執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
日本史を学ぶことは、現代までの日本の成り立ちを学ぶこと。これからの日本を考えるうえでも役に立ちます。グローバルな活躍を目指す人でも、母国の歴史を知っていることは、世界の人々との考え方や文化の違いを理解するうえで役に立つでしょう。受験科目としての日本史は、ただ暗記をすればよいという科目ではありません。適切な学び方を身につけ、効率の良い勉強法を学んでいきましょう。
日本史の学習は、ただの暗記ではありません。学び方のコツをつかむことで、その学習効率は大きく変わります。まずは学習全体に関わるコツを5つのステップで解説します。
日本史の学習についてまず心に留めておいてほしいのは、日本史は単なる暗記科目ではないということです。確かに用語の習得は重要ですが、それ以上に「歴史の流れ」をつかむことが大切なのです。
流れを理解するにあたり、日本史を6つの時代区分(原始、古代、中世、近世、近代、現代)に分けて考えます。各時代の軸となる要素、例えば鎌倉時代(中世)なら将軍や執権を、明治時代(近代)なら内閣総理大臣を軸に大まかな流れを押さえていくと、複雑な流れがすっきり整理されます。
授業をしっかり聞き、板書だけでなく先生の口頭説明もノートに書き込むことが、この「流れ」を理解する最良の方法です。苦手な時代がある場合は、漫画やドラマを入口にするのも有効です。(ただし、フィクションと史実の違いには注意が必要です。)
歴史の因果関係を意識しながら学ぶことで、単なる暗記以上の深い理解を得ることができます。また、知識の応用力も身につき、様々な形式の入試問題にも対応できるようになるはずです。
日本史の成績向上には用語の暗記が欠かせませんが、単純な一問一答式の勉強だけでは不十分です。大学入試では、用語を答える問題だけでなく、正誤問題や資料読解、論述問題など多様な形式で出題されるため、多角的な知識理解が重要となります。
そこで、より効果的な学習法を3つ紹介します。
各用語の時代背景や関連する出来事を理解しながら暗記することで、深い記憶が形成されます。教科書や参考書を通読し、用語の位置づけや意味を確認しましょう。正誤問題や論述問題で高得点を取るために不可欠な学習法です。
論述問題に取り組むことで、用語を正確かつ詳細に理解し、適切に応用する力が身につきます。背景や影響を説明する練習を通じて、応用力のある知識を獲得できます。国公立大学志望者以外にもおすすめの学習法です。通史の学習に合わせて、『スタートアップ 日本史論述問題集ー日本史探究のためにー』『日本史の論点ー論述力を鍛えるトピック60ー』(いずれも駿台文庫)などを活用しながら実践していきましょう。
写真や地図などの視覚資料を活用することで、記憶の定着がより効果的になります。特に人物や文化史の学習には、図説や画像検索を利用し、具体的なイメージと結びつけることが有効です。
文化史の学習は、日本史の学習で多くの受験生がつまずくポイントです。しかし、ここでしっかりと対策を立てておくことで、他の受験生に差をつけるチャンスとなります。以下の方法を参考に、文化史の学習を進めてみましょう。
文化史の用語を覚えるためには、その用語に関連する背景知識を理解することが重要です。教科書や図説、用語集を活用して、覚えにくい用語の周辺知識を積極的に学びましょう。特に、その文化の特徴や背景が簡潔にまとめられている教科書の文化史解説の冒頭をしっかりと熟読することをお勧めします。習得した知識はノートや教科書に 記録し、定期的に復習することで、記憶が定着しやすくなります。
文化史の学習は、定期試験や模試を目標にコツコツと進めることが大切です。暗記する内容が多いため、後回しにしてしまうと負担が大きくなります。出題範囲が明確に定められている定期試験や模試を目標にして、段階的に学習を進めましょう。また、学習中に苦手な時代や文化が見つかった場合はノートに書き出しておき、長期休暇中にまとめて復習すると効果的です。
文化史の学習は、地道な取り組みが必要ですが、その分だけ成果も実感しやすい分野です。ここに書いた方法を参考に、効果的な学習を進めてください。
日本史を得意科目にするためには、日常の学習に論述練習を取り入れることが効果的です。「自分は国公立大学志望じゃないから論述の練習はいらない」と敬遠している人も多いかもしれません。でも、実は論述練習には、日本史の受験勉強全般に役立つ魅力がたくさんあるのです。
