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大学受験の世界史勉強法 ここで差がつく基本の5ステップ

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執筆:八尾直輝

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長

世界史を学ぶことは、現代社会を理解する基礎を学ぶことです。現代の世界情勢を理解するために、高校の世界史はとても役に立ちます。グローバルな活躍を目指す人に限らず、これからの社会に生きる上でとても重要な学びと言えるでしょう。受験科目としては、学ぶ内容が広範囲にわたるため、敬遠する人も少なくありませんが、適切な学び方を身につければ大丈夫。効率の良い世界史の勉強法を学んでいきましょう。

目次

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大学受験の世界史 基本の勉強法 5ステップ

世界史の勉強を始める際、歴史の流れを理解することは極めて重要です。日本史と比較し、地域・時代が多岐に渡りますので、単なる用語の暗記ではなく、背景や因果関係を掴むことで学習が一層深まります

ここではまず、教科書の活用法や地図の理解、用語の効率的な覚え方など、具体的な学習法を紹介します。自分に合った方法を確立しましょう。

歴史の流れをつかむ

世界史を学ぶ際は、歴史の流れを理解することが重要です。用語の意味や位置付けを把握することで、学習がスムーズになります。

歴史の流れを理解するための基本となる教材は教科書です。しかし教科書には学問的に確立された事実しか掲載できないため、やや無味乾燥にも見え、苦手な人にとっては、教科書の学習だけでは難しく感じるかもしれません。

そこでおすすめなのは、まず教科書に書き込みをすることです。授業で学んだことや自分で調べたことを教科書に書き込むことで、内容が読みやすくなり、流れの把握もスムーズになります。特に、歴史的な出来事の因果関係についてメモを作成すると、理解が深まります。

また、背景・因果関係が詳細に紹介されている参考書を活用することもおすすめです。理解しやすい文体の参考書は、世界史に苦手意識を持つ人に最適です。参考書で流れを確認した後、教科書を見直すと、知識が整理され、本質的な事実が理解しやすくなります。

さらに、世界史が本当に苦手な人には、歴史漫画を活用するのも有効です。視覚的に理解しやすく、興味を持って学べる手助けになります。自分に合った方法で歴史の流れをつかんでいきましょう。

地図を頭に入れる

オスマン帝国、洛陽、ライン川、黒海。これらの用語を聞いたとき、すぐに場所が頭に浮かびましたか?世界史の学習では、国や都市、山川海などの地理的条件を地図で把握することが重要です。地図を確認することには、いくつかの大きなメリットがあります。

まずは地図問題に強くなることです。特に私立大学では地図を用いた問題が頻出するため、対策をしていない受験生との差をつけることができます。

また、地図を理解することで、通史(時代・地域・分野に限定しない総合的な歴史、歴史の流れ)の理解が深まります。

例えば、『黒海の中立化』というキーワードを覚えるだけでなく、黒海と周辺国の位置関係を地図で確認することで、その重要性が理解できます。地理的要因と歴史的出来事は密接に関連しているため、地図の活用は不可欠です。

さらに、地図を活用することで世界史のヨコのつながりも見えてきます。同時代の世界史的状況を比較して記述する論述問題では、日頃から地図を確認し、地理的特徴を把握しているかどうかが論述の質に大きく影響します。

では、地図に対する理解を深めるためにはどうすればいいのでしょうか。まず、図説を活用することです。図説の冒頭には時期ごとの世界地図が掲載されていることが多く、これを活用することによって世界のヨコのつながりを見たり、時系列的な変化を確認することができます。次に、問題集を活用することです。地図を見るだけでは覚えられない人も、演習形式にすることで理解しやすくなることがあります。おすすめの教材は『ビジュアル世界史問題集<改訂版> (駿台受験シリーズ)です。

地図の理解は世界史学習の大きな味方です。ぜひ今日から地図を確認する習慣、地図を覚えることを習慣にしていきましょう。

用語を覚える

世界史の得点を上げるうえで、用語の暗記は避けて通れません。ただ闇雲に暗記するのではなく、効率的に覚えるためのコツを押さえることが大切です。今回は、用語暗記のための二つのポイントを紹介します。

