受験科目の中でも、「勉強のやり方がわかりにくい」とよく言われているのが小論文です。試験ごとに問題文が異なるため、暗記も意味をなさず、過去問を解いても「正しい解答」があるわけではなく、自己採点ができません。この記事では、そんな小論文対策として、書くときの基本的な考え方を解説。得点を取るためのテクニックも紹介するので、参考にしてください。
1.小論文は何かを理解する
そもそも「小論文」とは、どのようなものなのでしょうか?
小論文は、与えられたテーマに対する自分の意見を、論理的な文章にまとめるものです。美しい文章である必要はありませんが、論理性は重視されます。
設問をしっかりと読んでまとめる
小論文は、論述するための文章力に加え、設問の意図を理解する読解力も必要になります。問題文の内容からズレた回答にならないように、設問の要点をしっかり読み取りましょう。
自分の考えを、論理的、客観的に書く
小論文は、自分の意見を論理的、客観的に書くという意味で、普通の作文とは少し異なります。経験したことや、感じたことを書く作文と違い、小論文は自分の意見を、根拠とともに論ずるものです。論点がわかりやすいように、客観的な文章にまとめましょう。
2.大学入試における評価基準を意識する
大学入試における小論文は、得点を意識しつつ自分の考えや意見を論理的・客観的にまとめることが大切です。
- 設問の条件を満たしているか?
- 構成は論理的か
- 意見は明確か
- 文字数は適切か
といった、小論文の採点ポイントを押さえないと、得点につながりません。
3.小論文の出題形式を知る
小論文の出題形式は、各大学、学部によって様々ですが、いくつかのパターンがあります。そのうちよく見られるものをご紹介します。
テーマ(提示)型
テーマ(提示)型とは、簡潔なテーマに対する自分の考えを小論文にまとめるものです。設問は2~3行でシンプルなものが多いのですが、テーマそのものが端的な設問になっていることが多いので、それに対して意見が明確になるように回答します。
例:「人口知能(AI)が社会に与える影響について、自身の考えを述べなさい。」
課題文型
課題文型では、300~2000字程度の文章または課題文を読み、その要約や、課題文に対する意見をまとめるよう求められます。課題文の主題を読み取る読解力と、それに対して意見を展開する論理性の両方が求められます。
例:「以下の文章を読み、これからの時代に求められる教師像について、意見を述べなさい。」
データ読み取り型
データ読み取り型は、提示されたグラフなどから読み取れる事象を解説しつつ、小論文にまとめるものです。理系学部などでよく見られます。グラフなどのデータを資料に使う場合は、まず何のデータかを正しく読み取り、その特徴を捉えることが大切です。
例:「以下の老年人口、高齢化率の推移を示した図から、これからの建築に関連する問題について意見を述べなさい」
英語小論文
英語小論文は、英語で設問が出されます。英語の課題文を日本語で要約して、さらに設問に答えるタイプや、大学によっては英語で小論文を書くタイプもあります。
例:「以下の英文を読み、知的な気付きに対する自身の考えを述べなさい。」
「Read the following text and express your opinion about “intellectual awareness”」
4.小論文の基本構成を押さえる
50文字や200字など、設定文字数が少ないときは、構成を分けず自分の意見と理由を端的に書きます。600字、800字などある程度の文字量を求められる場合は、「序論」「本論」「結論」の三部構成で書くのが基本となります。
序論:小論文の書き出し方
小論文の書き出しとなる序論に書くのは、「私は〇〇と考える」などといった、自分の明確な意見です。結論とも言える自分の意見を書くことで、この小論文が何について書かれているかを読む人にわかりやすく伝え、その後に「なぜなら~」と根拠を続けます。
本論:意見の裏付けや根拠
本論では意見の裏付けとなる事実や事象を具体的に提示し、根拠の詳しい説明をしていきます。このときに、よく用いられる手法として、序論で書いた自分の意見に対する反論を挙げ、それに対応する回答を述べるものがあります。どんな意見に対しても反対意見は存在するので、それを利用することで、自分の意見に深みをもたせられます。
結論:まとめ
結論となるのは自分の意見なので、文字数によっては序論の繰り返しになります。そのため、結論にあまり多くの文字数を割く必要はなく、場合によっては割愛することもあります。十分な文字数がなく、序論と結論で同じことを述べるのが無駄になるようなら、序論をしっかり書いて、結論を省くようにしましょう。
5.書き方の基本ルールを守る
相手に読ませる文章を書くという意味では、小論文も日本語の基本的なルールをしっかりと守ることも大切です。
文字数の9割以上10割未満でまとめる
小論文では600字や800字など、文字数が指定されているので、指定文字数の9割から10割の間に収まるように文章をまとめます。600字なら540~600字、800字なら720~800字程度が目安です。