まず、論述練習を行うことで歴史的事件の背景や影響をより深く理解でき、教科書を細部まで読み込む習慣が身につきます。このような習慣を通して正確な用語の知識を得ることで、定期試験や模試の論述問題で得点を伸ばすことができ、学習のモチベーション向上にもつながります。さらに、分からないことを自分で調べる習慣が自然と身につく点も大きなメリットです。
論述練習に取り組む際には、「問われているテーマや時代についての完璧な知識がないと論述できない」という思い込みは捨てましょう。むしろ、論述問題を解くプロセスの中で知識を深めていくという姿勢で、積極的にチャレンジしてください。分からないことがあれば、それを調べて理解するチャンスと捉えましょう。
初めて論述に取り組む方には、頻出テーマが整理された『スタートアップ 日本史論述問題集ー日本史探究のためにー』や『日本史の論点ー論述力を鍛えるトピック60ー』(いずれも駿台文庫)といった教材が特におすすめです。答案の書き方や注意点も分かりやすく説明されているので、論述初心者の人でも安心して取り組めます。
正しいやり方の一方で、日本史学習でよく見られるNGな勉強法を紹介します。自分の学習方法と照らし合わせて、改善のヒントにしてください。
日本史を勉強している人が、ノートいっぱいに用語を書き連ねる光景をよく目にします。確かに書くことで記憶の定着が図れますが、過度に行うのは効率的とは言えません。用語を書くこと自体が目的化してしまっては本末転倒です。覚えることが最終目標であることを踏まえ、特に難しい漢字は数回書きながら覚え、それ以外の用語は口頭でテストするなど、効率的な方法に変えていきましょう。
「日本史の勉強=用語暗記」と考えがちな人は、一問一答集に頼りすぎる傾向があります。一問一答集は確かに便利な暗記ツールですが、これだけでは様々な形式の問題に対応する力は身につきません。教科書や参考書で通史を学び、図説で地図や図表を確認し、問題集で応用力を養うなど、バランスの取れた学習を心がけましょう。
「いつかやろう」と先送りにしがちな文化史の学習。しかし、入試直前になって慌てて学習しても、その膨大な量に圧倒されてしまいます。コラム「文化史を押さえる」で紹介した通り、定期試験や模試を目標にコツコツと学習を進めることが大切です。
日本史の学習では、様々な種類の教材を使用します。教科書・ノート・参考書の使い方という観点から、効率のよい学習法を学んでいきましょう。
教科書を読むことは、日本史の基礎知識を身につける近道です。時代の流れや歴史的事象の意義を整理できるだけでなく、予習・復習にも活用できます。「教科書は最初に配布されてから一度も読んでいない」という人がいますが、これはあまりにももったいないことです。教科書は、受験生の日本史対策の基盤となる強力なツールなのです。そこで、今回は教科書の効果的な活用法を2つご紹介します。
1つ目は、欄外の解説を丁寧に読むこと。教科書の欄外に掲載されている補足解説には本文よりも詳細な情報が記載されていることがあり、この部分から入試問題が出題されることもよくあります。見逃さないようにしましょう。
2つ目は、教科書に書き込むこと。一問一答集や用語集を参考にしながら、用語の意味や補足情報を書き加えていきます。これにより、自分だけのオリジナル教科書が完成し、理解度も格段に上がります。
教科書を単なる参考書として扱うのではなく、積極的に「読み込む」ことで、日本史の理解を深めていきましょう。欄外の情報をチェックし、自分なりの解説を書き込むことで、教科書は日本史学習の最良の友になります。教科書を使い込むことは、きっと受験への自信にもつながるはずです。
続いて、日本史のノートの取り方のコツをお伝えします。日本史の学習において、効果的なノート作成は知識定着の鍵となります。
まず、ノート作成の目的を明確にしましょう。ノートを取ることの目的は「復習の効果を最大化すること」です。このことを念頭に置きながら、以下の2つのポイントを意識してノートを取ることをおすすめします。
授業中に先生が口頭で説明する用語の覚え方や歴史的事件の背景などは、自力で獲得することが難しい貴重な情報です。これらを丁寧に記録しておくことで、授業後の復習時に大いに役立ちます。口頭解説を記録することで、授業の内容を思い出しやすくなり、関連知識の増加により用語の定着も確実になります。例えば、歴史的出来事の因果関係や年号の語呂合わせなどは必ずノートに書き留めておきましょう。
ノートをテスト形式にすることで、アウトプットのツールとしても活用することができるようになります。重要な用語をオレンジ色のペンで書き、授業後の数分間でセルフテストを行うだけで、効果的な知識の定着が図れます。