一つ目は、用語に関連する知識を増やすことです。用語そのものだけでなく、その背景や関連するエピソードを一緒に覚えることで、その用語を思い出しやすくなります。一見、覚える量が増え非効率のように感じるかもしれませんが、結局のところ用語を単体で覚えるよりも効果的な学習になります。例えば、「コロンブス」という用語を覚える際に、

  • 1492年に新大陸を発見したこと
  • スペイン王室の支援を受けていたこと
  • イタリアのジェノヴァ出身であること
  • トスカネリの地球球体説を基に航海したこと

などの関連知識を一緒に覚えると、コロンブスに関する理解が立体的になり、記憶に定着しやすくなります。

二つ目は、反復の仕組みを確立することです。どれだけ質の高い学習をしていても、一度の学習だけで用語を定着させることは困難です。反復練習をするには、やり方を決めること、実施する場所と時間を固定することが大切です。反復のやり方には、一問一答集や単語カード、スマホアプリの利用など、さまざまな方法があります。自分に合った方法を見つけましょう。また、暗記する場所と時間を固定し、日々の生活の中に反復練習を組み込むことも重要です。「学校から帰宅する電車の中で、授業で解説された範囲の一問一答を覚える」といったように、マイルールを決めて取り組みましょう。

文化史を押さえる

文化史の暗記には、多くの受験生が悩まされます。覚える用語の数が多い上に、政治史や社会史のような明確な流れがないため、対策を後回しにしてしまう人が少なくありません。しかし、数点の差が合否を左右する入試において、文化史の対策を怠ることは大きなリスクになります。また、対策が間に合わない受験生が多いからこそ、文化史が合否を分けるポイントにもなるのです。今回は、文化史の対策において意識してほしい三つのポイントを紹介します。

まず一つ目は、教科書や参考書を読み、特定の文化が生じた時代的背景を理解することです。

どのような時代からその文化が出現したのかを理解することで、知識の暗記がスムーズになります。「一問一答集を何度やっても覚えられない…」と感じる受験生は、ぜひこの方法を試してみてください。

二つ目は、ビジュアルイメージを活用しながら学習することです。

絵画や建築物は、視覚的に学ぶことで記憶に残りやすくなります。写真や絵が多数掲載されている図説を積極的に活用しましょう。また、図説に載っていないものについては、インターネットの画像検索を利用することも有効です。

三つ目は、出題頻度の高い用語から覚えることです。出題頻度が高い用語は、教科書や参考書では太字、一問一答集や用語集では☆や数字で表されています。「みんなが得点できる問題は絶対に落とさない!」という意識で進めてください。

文化史の暗記は、定期試験や模試をペースメーカーとして活用するのがおすすめです。定期試験や夏までの模試では出題される範囲が明確に決められているので、この機会を活用しない手はありません。三つのポイントを意識しながらコツコツ暗記を進め、他の受験生と差をつけて合格を勝ち取りましょう。

アウトプットに力をいれる

皆さんは、世界史の学習と聞いてどのような方法を思い浮かべるでしょうか。以下にいくつか例を挙げてみます。

  • 学校や塾の授業を受ける
  • 教科書・参考書・図説を読む
  • 用語をホームページや動画で調べる
  • 一問一答集を解く
  • 問題集を解く
  • 解説された内容を誰かに口頭で説明する
  • 調べたことをノートにまとめる

これらは大きく分けて二つの学習方法に分類できます。

①から③はインプット学習(知識を頭に入れること)、④から⑦はアウトプット学習(知識を活用すること)と呼ばれます。インプットとアウトプットがうまく組み合わさることで、世界史の成績は向上します

勉強というと、知識をつける、インプットに目を向けがちですが、実はアウトプットはかなり重要です。

試験本番でアウトプット力が問われるのは当然ですが、それだけでなく、アウトプットには自分が理解できていない事項を明らかにする効果があります。授業を受けたり、教科書を読んでいたりする時には理解できていると思い込んでいた事柄も、問題を解いてみると答えが出てこないことがよくあります。日頃からアウトプット学習を行うことで、自分の弱点を知り適切に補強することができるのです。

