストがあれば、それを目標に日々学習する習慣をつけることがとても大切です。小テストでは8割を目標に、毎日コツコツ覚える習慣をつけてください。
そのために、効果的な暗記法を習得することが重要です。単語帳をただ眺めるのではなく、「覚えて、セルフテストする」ことで効率よく覚えることが可能になります。
例えば次のような「返し縫い記憶法」を試してみましょう。
この記憶法は、「覚えて、少し時間をおいてテストする」のがポイントです。手順は以下のようになりますので、ぜひ取り入れてみてください。
① 覚えるべき単語を2分程度で覚えられるブロックに分ける
② 1つ目のブロックを2分で覚える
③ 2つ目のブロックを2分で覚える
④ 1つ目のブロックを1分でテストする
⑤ 3つ目のブロックを2分で覚える
⑥ 2つ目のブロックを1分でテストする
単語の学習法の次に取り組んでもらいたいのが、例文暗唱です。単語を覚えるのと同様に、基本的な短い英文を覚えることが、英語の応用力を伸ばすことに直結します。教科書の例文や単語帳の例文で構いませんし、『英文法基礎10題ドリル』(駿台文庫)など、適切な教材を用いるのもよいでしょう。先に書いた「リード&ルックアップ」の要領で例文を覚えてみてください。
英語は大学受験のためだけでなく、これからの私たちの生活に必要になってくる知識になります。また苦手意識がある人の場合などはアプローチの仕方を変えて、少しでも楽しく学びたいものです。
実は、直接学習に関係のない場面で英語に触れることが、実は英語力を伸ばすことにつながることは珍しくありません。
聞きながら歌詞を口ずさむのは、「オーバーラッピング」音読と酷似しています。知らず知らずのうちに頻出の表現を覚えるのに役立っているはずです。
この例のように、自分の興味のあるものを学びの入口にするのはとても優れたやり方です。自分の知っている知識が、学びに生かせるからです。例えば映画が好きな人は、これまで日本語字幕で見ていた映画を英語字幕で見るのがよいでしょう。ストーリーを知っているので、セリフやアクセント、言葉のもつ微妙なニュアンスの理解につながります。苦手な人が取り掛かりやすく、大人が初心者レベルから学び直しをしたい時にも使える方法です。余裕があれば、俳優になりきってセリフを声に出しながら、「オーバーラッピング」をするのも面白いです。
例えば、以下のようなフレーズを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
大いなる力には、大いなる責任が伴う-With great power comes great responsibility.
(ある映画で繰り返し語られるセリフ)
文頭にwith great power(前置詞句)を持ってくることで、「大いなる力を持つこと」を強調する表現になっています。応用が効きそうな表現で、覚えておくと役に立ちそうですね。
英語学習とスキマ時間の活用は相性が良く、積極的に自分なりのやり方を確立させたいものです。リスニング学習の習慣化にも効果的です。通学時間が長い人は、ぜひこれを機会に考えてみてください。
まず取り組んでもらいたいのが単語学習です。単語テストアプリを用いるとスマホのみで学習を効率よく進めることができます。例えば電車のなかであれば、移動中に単語を覚え、停車中にテストする、など電車の移動のリズムを使った学習が考えられます。ほとんどの単語帳には音声教材もついていますので、ぜひ活用してみましょう。
スキマ時間は長文の学習にも有効です。英語学習アプリは幅広いラインナップが揃っています。自分のレベルにあった難易度・語数の英語記事を自動的に推薦してくれるものや、音声の再生に対応したものなど、幅広いラインナップから自分に合ったものを選んでみましょう。
新たにアプリを活用しなくとも、普段の学習の復習をするだけでも十分です。多くの英語長文教材には二次元コード音源がついています。授業で習った日に、帰りの電車のなかで音声を聴けば、授業の復習としてもベストタイミングですし、リスニング力向上にも役立ち一石二鳥です。
生活のなかに英語学習を取り込むという観点から、時事ニュースを聞くことにも挑戦してみましょう。英語学習者用の英語ニュースをネット上で視聴することができます。これらのコンテンツは速度調節ができますので、聞き取れないときは0.5倍速などから始め、徐々にスピードを上げていくのがよいでしょう。
時間の許す範囲で繰り返し聴くことも効果的です。同じコンテンツを1度だけでなく、2度・3度と聞くうちに耳が慣れて1.0倍速で聞けるようになります。
時間がないときは、移動中のスキマ時間を活用したり、部屋のなかで音声を流す「ながら聞き」でも一定の効果があります。リスニング力向上には、「シャワーを浴びるように」英語に触れるのが近道です。
留学をすることは英語力を伸ばす最高の手段になりえます。国内でも十分学習することはできますが、質・量の両面でやはり留学に匹敵する学習をするのは困難です。まず国内ではそもそも日常会話が日本語です。街中の看板、TVや周囲から聞こえるネイティブの雑談など、すべてが英語の環境と比較すると、英語に触れる量に限界があるのは明らかです。また国内ではどうしても日本語で思考することになります。一方で留学では日本語を介して考える余裕がなくなることで、強制的に「英語で考える」思考が身につきます。
「コミュニケーションの総合力」が向上することも留学の大きなメリットです。留学先では多くの英会話の目的は「伝える」ことであり、「英語を話すこと」ではありません。逆説的ですが、こういった実戦的な経験を通し、「上手に話さなくてはならない」というメンタルブロックを破壊し、スピーキング・リスニング力の向上だけに留まらず、表情やボディーランゲージを含めた、総合的なコミュニケーション力を伸ばすことにつながるでしょう。
学習には積極的に動画を取り入れましょう。YouTubeなどの動画プラットフォームには、英語教育に特化したチャンネルが数多くあり、受験・資格試験・ビジネスなど様々なニーズに応えるコンテンツが提供されています。また動画のトーンもフォーマルなものからコメディ風なものまで様々で、自分に適したコンテンツを選ぶことができます。
スキマ時間の有効活用の観点からも、動画学習は非常に魅力的です。短尺の動画は移動のスキマ時間を学習時間にすることができるでしょう。ニーズに合わせて字幕を出したり、速度を変化させたりできるのも動画コンテンツのメリットです。また多くの動画コンテンツは「音だけ再生」でも十分学ぶことができます。散歩中など、映像を見ることができないときも、積極的に活用してみましょう。
これまで見てきた通り、言語学習はとにかく継続が命です。毎日コツコツ積み上げることが成績向上につながります。志望校合格に向けた学習も同じです。入試問題の特徴を知り、適切な努力を積み重ねることが、合格につながります。
英語の学習法に悩んだら、駿台予備学校にご相談ください。しっかりと目標を見据え、一人ひとりに適切な学習プランを提案します。
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「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。
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