見た目の美しさよりも実用性を重視し、「復習の道具」としてのノート作成を心がけましょう。授業を最大限に活用し効率的な学習を進めることが、成績向上の第一歩です。
大学受験に向けた日本史の勉強では、知識のインプットとアウトプットのバランスが重要です。教科書や授業で得た知識を、参考書を使って積極的にアウトプットすることで、学んだ内容を確実に定着させることができます。
日本史のアウトプット用教材には、主に以下の4種類があります。
これらの教材は、自分の学習段階に合わせて使い分けることが大切です。
通史学習の初期段階では、一問一答集や空所補充型問題集がおすすめです。これらの教材は、重要な用語や基礎知識を定着させることに向いています。
基礎的な用語が身についてきたら、入試実戦問題集に挑戦しましょう。実際の入試問題を解くことで、身につけた知識をさまざまな出題形式に応用する力が身につきます。
論述問題集は、志望校の入試で論述問題が出題される場合はもちろんのこと、たとえ志望学部で論述が課されなくても、論述問題に取り組むことで歴史の背景を深く考察し、知識の定着度を高められます。
問題集以外でのアウトプット方法として、「白紙再現」という学習法もおすすめです。教科書を読んだり、問題集の解説を読んだりした後、学んだ内容を何も見ずに白紙に再現する訓練をするのです。この取り組みにより、「分かったつもり」「覚えたつもり」の知識を減らし、入試で使える知識を増やすことができます。
問題集を選ぶ際には、自分のレベルに合ったものを選びましょう。友人や合格体験記などの口コミに惑わされず、実際に解いてみて6〜7割の正解率を目安に選ぶのがポイントです。無理なく取り組める参考書で地道に演習を重ねることが、着実な実力向上につながります。
日本史の学習では、コツコツ積み重ねが重要です。定期テストの学習をあなどってはいけません。普段の学習の効率を上げることが、最終的に受験の好結果につながるのです。
定期テストで高得点を狙うためには、まず試験範囲を正確に把握することが不可欠です。先生からの発表やシラバスを丁寧に確認し、範囲内の内容を漏れなく押さえましょう。ただし、範囲の発表が試験直前になることも珍しくありません。そのため、日頃から授業の進度を意識し、ある程度範囲を予測しながら学習を進めることが重要です。
また、過去の試験傾向を調べることで、出題方式をある程度予想することができます。用語の筆記問題はもちろん、図表を用いた問題や史料の読み取り問題、論述問題の有無なども確認しておきましょう。特に高校3年生になると、入試を意識した問題が出題されることもあるので注意が必要です。
範囲が確定したら、手持ちの問題集から試験範囲に該当する問題をリストアップし、計画的に問題を解いていきましょう。また、定期テストは文化史の暗記に取り組む絶好の機会でもあります。定期テスト対策として文化史の知識を習得しておけば、入試直前の対策にかかる負担を減らすことができます。
定期テストで高得点を獲得するには、重要な人物名や事件名の漢字を正確に書けることが不可欠です。「よく見かける用語だから書けるだろう」と油断せず、試験前には用語一通り書いておきましょう。実際に書いてみると、思いのほか漢字を忘れていることに気づくはずです。
重要人物や重要な歴史的事件については、関連する政策や出来事を体系的に整理することをおすすめします。例えば、江戸時代の老中・松平定信について学ぶ場合は下記の方法で知識を整理しましょう。
①教科書を読み、松平定信の政策について理解する。
②太字になっている重要な用語(「寛政の改革」「囲米」「人足寄場」など)ノートに書き出す。
③意味が分からない用語は用語集で調べ、列挙したキーワードの横にメモする。
知識を整理する過程で意味の分からない用語に出会ったら、それはあなたの弱点を発見するチャンスです。用語集で用語の内容を確認し、簡潔な説明を書き添えておきましょう。
この取り組みは、定期試験対策としてだけでなく、大学入試準備にも直結します。目の前の試験への徹底した準備が、長期的な目標達成への近道となるのです。定期試験は年に数回の貴重な復習機会です。この機会を最大限に活用し、計画的かつ効率的に学習を進めてください。
他科目の学習を優先し、日本史を十分に学習できない人も少なくありません。日本史の学習の全体像をつかみ、大きな学習の方針を理解することが、効率的な学習への第一歩です。