アウトプット学習の方法はいろいろありますが、自分に必要な方法を見つける鍵は志望校の過去問にあります。一例として、2024年度の東京大学の世界史試験において以下のような問題が出題されました。

「書物に関して、清はどのような政策を展開したか。書物や編纂物の名称を挙げながら、3行(注:90文字)以内で説明せよ。」

このような問題で合格水準の答案を作成するには、一問一答集で用語を暗記することにとどまらず、授業で学んだ内容を要約したり、口頭で説明したりするアウトプットトレーニングを日頃から繰り返すことが必要です。志望校の要求に即したアウトプット学習を日常的に実践しながら、合格に必要な力を身につけていきましょう。

NGな勉強法は

一方で、世界史学習者が陥りがちな三つのNG行動を紹介します。

自分に当てはまるものがないか確認し、学習改善の参考にしてください。

1. 完璧を求めすぎる

一つ目のNG行動は、完璧な理解や暗記を求めすぎることです。世界史の勉強を始めたものの、オリエントやギリシャ・ローマなど初期の単元で学習が止まってしまい、なかなか先に進めないという経験をしたことはありませんか?多くの場合、その原因はすべての内容を一度に覚えようとする完璧主義にあります。

世界史の学習は、何度も復習することを前提に、脱完璧主義で進めましょう。また、後の時代を理解することで前の時代が理解しやすくなることもあります。まずは重要度の高い用語や時代の流れを押さえることを優先しましょう。

2. 文字情報のみで学習する

二つ目のNG行動は、すべての知識を文字情報から習得しようとすることです。インプット学習のメインは教科書・参考書・ノートなどから得られる文字情報ですが、図表や地図を参照することでより効率よく学習を進めることができます。教科書や参考書を読むときは、横に図説を参照するなど、様々な角度からインプットすることを心がけましょう。

3. インプットとアウトプットのバランスが悪い

最後のNG行動は、インプットとアウトプットのバランスが悪い学習です。受験生の様子を見ていると、教科書やノートの見直しなどのインプット学習に傾倒していたり、逆に適切なインプットをしないまま、一問一答や問題集を使ったアウトプット学習に取り組んでいたりすることがあります。効率的な学習のために、インプットとアウトプットのバランスに留意してください。

世界史の学習に伸び悩みを感じている人は、上記の三つの行動をやっていないか振り返り、学習法を少しずつ改善していきましょう。振り返りのタイミングは、定期試験や模試の直後がベストです。試験問題の復習に留まらず、日頃の学習方法を見直す良い機会にしてください。

世界史の教科書、ノート、参考書 勉強の仕方

世界史の学習には教科書・ノート・参考書をそれぞれ効果的に用いる必要があります。世界史学習の基本とも言える内容ですが、意外と守れていない人も多いかもしれません。自分の学習と照らし合わせ、取り入れるべきものがあれば積極的に取り入れていきましょう。

教科書に書き込もう

世界史の成績優秀者に共通する秘訣をご存知でしょうか。それは、教科書への積極的な書き込みです。世界史を得意科目とする人は、単に教科書を読むだけでなく、自分なりのメモを加えることで、記憶を効果的に定着させているのです。

教科書への書き込みには、三つの大きなメリットがあります。

第一に、さまざまな参考書からの情報を一箇所にまとめられることです。

世界史の学習においては、教科書以外にも一問一答集や用語集、図説など、さまざまな資料を使用します。これらの情報を教科書に集約することで、必要な情報をいつでもすぐに確認できるようになります。

第二に、知識がより立体的になり、具体的なイメージを持ちやすくなることです。

特定の時代や用語に関するメモを教科書に書き込むことで、世界史の理解が深まり、知識定着が確実になります。

第三に、教科書への愛着が湧き、学習意欲が高まることです。

自分なりのメモを書き込むことで、教科書がどんどんオリジナルなものとなり、さらに内容を充実させたいという意欲が生まれます。受験生の中には、愛着の湧いた教科書を「お守り」として試験会場に持ち込む人もいるほどです。

書き込む内容は多岐にわたります。用語の解説、模試で得た知識、年号の語呂合わせ、先生の小話など、自分にとって重要と思われる情報を自由に書き加えていきましょう。また、図表や写真を切り取って貼り付けるのも効果的です。