たとえば、400字詰めの原稿用紙で設定文字数が800字なら、1行が20文字なので、余白は3行以内に収めるようにしましょう。
文体は「だ・である」調に統一する
文体は、「です・ます」調ではなく、「だ・である」調に統一します。すべての文末が「である」のように、同じ語尾が続くと読みづらくなるので、リズムよく読ませる工夫も必要です。
倒置法、体言止め、比喩などは使わない
小論文は短いながらも「論文」なので、広告のようなキャッチーな文章はふさわしくありません。倒置法や体言止めなどは使わず、わかりやすい丁寧な文章を心がけましょう。比喩も論点をぼかすリスクがあるので、避けた方が無難です。
口語、擬態語、略語は使わない
語尾以外の部分でも、口語や擬態語、略語などを無意識に使ってしまうことは多いものです。小論文では、これらは減点対象となるので注意してください。文章でも使いがちな「ちょっと」「だいたい」「だんだん」「どんな」などは、すべて口語のため「すこし」「およそ」「次第に」「どのような」と書き換えましょう。「スマホ」や「メアド」なども略さずに、「スマートフォン」「メールアドレス」とします。
原稿用紙を正しく使う
原稿用紙に記入する必要がある場合は、原稿用紙の使い方のルールを守りましょう。
拗音(ゃ、ゅ、ょ などの小さく書く字)、促音(っ)、句読点などに1マス使い、段落の最初は1字下げて書くこともルールです。原稿用紙の使い方が間違っていると、減点対象になるので、正しい使い方を確認しておきましょう。
カタカナや数字の書き方
小論文の体裁が縦書きか横書きかで、数字の書き方は異なります。縦書きでは漢数字を、横書きでは算用数字を使いましょう。外来語はカタカナで書きますが、あまりカタカナ語が多いと内容が伝わりにくくなります。できるだけ外来語は避けて、ひらがな、漢字を中心に使うのが望ましいです。
学部系統別、頻出テーマと例文
学部によって、頻出テーマの傾向は異なります。
法・政治・経済学部など
社会科学系学部では、法律・政治・経済など、その分野ごとの具体的な問題がテーマとされることが多いようです。法学部であれば、「裁判制度」や「法の解釈」など。政治学部や社会学部は、「地域社会や民主主義のあり方」、「男女間の就労問題」などが、頻出テーマとして挙げられるでしょう。経済学部は、「地域や性別、家庭などさまざまなジャンルにおける経済格差」や、「経済構造の変化」に関する問題などが多く見られます。
人文・教育学部など
教育学部では、「学校教育・課外教育のあり方」や、「貧困・SNSなど子どもを取りまく環境に関する問題」などが頻出テーマです。人文学系学部の場合、言語文化学など専門学科に即したテーマになることが多いようです。それ以外では、社会問題や教育問題、歴史上の問題や現代の時事問題など、テーマは多岐にわたります。
医学・医療系学部など
医学、医療系学部の小論文は、「地域医療や終末期医療のあり方」や、「日本の医療の問題点」、「介護問題」といったジャンルからのテーマが多くなります。同じ医療系学部でも、看護や理学療法学などの専門分野によって傾向は異なり、より専門に近いテーマが出題される傾向があります。
小論文の対策方法
実際に小論文を書く以外に、小論文の対策としては、どのような学習をすればいいのでしょうか。
志望校の過去問に学ぶ
小論文で出題されるテーマは、大学ごとに傾向があります。志望大学で出題された過去の小論文のテーマを数年分、抽出して、傾向を確認しましょう。また、テーマの傾向が掴みづらい場合も、テーマ型なのか課題文型なのか、どの程度の量の課題文が出て、回答は何文字程度求められるのかといった、出題傾向を探ることはできます。
読解力、思考力を身につける
志望校にもよりますが、小論文の設問では、先にある程度の文章を読ませてから、その内容について意見を求める課題文型が非常に多いです。このように、課題文型の小論文においては、まず提示された文章をしっかり理解する読解力が重要になります。また、課題に対して論理的に意見をまとめるために、思考力を身につけることも大切です。
普段から、世の中の事象にアンテナを張り、それに対して「自分の意見はどうだろう?」と思考する習慣をつけておくといいでしょう。
基礎知識をニュースや新聞で身につける
課題文にはある程度の情報は含まれてはいますが、それに対する自分の意見を小論文にまとめるには、その内容に関する基礎知識が必要です。課題文で提示される内容の多くは、社会問題や時事問題としてニュースや新聞で話題となっている事柄です。普段からニュースや新聞をチェックして、基礎知識を身に付けておきましょう。
第三者に見てもらう
自分では上手に書けたつもりでも、他人が読むと意外と読みづらかったり、内容が伝わりにくかったりすることはよくあります。「他人に読ませるための文章」の書き方は、文章を書いて問題点を指摘してもらうことの繰り返しで上達するので、練習で書いた小論文は第三者に見てもらうと良いでしょう。
日ごろから自分なりの意見を考える癖をつけよう
小論文は、ある程度頻出テーマを絞り込めても、その時にならないと設問はわかりません。どのような問題が出ても対応できるように、日ごろから自分なりの意見を考える癖をつけておきましょう。