共通テストや文系の私立大・国公立大学入試に臨むにあたって、「ノー勉」(定期試験対策や個別の入試対策を行わない状態)で合格者の平均点を狙うことは極めて難しいのが現実です。共通テストでは文章読解型の問題が増えましたが、単に文章を読むだけでは太刀打ちできません。
正解を導くには、日本史の基本的な理解が欠かせないのです。
とはいえ、受験勉強に取り掛かるタイミングが遅くなってしまった人や、理系志望の人にとって、他科目に時間を割きたい、日本史の勉強時間を最小限に抑えたいという場合もあるかもしれません。いかに短期間でマスターするか。高校3年生の8月から日本史対策を始める場合のシミュレーションを見てみましょう。
結論から言うと、8月から12月までの期間、毎週4~6時間の日本史学習時間を確保する必要があります。
一般的な日本史教科書『日本史探究 詳説日本史』(全18章)を基準に考えると、1週間で1章のペースで学習を進めれば、約4ヶ月で通史学習を完了できます。一週間の学習時間の内訳は下記のとおりです。
このスケジュールで8月から学習を継続すれば、12月初旬~中旬には各時代の学習を一通り終えることができます。残りの1ヶ月で過去問演習と通史の総復習を行い、1月中旬の共通テストに臨むことになります。
このスケジュールで「いける!」と感じるなら、夏休みからの対策でもOKでしょう。しかし、他教科、特に数学や理科の対策にまだ多くの時間が必要な受験生は、日本史の対策をより早期に始めるか、定期試験対策に力を入れて基礎を固める必要があるでしょう。自分の状況を考慮し、最適な学習期間とペースを設定することが大切です。
高校三年生にとって、夏休みは日本史の対策を深める貴重な期間です。今回は、夏休みを最大限に活用するための3つのポイントをご紹介します。
まず、復習すべき時代やテーマを明確にしましょう。弱点の把握には、定期試験や模試の見直しがおすすめです。答案を見直し、特に間違いが多かった時代やテーマを発見しましょう。発見した弱点は、一問一答集や問題集を使って集中的に復習しましょう。知識が不足している場合は、教科書やノートを見直し、知識をインプットする時間を設けることも重要です。
次に、復習のタイミングを決めることが重要です。知識の定着には復習が不可欠ですが、計画を立てないと疎かになりがちです。確実に実施できるよう、復習のタイミングをあらかじめ決めておきましょう。例えば、「午前中の学習は前日学習したことの復習から始める」「寝る前に問題集で間違えた部分の解説を読み直す」といったように、生活リズムに合わせたルールを設定し、実行しましょう。
また、日本史に苦手意識がある場合は、得意な教科で日本史の学習時間をサンドイッチするのがおすすめです。例えば、英語・国語を得意科目としている人は、「英語(得意)→日本史(苦手)→国語(得意)」の順番で学習を進めると良いでしょう。
最後に、夏休みには文化史・テーマ史の学習にも取り組みましょう。これらの分野は受験生によって対策に差が出やすいため、夏休み中に学習を進めることで大きなアドバンテージを得ることができます。教科書では学習をしづらいテーマ史は、専用の問題集を活用しましょう。『これだけはおさえよう! 日本史100テーマ書き込み問題集』(駿台文庫)を活用して、効率的に対策を進めてください。
長いようで短い夏休みですが、上記のポイントを意識しながら充実した時間を過ごしましょう。
日本史の入試問題の出題形式は多岐にわたります。それぞれの特徴をおさえることで、普段の学習をよりよいものに変えていきましょう。
日本史の試験では、様々な形式の問題が出題されますが、各形式に適した対策を行うことで、試験全体の得点力を大きく向上させることができます。今回は、主要な出題形式とその効果的な対策方法を紹介します。
私立大学で最もよく見られる出題形式です。対策としては、一問一答集を活用するのが効果的です。問題文中の重要キーワードを確認しながら、チェックペンを使用した反復学習を行いましょう。また、語句の記述が求められる大学を受験する場合は、漢字で正確に書く練習をすることも重要です。日本史では、「方違」や「攘夷」など、日常生活ではめったに目にしない言葉を覚える必要があります。
歴史的事象を正しい時系列順に並べる問題です。この形式に対応するには、教科書や図説に掲載されている年号をチェックペンでマークし、繰り返しテストすることが有効です。年号のみを覚えようとするのではなく、通史の学習と並行して内容を理解したうえで覚えることが大切です。