世界史のノートの取り方

ノート作りで留意すべきは「復習しやすいノートを作る」ということです。見た目の美しさにこだわるのではなく、授業後の学習を想像し、「この情報があれば効率的に復習できる」と思えるノートを目指しましょう。

ノート作成は、学校や塾の授業スタイルごとに分けることが重要です。授業スタイルは大きく分けて「板書」と「プリント」の2つがあります。「板書」タイプの授業は、先生が黒板に書いた内容をノートに書き写す形式です。「プリント」タイプの授業は、重要用語が空所になっているプリントを埋める形式です。

両方のタイプに共通しておすすめなのが、「消える化ノート(プリント)」です。このノートは、重要用語をオレンジペンで書いたりチェックペンで塗ったりし、赤シートを被せてすぐにテストできる状態にするものです。ノートをテストに変えることで、授業後の復習の効率が大いに向上します。なお、「板書」タイプの授業でシャーペンとオレンジペンを持ち替えるのが大変だと感じる場合は、まずは全てシャーペンで記入し、授業後にチェックペンで重要用語を塗る方法も試してみてください。

また、「プリント」タイプの授業ではメモを取る時間に余裕があるため、追加の書き込みもおすすめします。世界史の授業では、先生がプリントに含まれていない内容を板書したり、口頭で説明したりすることが多いです。こうした小ネタや追加情報をノートに書き込むことで、復習の際に思い出すきっかけになります。

参考書はあれこれやらずに、繰り返す

大学受験の勉強中、様々な問題集に手を出してしまい、どれも中途半端に終わらせてしまった経験はありませんか?不安から新しい教材に飛びつきたくなる気持ちはよくわかります。しかし、入試対策の鉄則は、一冊の問題集を徹底的に活用することです。

まずは、自分のレベルに合った問題集を選びましょう。そして、その一冊を最低三周目まで解いてください。

一周目:自分の理解度を確認

二周目:苦手な単元や用語を復習

三周目:理解の最終チェック

を実施します。

また解説の読み込みもとても重要です。誤答だけでなく正解した問題も含め解説を丁寧に読み、一冊の問題集から得られる情報を全て吸収するつもりで取り組んでください。

また、インプットの基礎となる参考書も一冊に決めておくと良いでしょう。教科書や通史の解説書など、自分に合ったものを選んでください。問題を解いて分からないことがあれば参考書に戻り、理解を深めてから再度問題に取り組みます。このサイクルを繰り返すことで、世界史の成績は自然と向上していきます。

なお、自分に合った問題集や参考書がわからない場合は、身近な先生に相談してみましょう。自分の学力を正確に把握している先生によるアドバイスを取り入れながら、着実に学習を進めることが大切です。

関連リンク:駿台文庫 世界史の参考書

定期テストで高得点を上げる方法

世界史を得意にするために、定期テストを活用しましょう。塾や予備校で先取り学習をしている人も、定期テストで再学習することが、よい復習になります。      

範囲を確認する

定期試験で高得点を取るためには、できるだけ早い段階で試験範囲を把握することが極めて重要です。通常、出題範囲は試験1週間前に正式発表されますが、その時点から対策を始めるのでは準備が間に合わないこともあります。試験範囲を早めに予測し、先行して学習を進めることが効果的です。

範囲の予測には、「シラバス」「前回の試験範囲」「直近の授業進度」が参考になります。また、歴史の試験は時代区分ごとに出題されることが多いため、「試験2週間前に明の解説が始まったなら、明の滅亡までは確実に範囲に入るだろう」といった予測を立てることも可能です。

試験範囲を予測したら、先取り学習を進めましょう。世界史の授業は試験前日まで進むことが多いため、授業の進度に合わせて学習していると後半の対策が疎かになってしまいます。したがって、試験範囲を予測して先取り学習をすることで、試験直前期の対策に余裕を持たせることが重要です。

正式な出題範囲が発表されたら、出題元を丁寧に確認しましょう。世界史の場合、教科書や配布プリントだけでなく、図説や問題集も範囲に含まれることがあります。出題範囲を正確に把握し、漏れなく対策することを心がけましょう。