提示された歴史的記述が正しいか誤っているかを判断する問題です。この形式に強くなるためには、用語に関する知識を深め、多面的に理解することが求められます。そのためには、一問一答集の解答を覚えることに加えて、教科書をじっくり読み込む、用語集で用語を調べる、図説で視覚的に理解を深めるなど、多様な方法でインプットすることが重要です。一つの事柄を多角的に学ぶことで、知識がより立体的になり、様々な時代・テーマについての知識が問われる正誤判定問題にも対応できるようになります。
以上のように、各問題形式に応じた対策を着実に行うことが、日本史の試験で高得点を獲得する鍵となります。上記のポイントを意識しながら対策を進めていきましょう。
国公立大学や一部の私立大学の入試で出題される論述問題。対策の方針が分からず、どこから手を付けたらよいか迷っている受験生も多いはずです。今回は、論述問題の対策を効果的に進めるうえで押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
論述問題を解くためには幅広い知識のストックが必要です。しかし、知識が完全に身につくまで論述対策を先送りにすると、入試本番までに準備が間に合わなくなる可能性があります。最初は教科書や用語集を見ながら答案を作成しましょう。必要な情報を探し、整理する過程で論述に必要な知識が定着します。さらに、模範解答と比較することで、論述のコツも掴めます。「書きながら成長する」イメージで演習に取り組んでいきましょう。
論述問題といっても、大学によって形式はさまざまです。用語の説明、意義の説明、史料の読み解きなど、出題形式は多岐にわたります。例えば、東大では史料読解問題が多く出題され、学習院大学文学部では人物や歴史的事件の説明が求められます。史料読解問題を解くためには、何より史料を読んで考える練習が必要になり、人物・出来事事件の説明には一問一答集や用語集を用いた対策が効果的です。自分の志望校の出題形式に合わせ、効率的な対策を進めていきましょう。
論述に慣れていないうちは、文字数制限に縛られるあまり何を書けばいいか迷ってしまうことがあります。そこで、対策開始から数週間~1ヶ月程度は、文字数を気にせず自由に書いてみましょう。その後、問題の要求を再確認しながら、どこを削ればよいか考えます。この練習を繰り返すことで、何を書くべきか、何を省くべきかの判断力が養われ、本番でよい答案を書く力につながります。
大学受験の日本史で頭を悩ませる問題の一つが、資料・史料型問題です。資料型問題とは地図やグラフ写真を読んで解答する問題、史料問題は『御成敗式目』や『武家諸法度 寛永令』などの歴史的文書を読んで解答する問題です。これらは単なる暗記だけでは太刀打ちできない、応用力が問われる問題です。しかし、適切な対策を立てることで、十分に克服可能です。それぞれの対策方法を紹介します。
資料問題では、地図やグラフ、写真などを読み解く力が求められます。対策の基本は教科書の徹底的な読み込みです。教科書の図版は入試での出題頻度も高いです。通史学習の過程で資料を読み込むことにより資料の歴史的意義が理解しやすくなり、スムーズに暗記できます。。さらに、図説を活用することで、より多くの詳細な資料に触れることができます。特に近現代史では経済に関するグラフがよく出題されるので、日頃から図説のグラフを読み解く練習を重ねることが大切です。
史料問題では歴史的文書を読解する力が試されます。まずは教科書に掲載されている史料を読むことから始めましょう。教科書に掲載されている『貧窮問答歌』や『小右記』などの代表的な史料は時代の特徴を簡潔に表現しています。入試での出題頻度も高いため、内容を確実に理解しておくことが必要です。
また、志望校の出題傾向に応じて専門の史料集も活用するとよいでしょう。歴史的史料を最初から原文で読み解くことは難しいため、まずは現代語訳(口語訳)を確認し、その後に原文を読むのがおすすめです。原文中で赤字になっている部分は、赤シートで隠してテストしながら暗記しましょう。
資料・史料問題は、準備次第で大きく差がつく分野です。コツコツと取り組めば、必ず力がつきます。自信を持って挑戦しましょう。
共通テストは、受験者数も多く、厳しい競争を勝ち抜かなくてはなりません。独特の出題形式を理解し、自分にあった対策を進めていきましょう。
数ある社会科目の中でも、日本史Bは受験者数が多いことで知られています。令和6年度の共通テストにおいて、日本史Bの受験者数は131,309人。地理B(136,948人)に次ぐ多さで、世界史B(75,866人)を大きく上回っています。