前日の学習の三つのポイント

今回は、定期試験の前日に意識すべき三つのポイントを紹介します。

第一に、間違えた問題の復習を徹底しましょう。日頃から演習で間違えた問題にチェックを付けておくことで、試験直前期に効率良く弱点を克服できます。また、時間に余裕があれば、正解した問題も見直してみましょう。知識を学んだ直後には正解できた問題も、時間の経過とともに忘れてしまうことがあるためです。

次に、用語を書いて確認しましょう。特に中国史で出題される珍しい漢字を含む用語に注意が必要です。一問一答集を使って、不確かな用語を実際に書いて確認しましょう。こうすることで、「読み方は分かるのに、漢字が思い出せない」というよくあるミスを減らすことができます。

最後に、論述問題対策の最終確認を行いましょう。教科書・用語集で重要な歴史的事象を確認し、「なぜ起こったのか」「どのような経緯を辿ったか」「どのような影響があったのか」を簡潔にまとめておくと試験本番での答案作成に役立ちます。流れや要点を箇条書きで書き出しておくと良いでしょう。

大学受験の世界史対策 いつから始めると良い?

実は世界史はライバルに差をつけやすい科目なのかもしれません。共通テストの受験者数も、「世界史B」は「日本史B」「地理B」の半数程度しかいません。また標準偏差も例年大きく出やすい傾向があり、努力が結果に結びつきやすいとも言えます。以下では本格的な受験対策、および具体的な受験生の夏休み以降の学習について解説します。

覚えなければならない用語は4000~5000語 

大学受験において、世界史の学習でどれほどの用語を覚える必要があるのでしょうか。一般的な世界史用語集には約5000の用語が掲載されています。そのうち入試で出題頻度が高い用語は約4000語です。 世界史の得点を安定させるためには、まずこの4000語を覚える必要があります。過去問演習が本格化する高校3年生の10月頃までには、一通りの学習を終えるのが理想です。

頻出用語の暗記がある程度完了したら、出題頻度が比較的低い用語の暗記に進むのも良いでしょう。ただし、細かい知識の暗記にはきりがないため、のめり込みすぎないよう注意してください。他教科の学習時間とのバランスを考え、適切に学習時間を配分することがとても大切です。

用語の暗記は、学校や塾の授業を基準に進めることをおすすめします。授業で解説された用語を、当日や翌日に一問一答集などで復習するのが効果的です。また、一度暗記した用語も時間が経つと忘れてしまうため、夏休みなどの長期休暇を活用して復習しましょう。どの用語を覚えるべきか迷った場合は、一問一答集や用語集に記載されている出題頻度を確認してください。

用語を覚えるコツは、「多様な方法で用語をインプットする」ことです。一つの知識に様々な角度から触れることで、用語を思い出すきっかけを増やすことができます。一問一答集での暗記一辺倒になるのではなく、用語集で意味を確認したり、教科書・参考書を読んだり、図説で年表・図表を確認したりしながら、自分に合った方法で着実に暗記を進めてください。

時間がない!受験後半、世界史の点数を上げるには

夏休みが終わり、受験の後半戦に差し掛かる時期は、「弱点の発見と解決」と「過去問演習」に力を入れましょう

 夏休みまでに世界史を重点的に学習してきた人は、自分の弱点分野をある程度把握できているでしょう。弱点となっている分野を書き出し、インプット・アウトプットを通じて一つずつ克服しましょう。

特に、「東南アジア史」「中央アジア史」「古代アメリカ史」は多くの受験生が苦手としている分野なので、集中的な対策により差をつけることができます。これらの分野は教科書の解説が少ないのですが、図説では視覚的に分かりやすいように整理されています。図説を積極的に活用して弱点を克服してください。

弱点分野が明確でない人は、センター試験の過去問を活用しましょう。センター試験では、各時代・地域の知識がまんべんなく問われており、重要度が高い内容のみが出題されているため、演習によって基礎の知識漏れを効率よく発見することができます。また、センター試験は共通テストに比べて読み取り問題が少ないため、短時間で演習を終えることが可能です。誤答の解説を読み込んだり、教科書・参考書や一問一答に戻って復習を行うことで、弱点をカバーすることができます。

次に過去問演習です。 10~11月にかけて、大学入試対策の本丸である過去問演習を開始しましょう。過去問は解くだけではなく、復習にも注力します。解説を熟読し、関連事項を調べてメモすることで、様々な問題に対応する力を養成できます。論述問題は自力での採点が難しい場合もあるので、先生に添削を依頼すると良いでしょう。ただし、添削してもらって満足するのではなく、添削結果を確認し関連事項の復習を徹底することが大切です。

国公立の世界史 共通テストで8割、9割得点するには?