ライバルが多く1点の差が入試結果に大きく響く状況で合格点を取るためには、基本問題を確実に正解することが求められます。共通テストを運営する大学入試センターは、各科目の設問別正答率を公開していますが、令和6年度の日本史Bでは、全32問中22問(約69%)の正答率が50%を超えています。これらの問題を落とさないことが何よりも大切です。
共通テストの過去問演習で、正答率50%以上の問題を間違えた場合は、その時代や分野を徹底的に復習することが重要です。
模試や過去問演習で平均点・合格最低点を取れるようになってきた文系の受験生に向けて、さらなる得点アップを目指す方法を紹介します。現状の学習に「プラスα」の学習を取り入れ、他の受験生との差を広げましょう。
年号の知識は、共通テストや私立大学の問題で頻出です。時系列順の並べ替えや、特定時代の出来事を選択する問題に不可欠です。さらに、国公立大学の論述問題でも重要な役割を果たします。通史学習と並行して重要事件の年号を覚え、受験直前期に総復習することで、年号問題での得点力向上を図りましょう。
文化史は受験生間で対策レベルに差が出やすい分野です。令和6年度の共通テスト日本史Bでは、文化史関連の問題が合計17点分も出題されました。私立大学では大問1つが全て文化史という場合もあります。高得点を目指すなら、文化史の対策は必須です。前述の「文化史を押さえる」の内容を参考に、抜けのないよう確実に準備しましょう。
日本史には法制史、経済史、国際関係史、土地制度史など様々なサブテーマがあります。私立・国公立大学の入試では特定のテーマから集中的に出題されることがあるため、テーマ史対策は高得点獲得の鍵となります。図説やテーマ史に特化した問題集を活用して理解を深めましょう。おすすめの問題集は『これだけはおさえよう!日本史100テーマ書き込み問題集』(駿台文庫)です。長期休暇を利用して重点的に取り組むと効果的です。
理系志望の受験生にとって、数学や理科の学習が優先されるのは当然ですが、日本史の対策を怠ると共通テストで思わぬ失点を招く可能性があります。しかし、効率的に対策を行うことで、限られた時間でも十分な得点を確保することが可能です。以下のポイントを押さえながら学習を進めましょう。
まず、志望校の共通テスト配点・合格最低点を確認し、日本史の目標点を設定しましょう。理系科目に重点を置かなければならないため、必ずしも日本史で高得点を狙う必要はないかもしれません。例えば、全体の配点から逆算し、他の得点科目が安定している場合、日本史で50~60点程度を狙うことで全体の合格ラインをクリアできる可能性もあります。他教科の学習状況を踏まえ、具体的な目標を立てることが大切です。
次に、授業や定期試験を最大限に活用しましょう。理系科目に比べて学習の優先順位が低くなりがちな日本史ですが、授業をしっかりと受講し、定期試験対策を丁寧に行うことで、自習で日本史を学習する時間を大幅に節約することができます。授業後には15分程度の復習時間を設け、ノートやプリントを見直して要点を理解するよう努めましょう。また、定期試験対策としてまとまった範囲の復習を行い、知識の定着を確実なものにしてください。
最後に、教科書を基本参考書として活用しましょう。共通テストの出題範囲は教科書に準拠しているため、教科書をしっかりと読んで理解することが得点アップへの近道です。週末に30分程度の学習時間を設け、その週に学習した範囲の教科書を読み進めながら歴史の流れや事件の意義を理解するよう努めましょう。単なる用語暗記ではなく、背景や意義を意識することで、共通テストの設問にも対応できる力を養うことができます。
ひとくちに「難関大学の日本史」といっても、その出題傾向は大きく異なります。適切な対策なしでは、入試本番で力を発揮するのは難しいものです。
東京大学は日本史の出題意図について、次のように述べています。
「問題はいずれも、①日本史に関する基礎的な歴史的事象を、個別に記憶するのみならず、覚えた事実を互いに関連づけ、統合的に運用する分析的思考を経た知識として習得しているか、②設問に即して、受験までに習得してきた知識と、設問において与えられた情報とを関連付けて分析的に考察できるか、③考察の結果を、設問への解答として、論理的な文章によって表現できるか、を問うています。」
※出典:「地理歴史(日本史)」の出題の意図」
この出題意図に基づき、対策のポイントを3つお伝えします。
東大日本史で合格点を取るには、歴史を点ではなく面として理解することが求められます。単に歴史的事象を覚えるのではなく、前提や経過、影響を考察し、他の事象との関連性を意識することが重要です。通史参考書『読んで深める 日本史実力強化書<第2版>』(駿台文庫)には、各章の冒頭に時代ごとの特徴をまとめた表が掲載されています。時代の特徴を統合的に理解する手助けになりますので、ぜひ活用してください。