共通テストや国立大学の二次試験で高得点を取るために、共通して言えることは「過去問研究こそ高得点への道である」ということです。

共通テストは追試験を含めた全ての問題を、国立大学は直近10年分の過去問を目安に演習を行いましょう。ただ解くだけでなく、共通テストでは全選択肢を、国立大学では出題された時代の周辺内容も徹底的に復習することがポイントです。効果的な学習のために、試験別に演習用ノートを用意してください。復習内容や見直すべきテーマ、出題傾向をノートにまとめることで、各試験の対策の方向性が明確になります。

また、世界史で満点を目指したい受験生には年号の暗記もおすすめします。共通テストでは年代に関する問題が出題されることがあり、多くの受験生を悩ませています。(2024年度試験では1912年から1970年のアメリカ史に関する並べ替え問題が出題されました。)

また、国立大学の論述問題では、論述に含めるべき事項を正確に把握するために年号を覚えておくことが望ましいです。(2024年度の東京大学入試では、1960年代のアジア・アフリカ史について記述する問題が出題されました。)

教科書の太字になっている事件の年号を書き出したり、重要事件の年号がまとめられた参考書を活用したりしながら、コツコツ暗記を進めてください。年号を正しく覚えることで、自信を持って解答できる問題が増え、通史の知識も整理されます

東大、早慶、入試の世界史に特徴はある?

世界史の受験勉強では、各大学の傾向に合わせた対策が欠かせません。大学によって出題傾向は大きく異なり、自己流の学習だけでは非効率な学習になってしまうことも。以下を参考に、効率の良い学習で合格を目指しましょう。

東大の世界史は教科書レベルの知識の定着がポイント

東京大学の世界史、特に第1問の大論述問題は多くの受験生を悩ませる難関です。しかし、以下のポイントを押さえて適切な対策を立てれば、決して越えられない壁ではありません。

攻略に際してまず重要なのは、問題文を正確に読み取る力です。東大の大論述問題には、十数行の問題文に加え、いくつかの指定語句が記載されています。問題文と指定語句を読み、出題者の要求を正しく読み取ることが、答案作成の第一歩です。日頃から教科書を読むことを習慣化し、世界史に関するまとまった文章を読み慣れておくことが重要です。

次に、教科書レベルの知識をしっかり定着させることです。東京大学のwebページ『高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと』には、

「入学試験の解答に必要とされる知識の程度は現行の高等学校学習指導要領を超えるものではありません」

引用:『東京大学ホームページ『高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと

と記載されています。つまり、教科書に掲載されている情報を正しく理解できていれば、十分に解答可能な問題が出題されるということです。ただし、「用語を知っている」だけでなく、「用語について、時代の流れを踏まえて詳しく説明できる」ことが必要である点には留意しましょう。

最後に、論理的な記述力を磨くことが重要です。各時代や地域の学習後に、その特徴を要約したり、問題集で論述問題に取り組んだりする習慣をつけましょう。

早稲田大、慶應義塾大の世界史の特徴

「早慶」と一括りにされがちな両校ですが、それぞれの大学・学部ごとに入試問題の特徴には大きな違いがあります。

出題形式に関して例を挙げると、早稲田大学の政治経済学部はマークシート形式と論述問題を組み合わせた出題形式ですが、文化構想学部はマークシート形式と用語筆記問題が中心です。また、慶應義塾大学の商学部は主にマークシート形式の空所補充問題が多数出題され、論述問題は少ない一方で、経済学部では多くの論述問題が出題されます。(2024年度入試では12問の論述問題が出題されました。)