東大の日本史では、資料やグラフを用いて出題されることが多く、これらの資料を正確に分析し、設問の要求に沿った解答を作成することが求められます。設問が求めている内容を正確に把握し、その情報を適切に選び取ることが必要です。既有知識や先入観にとらわれることなく、設問の要求を丹念に読み込むことを意識しながら、過去問演習を進めていきましょう。参考文章に線を引いたり、答案作成メモを作成することをおすすめします。
東大の日本史の試験では、知識の羅列ではなく、論理的な文章による解答が求められます。論述力を鍛えるためには、参考書や問題集を活用した定期的な練習が効果的です。論述問題集『日本史の論点ー論述力を鍛えるトピック60ー』(駿台文庫)では、日本史に関する知識のみならず、論述作成の要点や注意点が丁寧に解説されています。このような教材を活用して、論述問題に取り組む習慣をつけることで、採点者に評価される論理的な文章を作成する力を養いましょう。
早稲田大学や慶應義塾大学は、私立大入試の中でも特に難関とされる大学です。下記のポイントを意識しながら、対策を進めていきましょう。
早稲田や慶應と一口にいっても、学部ごとに出題形式や問われやすい時代・テーマは大きく異なります。夏休み中に志望学部の過去問を確認し、論述問題の有無や出題されやすい時代、文化史の出題割合などを分析しましょう。『駿台大学入試完全対策シリーズ』(青本)には学部ごとの傾向分析が掲載されているため、うまく活用しながら対策の方針を固めましょう。
早稲田や慶應の日本史では、特定のテーマに沿った知識を問う問題が頻出します。例えば、慶應義塾大学商学部の2024年度入試では、文化の伝播をテーマに、原始時代から江戸時代までの文化史が問われました。同年の早稲田大学人間科学部では、江戸時代から明治時代にかけての宗教史が出題されました。こうしたテーマ史に対応できる力を身につければ、大きく得点を伸ばすことが可能です。『これだけはおさえよう!日本史100テーマ書き込み問題集』(駿台文庫)などの参考書を活用して、テーマ別の対策を徹底しましょう。
難問に備えるのと同様に、基礎知識の定着も極めて重要です。早稲田や慶應で難問が出題されることがあるのは事実ですが、大半の問題は教科書・用語集に載っている知識を使って解くことができます。基礎知識の確認には、共通テストやセンター試験を活用することをお勧めします。これらの試験は、教科書に載っている内容から幅広い時代の知識を問う問題が多いため、演習と復習を通じて基礎的な知識を再確認するのに最適です。問題を解きながら自分の弱点を明確にし、焦らず復習を進めてください。
「MARCHなら基本用語の暗記で対応できる」と考える受験生もいるようですが、その考えは甘いと言わざるを得ません。国公立大学や早慶と同様に、MARCHやその他の私立大学を目指す場合でも、志望校の過去問をしっかりと分析し、具体的な対策を進めることが重要です。日本史の問題形式は大学ごとに多岐にわたるため、過去問分析を通じてどのような形式が出題されているか、またその割合も確認しながら対策を進める必要があります。
代表的な出題パターンは下記のとおりです。
中でも「正誤問題」は多くの受験生が苦手とする分野です。一般的に、文章中の下線部に関する4つの選択肢から正しいもの、または誤っているものを選ぶ形式で出題されます。用語筆記問題とは異なり、正誤問題では歴史的事実に対する幅広く深い知識が求められます。そのため、単なる暗記だけではなく、歴史の流れや関連性を理解しながら学習を進めることが不可欠です。
具体的な対策としては、教科書や『読んで深める 日本史実力強化書<第2版>』(駿台文庫)などの参考書を活用し、時代の流れの中に用語を位置づけて覚えることが大切です。また、一問一答形式の問題集を使う際には、ただ答えを暗記するだけでなく、その用語に関連する事実や歴史的背景を自力で説明できるようにしましょう。例えば、一問一答集の答え部分を見て、その問題文を再現する「逆・一問一答テスト」を行うことは、用語に関する理解を深める良いトレーニングになります。
さらに、年号問題が出題される大学を受験する場合は、年号の暗記が他の受験生と差をつけるポイントになります。たとえ年号そのものを問う問題が出題されなかったとしても、年号を覚えていることで正誤問題の正答率が上がることや、年代の並び替え問題に自信を持って取り組めるようになることなど、年号の暗記には多くの副次的なメリットがあります。夏休みや受験直前期の時間を活用して、重要な年号をしっかり覚えておきましょう。