学部ごとに出題形式が異なるため、対策の第一歩は過去問を通して問題形式や出題範囲を把握することです。夏休み中に各学部の過去問を3年分確認し、問題形式やよく出題される範囲を把握しましょう。過去問題集の冒頭に掲載されている科目ごとの概要解説ページも重要な情報源です。

両大学に共通する特徴として、テーマ史(宗教史・経済史など)や特定の国の歴史を一つの大問で集中的に問う傾向があります。これらの問題では、対策の有無で大きな差が生じます。特にテーマ史は教科書のみでの対策が難しいため、図説やテーマ史に特化した問題集を活用しましょう。過去問演習と並行して、『これだけはおさえよう!世界史100テ-マ書き込み問題集』(駿台文庫)などのテーマ史問題集に取り組み、対策を進めていきましょう。

時に難問や奇問が出題される早慶の入試ですが、合格の鍵は基礎の徹底です。教科書の内容をしっかり理解し、それを土台に問題演習を重ねていくことが大切です。

青山学院大、学習院大など、志望校ごとにある特徴          

私立大学の問題は大学・学部ごとに多様です。「国立大学や早慶以外では論述問題は出ない」と誤解している受験生もいますが、例えば青山学院大学文学部史学科や学習院大学文学部のように、論述問題を出題する大学・学部も存在します。まずは受験する予定の大学・学部の過去問を冷静に分析することが重要です。

多くの私立大学で出題され、受験生を苦しめるのが「正誤問題」(複数の選択肢から正しい/間違った選択肢を選ぶ問題)です。一問一答集であれば正しく答えられるのに、正誤問題になると答えが分からなくなるという悩みをよく耳にします。対策として、「逆・一問一答テスト」をおすすめします。通常の一問一答学習では問題文を読んでその答えを用語で答えますが、「逆・一問一答テスト」では用語を見てその問題文を答えるのです。このようなテストを実施することで、用語とその関連知識をまとめてインプットすることができます。

さらに発展的な問題に対応できるようになりたい受験生は、世界史用語集を活用してください。用語集には一問一答よりもさらに多くの情報が含まれています。過去問でよく目にする用語を確認しながら、解説を口頭で再現してみましょう。また、解説の中の重要な部分にチェックペンで線を引き、赤シートを使ってテストすることも正誤問題対策として有効です。この学習法は正誤問題対策だけでなく論述対策にも大いに役立ちます。論述問題が出題される大学・学部を受験する場合は、ぜひとも実践してください。

最後に、志望校の過去問を分析する際のポイントを紹介します。過去問に下記の問題が出題されているか、出題されている場合は何問程度かを確認し、それぞれ対策を進めていきましょう。

  • 用語筆記問題
  • 論述問題
  • 正誤問題
  • 文化史問題
  • テーマ史問題
  • 地図問題
  • 年号問題

暗記だけでは高得点は難しい

「世界史は暗記科目」とよく言われます。もちろん、入試で合格点を取るためには暗記が必要です。しかし、世界史で高得点を目指す皆さんには「短期間の暗記でなんとかなる」「一問一答で用語を覚えればOK」といった考えは見直してほしいと思います。「世界史の学習=用語の暗記」と考えると、中長期的には知識の定着が難しく、何よりも世界史の学びがつまらなく感じてしまいます。これほどもったいないことはありません。

世界史を得意科目にしたい皆さんには、世界史をストーリーとして学び、その結果として高得点を目指す姿勢を持ってほしいと思います。世界史をストーリーとして理解することは、効率的に正確な知識を身につけることができます。習得には一定の時間が必要となりますが、長期的には知識の定着度が高まり、世界史の学習も楽しくなります。

近年の入試傾向を見ると、単なる暗記では太刀打ちできない問題が増えています。特に共通テストの世界史では、知識を活用して考察する問題や、文章から読み取った内容と既有知識を組み合わせて解く問題が多く出題されます。また、国立大学の二次試験でも、用語自体の暗記に加え、背景の理解や用語どうしのつながりが問われます。

これまで紹介してきた学習法や考え方を参考にしながら継続的な努力を重ねれば、必ず結果はついてきます。充実した学びを通して、みなさんが目標を達成されるよう応援しています。

著者プロフィール

八尾直輝の写真 八尾直輝 株式会社プラスティー教育研究所

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。

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