大学受験において、志望校の過去問対策は欠かせません。しかし、過去問を単なる問題集と同じように捉え、解いて採点するだけで終わってしまう受験生も少なくありません。過去問対策の本当の目的は、出題傾向を把握し、現状の自分の弱点を発見することにあります。これらを念頭に置いて、効果的な過去問対策のポイントを紹介していきます。
高3の夏の段階で、すべての知識を完全に習得している生徒は少数です。しかし、知識が不十分だからといって過去問を後回しにしてしまうと、過去問演習の時間が不足します。そこで、高校3年生の夏休みに2~3年分の過去問をざっと目を通し、出題傾向を早めに把握しておくことをお勧めします。複数年度の過去問に触れることで、頻繁に出題されるテーマや問題形式が分かり、対策を立てる上での指針が得られます。
過去問を確認したら、自分の現状とのギャップを把握し、具体的な対策を立てることが可能になります。たとえば、近現代史の出題が多いのに、自分の学習進度が江戸時代で止まっている、という場合は通史を自習で進める必要があるでしょう。また、文化史が大問で出題されるにもかかわらずまだ対策をしていない場合は、問題集や図説を使って知識を補充することが必要でしょう。過去問は単なる問題集として使うのではなく、志望校合格に向けた「弱点発見ツール」として活用することで、一歩一歩着実に前進していくことができるのです。
過去問を解いた後は、一定期間をあけて解き直すことがポイントです。復習内容がきちんと定着しているかを確認するためにも、1~2ヶ月後に再挑戦してみましょう。特に高3の10月頃には通史の学習が一通り終わっていると思うので、この時期に夏に見た問題を解き直すのが効果的です。「一度出題された問題はもう出ない」と考える受験生もいますが、形式を変えて出題されることや、他大学の入試に似た問題が出されることはよくあります。何度も繰り返し解くことで、入試に役立つ知識を着実に積み上げましょう。
日本史の学習といえば、膨大な用語の暗記に追われるイメージがありますね。
実際、日本史の用語集には約6,000語もの解説付き用語が掲載されています。これだけの量を単純に暗記しようとしても、すぐに忘れてしまうでしょう。また、用語を覚えておくだけでは、入試で出題される様々な形式の問題に対応することはできません。日本史の大量の知識を覚えるコツはどこにあるのでしょうか?
鍵となるのは、「楽しみながら学ぶ」という姿勢です。歴史の流れを楽しく学ぶことで、知識の定着は速く、そして深くなります。日本史学習に苦手意識を持つ高校生の皆さんに向けて、楽しく学ぶためのコツをいくつかご紹介します。
まず、自分の興味のある時代やテーマから学習を始めてみましょう。幕末が好きな人は江戸末期から、神社仏閣に興味がある人は文化史から入るなど、ハードルの低い分野からスタートするのがおすすめです。興味のある分野から学び始めれば、自然と関連する時代や出来事にも関心が広がっていくはずです。
「勉強そのものにはあまり興味が持てないけど、競う相手がいれば頑張れる」という人は、ライバルを設定することも一つの方法です。同級生や友人の中から、自分と近い目標を持つライバルを見つけ、競い合うことでモチベーションが上がります。最近では、学習時間を記録し公開できるスマホアプリもあるので、同じ志望校を目指す人と競い合うのも面白いかもしれません。ただし、学習時間の長さだけにこだわらず、質を意識することも忘れないでください。
周りに日本史が得意な友人や先生がいる場合、その人たちに話を聞いてみましょう。日本史に詳しい人は楽しんで学んでいることが多く、彼らの学び方や視点を知ることが自分の勉強方法を改善するヒントになります。日本史の先生は、授業では話しきれない面白い話をたくさん持っています。積極的に質問し、アドバイスを受けることで、学びを楽しむ糸口がつかめるかもしれません。
日本史が苦手な人も、少しずつ興味を持てる工夫をしていけば、学習が必ず楽しくなってきます。今回紹介した方法を試しながら、自分に合った学び方を見つけ、日本史を楽しみながら成績を伸ばしていきましょう。
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「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。
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